決算賞与で節税とは?損金算入の3要件・未払計上のやり方・落とし穴を税理士が解説【2026年版】

「今期は思ったより利益が出た。このまま決算を迎えると法人税が重い。従業員にも還元したいし、決算賞与で節税できないか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、決算期が近づくこの時期、経営者からこうしたご相談が数多く寄せられます。決算賞与は、頑張ってくれた従業員に利益を還元しながら、法人税の負担を軽くできる数少ない“三方よし”の節税策です。ただし、損金(税務上の経費)として認められるには厳格な要件があり、ひとつでも欠けると賞与を払ったのに損金にできず、節税どころか資金だけが出ていく事態になりかねません。 本記事では、決算賞与とは何か、なぜ節税になるのか、損金に算入するための3つの要件、決算日までに払えない場合の未払計上のやり方、そして税務調査で否認されないための落とし穴と対策までを、国税庁の取扱いと法人税法の条文に基づいて網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 決算賞与とは何か(3行サマリー)
  2. 2. なぜ決算賞与が節税になるのか
  3. 3. 決算賞与を損金にするための3要件(未払計上のルール)
  4. 4. 税務調査で否認されないための落とし穴と対策
  5. 5. 役員賞与・社会保険料の注意点
  6. 6. 実務でどう使うか(まとめの視点)
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 決算賞与とは何か(3行サマリー)

  • 決算賞与とは、会社の業績(決算)に応じて、決算期の前後に従業員(使用人)へ臨時に支給する賞与のことです。夏・冬の定期賞与とは別に、その期の利益を従業員へ還元する目的で支給します。
  • 決算賞与を支給すると、その金額が損金(税務上の経費)になり、課税対象となる利益(所得)が圧縮されるため、法人税等の負担が軽くなる=節税になります。あわせて、従業員の士気向上・定着にもつながります。
  • ただし、賞与を損金にできる時期には法人税法上のルールがあり、決算日までに支払えば当期の損金、決算日を過ぎて支払う場合は後述の3要件をすべて満たしたときだけ、当期の損金(未払計上)にできます(国税庁No.5350)。
💡 節税額の目安は「決算賞与の額 × 法人の実効税率」です。中小企業の実効税率をおおむね30%とすると、決算賞与を100万円支給すれば、法人税等がおよそ30万円軽くなる計算です。ただし、賞与そのもの(100万円)はキャッシュとして社外へ出ていきます。税金は減っても手元資金も減るため、無理な支給は禁物。利益還元・士気向上と節税を両立できる範囲で使うのが鉄則です。

2. なぜ決算賞与が節税になるのか

法人税は、ざっくり言えば「利益(所得)× 税率」で決まります。決算賞与を支給すると、その分だけ費用が増えて利益が減り、課税所得が圧縮されます。だから法人税が下がる、という仕組みです。

たとえば、当期の利益が1,000万円出そうな会社が、決算賞与を200万円支給したとします。

項目決算賞与なし決算賞与200万円あり
課税所得(利益)1,000万円800万円
法人税等(実効税率30%で試算)約300万円約240万円
手元に残る現金の考え方税で約300万円が流出税で約240万円+賞与200万円が流出

※ 実効税率は資本金・所得規模等で変わるため、あくまで概算です。

法人税は約60万円軽くなります(300万円→240万円)。ただし、賞与200万円は従業員に支払われるため、会社全体で見ると社外への支出は増えます。決算賞与は「税金を減らすためだけ」に使うと、かえって資金繰りを苦しくします。利益を出してくれた従業員へ正当に還元し、その結果として税負担も軽くなる——この順序で考えることが大切です。

3. 決算賞与を損金にするための3要件(未払計上のルール)

決算賞与で最も重要なのが「いつの事業年度の損金になるか」です。国税庁No.5350「使用人賞与の損金算入時期」によれば、使用人(従業員)への賞与は、原則として実際に支払った日の属する事業年度の損金になります。決算日までに支給を済ませてしまえば、当然その期の損金です。

問題は、決算日までに支払いが間に合わず、翌期に支払う場合です。この場合でも、次の3つの要件をすべて満たせば、通知をした日の属する事業年度(=当期)の損金にできます(法人税法施行令第72条の3第2号)。これが「未払計上」です。

要件内容
① 通知(各人別・同時期の全員に)その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
② 1か月以内の支払い通知をした金額を、通知したすべての使用人に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
③ 当期に損金経理その支給額につき、通知をした日の属する事業年度において損金経理(未払賞与として費用に計上)をしていること

つまり、3月決算の会社なら、3月31日までに各従業員へ賞与額を通知し、4月30日までに実際に支払い当期(3月期)の決算で未払賞与として費用計上すれば、支払いが翌期にずれ込んでも、当期の損金として節税できるということです。

💡 定期賞与のように労働協約や就業規則で支給予定日が定められている賞与は、上記とは別区分で、「支給予定日」または「支給額を通知した日」のいずれか遅い日の属する事業年度の損金になります(No.5350)。決算賞与のように臨時・任意で支給するものは、上の3要件(未払計上)が基本の判断枠組みです。

4. 税務調査で否認されないための落とし穴と対策

決算賞与は、3要件のどれか一つでも崩れると当期の損金として認められず、翌期の損金に繰り延べられます(=当期の節税が消える)。税務調査でも狙われやすい論点です。よくある失敗と、その対策を押さえましょう。

❌ 決算賞与でやってしまいがちな失敗
  • 「支給日に在職している人にだけ支払う」という規定を置いている(=決算日時点で支払う相手・金額が確定しておらず、当期損金にできない)
  • 通知を口頭で済ませ、各人別に・書面で伝えた証拠を残していない
  • 決算日の翌日から1か月を1日でも過ぎて支払った(=要件②アウト、全額が当期損金にできない)
  • 未払計上したが、実際には翌期に支給を取りやめた・減額した(=通知額どおりに支払っていない)
  • 役員(使用人兼務役員でない役員)への賞与を、決算賞与として損金にしようとした
⭕ 決算賞与を確実に損金にする王道
  • 在職要件を付けない。決算日後に退職した人にも、通知した金額はそのまま支払う(在職要件があると当期損金にできない)
  • 通知は各人別・書面で行い、通知書の控え・受領サインなど証拠を残す
  • 決算日の翌日から1か月以内に、通知額どおり全額を振込で支払う(振込記録を残す)
  • 当期の決算で未払賞与(未払費用)として損金経理する
  • 対象は使用人に限る。役員は事前確定届出給与など別の枠組みで検討する(→次項)
💡 特に多いのが「在職要件」の落とし穴です。就業規則や賞与規程に「支給日に在籍している者に支給する」と書いてあると、決算日(通知日)時点では誰にいくら払うかが確定していないと判断され、たとえ通知しても当期の損金にできません。決算賞与を未払計上で当期の損金にしたいなら、通知した以上は退職者にも支払う運用にしておく必要があります。

5. 役員賞与・社会保険料の注意点

役員への賞与は原則として損金にならない

決算賞与で損金にできるのは、あくまで使用人(従業員)への賞与です。役員への賞与は、原則として損金に算入されません(No.5211「役員に対する給与」)。役員に賞与を出して損金にするには、あらかじめ税務署へ「事前確定届出給与」の届出をするなど、別の厳格な要件を満たす必要があります。「決算で利益が出たから役員にも賞与を」と後から支給しても、損金にはできないのが原則です。なお、部長など従業員の地位も兼ねる使用人兼務役員については、使用人としての職務に対する賞与部分は、他の使用人と同じ時期に支給するなど一定の要件のもとで損金にできます。

社会保険料の会社負担分は同じ期の損金にならないことがある

決算賞与を支払うと、会社は社会保険料の会社負担分も負担します。この会社負担分は、賞与の支払月に納付義務が確定するため、決算日をまたいで翌期に支払う決算賞与を当期に未払計上した場合、社会保険料の会社負担分は原則として当期の損金にはならず、実際に確定・納付する翌期の損金になるのが一般的です。賞与本体(当期損金)と社会保険料(翌期損金)で計上時期がずれる点は、決算の見積りで見落としがちなので注意してください。

6. 実務でどう使うか(まとめの視点)

  • 決算賞与は「予想以上に利益が出た期」に、従業員へ還元しつつ税負担を軽くするのに向く。無理に毎期出すものではない。
  • 決算日までに支給できるならそれが最もシンプル。間に合わないなら、通知(各人別・書面)→翌日から1か月以内に全額支払い→当期に損金経理の3要件を確実に踏む。
  • 在職要件を付けない運用にしておく(付いていると当期損金にできない)。
  • 節税額は「賞与額 × 実効税率」。税金は減るが現金も出るため、資金繰りと投資計画のなかで金額を決める。
  • 役員賞与は原則損金不算入。役員への還元は事前確定届出給与などで、期首の計画段階から設計しておく。
💬 実務の現場から
——「決算間際に利益が読めてきたので、今から決算賞与を出して節税したい」というご相談を、弊社でも実際によく頂きます。一般論として申し上げると、決算賞与は要件さえ正しく踏めば非常に有効ですが、在職要件・通知の証拠・1か月以内の支払いのどれか一つでも欠けると、賞与を払ったのに当期の損金にできないという最悪の結果になりかねません。私たちが関与する場面では、決算の着地見込みを早めに固めたうえで、賞与規程の在職要件の有無を確認し、通知書のひな型・支給スケジュール・社会保険料の計上時期まで一体で設計し、税務調査でも説明できる形に整えてから実行していただいています。

よくある質問(FAQ)

決算賞与を出すと、どのくらい節税になりますか?

節税額の目安は「決算賞与の額 × 法人の実効税率」です。実効税率を約30%とすると、100万円の決算賞与でおよそ30万円の法人税等が軽くなります。ただし賞与そのものは社外に支払われるため、手元資金は賞与の分だけ確実に減ります。「税金を減らす」だけの目的で無理に出すのは避けましょう。

決算日までに支払えなくても、当期の経費にできますか?

できます。①各人別に全従業員へ支給額を通知②決算日の翌日から1か月以内に通知額どおり全額支払い③当期に未払賞与として損金経理――の3要件をすべて満たせば、支払いが翌期でも当期の損金にできます(法人税法施行令第72条の3・No.5350)。ひとつでも欠けると翌期の損金になります。

「支給日に在職している人だけに払う」と決めていても大丈夫ですか?

それが落とし穴です。在職要件があると、決算日(通知日)時点で支払う相手と金額が確定していないと判断され、未払計上での当期損金が認められません。当期の損金にしたいなら、通知した従業員には退職者も含めて全額を支払う運用にしてください。

通知は口頭でもよいですか?

法律上は「通知」とされていますが、税務調査では通知した事実と各人別の金額を客観的に示せることが重要です。各人別・書面で通知し、通知書の控えや受領の記録を残しておくのが安全です。

役員にも決算賞与を出して節税できますか?

原則できません。役員への賞与は原則として損金不算入で、損金にするには事前に「事前確定届出給与」の届出をするなどの要件が必要です(No.5211)。決算間際に後から役員賞与を出しても損金にはならないのが原則です。従業員(使用人)への決算賞与とは扱いが大きく異なります。

8. まとめ

決算賞与は、従業員への利益還元と法人税の節税を同時に実現できる有効な手段ですが、損金算入の要件が厳格で、税務調査でも狙われやすい論点です。要点は次のとおりです。

  • 決算賞与を支給するとその額が損金になり、法人税等が「賞与額 × 実効税率」の分だけ軽くなる(ただし現金は出ていく)。
  • 損金になる時期は、原則支払った日の属する事業年度。決算日をまたぐ未払計上は、①各人別・全員への通知②決算日の翌日から1か月以内の支払い③当期の損金経理の3要件をすべて満たすときだけ当期の損金にできる(法人税法施行令第72条の3・No.5350)。
  • 最大の落とし穴は在職要件。付いていると当期損金にできないため、通知した以上は退職者にも支払う運用にする。通知は各人別・書面で証拠を残す。
  • 役員賞与は原則損金不算入(No.5211)。役員への還元は事前確定届出給与などで期首から設計する。
  • 社会保険料の会社負担分は、賞与本体(当期損金)と計上時期がずれ、翌期の損金になるのが一般的。

「今期は利益が出そうなので、決算賞与で従業員に還元しつつ節税したい」「賞与規程の在職要件が損金算入の妨げにならないか確認したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、決算の着地見込みの把握から、決算賞与の要件を満たす通知・支給スケジュールの設計、役員給与の最適化、資金繰りを踏まえた節税全体の設計まで一体でご支援しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 法人税法施行令第72条の3(使用人賞与の損金算入時期)
  • 国税庁タックスアンサー No.5350(使用人賞与の損金算入時期)
  • 国税庁タックスアンサー No.5211(役員に対する給与)
ご利用上の留意事項
本記事は、決算賞与と法人税に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。損金算入の可否は事実関係・規程の内容により異なり、税率・関係する制度の要件等は改正により変わることがあります。実際の支給・決算・申告の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月1日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp