内閣府が「公益認定等に関する事例集」を初公表|奨学金4事例で読む公益財団法人の認定実務を税理士が解説【2026年8月時点】

2026年8月7日、内閣府が「公益認定等に関する事例集」を公益法人Informationのサイトで新規公開しました。公益認定等委員会が審議した事例のうち、公益認定に際して慎重な検討を要した事例を、事務局の責任で紹介するというものです。 地味な公表物に見えるかもしれません。ですが、これまで公益認定の実務は「ガイドラインという抽象的な基準」と「行政庁との個別のやり取り」の間にあり、外からは何が通って何が引っかかるのかが見えにくい領域でした。そこに、内閣府自身が「ここが論点になった」「こう当てはめた」を書いた資料が出てきた。これは、財団の設立を検討する方にとって、初めて手に入った地図に近いものです。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「創業で得た資産の一部を社会に還す形にしたい」「一般社団では相続税法の網がかかると聞いた、公益財団はどうか」というご相談は実際に寄せられます。そうしたご相談で最初につまずきやすいのが、税金の話ではなく、その手前の「公益認定が下りるか」なのです。 本記事では、初回の事例集に収められた奨学金の4事例を、条文とガイドラインの当てはめに沿って整理し、そのうえで財産を出す側にかかる税金(租税特別措置法第40条・第70条、法人税法第37条ほか)まで一本につないで解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:公益財団法人・公益社団法人と「公益認定」の基本
  3. 3. 事例集の4事例——何が論点になり、どう当てはめられたか
  4. 4. 専門家の視点——4事例に共通する「認定が下りる書き方」
  5. 5. 実務で押さえるべきこと——財産を出す側にかかる税金
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(3行サマリー)

  • 2026年8月7日、内閣府が「公益認定等に関する事例集(暫定版)」を新規公開しました。表紙の日付は令和8年8月です。内閣府は「公益認定等委員会の審議した事例のうち公益認定に際して慎重な検討を要した事例など公益目的事業該当性の境界を判断する上で参考となる事例を事務局の責任で紹介するもの」と位置づけています
  • 初回に収められたのは奨学金に関する4事例のみです。認定の時期は令和6年の変更認定が1件、令和7年の変更認定が1件、令和8年の公益認定が2件で、4件とも認定が認められた事例です。「落ちた事例」は載っていません
  • 各事例は「概要」「公益認定基準への当てはめ」「解説」「法人提出書類における選考に関する記載(一部匿名化)」「参考:公益認定等ガイドラインの関連記載」という構成です。実際に法人が出した申請書・募集要項の文面が載っている点が、これまでにない情報です
📌 【2026年8月23日時点】この事例集は「暫定版」です
表紙に「(暫定版)」と明記され、本文にも「本事例集は随時更新していく予定です」と書かれています。あわせて「基準を示しているものではなく、具体的な判断については、事例集で記載している事項も含めた個別の事情に基づいて最終的に行っております」との注記があります。つまり、ここに載っている当てはめは「同じことをすれば必ず通る」という保証ではありません。本記事の内容も、今後の更新によって前提が変わる可能性があります。

2. 前提:公益財団法人・公益社団法人と「公益認定」の基本

公益法人は「作る」のではなく「認定を受ける」

まず押さえておきたいのが、公益財団法人・公益社団法人という法人を直接設立することはできない、という点です。手順は二段階です。

  1. 一般財団法人または一般社団法人を設立する(登記のみで設立できます)
  2. その法人が行政庁の認定を受けると、公益財団法人・公益社団法人になります

この二段目の根拠が、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益法人認定法」)第4条です。同条は「公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる」と定めています。同法第2条第1号・第2号も、公益社団法人・公益財団法人を「第四条の認定を受けた一般社団法人(一般財団法人)」と定義しています。

「公益目的事業」とは何か

公益法人認定法第2条第4号は、公益目的事業を次のように定義しています。

💡 公益法人認定法第2条第4号(原文)
「公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」

ここには2つの要件が入っています。①別表に掲げる23種類のどれかに当たること、②不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること。今回の事例集で繰り返し論点になっているのは、②のほうです。

なお、奨学金事業は別表の第7号(児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業)や第9号(教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業)に位置づけられるのが通常です。

公益認定の18の基準(公益法人認定法第5条)

公益法人認定法第5条は、行政庁が認定をするための基準を列挙しています。今回の事例集に関係する主な号は次のとおりです。

基準の内容
第1号公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること
第2号公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること
第3号その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること
第4号その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること(公益法人・公益信託の受託者に対するものを除く)
第5号投機的な取引、高利の融資その他の事業であって、公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくないものとして政令で定めるもの又は公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないものであること
第6号その行う公益目的事業について、第14条の規定による収支の均衡が図られるものであると見込まれるものであること
第7号公益目的事業以外の事業(収益事業等)を行う場合には、収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること
第8号その事業活動を行うに当たり、第15条に規定する公益目的事業比率が100分の50以上となると見込まれるものであること
第9号その事業活動を行うに当たり、第16条に規定する使途不特定財産額の保有の制限に適合すると見込まれるものであること

(出典:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条)

令和7年4月から用語が変わっています

ここで、実務でよく取り違えられる点をひとつ。令和7年(2025年)4月1日に改正公益法人認定法が施行され、財務三基準の呼び名と中身が変わりました。

改正前の呼び名現行の条文上の呼び名根拠条文
収支相償収支の均衡公益法人認定法第14条
公益目的事業比率50%以上公益目的事業比率50%以上(変更なし)公益法人認定法第15条
遊休財産額の保有制限使途不特定財産額の保有の制限公益法人認定法第16条

(出典:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第14条〜第16条/内閣府「『公益法人制度』が令和7年4月から変わります」)

「収支相償」「遊休財産」という言葉で書かれた解説は、いま読むと条文とずれています。実務家の立場から申し上げると、ここを古い用語のまま理事会に説明してしまうと、行政庁とのやり取りの初手で話が噛み合わなくなります。あわせて、第16条第2項では「公益目的事業継続予備財産」(災害その他の予見し難い事由が発生した場合においても公益目的事業を継続的に行うために必要な限度で保有するもの)が使途不特定財産額から除かれ、同条第3項でその保有理由と額の公表が義務づけられています。

3. 事例集の4事例——何が論点になり、どう当てはめられたか

初回の4事例を一覧にします。表の「論点」と「結論」は、事例集の記載に沿ったものです。

事例認定の種類何が論点になったかガイドラインのどの基準結論
① 奨学金の選考体制令和7年 変更認定指定校に簡素な選考基準しか示さず、大学の裁量が大きい。選考の公正性に疑義があり、事業の合目的性が確保されているか事業の合目的性(第2章第1節第3(5))合目的性が確保されていると判断し、公益認定を認めた
② 奨学金の分野令和8年 公益認定「物流・ロジスティクス分野」が対象だが、対象学科・履修科目が明示されておらず、応募資格が明確でない。受益の機会が開かれているか、合目的性が確保されているか受益の機会(第2章第1節第3(3))、事業の合目的性(同(5))いずれも認められると判断し、公益認定を認めた
③ 奨学金事業の承継令和6年 変更認定全国で青少年育成事業を行う法人が、特定地域を対象とする既存公益法人の事業を使途指定の寄附金という形で承継。追加事業だけ受益資格を特定地域に限定してよいか受益の機会(第2章第1節第3(3))限定に合理性があると判断し、変更認定を認めた
④ 奨学金の金額令和8年 公益認定海外大学院への留学奨学金で、年額1,000万円を上限に客観的基準で算出するとしか定めておらず、具体の金額が明示されていない。受益の内容が明確か、変動する仕組みに合目的性があるか事業の合目的性(第2章第1節第3(5))、受益者の義務(同(4))いずれも認められると判断し、公益認定を認めた

(出典:内閣府「公益認定等に関する事例集(暫定版)」令和8年8月)

以下、1件ずつ中身を見ていきます。

事例① 選考を大学に任せてよいか(令和7年 変更認定)

法人が指定校に簡素な内容で選考基準を示し、実質的な選考の裁量が大学側に大きく委ねられている奨学金事業でした。「大学が事業の目的に沿わない形で選考してしまうのではないか」という、選考の公正性に関する疑義が出たわけです。

内閣府は、事業の合目的性(事業の趣旨に応じたプロセスが確保されているか)について、次の3点を挙げて認めています。

  • 大学は学内の学生に関する詳細な情報を把握していること
  • 大学で奨学金の候補者を推薦する事例は一定程度存在していること
  • 本件では信頼できる学内体制のある大学を指定校として選定していること

そのうえで解説は、こう続けます。委員会の審議では「大学において適切に運用がなされているか、定期的なチェックが必要」との指摘がなされており、法人において、学校側で奨学金の趣旨及び目的から外れた選考が行われないよう適切に確認を行うことが望ましいと考えられる、と。さらに「人手不足の社会情勢において小規模法人が事業拡大する上で委託を積極的に活用することも有益である一方、公益事業の合目的性を確保する上で、公益法人が委託先の監視を適切に行うことが重要」と結んでいます。

💬 実務の現場から

事例② 応募資格があいまいでも通るのか(令和8年 公益認定)

「物流・ロジスティクス分野」を志す学生への奨学金でした。対象となる学科や履修科目が明示されていないため、応募する学生にとって自分に応募資格があるかが分からない——受益の機会が実質的に開かれているといえるのか、が論点です。

内閣府は、受益の機会について「今後の実績を踏まえて募集要項の記載を明確化したい」という法人からの補足説明も受けたうえで、現時点では応募資格に不明確な部分があるが認定を受けるにあたって致命的ではなく、また将来的に募集要項に明記されることで課題が解消する蓋然性が高いとして、受益の機会が開かれていると扱って差し支えないと判断しました。

合目的性についても、学生から申告のあった科目や学科が応募資格を満たしているかを個別に判断する選考方式は、一律に学部等で足切りせず、研究意欲のある学生への支援を行うことができるという観点で一定の合目的性がある、としています。

解説はこうまとめています。「応募の機会が開かれているかを判断する上で、募集要項で明確な要件を定めることは重要であるが、社会通念上判断の難しい要件を定めることも一律に否定されるわけではない」。

事例③ ほかの財団の事業を引き継げるか(令和6年 変更認定)

これは、財団の出口を考えるうえで重要な事例です。

全国的に青少年育成に関する事業をしている法人が、特定地域を対象とする既存の公益法人の事業を、使途指定の寄附金(特定寄附金)という形で財源を受け取って承継する、という話でした。承継する奨学金事業だけ、受益の資格を特定の地域に限ることになる。それは「不特定かつ多数」といえるのか。

内閣府は、既に公益性が認められている出捐元の公益法人の目的を尊重するという観点から、限定を行うことに合理性があると判断し、変更認定を認めました。

解説には、実務で効く一文が入っています。「事業の継続が困難な公益法人にとって、本事例のような他の関連する事業を実施している公益法人への事業譲渡や合併は有益であると考えられる」。そして手続きについて——「公益法人同士の吸収合併で吸収合併消滅法人の事業を全部譲渡で申請書記載事項に変更無く引き受ける場合には、変更届出事項となる」。つまり変更認定ではなく届出で済む場合がある、という整理です。

事例④ 金額を確定させずに募集してよいか(令和8年 公益認定)

海外の大学院に留学する学生への奨学金で、募集要項には「年額1,000万円の上限の中で客観的基準に基づき算出する」とだけ書かれ、具体の支給額が示されていませんでした。受益の内容が明確でないのではないか、そもそも変動する仕組みに合目的性があるのか、が論点です。

内閣府は、留学先の地域によって物価水準や学費が著しく異なることを踏まえ、事前に支給額が明確ではないが合目的性があると判断しました。実際の規程は、学費・寮費・保険料・渡航費は領収書等で確認できる実費を支給し、生活費等は月額20万円を基準に留学先の物価や為替レートの変動を調整して算出するという組み立てになっています。

もう一点、受益者の義務についても判断が示されています。奨学金の使途について毎年度の会計報告を支給対象者に義務づけていることについて、奨学金の活用状況の透明性の確保や適切な支給額の決定のため合理的な義務付けである、としました。

解説は「一般論として、奨学金について、事前に金額は明確に示されるべきであるが、合理的な根拠に基づいて、支給額の変更が行われる奨学金も許容される」と結んでいます。

4. 専門家の視点——4事例に共通する「認定が下りる書き方」

4件を並べると、事例ごとに事情は違うのに、認められた理由の構造がよく似ていることに気づきます。実務家の立場から申し上げると、共通しているのは次の3つです。

第一に、「限定していないこと」ではなく「限定に理由があること」が問われています。 事例②は分野を絞り、事例③は地域を絞り、事例④は留学先という条件を置いています。それでも通っている。ガイドライン第2章第1節第3(3)は「機会が限定される場合には、当該限定を行う合理性及び当該限定があっても利益が不特定かつ多数の者に及ぶことについて合理的説明があるかを確認する」としており、限定そのものは禁じられていません。

第二に、審査は「いまの完成度」だけでなく「将来解消する蓋然性」も見ています。 事例②で内閣府が「将来的に募集要項に明記されることで課題が解消する蓋然性が高い」と書いたのは象徴的です。完璧な書類でなければ門前払い、ではない。ただしこれは、法人側が補足説明で「どう直すか」を語れたからでもあります。

第三に、「誰が決めるか」より「決め方が説明できるか」です。 事例①は選考を大学に委ね、事例④は金額を後決めにしています。どちらも通常なら不透明さを疑われる形ですが、前者は指定校の選定理由と確認体制、後者は実費と月額20万円という算定基準で説明されています。

⚠️ 一方で、ガイドラインが明確に「認めない」と書いている類型があります … ガイドライン第2章第1節第3(4)は、受益者の義務について「当該義務により、営利企業等や法人関係者に、合理的な範囲を超える利益が生じると見込まれる場合には、公益目的事業としては認められない」としたうえで、例として「奨学金の支給者に対し特定企業への就職を義務付けるような場合」「資格付与や表彰に当たり法人関係者に不透明な見返りを求めるような場合」を挙げています。事業会社のオーナーが財団を作るとき、「自社の採用につなげたい」という発想はごく自然に出てきますが、ここは制度の設計上、はっきり線が引かれています

奨学金事業の6つのチェックポイント

事例集は参考資料として、ガイドライン第2章第2節第2(15)の奨学金に関するチェックポイントを引用しています。財団の設立を検討される方は、募集要項を書く前にこの6項目に答えられるかを確認しておくと、後戻りが減ります。全項目を掲げます。

#ガイドラインが示す判定の観点
当該奨学金が、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを主たる目的として位置付けられており、適正な方法で明らかにされているか
応募の機会が、一般に開かれているか
奨学金の選考が公正に行われることになっているか(例:個別選考に当たって直接の利害関係者の排除)
奨学金給付対象者に当該奨学金事業の趣旨・目的に照らして、合理性のない義務(例:特定企業への就労など)を課していないか。また義務が有る場合その内容は応募者や奨学金給付対象者に明らかにされているか
奨学金の財源は、給付を約束した内容相応に確保されているか
応募者及び奨学金給付対象者の経済状況・成績等の個人情報を取得する場合にその扱いは適切であり、その取得方法や仕組みが公表されているか

(出典:公益認定等ガイドライン第2章第2節第2(15)。内閣府「公益認定等に関する事例集(暫定版)」に引用されているもの)

5. 実務で押さえるべきこと——財産を出す側にかかる税金

ここからが、私たち税理士の領域です。公益認定が下りるかどうかは入口の話で、財産を財団に移す瞬間に税金が動きます。ここを設計せずに認定だけ取りにいくと、想定外の課税が出ます。

(1) 現物を寄附すると「売ってもいないのに」譲渡所得が出る

個人が土地・建物・株式などを法人に寄附すると、所得税法第59条第1項第1号により、その時の時価で譲渡があったものとみなされます。含み益がそこで精算されるわけです。自社株や不動産を財団に出すつもりの方にとって、これが最初の関門になります。

これを止めるのが租税特別措置法第40条(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)です。同条は、国・地方公共団体への贈与・遺贈は所得税法第59条第1項第1号の適用上「なかったものとみなす」とし、公益法人等への贈与・遺贈についても、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること等の要件を満たして国税庁長官の承認を受けた場合に非課税とする仕組みです。同条は、当該公益法人等を設立するためにする財産の提供も含むと明記しています。

なお、承認には「贈与又は遺贈があった日から2年を経過する日までの期間内に公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みであること」といった継続要件があり、後で崩れると承認が取り消される構造になっています。ここは既存記事「公益法人への現物寄附と措置法40条の非課税承認」で詳しく整理しています。

(2) 寄附した側の所得控除・税額控除

金銭を寄附する場合は、所得税法第78条の寄附金控除(所得控除)に加えて、租税特別措置法第41条の18の3(公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除)による税額控除を選べます。同条の仕組みは次のとおりです。

項目内容
控除額その年中に支出した税額控除対象寄附金の額の合計額から2,000円を控除した残額の100分の40に相当する金額(100円未満の端数は切捨て)
控除の上限その年分の所得税の額の100分の25に相当する金額(100円未満の端数は切捨て)
対象寄附金の上限その年中に支出した特定寄附金等の金額が、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の合計額の100分の40に相当する金額を超える場合には、その100分の40相当額から所得控除対象寄附金の額を控除した残額まで
所得控除との関係所得税法第78条第1項の適用を受けるものは、税額控除の対象から除かれる(どちらかを選ぶ

(出典:租税特別措置法第41条の18の3第1項、所得税法第78条)

法人から寄附する場合は、法人税法第37条第4項が、特定公益増進法人等に対する寄附金について一般の寄附金とは別枠の損金算入限度額を認めています。ここで注意したいのは、同項が「公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く)」と書いていることです。一般社団・一般財団のままでは、この別枠は使えません。

(3) 相続が絡む場合

相続又は遺贈により財産を取得した者が、その財産を相続税の申告書の提出期限までに公益社団法人・公益財団法人等に贈与した場合、租税特別措置法第70条第1項により、その財産の価額は相続税の課税価格の計算の基礎に算入されません。ただし同条第2項は、贈与があった日から2年を経過した日までにその法人が政令で定める法人に該当しないこととなった場合、または取得した財産を同日までに公益を目的とする事業の用に供しない場合・供しなくなった場合には、課税価格に算入し直すと定めています。

(4) 財団側の法人税

公益社団法人・公益財団法人は、収益事業から生じた所得にのみ法人税が課されます。そのうえで法人税法第37条第6項が、いわゆるみなし寄附金を定めています。公益社団法人・公益財団法人が、その収益事業に属する資産のうちから、その収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなされます。ただし同項ただし書は「事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない」としています。

💡 条番号にご注意ください … みなし寄附金の規定は、かつて法人税法第37条第5項でした。公益信託に関する法律(令和6年法律第30号)の制定に伴って第5項に公益信託への寄附の規定が入り、みなし寄附金は第6項に繰り下がっています。古い解説書やウェブ記事は第5項のままのものが多く残っていますので、条文を引用される際は現行条文でご確認ください。

(5) 一般社団法人との使い分け

「持分がないから相続財産にならない」という理由で一般社団法人が使われた時期がありましたが、相続税法第66条の2(特定一般社団法人等に対する課税)が入り、同族理事の割合等の要件に該当する場合には、理事の死亡時に純資産額を基礎とした額が遺贈により取得したものとみなされます。この点は既存記事「一般社団法人で相続対策?相続税法66条の2で課税」で整理しています。

❌ よくある進め方(後で行き詰まりやすい)
  • 先に一般財団法人を登記し、資産を移してから「公益認定も取れるだろう」と考える
  • 募集要項を作らないまま認定申請の相談に行き、受益の機会・選考の公正性を説明できない
  • 自社の採用や取引先の子弟支援を主目的に設計してしまう(ガイドライン第2章第1節第3(4)に抵触します)
  • 「収支相償」「遊休財産」という令和7年4月より前の用語のまま理事会資料を作る
  • 現物寄附を実行してから措置法第40条の承認申請を考える
⭕ 順序を組み替えた進め方
  • 別表のどの号に当たる事業をやるのかを決め、募集要項の骨子(応募資格・選考方法・金額・義務)まで先に書く
  • ガイドライン第2章第2節第2(15)の6項目に、書面で答えられる状態を作る
  • 出す財産を「金銭か、不動産か、自社株か」で切り分け、措置法第40条の承認が要るものを特定する
  • 公益目的事業比率50%以上(第15条)と使途不特定財産額の制限(第16条)が回る収支計画を、認定申請の前に作る
  • 一般社団・一般財団のまま置くのか、公益認定まで進むのかを、税務上の効果(法人税法第37条第4項の別枠、措置法第41条の18の3、措置法第70条)と運営コストの両面で比較する

6. まとめ

  • 2026年8月7日、内閣府が「公益認定等に関する事例集(暫定版)」を初めて公開しました。収録は奨学金の4事例で、いずれも認定が認められた事例です。表紙は令和8年8月付で、内閣府は「随時更新していく予定」としています
  • 4事例に共通するのは、受益の機会を限定していないことではなく、限定に合理的な説明があるかが問われている点です。分野を絞った事例②、地域を絞った事例③、金額を後決めにした事例④は、いずれも理由を説明できたことで認められています
  • 一方でガイドラインは、奨学金の受給者に特定企業への就職を義務付けるような設計は公益目的事業として認められないと明示しています。事業会社のオーナーが財団を検討するときに、最も引っかかりやすい点です
  • 令和7年4月1日施行の改正で、「収支相償」は「収支の均衡」(第14条)、「遊休財産額」は「使途不特定財産額」(第16条)に変わっています。古い用語のまま設計すると、行政庁とのやり取りの初手でずれます
  • 税務は認定の後ではなくに設計してください。現物寄附には所得税法第59条第1項第1号のみなし譲渡が働き、これを止めるには租税特別措置法第40条の国税庁長官の承認が要ります。相続財産の寄附は措置法第70条、法人からの寄附は法人税法第37条第4項、財団側のみなし寄附金は同条第6項(第5項ではありません)です

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、財団を作るかどうかの手前にある「何を、どの器に、いつ移すか」の設計からご一緒しています。認定の要件と税務の要件は別々の物差しですので、どちらか一方だけを見て動くと後戻りが大きくなります。

よくある質問(FAQ)

公益認定等に関する事例集は、どこで読めますか?

内閣府が運営する公益法人Informationの「公益法人・移行法人の運営に関する資料・留意事項」のページで、PDFとして公開されています(本記事末尾の出典欄にURLを掲載しています)。2026年8月7日に新規公開され、表紙の日付は令和8年8月です。

事例集に載っている当てはめのとおりにすれば、認定は下りますか?

下りるとは限りません。内閣府は事例集の冒頭で「基準を示しているものではなく、具体的な判断については、事例集で記載している事項も含めた個別の事情に基づいて最終的に行っております」と明記しています。参考にはなりますが、基準そのものではありません。

なぜ奨学金の事例だけなのですか?

内閣府は理由を書いていません。事例集は「公益認定等委員会の審議した事例のうち公益認定に際して慎重な検討を要した事例など公益目的事業該当性の境界を判断する上で参考となる事例を事務局の責任で紹介するもの」とされており、「随時更新していく予定」と明記されていますので、今後ほかの分野の事例が追加される可能性があります。

認定が下りなかった事例は載っていますか?

初回の4事例は、いずれも公益認定または変更認定が認められた事例です。認められなかった事例は収録されていません。

一般財団法人のままでも、寄附した人は税額控除を受けられますか?

受けられません。租税特別措置法第41条の18の3の税額控除は公益社団法人等が対象で、法人からの寄附についても法人税法第37条第4項は「別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く」と明記しています。税務上の効果を得るには公益認定まで進む必要があります。

自社株を財団に寄附したいのですが、税金はかかりますか?

そのままでは、所得税法第59条第1項第1号により時価で譲渡があったものとみなされ、含み益に対して譲渡所得課税が生じます。租税特別措置法第40条の国税庁長官の承認を受けられれば非課税となりますが、公益目的事業の用に直接供されること等の要件があり、後で崩れると承認が取り消される仕組みです。自社株の場合は議決権の扱いなど固有の論点もありますので、寄附を実行する前にご相談ください。

財団の事業がうまく回らなくなったら、他の財団に引き継げますか?

事例③がまさにそのケースです。内閣府は、既に公益性が認められている出捐元の公益法人の目的を尊重する観点から、承継先が受益資格を特定地域に限定することにも合理性があると判断しています。また解説では、公益法人同士の吸収合併で消滅法人の事業を全部譲渡で申請書記載事項に変更なく引き受ける場合には変更届出事項となる、と整理されています。

「収支相償」がなくなったので、剰余金を出してもよくなったのですか?

用語が「収支の均衡」に変わり、公益法人認定法第14条は「内閣府令で定める期間において、その収支の均衡が図られるようにしなければならない」と定めています。単年度ではなく一定の期間で見る建て付けであり、将来の事業充実のために内閣府令で定める方法により積み立てる資金も費用に含めて判定します。制限がなくなったわけではありませんので、具体的な運用は内閣府令と現行のガイドラインでご確認ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、内閣府の公表資料および法令に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に関する公益認定の可否や税務上の取扱いを保証するものではありません。本記事が扱う「公益認定等に関する事例集」は内閣府自身が「暫定版」と明記し「随時更新していく予定」としているもので、内容は今後変更される可能性があります。 また内閣府は同事例集について「基準を示しているものではなく、具体的な判断については、事例集で記載している事項も含めた個別の事情に基づいて最終的に行っております」と注記しています。本記事は2026年8月23日時点の公表内容に基づくものであり、その後の更新・制度改正により記載内容が現行と異なる場合があります。 公益認定の申請・現物寄附の実行にあたっては、最新の法令・ガイドライン・内閣府令をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月23日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から、公益法人・一般社団法人を使った資産の設計、国際税務・資産防衛まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。