国外送金等調書とは?100万円超の海外送金が税務署に伝わる仕組みを税理士が解説【2026年版】

「海外の家族に生活費を送った」「海外の不動産や証券を買うために送金した」——こうした海外送金をしたあと、税務署から「国外送金等に関するお尋ね」という書類が届いて驚かれる方が少なくありません。なぜ、個人の海外送金を税務署が把握しているのか。その答えが、本記事のテーマである国外送金等調書です。 100万円を超える海外への送金・海外からの受金があると、その取引を扱った銀行などの金融機関が、送金者・受領者・金額・目的を記載した調書を作成し、税務署へ提出しています。つまり、海外送金は当局に「筒抜け」の状態です。本記事では、国外送金等調書とは何か・いくらから対象になるのか・そして「送金=課税」ではないのに、なぜお尋ねや調査につながるのかを、国際税務を強みとする税理士が解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 結論(3行サマリー)
  2. 2. 国外送金等調書とは(金融機関が税務署へ出す書類)
  3. 3. 海外資産を捕捉する「三つの調書」とCRS
  4. 4. 「100万円以下に小分けすれば大丈夫」は通用しない
  5. 5. 専門家の視点:「送金=課税」ではない、本当の論点
  6. 6. 実務で押さえるべきこと
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 結論(3行サマリー)

  • 国外送金等調書は、金融機関等が、顧客の100万円を超える国外への送金・国外からの受金について、送金者・受領者・金額・送金目的などを記載して税務署へ提出する法定調書
  • 提出するのは金融機関で、提出時期は為替取引を行った日の翌月末。個人が自分で出すものではないが、税務署は個人の海外送金を把握しているということ
  • 送金それ自体に課税されるわけではないが、贈与税の申告漏れ・海外資産からの所得の申告漏れ・資金源の説明などの端緒になる。「お尋ね」が届いたら適切な対応が必要

2. 国外送金等調書とは(金融機関が税務署へ出す書類)

国外送金等調書は、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(いわゆる国外送金等調書法)に基づく法定調書です。国際的な脱税や租税回避を防ぎ、適正な課税を確保する目的で、金融機関に提出が義務づけられています。

仕組みを整理すると、次のとおりです。

項目内容
提出する人金融機関等(銀行・信用金庫のほか、資金移動業者等を含む)
対象となる取引国内から国外への送金、国外から国内への受金(為替取引)
金額の基準1回100万円を超えるもの(100万円以下は提出免除)
記載事項送金者・受領者の氏名・住所・マイナンバー、金額、送金原因(目的)など
提出時期為替取引を行った日の翌月末
提出先金融機関の納税地等を所轄する税務署長

(出典:国税庁「F4-1 国外送金等調書(同合計表)」、国外送金等調書法)

ポイントは、調書を出すのは金融機関であり、個人が自分で提出する書類ではないことです。しかし、金融機関を通じて海外送金をすれば、その情報は自動的に税務署へ届きます。「自分は何も出していないから大丈夫」という感覚は通用しません。

なお、提出基準額は当初200万円超でしたが、平成21年(2009年)4月から100万円超に引き下げられており、海外送金への当局の目は年々細かくなっています。

💡 調書を出すのは銀行、でも見られているのはあなた … 国外送金等調書は金融機関が提出する書類ですが、記載されるのは送金した個人・法人の情報です。100万円を超える海外送金は、送金した時点で税務署に把握されると考えておくのが実務上の前提です。

3. 海外資産を捕捉する「三つの調書」とCRS

国外送金等調書は、単独で機能しているわけではありません。海外の資産・お金の流れを把握する仕組みは、複数の制度が役割を分担して網の目を作っています。全体像を整理します。

制度主に捕捉するもの提出する人
国外送金等調書100万円超の海外送金・受金(お金の“流れ”)金融機関
国外財産調書12月31日時点で5,000万円超の国外財産(資産の“残高”)本人(申告)
国外証券移管等調書国外への有価証券の移管(証券の“移動”)証券会社等
CRS(共通報告基準海外の銀行口座・証券口座の残高等(当局間の自動交換)外国の金融機関→外国当局→日本

送金(フロー)、残高(ストック)、証券の移動、そして海外口座情報の自動交換——これらを突き合わせることで、当局は「海外へいくら送り、いくら資産を持ち、そこからどんな所得が生じているか」を立体的に把握できます。海外の口座残高情報を各国当局間で自動的に交換するCRS(共通報告基準)と組み合わせれば、「海外に置けば見えない」という発想はもはや成り立ちません。5,000万円を超える国外財産を持つ方の申告義務については国外財産調書とは?で、海外資産全体の守り方は富裕層の資産防衛 完全ガイドで解説しています。

4. 「100万円以下に小分けすれば大丈夫」は通用しない

「1回の送金を100万円以下にすれば調書は出ないのでは」という質問をいただくことがあります。確かに、1回100万円以下の送金は国外送金等調書の提出対象からは外れます。しかし、これを狙って意図的に小分け送金を繰り返すことは、実務上おすすめできません

理由は、金融機関には別途、犯罪収益移転防止法に基づく「疑わしい取引の届出」の義務があるためです。短期間に不自然な分割送金を繰り返すといった取引は、金額が基準以下であっても「疑わしい取引」として当局へ届け出られる可能性があります。また、送金の累積や過去の資料情報から、税務署が海外資産・海外送金の存在を把握し、「国外送金等に関するお尋ね」を送付してくることもあります。

小手先の回避策はかえって不自然な資金の動きとして目立ち、疑いを招きます。正しく申告し、送金の目的と原資を説明できる状態にしておくことが、結局は最も安全です。

5. 専門家の視点:「送金=課税」ではない、本当の論点

実務家の立場から申し上げると、ここで最も誤解されやすいのが「海外に送金しただけで税金がかかる」という思い込みです。国外送金等調書は、あくまでお金の流れを把握するための情報であり、送金それ自体に課税する制度ではありません。本当の論点は、その送金の背後にある課税関係です。

具体的には、次のような点が「お尋ね」や税務調査の端緒になります。

  • 贈与税:海外に住む家族へ生活費を超える多額の送金をした場合、贈与とみなされ贈与税の対象になることがある
  • 所得の申告漏れ:海外の口座・不動産・証券から生じた利子・配当・賃料・売却益を、日本の居住者として申告していない(居住者は全世界所得課税)
  • 資金源の説明:多額の送金の原資が、申告されていない所得や相続財産ではないか

逆に言えば、送金の目的が明確で、関連する所得や贈与を正しく申告していれば、国外送金等調書やお尋ねを恐れる必要はありません。海外移住を検討している方は、1億円以上の有価証券等に含み益課税が及ぶ国外転出時課税(出国税)まで含めて、送金・資産・所得を一体で確認しておくと安心です。

💬 実務の現場から
守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としてお伝えすると、「海外の家族に送金したら税務署からお尋ねが届いた」「海外不動産を買うために送金したが、何を答えればよいか分からない」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、ここで差がつくのは、送金の目的と原資を、資料で説明できる状態にしてあるかです。私たちが関与する場面では、まず送金の性質(生活費・投資・贈与・自己資金の移動など)を整理し、贈与税や海外資産からの所得の申告が必要かを確認したうえで、お尋ねには事実に基づいて正確に回答することを最優先にしています。慌てて曖昧な回答をすると、かえって調査につながることがあります。

6. 実務で押さえるべきこと

国外送金等調書を前提に、海外送金を行う方が押さえるべき要点を、失敗例と王道で整理します。なお、税務署へ提出する法定調書の書面様式は令和8年(2026年)8月に変更される予定で、金融機関側の実務も更新が進んでいます。

❌ つまずきがちな失敗
  • 「海外送金は自分で何も出さないから、税務署にはわからない」と考えている(金融機関が調書を提出している)
  • 100万円以下に小分けして送金を繰り返し、かえって不自然な資金移動として目立つ
  • 海外の家族への多額の送金を「贈与ではない」と自己判断し、贈与税の申告をしていない
  • 海外の口座・不動産・証券から生じた所得を、日本で申告していない(居住者は全世界所得課税)
⭕ これから取るべき王道
  • 海外送金は目的(生活費・投資・贈与・自己資金の移動など)と原資を、資料で説明できる状態にしておく
  • 家族への送金が贈与に当たらないか、当たる場合は贈与税の申告・基礎控除(年110万円)の範囲を確認する
  • 海外資産から生じる所得は日本で正しく申告し、5,000万円超なら国外財産調書もあわせて提出する
  • 税務署から「お尋ね」が届いたら、放置や曖昧な回答をせず、事実に基づいて正確に回答する(必要に応じて専門家に相談)

7. まとめ

国外送金等調書は、金融機関等が、100万円を超える海外への送金・海外からの受金について、送金者・受領者・金額・目的を記載して税務署へ提出する法定調書です(国外送金等調書法)。提出するのは金融機関ですが、記載されるのは送金した本人の情報であり、100万円超の海外送金は税務署に把握されるというのが実務上の前提です。国外財産調書(5,000万円超の残高)、国外証券移管等調書、そしてCRS(共通報告基準)と組み合わせて、海外の資産とお金の流れは立体的に捕捉されています。

ただし、送金それ自体に課税されるわけではありません。本当の論点は、その送金の背後にある贈与税や、海外資産から生じた所得の申告です。送金の目的と原資を説明でき、関連する申告を正しく行っていれば、国外送金等調書もお尋ねも恐れる必要はありません。税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、海外送金のお尋ね対応から、海外資産の所得計算・国外財産調書・国際相続・海外移住(出国税)まで一体で伴走します。海外送金や海外資産に不安のある方は、お早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

国外送金等調書は、いくらの送金から提出されるのですか?

1回100万円を超える国外への送金・国外からの受金が対象です。100万円以下の送金は提出が免除されています。この基準額は平成21年(2009年)4月に、それまでの200万円超から100万円超へ引き下げられました。提出するのは取引を扱った金融機関で、提出時期は為替取引を行った日の翌月末です。

海外に送金すると税金がかかるのですか?

送金それ自体に課税されるわけではありません。国外送金等調書は、お金の流れを把握するための情報です。ただし、家族への多額の送金が贈与と判断されれば贈与税の対象になり、海外資産から生じた所得を申告していなければ申告漏れとして問題になります。課税されるのは「送金」ではなく、その背後にある贈与や所得です。

100万円以下に分けて送金すれば、税務署にはわからないのですか?

1回100万円以下なら国外送金等調書の提出対象からは外れますが、意図的な小分け送金はおすすめできません。金融機関は犯罪収益移転防止法に基づき「疑わしい取引の届出」を行う義務があり、不自然な分割送金は届出の対象となる可能性があります。かえって目立つ結果になりかねません。

税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届きました。どうすればよいですか?

お尋ねは、送金の目的や原資、関連する申告の有無を確認するために送られます。放置したり曖昧に答えたりせず、送金の性質(生活費・投資・贈与・自己資金の移動など)を整理し、事実に基づいて正確に回答することが大切です。贈与税や海外資産からの所得の申告が必要な場合もあるため、判断に迷うときは専門家にご相談ください。

国外送金等調書と国外財産調書は何が違うのですか?

国外送金等調書は、金融機関が提出する「お金の流れ(100万円超の海外送金・受金)」に関する調書です。一方、国外財産調書は、居住者本人が、12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を持つ場合に提出する「資産の残高」に関する申告です。前者は金融機関、後者は本人が提出するという違いがあります。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁の公表資料・法令に基づく一般的な情報提供であり、特定の税務処理の結果を保証するものではありません。国外送金等調書や関連する贈与税・所得税の取扱いは、送金の目的・当事者の居住者区分・資金の性質など個別の事実関係により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月6日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継、国際税務まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。