固定資産税・不動産取得税の免税点が引き上げへ|令和8年度改正で小規模事業者の非課税枠が拡大

設備や不動産を持つと、毎年または取得時にかかるのが固定資産税不動産取得税です。あまり知られていませんが、これらの地方税には「免税点」——課税標準額がこの金額に満たなければ税金がかからない、というラインがあります。 その免税点が、令和8年度(2026年度)税制改正で引き上げられます。償却資産(機械や備品など事業用の固定資産)の免税点は150万円から180万円へ、家屋の免税点は20万円から30万円へ。小規模な設備しか持たない事業者ほど、固定資産税が非課税になるケースが広がる改正です。 「うちの償却資産税は今後どうなるのか」「小さな店舗や設備でも税金がかかるのか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、設備投資と税負担をめぐるご相談は実際に寄せられます。本記事では、固定資産税・不動産取得税の免税点と令和8年度改正での変更点を、「どこまでが非課税で、どこから課税されるのか」という経営者・個人事業主の目線で、税理士が解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が変わるのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:「免税点」とは(払うか・払わないかの分かれ目)
  3. 3. 令和8年度改正での変更点(償却資産180万円・家屋30万円へ)
  4. 4. 実務で押さえるべきこと(償却資産の申告は免税点未満でも必要)
  5. 5. まとめ
  6. よくある質問(FAQ)

1. 何が変わるのか(3行サマリー)

  • 固定資産税(償却資産)の免税点が「150万円」から「180万円」へ、家屋の免税点が「20万円」から「30万円」へ引き上げ(適用は令和9年度以後の固定資産税)
  • 不動産取得税の免税点も引き上げ(土地10万円→16万円、家屋の建築1戸23万円→66万円、その他1戸12万円→34万円の方向)
  • 小規模な設備・不動産しか持たない事業者は、免税点を下回って非課税となる範囲が広がる。創業間もない事業者や個人事業主にメリット

2. 前提:「免税点」とは(払うか・払わないかの分かれ目)

固定資産税や不動産取得税には、課税標準額が一定額未満なら課税しないという「免税点」が設けられています。これは「いくらまで控除する」という控除制度とは違い、免税点に満たなければ税金そのものがかからない(ゼロ)、満たせばその全体に課税される、という“しきい値”です。

税目対象現行の免税点
固定資産税償却資産(機械・器具・備品など事業用資産)課税標準額 150万円 未満
固定資産税家屋課税標準額 20万円 未満
固定資産税土地課税標準額 30万円 未満
不動産取得税土地課税標準額 10万円 未満
不動産取得税家屋(建築=新築・増改築)1戸につき 23万円 未満
不動産取得税家屋(売買・贈与など)1戸につき 12万円 未満

ここで重要なのが償却資産(しょうきゃくしさん)に対する固定資産税(償却資産税)です。土地・家屋だけでなく、事業で使う機械・器具・備品・看板・内装設備なども固定資産税の対象で、毎年1月1日時点の保有分を市区町村へ申告する必要があります。その課税標準額の合計が免税点(現行150万円)未満なら課税されません

💡 「免税点」と「少額減価償却資産の特例」は別の制度 … 取得価額40万円未満の資産をその年に全額経費にできる「少額減価償却資産の特例」(所得税・法人税の話)と、償却資産税の免税点(地方税の話)は別物です。全額経費にした資産でも、償却資産税の対象になり、課税標準額の合計が免税点以上なら課税されます。経費化(国税)と保有課税(地方税)は分けて考える必要があります。

3. 令和8年度改正での変更点(償却資産180万円・家屋30万円へ)

財務省「令和8年度税制改正の大綱」で示された見直しにより、免税点が次のとおり引き上げられます。適用は令和9年度以後の固定資産税です。

税目・対象現行改正後
固定資産税(償却資産)150万円未満180万円未満に引上げ
固定資産税(家屋)20万円未満30万円未満に引上げ
不動産取得税(土地)10万円未満16万円未満に引上げ
不動産取得税(家屋・建築)1戸23万円未満1戸66万円未満に引上げ
不動産取得税(家屋・その他)1戸12万円未満1戸34万円未満に引上げ

ポイントは2つです。

①償却資産税の非課税ラインが180万円未満に拡大。 これまで償却資産の課税標準額の合計が150万円以上だと課税されていましたが、改正後は180万円未満まで非課税になります。小規模な設備で事業を営む個人事業主や、創業間もない会社にとっては、償却資産税がかからない範囲が30万円分広がることになります。

②家屋・不動産取得税の免税点も引き上げ。 家屋の固定資産税の免税点が20万円→30万円へ、不動産取得税も土地・家屋それぞれ引き上げられます。少額の不動産取得については、取得税そのものがかからないケースが増える方向です。

⚠️ 「免税点未満ならゼロ、超えたら全体に課税」 … 免税点はあくまで“課税するかしないか”の入口の基準です。免税点以上になった場合は、控除のように差額だけが課税されるのではなく、課税標準額の全体に対して課税されます。償却資産は毎年1月1日時点の保有状況で判定されるため、設備が増えて免税点(180万円)を超えると、その年から課税対象になる点に注意が必要です。

4. 実務で押さえるべきこと(償却資産の申告は免税点未満でも必要)

免税点の引き上げは負担を軽くする方向の改正ですが、「非課税だから何もしなくてよい」というわけではありません。とくに償却資産税は、申告と管理の実務で見落としが起きやすい税目です。

❌ つまずきがちな失敗
  • 課税標準額が免税点未満(非課税)だからと、償却資産の申告そのものをしていない(多くの市区町村では免税点未満でも申告は必要)
  • 少額減価償却資産の特例で全額経費にした資産を、償却資産税の申告に含め忘れる
  • 設備投資が積み上がって免税点(180万円)を超えたことに気づかず、課税の見込みを立てていない
  • 免税点を「控除」と勘違いし、超えた場合に差額だけ課税されると思い込む
⭕ これから取るべき王道
  • 償却資産は、免税点未満でも所定の申告を行い、保有資産を正しく把握しておく(市区町村のルールを確認)
  • 毎年1月1日時点の償却資産の課税標準額の合計を試算し、180万円の免税点に対してどの位置にあるかを把握する
  • 設備投資の計画段階で、国税(法人税・所得税の経費化)と地方税(償却資産税)の両面から税負担を見積もる
  • 家屋・不動産の取得時には、不動産取得税の免税点・軽減措置もあわせて確認する
💬 実務の現場から
弊社にも、「償却資産税の申告が必要かどうか分からない」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、見落とされやすいのは免税点の金額そのものよりも、非課税でも申告は必要という運用と、経費化(国税)と保有課税(地方税)が別物だという点です。私たちが関与する場面では、設備投資の前の段階で、その資産が国税でいつ経費になるか、地方税の償却資産税で免税点に響くかを、あわせて確認するようにしています。免税点が180万円へ広がることで非課税の範囲は広がりますが、申告と管理の手間がなくなるわけではない、という点は押さえておきたいところです。

5. まとめ

令和8年度税制改正で、固定資産税(償却資産)の免税点が「150万円未満」から「180万円未満」へ、家屋の免税点が「20万円未満」から「30万円未満」へ引き上げられ、令和9年度以後の固定資産税から適用されます。不動産取得税の免税点も土地・家屋それぞれ引き上げられ、小規模な設備・不動産しか持たない事業者ほど、非課税となる範囲が広がります

ただし、償却資産は免税点未満でも申告が必要なことが多く、設備が増えて免税点を超えれば課税標準額の全体に課税される点は変わりません。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、償却資産の申告から設備投資の税負担シミュレーション、固定資産税・不動産取得税の軽減措置の確認までご支援しています。設備や不動産の税負担を整理したい経営者・個人事業主の方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

償却資産税の免税点はいつから180万円になりますか?

令和8年度税制改正により、令和9年度以後の固定資産税から、償却資産の免税点が課税標準額150万円未満から180万円未満へ引き上げられます。家屋の免税点も20万円未満から30万円未満へ引き上げられます。

免税点未満なら償却資産の申告はしなくてよいですか?

多くの市区町村では、課税標準額が免税点未満で税額がゼロの場合でも、償却資産の申告は必要です。申告の要否や様式は市区町村により異なるため、所在地の自治体のルールを確認してください。

免税点を超えると、超えた分だけ課税されますか?

いいえ。免税点は課税するかどうかの基準で、課税標準額が免税点以上になった場合は、超えた差額ではなく課税標準額の全体に対して課税されます。

少額減価償却資産の特例で全額経費にした資産は、償却資産税の対象になりますか?

なります。所得税・法人税で全額経費にした資産でも、固定資産税(償却資産)の課税対象です。課税標準額の合計が免税点以上であれば課税されるため、経費化(国税)と保有課税(地方税)は分けて考える必要があります。

不動産取得税の免税点はどう変わりますか?

令和8年度改正により、土地は課税標準額10万円未満から16万円未満へ、家屋は建築(新築・増改築)が1戸23万円未満から66万円未満へ、売買などその他が1戸12万円未満から34万円未満へ、それぞれ引き上げられる方向です。

出典・参考資料

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」| https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」令和7年12月26日 閣議決定| https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf
  • 総務省「地方税制度(固定資産税・不動産取得税)」
  • 根拠:地方税法(固定資産税・不動産取得税の免税点)、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)
ご利用上の留意事項
本記事は、財務省の公表資料および地方税制度に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。免税点の金額・適用時期・軽減措置は、地方税法および各自治体の取り扱いにより異なる場合があります。償却資産の申告の要否も市区町村により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令および所在地の自治体の取り扱いをご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月16日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp