恒久的施設(PE)とは?支店PE・建設PE・代理人PEの判定と「PEなければ課税なし」を税理士が解説【2026年版】
- 1. 恒久的施設(PE)とは(3行サマリー)
- 2. なぜPEの有無で課税が変わるのか
- 3. PEの3類型——国内法の定義
- 4. 支店PE——「その他事業を行う一定の場所」の広さ
- 5. 建設PE——1年を超えるかどうか、そして契約分割の防止
- 6. 代理人PE——契約を「締結する人」だけではない
- 7. 準備的・補助的活動の除外と、その限界
- 8. 租税条約が国内法に優先する
- 9. よくある失敗と王道
- 10. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 恒久的施設(PE)とは(3行サマリー)
- 恒久的施設(Permanent Establishment、略してPE)とは、非居住者や外国法人が国内で事業を行う一定の拠点をいい、支店PE・建設PE・代理人PEの3種類に区分されます(国税庁タックスアンサーNo.2883「恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」)。
- 非居住者および外国法人(以下「非居住者等」)に対する課税では、国内源泉所得のみが課税対象とされますが、同じ国内源泉所得であっても、PEの有無と、その国内源泉所得がPEに帰せられる所得か否かによって、課税関係が異なってきます。
- 根拠条文は、法人については法人税法第2条第12号の19、法人税法施行令第4条の4、個人については所得税法第2条第1項第8号の4、所得税法施行令第1条の2です。加えて、わが国が締結した租税条約に国内法と異なる定めがある場合は、その租税条約上の恒久的施設が国内法上の恒久的施設となります。
2. なぜPEの有無で課税が変わるのか
課税範囲と課税方式が変わる
わが国の所得税法では、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に、法人を「内国法人」と「外国法人」とに分けたうえで、非居住者等に対する課税の範囲を国内源泉所得に限ることとしています。
そのうえで、非居住者等の課税関係を確定するには、次の3つを順番に確認する必要があります。
- その非居住者等の収入が、どの種類の国内源泉所得に該当するか
- 国内に恒久的施設を有するかどうか
- その国内源泉所得が恒久的施設に帰せられる所得かどうか
(出典:国税庁タックスアンサーNo.2873「非居住者等に対する課税のしくみ」。根拠法令=所得税法第2条、第5条、第7条、第161条、第164条、第169条、第178条)
使用料等を例にした課税方式の違い
所得税法では、納付すべき税額の課税方式として申告納税方式と源泉徴収方式が採用されています。国税庁は、使用料等の対価を例に、次のように説明しています。
| PEの有無 | その所得がPEに帰せられるか | 課税方式 |
|---|---|---|
| 恒久的施設を有する | 帰せられる(PE帰属所得) | 原則として源泉徴収のうえ、申告納税方式(総合課税) |
| 恒久的施設を有する | 帰せられない | 原則として源泉分離課税(源泉徴収のみで課税関係が完結) |
| 恒久的施設を有しない | ― | 源泉分離課税(源泉徴収のみで課税関係が完結) |
(出典:No.2873、No.2883)
そもそも国内源泉所得とは
PEの議論の前提として、非居住者等が日本で課税される「国内源泉所得」には次のようなものがあります。
| 番号 | 国内源泉所得の内容 |
|---|---|
| (1) | 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用または保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得 |
| (2) | 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの |
| (3) | 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物および建物の附属設備または構築物の譲渡による対価 |
| (4) | 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価 |
| (5) | 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価 |
| (6) | 日本の国債、地方債、内国法人の発行した債券の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等 |
| (7) | 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等 |
| (8) | 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの |
| (9) | 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料またはその譲渡の対価、著作権の使用料またはその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの |
| (10) | 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金等、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの |
| (11) | 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品 |
| (12) | 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等 |
| (13) | 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等 |
| (14) | 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配 |
| (15) | その他の国内源泉所得(国内において行う業務または国内にある資産に関し受ける保険金、補償金または損害賠償金に係る所得など) |
(出典:国税庁タックスアンサーNo.2878「国内源泉所得の範囲」。上記(1)(15)以外は源泉徴収の対象となります)
3. PEの3類型——国内法の定義
国税庁は、恒久的施設を次の3つの種類に区分しています。ただし、わが国が締結した租税条約において国内法上の恒久的施設と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上の恒久的施設を国内法上の恒久的施設とします(No.2883)。
| 類型 | 通称 | 国内法上の定義 |
|---|---|---|
| (1) | 支店PE(事業を行う一定の場所) | 非居住者等の国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所 |
| (2) | 建設PE(長期建設工事現場等) | 非居住者等の国内にある建設、据付けの工事またはこれらの指揮監督の役務の提供(建設工事等)で1年を超えて行う場所(1年を超えて行われる建設工事等を含む) |
| (3) | 代理人PE(契約締結代理人等) | 非居住者等が国内に置く代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者等の一定の者 |
(出典:No.2883。根拠法令=所得税法第2条第1項第8号の4、第5条、第161条、第164条、所得税法施行令第1条の2、所得税法施行規則第1条の2、所得税基本通達161−1、164−1、法人税法第2条第12号の19、第4条、第138条、第141条、法人税法施行令第4条の4、法人税法施行規則第3条の4、法人税基本通達20−1−1)
以下、それぞれを法人税基本通達の原文にあたって掘り下げます。
4. 支店PE——「その他事業を行う一定の場所」の広さ
通達が例示するもの
支店PEの定義でもっとも解釈の幅が大きいのが、末尾の「その他事業を行う一定の場所」です。法人税基本通達は、ここに何が含まれるかを具体的に例示しています。
20−1−1 令第4条の4第1項第3号《恒久的施設の範囲》に掲げる「その他事業を行う一定の場所」には、倉庫、サーバー、農園、養殖場、植林地、貸ビル等のほか、外国法人が国内においてその事業活動の拠点としているホテルの一室、展示即売場その他これらに類する場所が含まれる。(平26年課法2−9「五」により追加、平30年課法2−28「六」により改正)
(出典:国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第1款「外国法人の国内にある支店等」)
形式ではなく機能で判定する
国税庁は、日本国内に恒久的施設を有するかどうかを判定するに当たっては、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定すると明示しています。例として、事業活動の拠点となっているホテルの一室は恒久的施設に該当するが、単なる製品の貯蔵庫は恒久的施設に該当しないとしています(No.2883、No.2882)。
つまり、同じ「部屋」「倉庫」でも、そこで何が行われているかで結論が変わります。看板や登記ではなく、実際の活動内容が判定材料です。
5. 建設PE——1年を超えるかどうか、そして契約分割の防止
定義
非居住者等の国内にある建設、据付けの工事またはこれらの指揮監督の役務の提供(建設工事等)で、1年を超えて行う場所(1年を超えて行われる建設工事等を含みます。以下「長期建設工事現場等」)が建設PEです。
「1年を超える」の判定
法人税基本通達は、1年を超えて行われる建設工事等に含まれるものを次のように定めています。
20−1−4 令第4条の4第2項《恒久的施設の範囲》の建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供(以下20−1−4において「建設工事等」という。)で1年を超えて行われるものには、次に掲げるものが含まれる。
(1) 建設工事等に要する期間が1年を超えることが契約等からみて明らかであるもの
(2) 一の契約に基づく建設工事等に要する期間が1年以下であっても、これに引き続いて他の契約等に基づく建設工事等を行い、これらの建設工事等に要する期間を通算すると1年を超えることになるもの
(注) 1 建設工事等は、その建設工事等を独立した事業として行うものに限られないのであるから、例えば、外国法人が機械設備等を販売したことに伴う据付けの工事等であっても当該建設工事等に該当することに留意する。
2 上記(1)又は(2)に該当しない建設工事等であっても、同条第3項の規定の適用により、1年を超えて行われるものに該当する場合があることに留意する。
(出典:国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第2款「外国法人の国内にある長期建設工事現場等」)
契約を分割してもかわせない
国税庁は、長期建設工事現場等の期間要件について、その期間を1年以内にすることを主たる目的として契約を分割して締結した場合などは、それらを合計した期間(重複する期間を除く)が1年を超えるかどうかで判定するとしています(No.2883)。
6. 代理人PE——契約を「締結する人」だけではない
定義
代理人PEとは、非居住者等が国内に置く代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者等の一定の者(契約締結代理人等)をいいます。
独立代理人は除外、ただし例外がある
非居住者等の代理人等が、その事業に係る業務を、非居住者等に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合には、契約締結代理人等に含まれません(独立代理人の除外)。
ただし、その代理人等が、専らまたは主として一または二以上の自己と特殊の関係にある者に代わって行動する場合は、この限りではありません。
ここでいう特殊の関係とは、一方の者が他方の法人の発行済株式または出資の総数または総額の50パーセント超を直接・間接に保有する等の一定の関係にある者をいいます(No.2883)。
通達が示す4つの判断軸
法人税基本通達は、代理人PEの範囲について具体的な解釈を示しています。実務で効くものを原文で掲げます。
20−1−5 令第4条の4第7項《恒久的施設の範囲》の「契約」の締結には、契約書に調印することのほか、契約内容につき実質的に合意することが含まれる。
20−1−6 令第4条の4第7項《恒久的施設の範囲》に規定する「主要な役割を果たす者」とは、同項各号に掲げる契約が締結されるという結果をもたらす役割を果たす者をいい、例えば、外国法人の商品について販売契約を成立させるために営業活動を行う者がこれに該当する。
20−1−7 令第4条の4第7項《恒久的施設の範囲》に規定する契約締結代理人等には、長期の代理契約に基づいて外国法人に代わって行動する者のほか、個々の代理契約は短期的であるが、2以上の代理契約に基づいて反復して一の外国法人に代わって行動する者が含まれる。
(注) 本文の「一の外国法人に代わって行動する者」は、特定の外国法人のみに代わって行動する者に限られないことに留意する。
20−1−8 令第4条の4第8項《恒久的施設の範囲》に規定する「国内において外国法人に代わつて行動する者が、その事業に係る業務を、当該外国法人に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合」における当該者は、次に掲げる要件のいずれも満たす必要があることに留意する。
(1) 代理人として当該業務を行う上で、詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有するなど本人である外国法人から法的に独立していること。
(2) 当該業務に係る技能と知識の利用を通じてリスクを負担し、報酬を受領するなど本人である外国法人から経済的に独立していること。
(3) 代理人として当該業務を行う際に、代理人自らが通常行う業務の方法又は過程において行うこと。
(出典:国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第3款「外国法人が国内に置く代理人等」。同款には、特殊の関係の判定における発行済株式の取扱いを定めた20−1−9、20−1−10も置かれています)
「日本には販売代理店を置いているだけで、契約はすべて本国で締結している。だからPEはない」——このご説明を受けることは実際によくあります。守秘義務がありますので詳細は控えますが、一般論として申し上げると、この整理は現行法では危険です。通達20−1−5は「契約内容につき実質的に合意すること」を契約の締結に含め、20−1−6は「販売契約を成立させるために営業活動を行う者」を主要な役割を果たす者の例に挙げています。つまり、最終サインが本国であっても、価格・数量・納期の実質的な詰めを日本側が行っていれば、代理人PEの検討対象になります。加えて20−1−8は、独立代理人と認められるための3要件をすべて満たす必要があるとしています。日本法人が本国から詳細な指示を受け、在庫リスクも与信リスクも負わず、コストプラスの手数料だけを受け取っている——この形は、(1)法的独立性と(2)経済的独立性のいずれについても説明が難しくなります。契約書の文言ではなく、実際の営業プロセスと機能・リスクの配置で判断されるとお考えください。
7. 準備的・補助的活動の除外と、その限界
除外の規定
すべての拠点がPEになるわけではありません。国税庁は次の2つの注記を置いています。
- (注1) 非居住者等に属する物品もしくは商品またはそれらの在庫の保管、展示または引渡しのためのみに使用または保有する施設等については、それが非居住者等の事業の遂行上準備的または補助的な性格のものである場合は、支店PE(1)・建設PE(2)に含まれません。
- (注2) 事業を行う一定の場所を有している非居住者等が、その事業を行う一定の場所以外の場所(他の場所)においても事業上の活動を行う場合において、他の場所が非居住者等の恒久的施設に該当するなど一定の要件に該当するときは、(注1)の取扱いは適用されません(いわゆる細分化への対応)。
(出典:No.2883)
「準備的」「補助的」とは何か
ここが最大の解釈論点です。法人税基本通達は、両方の意義を定義したうえで、補助的な性格のものに該当しない活動を6つ列挙しています。省略せず全て掲げます。
20−1−2 令第4条の4第4項《恒久的施設の範囲》に規定する準備的な性格のものとは、外国法人としての活動の本質的かつ重要な部分を構成する活動の遂行を予定し当該活動に先行して行われる活動をいうことに留意する。
(注) 本文の「先行して行われる活動」に該当するかどうかの判定は、その活動期間の長短によらないことに留意する。
20−1−3 令第4条の4第4項《恒久的施設の範囲》に規定する「補助的な性格のもの」とは、外国法人としての活動の本質的かつ重要な部分を構成しない活動で、その本質的かつ重要な部分を支援するために行われるものをいうのであるから、例えば、次に掲げるような活動はこれに該当しない。
(1) 事業を行う一定の場所の事業目的が外国法人の事業目的と同一である場合の当該事業を行う一定の場所において行う活動
(2) 外国法人の資産又は従業員の相当部分を必要とする活動
(3) 顧客に販売した機械設備等の維持、修理等(当該機械設備等の交換部品を引き渡すためだけの活動を除く。)
(4) 専門的な技能又は知識を必要とする商品仕入れ
(5) 地域統括拠点としての活動
(6) 他の者に対して行う役務の提供
(出典:法人税基本通達20−1−2、20−1−3)
また20−1−2の(注)も見落とされがちです。準備的かどうかは期間の長短では判定しないとされています。「3年やっているから準備的ではない」でも、「まだ半年だから準備的だ」でもありません。判定軸は本質的かつ重要な部分に先行する活動かです。
8. 租税条約が国内法に優先する
わが国が締結した租税条約において国内法上の恒久的施設と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上の恒久的施設を国内法上の恒久的施設とします(No.2883)。
したがって、実務では必ず次の順序で確認します。
- 相手国と日本との間に租税条約があるか
- あるなら、その条約の恒久的施設条項(多くの条約で第5条)にどう書かれているか
- 条約上のPE定義が国内法と異なる場合は、条約の定義が適用される
- 条約に基づいて源泉徴収税率の軽減・免除を受けるなら、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を、国内源泉所得の支払者を経由して、その支払者の納税地の所轄税務署長に提出する
(出典:No.2883、国税庁タックスアンサーNo.2884「源泉徴収義務者・源泉徴収の税率」、国税庁タックスアンサーNo.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」)
9. よくある失敗と王道
- 「駐在員事務所だから課税されない」と名称だけで判断している(判定は形式ではなく機能的な側面を重視して行う)
- 日本に置いたサーバーを検討対象から外している(法人税基本通達20−1−1が「サーバー」を明示している)
- 地域統括機能を日本拠点に持たせながら「補助的」と整理している(通達20−1−3(5)が該当しないと明示)
- 日本拠点がグループ他社に役務提供しているのに準備的・補助的だと考えている(同(6))
- 建設工事の契約を11か月ずつに分割して1年超を回避しようとする(合計期間で判定される)
- 機械設備の販売に伴う据付工事を建設工事等に該当しないと考えている(通達20−1−4(注)1)
- 「契約書のサインは本国だから代理人PEではない」としている(実質的な合意・主要な役割で判定/通達20−1−5、20−1−6)
- 日本の販売子会社を独立代理人と整理しているが、詳細な指示を受け、リスクも負っていない(通達20−1−8の3要件を満たさない)
- 租税条約を読まずに国内法だけで判定している(条約が優先する)
- PEに該当すると分かった後も申告をしていない(PE帰属所得は申告納税の対象)
- 日本進出の形態(駐在員事務所・支店・子会社)を決める前に、PE該当性を検討する
- 拠点の実際の活動内容を書き出す(誰が、何を、どこまで決めているか)。看板や登記ではなく機能で判定される
- 通達20−1−3の6項目を、自社の日本拠点の活動と1つずつ突き合わせる
- 建設工事は、関連する契約をすべて並べて通算期間を確認する(重複期間は除く)
- 代理人PEの検討では、価格・数量・納期を実質的に誰が決めているかを営業プロセスに沿って確認する
- 販売子会社の機能とリスクの配置(在庫リスク・与信リスク・裁量権)を文書化する(独立代理人の3要件に対応)
- 相手国との租税条約第5条を必ず読み、国内法との差異(とくに建設PEの期間要件)を確認する
- 源泉徴収の軽減・免除を受けるなら、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を提出する
- PEに該当する可能性が残るなら、事前に税務専門家と論点を整理してから進出形態を確定する
10. まとめ
恒久的施設(PE)は、外国企業の日本での課税の有無を決める分水嶺です。要点は次のとおりです。
- 非居住者等に対する課税は国内源泉所得のみ。同じ国内源泉所得でも、PEの有無とPEに帰せられる所得か否かで課税方式が変わる(No.2873)。
- PEは支店PE・建設PE・代理人PEの3類型(No.2883)。根拠は法人税法第2条第12号の19・法人税法施行令第4条の4/所得税法第2条第1項第8号の4・所得税法施行令第1条の2。
- 支店PEの「その他事業を行う一定の場所」には、倉庫、サーバー、農園、養殖場、植林地、貸ビルのほか、事業活動の拠点としているホテルの一室、展示即売場が含まれる(法人税基本通達20−1−1)。
- 判定は形式ではなく機能的な側面を重視する。事業活動の拠点となっているホテルの一室はPEに該当し、単なる製品の貯蔵庫は該当しない(No.2883)。
- 建設PEは1年超。契約期間を1年以内にすることを主たる目的として契約を分割しても、合計期間で判定される。設備販売に伴う据付工事も建設工事等に含まれる(通達20−1−4)。
- 代理人PEの「契約の締結」には実質的な合意が含まれ、「主要な役割を果たす者」には販売契約を成立させるために営業活動を行う者が該当する(通達20−1−5、20−1−6)。
- 独立代理人として除外されるには、法的独立性・経済的独立性・通常の業務方法の3要件すべてを満たす必要がある。専らまたは主として50パーセント超の特殊関係者に代わって行動する場合は除外されない(通達20−1−8、No.2883)。
- 準備的・補助的による除外には限界がある。事業目的が同一の活動、資産・従業員の相当部分を必要とする活動、販売した機械設備等の維持修理、専門的な技能を要する商品仕入れ、地域統括拠点としての活動、他の者に対する役務の提供は、いずれも補助的な性格のものに該当しない(通達20−1−3)。
- 租税条約が国内法に優先する。相手国の条約第5条を必ず確認する(No.2883)。
「日本に拠点を置きたいが、PEになるのかを事前に整理したい」「日本の販売子会社の機能とリスクの配置を見直したい」「据付工事が長期化しそうで、建設PEが心配だ」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、PE該当性の検討から進出形態の設計、租税条約の適用、PE帰属所得の申告まで一体でご支援しています。拠点の形を決める前の段階でご相談いただくのが、もっとも打ち手の多いタイミングです。
よくある質問(FAQ)
駐在員事務所を置くだけなら、日本で課税されませんか?
日本にサーバーを置くとPEになりますか?
建設工事の契約を1年以内に分ければ、建設PEを避けられますか?
契約書へのサインは本国で行っています。それでも代理人PEになりますか?
日本の100パーセント子会社が販売代理をしています。独立代理人として除外されますか?
国内法ではPEに当たらないと思いますが、それで確定してよいですか?
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサーNo.2883「恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」(3類型の定義、準備的・補助的の注記、契約分割への対応、特殊の関係50パーセント超、租税条約の優先。令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁タックスアンサーNo.2882「恒久的施設(PE)(平成29年から平成30年分)」(平成30年度税制改正の適用開始時期、機能的側面を重視した判定)
- 国税庁タックスアンサーNo.2873「非居住者等に対する課税のしくみ」(課税方式、確認すべき3つの事項)
- 国税庁タックスアンサーNo.2878「国内源泉所得の範囲」(国内源泉所得15区分)
- 国税庁タックスアンサーNo.2884「源泉徴収義務者・源泉徴収の税率」(非居住者等に対する源泉徴収税率、租税条約による軽減・免除)
- 国税庁タックスアンサーNo.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」(届出書の様式と提出手続)
- 国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第1款「外国法人の国内にある支店等」(20−1−1〜20−1−3)(その他事業を行う一定の場所の例示、準備的な性格・補助的な性格の意義)
- 国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第2款「外国法人の国内にある長期建設工事現場等」(20−1−4)(1年を超える建設工事等、通算、据付工事)
- 国税庁 法人税基本通達 第20章第1節第3款「外国法人が国内に置く代理人等」(20−1−5〜20−1−10)(契約の締結の意義、主要な役割を果たす者、反復性、独立代理人の3要件、発行済株式の取扱い)
- 法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第12号の19(恒久的施設)、第4条、第138条、第141条
- 法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第4条の4(恒久的施設の範囲)
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第8号の4(恒久的施設)、第5条、第161条、第164条
- 所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第1条の2(恒久的施設の範囲)
- 所得税基本通達161−1、164−1
本記事は、恒久的施設(PE)に関する一般的な情報提供であり、個別の事案に係る税務判断に代わるものではありません。恒久的施設の該当性は事実認定を伴い、拠点の実際の機能、契約の内容、相手国との租税条約の定めによって結論が変わります。とくに租税条約は国内法に優先し、条約ごとに恒久的施設の定義が異なりますので、個別の判断にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。記載の取扱いは、とくに断りのない限り令和7年4月1日現在の法令等にもとづきます。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月30日
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無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
