教育資金の一括贈与1500万円が2026年3月末で終了|これからの生前贈与を税理士が解説
- 1. 何が終わったのか(3行サマリー)
- 2. 前提:教育資金の一括贈与とは、どんな制度だったか
- 3. なぜ終了するのか:当局の問題意識
- 4. すでに使っている口座はどうなるのか
- 5. 実務でどう備えるか:これからの生前贈与の主役は「毎年の積み重ね」
- 6. これから生前贈与を考える人へ
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が終わったのか(3行サマリー)
- 教育資金の一括贈与の非課税措置(限度額1,500万円)は、適用期限の令和8年(2026年)3月31日で終了。令和8年度税制改正の大綱で、延長せず終了する方針が示された
- 令和8年4月1日以後は、この特例を使った新規の契約はできない(すでに契約済みの口座は、契約に沿って引き続き利用可能)
- 似た制度である結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置(限度額1,000万円)も、適用期限は令和9年(2027年)3月31日まで。こちらも「次の終了候補」と位置づけられる
2. 前提:教育資金の一括贈与とは、どんな制度だったか
まず、終わった制度の中身を正確に押さえます。これは、祖父母などの直系尊属が、子・孫の教育資金を金融機関を通じて一括で贈与しても、一定額まで贈与税がかからないという特例でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(租税特別措置法第70条の2の2) |
| 非課税限度額 | 受贈者1人あたり1,500万円(うち学校等以外への支払いは500万円まで) |
| 贈与する人 | 受贈者の直系尊属(父母・祖父母など) |
| 受贈者の要件 | 契約日において30歳未満/前年の合計所得金額1,000万円以下 |
| 適用期限 | 平成25年4月1日から令和8年3月31日まで(この日までに信託等が必要) |
| 仕組み | 金融機関に専用口座を開設し、教育費の領収書等を提出して払い出す |
ポイントは、「まとめて先に渡せる」ことにありました。後述する暦年贈与(年110万円)では、まとまった額を一度に非課税で渡すことはできません。だからこそ、孫が複数いる資産家にとっては、相続財産を一気に圧縮できる有力な手段だったのです。
3. なぜ終了するのか:当局の問題意識
この制度は、もともと時限措置として始まり、これまで何度も期限が延長されてきました。今回、延長されずに終了した背景には、当局の一貫した問題意識があります。
それは、「富裕層に偏った相続税対策になっている」という指摘です。教育費はもともと、親や祖父母が必要な都度支払う分には、そもそも贈与税がかからないものです(扶養義務者間の生活費・教育費の非課税)。つまり、わざわざ「一括」で渡す主なメリットは、相続財産をまとめて減らす効果にあり、まとまった資産を持つ層ほど恩恵が大きい——ここが見直しの対象になりました。
令和8年度税制改正の大綱では、貸付用不動産の評価の見直し(いわゆる第二のタワマン封じ)など、富裕層・資産家の節税策に網をかける流れが鮮明です。教育資金の一括贈与の終了も、その大きな流れの一つと位置づけられます。
4. すでに使っている口座はどうなるのか
「終了」と聞いて最も不安になるのが、すでに開設した教育資金口座の扱いです。ここは落ち着いて整理しましょう。
- すでに契約済みの口座は、契約に沿って引き続き使える:令和8年3月31日までに契約した口座は、終了によって即座に使えなくなるわけではありません。教育費の払い出しは引き続き可能です
- 残った「使い残し」には課税の可能性がある:受贈者が30歳に達するなど、契約が終了した時点で使い切れずに残った金額には、原則として贈与税がかかります
- 贈与者が亡くなった場合の残額:贈与者の死亡時に残っている管理残額は、一定の場合に相続財産に加算されます(相続税の対象)
つまり、終了で問題になりやすいのは「これから契約できない」ことに加え、「使い切れずに残すと課税される」という出口のリスクです。
- 「一括で渡したから、もう相続対策は完了」と思い込み、使い残しの出口を考えていない
- 受贈者が使い切れる見込みのない金額を、駆け込みで一括贈与してしまった
- 都度払いでも非課税なのに、わざわざ手数料や手間をかけて一括で囲い込んでいた
- すでに開設した口座は、使い切れる計画(学費・進学スケジュール)を立てて計画的に払い出す
- 教育費は、急がないなら必要な都度、直接支払う(この分はもともと非課税)
- 一括贈与に頼れなくなった分、暦年贈与・相続時精算課税を組み合わせて、毎年コツコツ移す設計に切り替える
弊社にも、「孫のためにと一括贈与の口座を作ったが、これからどう使えばよいか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、つまずきやすいのは“渡すこと”がゴールになってしまい、使い切れずに残った残額への課税まで見通せていないケースです。私たちが関与する場面では、すでにある口座の出口(使い切る計画)と、これからの贈与の設計を、相続全体のシミュレーションの中で一緒に考えることをおすすめしています。
5. 実務でどう備えるか:これからの生前贈与の主役は「毎年の積み重ね」
一括贈与の特例が役割を終えた今、生前贈与の主役は「毎年コツコツ移す」二つの制度に戻ります。それぞれの基本を、最新のルールで正確に押さえましょう。
① 暦年課税(年110万円の基礎控除)
1人の受贈者が1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要です。これを毎年使えば、長い時間をかけて着実に財産を移せます。
ただし、令和5年度税制改正で「生前贈与の相続財産への加算期間」が3年から7年へ段階的に延長されました(令和6年1月1日以後の贈与から適用)。亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に持ち戻されるため、早く始めるほど効果が高い点は従来以上に重要です。
参考までに、直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上の子・孫へ贈与した場合に使う特例税率の速算表は次のとおりです(基礎控除110万円を差し引いた後の金額に対して課税)。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
② 相続時精算課税(年110万円の基礎控除が新設)
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べる制度です。従来は累計2,500万円まで贈与時非課税(相続時に精算)という仕組みでしたが、令和5年度税制改正で「年110万円の基礎控除」が新設されました(令和6年1月1日以後の贈与から)。
この新しい年110万円の枠で贈与した分は、贈与税がかからないうえ、相続時に加算もされません。暦年課税の7年加算との違いをどう使い分けるかが、これからの設計の肝になります。
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(令和6年新設) |
| 相続財産への加算 | 死亡前7年以内の贈与を加算(段階適用) | 年110万円以内の分は加算なし/超えた分は加算 |
| 一度選ぶと | いつでも使える | その贈与者からは暦年課税に戻せない |
| 向いている人 | 早期から長期で移したい人 | まとまった額を早めに移したい人・収益物件を移したい人 |
6. これから生前贈与を考える人へ
- 「一括で先渡し」の特例はもう増やせない:教育資金は令和8年3月末で終了、結婚・子育て資金も令和9年3月末まで。頼れる時限措置が順次なくなる前提で考える
- 教育費は急がないなら都度払い:扶養義務者が必要な都度支払う教育費・生活費は、もともと贈与税がかからない
- 主役は暦年贈与と相続時精算課税:毎年110万円の枠を、複数の受贈者・長い年数で積み重ねる
- とにかく早く始める:暦年課税の7年加算がある以上、開始が早いほど効果は大きい
- 相続全体で設計する:誰に・何を・いつ渡すかは、相続税の試算とセットで決める
7. まとめ
教育資金の一括贈与の非課税措置(1,500万円)は、令和8年(2026年)3月31日で終了しました。これは「もう生前贈与ができない」という話ではなく、「一括で先渡しする時限的な特例の時代が終わり、毎年コツコツ移す王道に戻る」ということです。結婚・子育て資金の一括贈与(令和9年3月末まで)も、いずれ同じ道をたどる可能性があります。
大切なのは、すでにある口座は使い切る計画を立て、これからの贈与は暦年課税・相続時精算課税を軸に、できるだけ早く・相続全体を見ながら設計することです。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、トリプルホルダーの視点で、富裕層・資産家の生前贈与や相続対策のご相談に対応しています。一括贈与に代わる移し方を整理したい方は、お早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
教育資金の一括贈与の非課税(1,500万円)はまだ使えますか?
もう生前贈与で教育資金を渡せないのですか?
すでに作った教育資金口座はどうなりますか?
これからの贈与は何を軸に考えればよいですか?
出典・参考資料
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」令和7年12月 | https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/index.html
- 国税庁 タックスアンサー No.4510「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4511「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4511.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
本記事は、国税庁の公表資料および令和8年度税制改正の大綱に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。制度の要件・期限・取扱いは今後の法令・通達により変更される場合があります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月6日
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