国外証券移管等調書とは?海外への証券移管は金額を問わず税務署に伝わる仕組みを税理士が解説【2026年版】
- 1. 結論(3行サマリー)
- 2. 国外証券移管等調書とは(証券会社が税務署へ出す書類)
- 3. 移管する人も「告知書」を出す義務がある
- 4. 海外資産を捕捉する「四つの網」
- 5. 専門家の視点:「移管=課税」ではない、本当の論点
- 6. 実務で押さえるべきこと
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 結論(3行サマリー)
- 国外証券移管等調書は、証券会社等が、顧客の依頼で行った国外への有価証券の移管・国外からの受入れについて、顧客の氏名・住所・マイナンバー、移管した有価証券の種類・銘柄などを記載して税務署へ提出する法定調書
- 国外送金等調書と違い金額の基準はなく、該当する移管・受入れがあれば全件が対象。提出時期は移管等をした日の属する月の翌月末日。顧客の側も証券会社等に告知書を提出する義務がある
- 移管それ自体に課税されるわけではないが、海外口座で生じた配当・売却益の申告漏れ、国外財産調書の未提出、出国税(国外転出時課税)の見落としなどの端緒になる
2. 国外証券移管等調書とは(証券会社が税務署へ出す書類)
国外証券移管等調書は、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(いわゆる国外送金等調書法)第4条の3に基づく法定調書です。国境をまたぐ有価証券の移動を把握し、適正な課税を確保する目的で、平成26年度税制改正で創設され、平成27年(2015年)1月1日以後に行われる国外証券移管等に適用されています。
仕組みを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出する人 | 金融商品取引業者等(証券会社等) |
| 対象となる取引 | 顧客の依頼による国外証券移管(国内口座→国外口座)・国外証券受入れ(国外口座→国内口座) |
| 金額の基準 | なし(該当する移管・受入れがあれば金額にかかわらず全件が対象) |
| 記載事項 | 顧客の氏名・住所・マイナンバー(法人番号)、移管した有価証券の種類・銘柄・数量など |
| 提出時期 | 国外証券移管等をした日の属する月の翌月末日 |
| 提出先 | 証券会社等の営業所等の所在地を所轄する税務署長 |
(出典:国税庁「F4-2 国外証券移管等調書(同合計表)」、「国外証券移管等調書制度のあらまし」、国外送金等調書法第4条の3)
ここで最も重要なのが、金額の基準がないという点です。海外送金を把握する国外送金等調書は「1回100万円を超える」ものだけが対象ですが、国外証券移管等調書にはそうした足切りがありません。少額の株式であっても、海外の証券口座へ移管すれば、その事実は証券会社等を通じて税務署に届きます。
もう一つのポイントは、提出するのは証券会社等であって、あなた自身ではないことです。しかし、次に述べるとおり、移管を依頼する顧客の側にも「告知書」を出す義務があります。
3. 移管する人も「告知書」を出す義務がある
国外証券移管等をしようとする人(顧客)は、その移管等をする前に、証券会社等に対して告知書を提出しなければなりません。告知書には、氏名または名称、住所、マイナンバー(個人番号)または法人番号などを記載します。居住者・非居住者、個人・法人を問わず提出が必要です。
つまり、海外への証券移管は次の二段構えで記録されます。
| 誰が | 何を | いつ |
|---|---|---|
| 顧客(移管を依頼する人) | 告知書(氏名・住所・マイナンバー等) | 移管等をする前 |
| 証券会社等 | 国外証券移管等調書(顧客情報+移管した有価証券の内容) | 移管等をした月の翌月末日まで |
顧客が告知書を出し、その内容をもとに証券会社等が調書を作って税務署へ提出する——この流れがあるため、依頼者が海外への証券移管を国に申告しないでおく、ということは事実上できません。
4. 海外資産を捕捉する「四つの網」
国外証券移管等調書は、単独で機能しているわけではありません。海外の資産・お金の流れを把握する仕組みは、複数の制度が役割を分担して網の目を作っています。全体像を整理します。
| 制度 | 主に捕捉するもの | 提出する人 | 金額基準 |
|---|---|---|---|
| 国外送金等調書 | 海外への送金・受金(お金の“流れ”) | 金融機関 | 1回100万円超 |
| 国外証券移管等調書 | 海外への有価証券の移管(証券の“移動”) | 証券会社等 | なし(全件) |
| 国外財産調書 | 12月31日時点で5,000万円超の国外財産(資産の“残高”) | 本人(申告) | 5,000万円超 |
| CRS(共通報告基準) | 海外の銀行口座・証券口座の残高等(当局間の自動交換) | 外国の金融機関→外国当局→日本 | ― |
送金(フロー)、証券の移動、資産の残高(ストック)、そして海外口座情報の自動交換——これらを突き合わせることで、当局は「海外へいくら送り、どんな有価証券を移し、いくら資産を持ち、そこからどんな所得が生じているか」を立体的に把握できます。海外の口座残高情報を各国当局間で自動的に交換するCRS(共通報告基準)と組み合わせれば、「海外の証券口座に移せば見えない」という発想はもはや成り立ちません。5,000万円を超える国外財産を持つ方の申告義務については国外財産調書とは?で、海外資産全体の守り方は富裕層の資産防衛 完全ガイドで解説しています。
5. 専門家の視点:「移管=課税」ではない、本当の論点
実務家の立場から申し上げると、ここで最も誤解されやすいのが「海外に証券を移しただけで税金がかかる」という思い込みです。国外証券移管等調書は、あくまで有価証券の移動を把握するための情報であり、移管それ自体に課税する制度ではありません。本当の論点は、その移管の前後にある課税関係です。
具体的には、次のような点が申告漏れやお尋ね・税務調査の端緒になります。
- 海外口座で生じる所得の申告漏れ:日本の居住者は全世界所得課税です。海外の証券口座で受け取る配当や、売却して得た譲渡益は、原則として日本で申告が必要です
- 国外財産調書の未提出:海外へ移した有価証券を含め、12月31日時点で国外財産が5,000万円を超えれば、国外財産調書の提出義務があります
- 国外転出時課税(出国税)の見落とし:時価1億円以上の有価証券等を持つ人が海外移住(国外転出)をする際は、含み益に課税される出国税の対象になり得ます。海外移住にあわせた証券移管は、この論点と直結します
逆に言えば、移管の目的が明確で、海外口座で生じる所得や国外財産を正しく申告していれば、国外証券移管等調書を恐れる必要はありません。海外移住を検討している方は、国外転出時課税(出国税)まで含めて、移管・資産・所得を一体で確認しておくと安心です。
守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としてお伝えすると、「海外移住にあわせて保有株を現地の証券口座に移したが、日本の申告はどうなるのか」「海外の証券口座で受け取った配当を申告していなかった」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、ここで差がつくのは、証券を移した後に生じる海外口座の所得と、国外財産・出国税の論点を、移す前に一体で確認してあるかです。私たちが関与する場面では、まず移管の目的(運用・移住・資産の組み替えなど)を整理し、海外口座で生じる所得の申告・国外財産調書・出国税の要否を確認したうえで、必要な申告を漏れなく行うことを最優先にしています。移してから慌てるより、移す前に設計しておくほうが、はるかに安全で選択肢も多く残ります。
6. 実務で押さえるべきこと
国外証券移管等調書を前提に、有価証券を海外へ移す方が押さえるべき要点を、失敗例と王道で整理します。なお、税務署へ提出する法定調書の書面様式は令和8年(2026年)8月に変更される予定で、証券会社側の実務も更新が進んでいます。
- 「少額の株式の移管なら調書は出ないだろう」と考えている(金額基準はなく全件が対象)
- 海外の証券口座で受け取った配当・売却益を、日本で申告していない(居住者は全世界所得課税)
- 海外へ移した有価証券を含めた国外財産が5,000万円を超えているのに、国外財産調書を出していない
- 時価1億円以上の有価証券を持ったまま海外移住し、出国税(国外転出時課税)を見落とす
- 海外への証券移管は、移管の目的(運用・移住・資産の組み替えなど)を整理し、移した後に生じる海外口座の所得の申告方法まで先に確認しておく
- 海外口座で生じる配当・譲渡益は日本で正しく申告し、5,000万円超の国外財産があれば国外財産調書もあわせて提出する
- 海外移住を伴う移管では、国外転出時課税(出国税)の対象になるかを、移す前・出国前に必ず確認する
- 判断に迷うときは、海外口座の所得計算・国外財産調書・出国税を一体で見られる専門家に、移す前に相談する
7. まとめ
国外証券移管等調書は、証券会社等が、顧客の依頼で行った海外への有価証券の移管・海外からの受入れについて、顧客情報と移管した有価証券の内容を記載して税務署へ提出する法定調書です(国外送金等調書法第4条の3・平成27年1月1日以後の移管に適用)。海外送金を把握する国外送金等調書と違い、金額の基準はなく全件が対象であり、移管を依頼する顧客の側も事前に告知書を出す義務があります。国外送金等調書(お金の流れ)、国外財産調書(残高)、そしてCRS(共通報告基準)と組み合わせて、海外の資産と有価証券の移動は立体的に捕捉されています。
ただし、移管それ自体に課税されるわけではありません。本当の論点は、海外口座で生じる配当・譲渡益の申告、国外財産調書、そして海外移住に伴う国外転出時課税(出国税)です。移管の目的が明確で、関連する申告を正しく行っていれば、国外証券移管等調書を恐れる必要はありません。税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、海外への証券移管の前段の設計から、海外口座の所得計算・国外財産調書・国際相続・海外移住(出国税)まで一体で伴走します。有価証券の海外移管や海外資産に不安のある方は、移す前のお早めの段階でご相談ください。
よくある質問(FAQ)
国外証券移管等調書は、いくらの移管から提出されるのですか?
海外の証券口座に株式を移すと税金がかかるのですか?
自分では何も提出しなくてよいのですか?
海外移住にあわせて保有株を海外の証券口座へ移す場合、何に注意すべきですか?
国外証券移管等調書と国外送金等調書は何が違うのですか?
出典・参考資料
- 国税庁「F4-2 国外証券移管等調書(同合計表)」
- 国税庁「『国外証券移管等調書制度』のあらまし」
- 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(平成9年法律第110号)第4条の3(国外証券移管等調書の提出)|e-Gov法令検索
- 根拠法令:内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律 第4条の3(国外証券移管等調書の提出)、同法施行規則 第11条の4(告知書の提出等)。制度は平成26年度税制改正で創設され、平成27年1月1日以後の国外証券移管等に適用されます。具体的な要件・手続きは最新の法令・通達および国税庁公表資料によります。個別の適用は専門家にご確認ください。
本記事は、国税庁の公表資料・法令に基づく一般的な情報提供であり、特定の税務処理の結果を保証するものではありません。国外証券移管等調書や関連する所得税・国外財産調書・国外転出時課税の取扱いは、移管の目的・当事者の居住者区分・有価証券の種類など個別の事実関係により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月9日
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無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
