経営者保証に関するガイドラインの決定版|保証を外す3つの条件・事業承継時の特則・手元に残せる資産を税理士が解説【2026年版】

「会社の借入に、社長個人が連帯保証を入れている」——中小企業では当たり前の光景です。しかしこの個人保証が、思い切った投資をためらわせ、事業承継の最大の障害になり、そして万一のときに経営者の生活そのものを壊してきました。 その解決の道筋を示したのが、経営者保証に関するガイドラインです。平成25年12月に「経営者保証に関するガイドライン研究会」が策定し、平成26年2月1日から適用されています。法律ではありません。しかし、中小企業団体と金融機関団体が共通の自主的・自律的な準則として策定・公表したもので、実務上の影響力は非常に大きい。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「保証を外せるものなら外したい」「事業を継ぐ息子にまで保証を背負わせたくない」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、多くの経営者が「外せるかどうかは銀行の胸ひとつ」だと思い込んでいます。実際には、ガイドラインは外すために会社側が満たすべき経営状況を、3つの項目で明文化しています。何を整えれば交渉のテーブルに着けるのかは、公表された文書に書いてあるのです。 本記事では、ガイドラインの適用対象、保証を外すための3つの条件、事業承継時の特則、そして万一のときに手元にいくら残せるのかという残存資産の考え方、さらに保証債務の免除を受けたときの税金までを、原文にあたって整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 3行サマリー
  2. 2. ガイドラインとは何か——法律ではないが、実務を動かしている
  3. 3. 適用対象となる保証契約——4つの要件
  4. 4. 保証を外すための3つの条件——ここが交渉の起点
  5. 5. 契約するときに金融機関がすべき説明
  6. 6. 既存の保証を外す・事業承継で引き継がせない
  7. 7. 万一のとき——手元にいくら残せるのか
  8. 8. 保証債務の免除を受けたら、税金はかかるのか
  9. 9. 実務で押さえるべきこと
  10. 10. 失敗vs王道
  11. 11. まとめ
  12. よくある質問(FAQ)

1. 3行サマリー

  • ガイドラインは法的拘束力を持たない自主的・自律的な準則ですが、中小企業団体と金融機関団体が共同で策定したもので、対象となる保証契約は4つの要件(主債務者が中小企業/保証人が個人である経営者/双方が弁済に誠実で財産状況を適時適切に開示/反社会的勢力でない)を満たすものです。
  • 保証なしで借りたいなら、会社側に3つの経営状況が求められます。①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性確保。金融機関側は、これらを踏まえ、停止条件付・解除条件付保証契約、ABL(流動資産担保融資)、金利の一定の上乗せといった代替手法の活用を検討することとされています。
  • 万一のときは、破産手続における自由財産に加えて、一定期間の生計費に相当する現預金華美でない自宅等を手元に残せる可能性があります。生計費の目安は雇用保険の給付期間(90日〜330日)×1月当たり33万円(民事執行法施行令で定める額を参考)。そして保証債務の免除を受けても、所得税の課税関係は生じないものとして整理されています。

2. ガイドラインとは何か——法律ではないが、実務を動かしている

ガイドラインの「はじめに」は、経営者保証の問題をこう整理しています。個人保証には資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後に経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もある、と。

策定の経緯も明記されています。平成25年1月に中小企業庁と金融庁が共同で「中小企業における個人保証等の在り方研究会」を設置し、同年5月に報告書が公表され、同年8月に日本商工会議所と全国銀行協会が共同で「経営者保証に関するガイドライン研究会」を設置。その成果として、同年12月に公表されたものです。

第2項は位置づけを明確にしています。

このガイドラインは、(中略)法的拘束力はないものの、主たる債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている。
(経営者保証に関するガイドライン 2.(1))
💡 「法的拘束力がないなら意味がないのでは」と思われるかもしれません。しかし実務は逆です。公表された共通のものさしがあること自体に価値があります。 「うちはこの3項目を満たしています」と資料で示せば、金融機関は第4項(2)に即して真摯に検討する立場に置かれる。交渉の言語が共有されたということです。

なお、民法にも経営者保証を意識した規定があります。事業のために負担した貸金等債務の保証契約は、原則として締結日前1か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示していなければ効力を生じません(民法第465条の6)。ただし、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者や、総株主の議決権の過半数を有する者などは、この規定の適用から除外されています(民法第465条の9)。つまり、社長本人の保証には公正証書が要らない。裏を返せば、法律は経営者保証を「本人の事業の一部」として扱っており、だからこそガイドラインという別の枠組みが必要になったわけです。

3. 適用対象となる保証契約——4つの要件

ガイドライン第3項は、以下のすべてを充足する保証契約に適用されるとしています。

  1. 保証契約の主たる債務者が中小企業であること
  2. 保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること
  3. 主たる債務者および保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む)について適時適切に開示していること
  4. 主たる債務者および保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと

2番目の「経営者」には、特別の事情がある場合として次も含まれます。

  • 実質的な経営権を有している者、営業許可名義人、または経営者の配偶者(当該経営者と共に当該事業に従事する配偶者に限る)が保証人となる場合
  • 経営者の健康上の理由のため、事業承継予定者が保証人となる場合
💡 見落とされやすいのが3番目です。「適時適切に開示していること」が適用の入口条件になっています。決算書を年に一度渡すだけ、試算表の提出を求められても出さない——この状態では、そもそもガイドラインの土俵に上がれません。

4. 保証を外すための3つの条件——ここが交渉の起点

第4項(1)は、経営者保証を提供せずに資金調達したい場合、まず求められる経営状況を3つ挙げています。

① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離

主たる債務者は、法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬賞与、配当、オーナーへの貸付等をいう。)を、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備するなど、適切な運用を図ることを通じて、法人個人の一体性の解消に努める。
(ガイドライン 4.(1)①)

そして重要な一文が続きます。

また、こうした整備・運用の状況について、外部専門家(公認会計士、税理士等をいう。)による検証を実施し、その結果を、対象債権者に適切に開示することが望ましい。
(同上)

ガイドラインが名指しで公認会計士・税理士の検証を求めている箇所です。社長個人への貸付金、社長名義の不動産を会社が使っている、私的な支出が会社の経費に混じっている——こうした状態が残っていると、この項目で止まります。

② 財務基盤の強化

経営者保証を提供しない場合でも事業に必要な資金を円滑に調達するために、財務状況および経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化すること。

③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

資産負債の状況(経営者のものを含む)、事業計画や業績見通しおよびその進捗状況等に関する情報開示の要請に対して、正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明すること。ここでも外部専門家による情報の検証を行い、検証結果と合わせた開示が望ましいとされています。さらに、開示・説明した後に事業計画・業績見通し等に変動が生じた場合には、自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努める、とされています。

金融機関側が検討すること

第4項(2)は、対象債権者の対応を定めています。停止条件付保証契約(主たる債務者が特約条項(コベナンツ)に抵触しない限り保証債務の効力が発生しない保証契約)、解除条件付保証契約(コベナンツを充足する場合は保証債務が効力を失う保証契約)、ABL(流動資産担保融資)、金利の一定の上乗せ等、経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実を図ることとする、とされています。

そして、次の要件が将来にわたって充足すると見込まれるときは、経営者保証を求めない可能性や代替的な融資手法を活用する可能性を検討する、としています。

  • イ 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
  • ロ 法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
  • ハ 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
  • ニ 法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
  • ホ 経営者等から十分な物的担保の提供がある。
💬 実務の現場から
私たちが関与する場面でも、最初につまずきやすいのがイとロです。役員貸付金が数千万円残っている、社長個人の口座と会社の口座の間で説明のつかない資金移動がある——この状態のまま「保証を外してほしい」と申し入れても、話は進みません。一般論として申し上げると、保証解除は交渉ではなく準備でほぼ決まります。まず役員貸付金の解消計画を立て、資金のやりとりのルールを社内規程に落とし、月次で試算表を出す体制を作る。そこまで整えてから申し入れるのが順序です。融資まわりの体制づくりは、グループのユウシサポでもご相談を承っています。

5. 契約するときに金融機関がすべき説明

保証を求めることが止むを得ないと判断された場合でも、第5項(1)は、金融機関が保証契約の締結に際して丁寧かつ具体的に説明すべき事項を3つ挙げています。

  • イ 保証契約の必要性
  • ロ 原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること
  • ハ 経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の見直しの可能性があること

さらに第5項(2)は、保証金額について、形式的に保証金額を融資額と同額とはせず、保証人の資産および収入の状況、融資額、主たる債務者の信用状況、物的担保等の設定状況、適時適切な情報開示姿勢等を総合的に勘案して設定する、としています。

💡 ここを知らない経営者が非常に多いのですが、「借入額=保証額」は当然ではありません。 ガイドラインは形式的な同額設定を戒め、履行請求額も資産の範囲内とする対応を保証契約に規定するよう求めています。契約書を差し出されたとき、「この金額の根拠は何ですか」と聞いてよいのです。

6. 既存の保証を外す・事業承継で引き継がせない

(1) 既存の保証契約の見直し

第6項(1)は、経営の改善が図られたこと等により保証契約の解除等の申入れがあった場合、金融機関は第4項(2)に即して改めて、経営者保証の必要性や適切な保証金額等について真摯かつ柔軟に検討するとともに、その検討結果について丁寧かつ具体的に説明することとしています。

申入れる側にも条件があります。第6項(1)①は、解除等の申入れに先立ち、第4項(1)に掲げる経営状況(前章の3項目)を将来にわたって維持するよう努めることを求めています。

(2) 事業承継時の特則

事業承継はこのガイドラインの核心のひとつです。第6項(2)②は、金融機関の対応を明確に定めています。

イ)後継者との保証契約の締結について
対象債権者は、前経営者が負担する保証債務について、後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、第4項(2)に即して、保証契約の必要性等について改めて検討するとともに、(中略)保証契約の必要性等について主たる債務者及び後継者に対して丁寧かつ具体的に説明することとする。
ロ)前経営者との保証契約の解除について
対象債権者は、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除について適切に判断することとする。
(ガイドライン 6.(2)②)

「当然に引き継がせるのではなく」——この一文が、事業承継の交渉で使える最も強い言葉です。なお、事業承継については別途「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」が公表されています。

7. 万一のとき——手元にいくら残せるのか

ここからが、経営者にとって最も切実な部分です。

(1) 整理の対象となる保証人(第7項(1))

以下のすべてを充足する場合に、保証人は保証債務の整理を申し出ることができます。

  • イ 保証契約が第3項のすべての要件を充足すること
  • ロ 主たる債務者が破産手続、民事再生手続、会社更生手続もしくは特別清算手続(法的債務整理手続)の開始申立て、または準則型私的整理手続(中小企業活性化協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理に関するガイドライン、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、特定調停)の申立てを、ガイドラインの利用と同時に現に行い、またはこれらの手続が係属し、もしくは既に終結していること
  • ハ 主たる債務者の資産・債務および保証人の資産・保証債務の状況を総合的に考慮して、破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
  • ニ 保証人に破産法第252条第1項(第10号を除く)に規定される免責不許可事由が生じておらず、そのおそれもないこと

(2) 経営者は必ず退任しなければならないのか

いいえ。第7項(3)②は、結果的に私的整理に至った事実のみをもって、一律かつ形式的に経営者の交代を求めないとしています。窮境原因に対する経営者の帰責性、経営者および後継予定者の経営資質・信頼性、経営者の交代が再生計画等に与える影響、金融支援の内容を総合的に勘案し、引き続き経営に携わることに一定の経済合理性が認められる場合には、これを許容するとされています。

(3) 残存資産の範囲——ここが本題

まず、破産手続における自由財産(破産法第34条第3項および第4項その他の法令により破産財団に属しないとされる財産)は残存資産に含まれます。実務上、これは99万円の現金が基本となります(ガイドラインの課税関係の整理Q&Aの設例でも、自由財産として0.99百万円が用いられています)。

そのうえで、ガイドラインは自由財産に上乗せして残せる可能性を開いています。第7項(3)③は、早期の事業再生等の着手の決断が主たる債務者の事業再生の実効性向上に資するものとして経済合理性が認められる場合、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等を残存資産に含めることを検討する、としています(回収見込額の増加額を上限とします)。

具体的な目安は、ガイドラインQ&A(Q7-14)が示しています。

〈一定期間の生計費に相当する現預金〉

「一定期間」は、次の雇用保険の給付期間の考え方等を参考にします。

  • 30歳未満……90日〜180日
  • 30歳以上35歳未満……90日〜240日
  • 35歳以上45歳未満……90日〜270日
  • 45歳以上60歳未満……90日〜330日
  • 60歳以上65歳未満……90日〜240日

(出典:経営者保証に関するガイドラインQ&A Q7-14。同Q&Aは引用元として厚生労働省職業安定局 ハローワークインターネットサービス ホームページ〔ガイドライン公表日時点〕と注記しています)

「生計費」は、1月当たりの「標準的な世帯の必要生計費」として、民事執行法施行令で定める額(33万円)を参考にします。なお、「華美でない自宅」を残すことにより保証人に住居費が発生しない場合は、一般的な住居費相当額を生計費から控除する調整も考えられる、とされています。

〈華美でない自宅〉

自宅が店舗を兼ねており資産の分離が困難な場合その他の場合で、安定した事業継続等のために必要となる「華美でない自宅」については、回収見込額の増加額を上限として残存資産に含めることも考えられる、とされています。これに該当しない場合でも、保証人が当分の間住み続けられるよう、処分・換価する代わりに、当該資産の「公正な価額」に相当する額から担保権者等への優先弁済額を控除した金額を分割弁済するという方法も示されています。

〈その他の資産〉

生命保険等の解約返戻金、敷金、保証金、電話加入権、自家用車その他の資産についても、破産手続における自由財産の考え方やその他の個別事情を考慮して、回収見込額の増加額を上限として残存資産の範囲を判断します。

💡 数字にすると輪郭が見えます。45歳以上60歳未満の経営者が330日で見た場合、月額33万円を目安にすると11か月分=約363万円という水準になります。これに自由財産の99万円が加わる。ただしこれはあくまで目安であり、上限は「回収見込額の増加額」です。 つまり、早く決断したことで債権者の回収が増えた分しか残せない。逆に言えば、決断が遅れて資産が劣化すれば、残せる額も減ります。早期着手が自分の手元に返ってくる——ガイドラインはそういう設計になっています。

(4) 弁済計画と、残った保証債務の免除

弁済計画案には、財産の状況、保証債務の弁済計画(原則5年以内)、資産の換価・処分の方針、対象債権者に対して要請する保証債務の減免・期限の猶予その他の権利変更の内容等を記載することが原則とされています。

減免を要請する場合は、財産の評定の基準時において保有するすべての資産(残存資産を除く)を処分・換価して得られた金銭をもって、担保権者その他の優先権を有する債権者への優先弁済の後、すべての対象債権者(債権額20万円以上の債権者に限る。この金額は対象債権者となる全ての債権者の同意により変更可)に対して債権額の割合に応じて弁済を行い、その余の保証債務について免除を受ける内容を記載します。

そして第7項(3)⑤は、保証人が資力に関する情報を誠実に開示して表明保証を行うこと、支援専門家が求めに応じて表明保証の適正性を確認して報告すること、弁済計画に経済合理性が認められること、そして開示内容が事実と異なることが判明した場合には、免除した保証債務および免除期間分の延滞利息も付した上で追加弁済を行うことを書面で合意すること——これらを満たす場合、対象債権者は残存する保証債務の免除要請に誠実に対応するとしています。

💡 ここは注意が必要です。すべての対象債権者の同意が必要です(Q7-8)。法的整理と違い、多数決では成立しません。ただし、ほとんど全ての対象債権者が合意したにもかかわらず、ごく一部の同意が得られず、それらを除外しても弁済計画への影響が軽微なときは、同意しない債権者を除外して成立させることが可能とされています。

8. 保証債務の免除を受けたら、税金はかかるのか

もっとも見落とされる論点です。通常、債務の免除を受ければ債務免除益が生じ、所得税の対象になり得ます(所得税基本通達36−15)。「保証を免除してもらったら、今度は税務署から請求が来るのか」——当然の不安です。

この点は、全国銀行協会が公表している「『経営者保証に関するガイドライン』に基づく保証債務の整理に係る課税関係の整理に関するQ&A」(平成26年1月16日制定)で整理されています。

結論から言えば、保証債務の免除について、保証人に所得税の課税関係は生じないものとして差し支えないとされています。理由は、免除されたのが偶発債務にすぎず、保証人に対する経済的利益の供与はないため、所得税法第36条に規定する収入の実現がない、というものです。

同Q&Aは4つの設例(主債務と保証債務の一体整理、法的整理〔再生型〕終結後の免除〔タイムラグなし/あり〕、法的整理〔清算型〕終結後の免除)について、いずれも同じ結論を示しています。金融機関側についても、経済的利益の供与がないことから、保証債権の放棄に係る寄附金課税(法人税法第37条)は生じないとされています。あわせて、主たる債務者に対する債権放棄による損失は、合理的な再生計画であることを前提に法人税基本通達9−4−2により損金算入できる、再生計画の認可決定により切り捨てられた金額は法人税基本通達9−6−1(1)により貸倒れとして損金算入できる、と整理されています。

そして同Q&Aには「この税務上の取扱いについては、中小企業庁及び金融庁から国税庁に確認済みです」との注記が付されています。

なお、経営者保証ではなく併存的債務引受により経営者が主債務者と同等の債務を負っていた場合は扱いが異なります。この場合の免除は経済的利益の供与に当たり債務免除益が生じますが(所得税基本通達36−15)、そのうち債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては課税関係が生じない(所得税基本通達36−17)と整理されています。

⚠️ 上記Q&Aは平成26年1月16日制定のもので、設例の本文では準則型私的整理手続の実施機関として「中小企業再生支援協議会」という当時の名称が用いられています。現在の中小企業活性化協議会にあたる組織です(ガイドライン本文は現在の名称で記載されています)。

9. 実務で押さえるべきこと

  • 入口条件は「開示」。 適時適切な財産・財務情報の開示ができていなければ、ガイドラインの土俵に上がれません(第3項(3))。
  • 保証解除は交渉ではなく準備。 第4項(1)の3項目——区分・分離、財務基盤、透明性——を先に整えます。
  • 役員貸付金を放置しない。 「法人と経営者の間の資金のやりとりが社会通念上適切な範囲を超えない」に真正面から抵触します。
  • 外部専門家の検証を使う。 ガイドラインが公認会計士・税理士による検証と開示を「望ましい」と明記しています。
  • 保証金額は交渉できる。 形式的に融資額と同額とはしない、履行請求は資産の範囲内とする——第5項に書かれています。
  • 事業承継では「当然に引き継がせるのではなく」を持ち出す。 第6項(2)②イ)。
  • 窮境に陥ったら、決断を遅らせない。 残せる資産の上限は「回収見込額の増加額」です。早期着手が手元資産に直結します。
  • 免除を受けても所得税は課されない、という整理を知っておく。 恐れて先送りする理由にはなりません。
  • すべての対象債権者の同意が必要。 取引金融機関が多いほど、支援専門家を早く入れる意味が大きくなります。

10. 失敗vs王道

❌ よくある失敗
  • 決算書を年1回渡すだけで、試算表も事業計画も出していない状態で「保証を外してほしい」と申し入れる(第3項(3)の入口条件を満たしていない)。
  • 役員貸付金を数千万円残したまま、法人個人の分離を主張する。
  • 社長個人名義の不動産を会社が無償で使っている、社長の生活費が会社の経費に混じっている——これらを整理せずに交渉に入る。
  • 保証金額が融資額と同額であることを当然と考え、根拠を尋ねない。
  • 事業承継の場面で、前経営者の保証をそのまま後継者に引き継ぐことを前提に手続を進める。
  • 業績悪化を金融機関に伝えず、資金が尽きる直前まで粘る(残存資産の上限である「回収見込額の増加額」が小さくなる)。
  • 保証債務の免除を受けると多額の税金がかかると誤解し、整理の申出をためらう。
  • 一時停止等の要請後に、無断で資産を処分する(「合理的な不同意事由」に当たり得ます)。
⭕ 王道の進め方
  • 月次試算表・資金繰り表・事業計画を毎月出す体制を先に作る。開示は入口条件です。
  • 役員貸付金・役員借入金の解消計画を立て、法人と個人の資金のやりとりに社内ルールを設ける。
  • 整備・運用の状況について公認会計士・税理士の検証を受け、その結果を金融機関に開示する(ガイドラインが望ましいとしている方法)。
  • 代替手法を具体名で提案する。 停止条件付・解除条件付保証契約、ABL、金利の一定の上乗せ。第4項(2)に列挙されています。
  • 事業承継の1〜2年前から動く。 後継者に当然に引き継がせるものではない、という第6項(2)②を根拠に、承継計画とセットで交渉する。
  • 業績が厳しくなったら、準則型私的整理手続の枠組みを早期に検討する。中小企業活性化協議会、特定調停、中小企業の事業再生等に関するガイドラインなど、選択肢は複数あります。
  • 保証債務の整理では、弁護士・公認会計士・税理士等の支援専門家を早期に入れる。表明保証の適正性の確認と残存資産の範囲の決定の支援が役割とされています(Q7-6)。
  • 資力に関する情報は誠実に、正確に開示する。事実と異なれば、免除された保証債務と延滞利息を付した追加弁済の合意が求められます。

11. まとめ

経営者保証に関するガイドラインは、法律ではありません。しかし、何を整えれば保証を外す議論ができるのかを、公表された文書として明文化した点に大きな意味があります。

要点は3つです。第一に、保証解除の鍵は交渉力ではなく、法人と個人の分離・財務基盤・情報開示という3つの経営状況であること。しかもガイドラインは、その検証を公認会計士・税理士が行い、金融機関に開示することを望ましいとしています。第二に、事業承継では「後継者に当然に引き継がせるのではなく」という一文が使えること。第三に、万一のときも、自由財産に加えて一定期間の生計費(雇用保険の給付期間×月33万円が目安)と華美でない自宅を残せる可能性があり、しかも免除を受けても所得税の課税関係は生じないものとして整理されていること。

そして、残せる資産の上限は「回収見込額の増加額」です。早く決断した人ほど、手元に残せる。この設計は、業績が悪化したときに何を優先すべきかを、はっきり示しています。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、月次の情報開示体制の構築、役員貸付金の解消、金融機関への説明資料の作成から、事業承継時の保証の取扱いの設計までを一体でご支援しています。保証を外す準備は、決算書1期分では終わりません。早めに始めるほど、選べる手が増えます。

よくある質問(FAQ)

経営者保証に関するガイドラインには、法的な強制力がありますか。

ありません。ガイドライン第2項(1)は「法的拘束力はないものの、主たる債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている」と明記しています。ただし、中小企業団体と金融機関団体が共同で策定・公表した共通の準則であり、実務上の影響力は大きいものです。

どうすれば経営者保証を外せますか。

ガイドライン第4項(1)は、まず求められる経営状況として3つを挙げています。①法人と経営者との関係の明確な区分・分離(法人と経営者の間の資金のやりとりを社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制の整備等)、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示による経営の透明性確保です。あわせて第4項(2)は、法人と経営者個人の資産・経理の明確な分離、法人のみの資産・収益力による返済可能性、適時適切な財務情報の提供等の要件を挙げています。

すでに差し入れている保証も外せますか。

第6項(1)②は、経営の改善が図られたこと等により解除等の申入れがあった場合、金融機関は第4項(2)に即して経営者保証の必要性や適切な保証金額等について改めて真摯かつ柔軟に検討し、その検討結果を丁寧かつ具体的に説明することとしています。ただし申入れに先立ち、第4項(1)の経営状況を将来にわたって維持するよう努めることが求められます(同(1)①)。

事業承継のとき、後継者は保証を引き継がなければなりませんか。

ガイドライン第6項(2)②イ)は、対象債権者は前経営者が負担する保証債務について「後継者に当然に引き継がせるのではなく」、必要な情報開示を得た上で保証契約の必要性等について改めて検討することとする、としています。また同ロ)は、前経営者から解除を求められた場合、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か等を勘案して適切に判断することとしています。なお、事業承継については別途「事業承継時に焦点を当てた特則」が公表されています。

保証金額は借入額と同じでなければならないのですか。

そうではありません。第5項(2)は、対象債権者は「形式的に保証金額を融資額と同額とはせず」、保証人の資産および収入の状況、融資額、主たる債務者の信用状況、物的担保等の設定状況、適時適切な情報開示姿勢等を総合的に勘案して設定する、としています。また第5項(1)ロ)は、保証履行時の履行請求は一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案して履行の範囲が定められることを、契約時に説明することとしています。

会社が破綻したら、自宅は必ず失いますか。

必ずしもそうではありません。ガイドライン第7項(3)③は、早期の事業再生等の着手の決断が事業再生の実効性向上に資するものとして経済合理性が認められる場合、回収見込額の増加額を上限として、一定期間の生計費に相当する額や「華美でない自宅等」を残存資産に含めることを検討する、としています。Q&A(Q7-14)は、自宅が店舗を兼ねており資産の分離が困難な場合等について、残存資産に含めることも考えられるとしています。これに該当しない場合でも、処分・換価に代えて「公正な価額」相当額を分割弁済する方法が示されています。個別事情により結論は変わります。

手元に残せる現預金はいくらですか。

破産手続における自由財産(破産法第34条第3項・第4項その他の法令により破産財団に属しないとされる財産)は残存資産に含まれます。これに加えて、一定期間の生計費に相当する現預金を残すことを検討することとされており、Q&A(Q7-14)の目安は、雇用保険の給付期間(保証人の年齢に応じて90日〜330日)の考え方を参考とする「一定期間」に、1月当たりの標準的な世帯の必要生計費として民事執行法施行令で定める額(33万円)を掛ける、というものです。ただし上限は回収見込額の増加額であり、金額が保証されるものではありません。

保証債務を免除してもらったら、所得税がかかりませんか。

全国銀行協会が公表している「『経営者保証に関するガイドライン』に基づく保証債務の整理に係る課税関係の整理に関するQ&A」(平成26年1月16日制定)では、保証債務の免除は偶発債務を免除したにすぎず保証人に対する経済的利益の供与がないことから、所得税法第36条に規定する収入の実現はなく、所得税の課税関係は生じないものとして差し支えないと整理されています。同Q&Aには、この税務上の取扱いについて中小企業庁および金融庁から国税庁に確認済みである旨の注記があります。なお、併存的債務引受により経営者が債務を負っていた場合は債務免除益が生じますが(所得税基本通達36−15)、資力を喪失して弁済が著しく困難と認められる場合に受けたものは課税関係が生じないとされています(同36−17)。

取引金融機関が5行あります。1行でも反対したら成立しませんか。

ガイドラインQ&A(Q7-8)は、法的債務整理手続と異なり、すべての対象債権者の弁済計画案への同意が必要であり、一部の対象債権者から同意が得られない場合、債務整理は成立しないとしています。ただし、ほとんど全ての対象債権者が合意したにもかかわらず、ごく一部の同意が得られない場合において、これらを対象債権者から除外しても弁済計画に与える影響が軽微なときは、同意しない債権者を除外して成立させることが可能とされています。

私的整理をしたら、経営者は必ず退任することになりますか。

第7項(3)②は、対象債権者は「結果的に私的整理に至った事実のみをもって、一律かつ形式的に経営者の交代を求めないこととする」としています。窮境原因および窮境原因に対する経営者の帰責性、経営者および後継予定者の経営資質・信頼性、経営者の交代が再生計画等に与える影響、金融支援の内容を総合的に勘案し、引き続き経営に携わることに一定の経済合理性が認められる場合には許容することとされています。ただしその場合も、保証債務の全部または一部の履行、役員報酬の減額、株主権の全部または一部の放棄、代表者からの退任等により経営責任の明確化を図ることとされています。

社長個人の保証には、なぜ公正証書が要らないのですか。

民法第465条の6は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約等について、締結日前1か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示していなければ効力を生じないと定めています。しかし民法第465条の9は、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者、および総株主の議決権の過半数を有する者等については、この規定を適用しないとしています。経営者本人の保証は、この適用除外に当たります。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、経営者保証に関するガイドラインの内容に関する一般的な情報提供であり、個別の保証契約や債務整理に関する法的・税務的な判断に代わるものではありません。ガイドラインは法的拘束力を有しない自主的・自律的な準則であり、保証契約の解除や保証債務の減免が受けられることを保証するものではありません。残存資産の範囲は、回収見込額の増加額を上限として、支援専門家および対象債権者との協議により個別に決定されるものであり、本記事に記載した雇用保険の給付期間や月額33万円はガイドラインQ&Aが示す目安にすぎず、実際に残せる金額を示すものではありません。保証債務の整理には、原則としてすべての対象債権者の同意が必要です。課税関係については全国銀行協会が公表するQ&Aの整理を紹介したものであり、個別の事実関係により結論が異なる場合があります。同Q&Aは平成26年1月16日制定であり、設例中の「中小企業再生支援協議会」は現在の中小企業活性化協議会にあたる当時の名称です。債務整理の手続選択および法律に関する判断については弁護士に、税務上の取扱いについては税理士にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月10日

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公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、法人と個人の区分・分離の整備、役員貸付金の解消計画、月次の情報開示体制の構築、金融機関への説明資料の作成、事業承継時の保証の取扱いの設計までを一体でご支援しています。保証解除は交渉ではなく準備でほぼ決まります。早めに始めるほど、選べる手が増えます。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。