公庫の創業融資が大きく変わった|「新規開業・スタートアップ支援資金」を税理士が解説
- 1. 何が変わったのか(3行サマリー)
- 2. 前提:何が「廃止」され、何に「統合」されたのか
- 3. 最大のポイント:自己資金要件の「実質撤廃」をどう読むか
- 4. 実務で押さえるべきこと:通る創業計画の作り方
- 5. これから創業融資を考える人へ
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が変わったのか(3行サマリー)
- 創業融資の代表格だった「新創業融資制度」は廃止され、「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合された
- 融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大。据置期間も最長5年と長く、創業直後の資金繰りに余裕を持たせやすくなった
- 旧制度で必須だった「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」要件が実質的に撤廃。ただし審査で自己資金が重視される点は変わらない
2. 前提:何が「廃止」され、何に「統合」されたのか
これまで創業融資の入口として広く使われてきたのが、無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」でした。これが制度として廃止され、創業者向けの融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」(従来の新規開業資金を拡充したもの)に集約されました。
新制度の基本的な内容は次のとおりです。
| 項目 | 新規開業・スタートアップ支援資金 |
|---|---|
| 対象者 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要となる設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金は4,800万円) |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置期間5年以内) |
| 返済期間(運転資金) | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 原則として相談のうえ決定(経営者保証を不要とする取扱いの選択も可能) |
3. 最大のポイント:自己資金要件の「実質撤廃」をどう読むか
今回の改正で最も注目されたのが、自己資金要件の実質的な撤廃です。
旧・新創業融資制度では、原則として「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」を用意していることが利用の前提でした。たとえば1,000万円で創業するなら、最低100万円は自分で用意していなければ土俵に上がれなかったのです。新制度では、この要件としての自己資金のハードルが外れました。
ただし、ここは誤解されやすいところです。
4. 実務で押さえるべきこと:通る創業計画の作り方
創業融資は、過去の決算がない以上、事業計画書(創業計画書)と面談がほぼすべてです。限度額が上がり、要件が緩んだ今だからこそ、計画の質で差がつきます。
- 「要件が撤廃された」と聞いて、自己資金をまったく用意せずに申し込む
- 借りられる上限(7,200万円)に引っ張られ、返済できない過大な借入を希望してしまう
- 売上計画が願望ベースで、根拠(単価・客数・季節変動)を説明できない
- 創業前の支出を生活費と事業費でごちゃ混ぜにし、通帳から準備状況が読み取れない
- 自己資金はできる範囲でしっかり貯め、通帳で「計画的に準備してきた」ことが見えるようにする
- 借入額は返済可能性から逆算し、据置期間(最長5年)も使って無理のない返済計画にする
- 売上計画は単価×客数×稼働など根拠を添えて、保守的に見積もる
- 認定経営革新等支援機関(税理士など)の支援を受けて計画を磨き込む。金利や手続きで優遇される制度もある
- 自己資金・借入・補助金を組み合わせ、創業時のキャッシュ全体で資金繰りを設計する
金利については、時期により変動する所定の基準利率が適用され、創業期の方には利率の引下げ措置が設けられています。最新の利率は公庫の公表値で確認したうえで、返済計画に織り込んでください。
弊社グループのユウシサポにも、「自己資金がなくても創業融資は通りますか」というご相談は実際に多く寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、要件が外れたことよりも、自己資金の見せ方と事業計画の根拠で結果が分かれる場面が目立ちます。私たちが関与する場面では、通帳の整え方から売上計画の根拠づくり、据置期間を活かした返済設計まで、認定支援機関として一緒に組み立て、申込みのタイミングまでご案内しています。
5. これから創業融資を考える人へ
- 新創業融資制度は廃止。創業融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」に一本化された
- 融資限度額は7,200万円(うち運転4,800万円)、据置期間は最長5年と、資金繰りに余裕を持たせやすい
- 自己資金要件は実質撤廃。ただし審査では引き続き重視され、「用意できる人ほど有利」
- 創業融資は事業計画書と面談がすべて。根拠ある計画と、計画的に貯めた自己資金が鍵
- 認定支援機関の支援や据置期間の活用など、使える制度は組み合わせて設計する
6. まとめ
公庫の創業融資は、「新創業融資制度の廃止」と「新規開業・スタートアップ支援資金への一本化」によって、限度額の拡大・自己資金要件の実質撤廃・長い据置期間という、創業者にとって使いやすい形に変わりました。一方で、自己資金や事業計画の重要性は何も変わっていません。むしろ、要件が緩んだ今こそ計画の質と準備の見せ方で差がつく時代です。
税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、グループのユウシサポと一体で、創業計画書づくりから金融機関との折衝、創業後の資金繰り・税務まで、認定経営革新等支援機関として伴走しています。これから創業する方、創業して間もない方は、動く前に一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
新創業融資制度はもう使えないのですか?
自己資金がなくても借りられますか?
いくらまで借りられますか?
据置期間とは何ですか?
出典・参考資料
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」| https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
- 日本政策金融公庫「創業融資のご案内」| https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyoyushi.html
- 日本政策金融公庫「金利情報(小規模事業者/個人事業主の方・国民生活事業)」| https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
本記事は、日本政策金融公庫の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の融資の可否・条件を保証するものではありません。融資限度額・返済期間・金利・取扱いは今後変更される場合があります。実際の申込みにあたっては、最新の公表内容をご確認のうえ、認定経営革新等支援機関や税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月7日
