名義預金とは?相続税の税務調査で最も狙われる財産――判定基準と対策を税理士が解説【2026年版】

「亡くなった父が、私や孫の名義でコツコツ貯めてくれていた預金がある」「専業主婦の私が、夫の収入から少しずつ貯めた“へそくり”がある」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、相続のご相談の場面で、こうした家族名義の預金についてのお話が数多く寄せられます。実はこの名義預金(めいぎよきん)こそ、相続税の税務調査で最も指摘される財産です。名義は家族でも、税務上は亡くなった方(被相続人)の財産として相続税の課税対象になることが多く、知らずに申告から漏らすと、後から重い追徴課税を受けかねません。 本記事では、名義預金とは何か、相続財産に含まれるかどうかの判定基準(5つの要素)、なぜ「名義を子や孫にしただけ」では贈与にならないのか(民法上の贈与の成立)、税務調査で指摘されたときのペナルティ、そして名義預金と言われないための王道の対策までを、国税庁の取扱いと最新の調査データ(令和6事務年度)に基づいて網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 名義預金とは何か(3行サマリー)
  2. 2. なぜ今これを知るべきか――税務調査データが示す現実
  3. 3. 名義預金かどうかの判定基準(5つの要素)
  4. 4. なぜ「名義を子や孫にしただけ」では贈与にならないのか
  5. 5. 名義預金になりやすい典型3パターン
  6. 6. 名義預金を申告から漏らすとどうなるか
  7. 7. 名義預金を作らないための生前対策(王道)
  8. 9. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 名義預金とは何か(3行サマリー)

  • 名義預金とは、口座の名義は家族(配偶者・子・孫など)になっているものの、実質的には被相続人がお金を出し、管理していた預金のことです。税務上は名義ではなく「本当は誰の財産か(実質)」で判断するため、こうした預金は被相続人の相続財産として相続税の課税対象になります。
  • 典型例は、①専業主婦が夫の収入から貯めた“へそくり”②親や祖父母が子・孫の名義で作り、通帳も印鑑も親が持っている口座③「贈与したつもり」だが、もらう側が存在を知らない口座、などです。
  • ポイントは、名義を変えてもお金の出どころ(出捐者)と管理の実態が被相続人なら、それは被相続人の財産だということ。相続財産として正しく申告する必要があります(国税庁No.4105)。
💡 相続税は、亡くなった人の財産を相続したときにかかる税金で、その対象は「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」です(国税庁No.4105「相続税がかかる財産」)。ここでいう「被相続人の財産」は名義で決まるのではなく、実質的な帰属で決まります。だからこそ、家族名義でも中身が被相続人のものなら課税対象になるのです。

2. なぜ今これを知るべきか――税務調査データが示す現実

名義預金は「うっかり」では済まされません。相続税の税務調査で、申告漏れが見つかる財産の種類で最も多いのが現金・預貯金等だからです。国税庁が公表した「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)の数字を見てみましょう。

項目(令和6事務年度・実地調査)数値
実地調査の件数9,512件
申告漏れ等の非違があった件数7,826件
非違割合(調査して何か見つかった割合)82.3%
追徴税額の合計824億円
実地調査1件当たりの追徴税額867万円
重加算税の賦課件数1,065件

調査に入られると8割超で申告漏れ等が見つかり、1件あたり平均で867万円もの追徴を受けています(出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」)。そして、申告漏れが見つかった財産を種類別に見ると、構成は次のとおりです。

申告漏れが見つかった財産の種類(財産別非違件数・延件数)構成比
現金・預貯金等62.9%
その他19.1%
有価証券14.2%
土地2.8%
家屋1.0%

申告漏れが指摘された財産の実に6割超が現金・預貯金等で、ダントツの1位です(出典:同上)。この「現金・預貯金等」の中心にあるのが、まさに名義預金です。税務署は、被相続人だけでなく家族名義の口座の動きまで金融機関から照会して調べます。家族名義だから見つからない、ということはありません。

3. 名義預金かどうかの判定基準(5つの要素)

では、家族名義の預金が「被相続人のもの(=名義預金)」か「本当に名義人自身のもの」かは、どう判断されるのでしょうか。課税の実務や裁判例では、名義だけで形式的に決めるのではなく、次の5つの要素を総合的に考慮して、その預金が誰に帰属するかを判断します。

判定の要素何を見るか
① 出捐者(しゅつえんしゃ)その預金のおおもとの資金を、実際に出したのは誰か(最重要)
② 管理・運用の状況通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管し、入出金や運用を誰がしていたか
③ 利益(果実)の帰属利息や運用益を実際に受け取り、使っていたのは誰か
④ 被相続人と名義人の関係名義人は被相続人とどういう関係か、名義人に自分で蓄える資力があったか
⑤ 名義になった経緯なぜその名義になったのか、もらう側はその預金の存在を知っていたか

このうち最も重視されるのが①の出捐者です。たとえば、収入のない専業主婦やまだ幼い子・孫の名義に多額の預金があれば、「その人自身が稼いで貯めたとは考えにくい=原資は被相続人」と見られやすくなります。そのうえで、②通帳と印鑑を被相続人が握っていた、③利息も被相続人が使っていた、となれば、名義は家族でも実質は被相続人の財産=名義預金と判断されます。

💡 言い換えると、名義預金と言われないためには、①お金の出どころ②管理③利益のすべてが「名義人本人」になっている状態をつくることが必要です。逆に、どれか一つでも被相続人に引き寄せられていると、名義預金を疑われる入口になります。

4. なぜ「名義を子や孫にしただけ」では贈与にならないのか

「子や孫の名義で口座を作って入金していたのだから、贈与しているはずだ」——これが、名義預金で最もよくある誤解です。ここで効いてくるのが、贈与は契約であり、双方の合意がなければ成立しないという民法のルールです。

贈与は、当事者の一方(あげる人)が財産を無償で相手に与える意思を示し、相手(もらう人)が受諾することで効力を生ずる(民法第549条)。

つまり、「あげます」「もらいます」という両者の意思の合致があって、はじめて贈与は成立します。親が一方的に子・孫の名義の口座を作って入金していても、もらう側(名義人)がその存在すら知らないのであれば、贈与は成立していません。贈与が成立していない以上、そのお金は渡した側=被相続人の財産のまま、ということになります。これが「名義は家族でも相続財産になる」理由の核心です。

なお、贈与税は個人から贈与を受けたときにかかる税金で、暦年課税では年間110万円まで非課税です(国税庁No.4402「贈与税がかかる場合」・No.4408「贈与税の計算と税率」)。「毎年110万円ずつ子の名義に入れているから非課税」と考える方は多いのですが、そもそも贈与が成立していなければ、非課税の話以前に贈与ではない——ここが最大の落とし穴です。

5. 名義預金になりやすい典型3パターン

パターンA:専業主婦の“へそくり”

夫の給与や事業の収入を、妻が生活費の管理の中から少しずつ貯めて、自分(妻)名義の口座に積み立てているケースです。夫婦の協力で築いた財産という感覚があり、悪気はまったくありません。しかし税務上は、原資が夫の収入で、夫の相続の時点で妻に明確な贈与の事実がなければ、その預金は夫の名義預金と判断されやすくなります。

パターンB:子・孫名義の口座を親が管理

子や孫の将来のためにと、親・祖父母がその名義で口座を作り、通帳・印鑑・キャッシュカードは親が保管しているケース。名義人である子・孫は口座の存在を知らず、自由に使えません。これは典型的な名義預金で、5要素のうち①出捐者・②管理・③利益のすべてが被相続人側にあるため、ほぼ確実に相続財産と見られます。

パターンC:「贈与したつもり」だが記録も合意もない

毎年いくらかを子の口座に移していたが、贈与契約書もなく、子も知らず、贈与税の申告もしていないケース。本人は贈与のつもりでも、外形的に贈与の成立を示すものがなく、名義預金と扱われるリスクが高い状態です。

❌ 名義預金でやってしまいがちな失敗
  • 子・孫の名義で口座を作り、通帳も印鑑も親が持ったまま、本人には知らせていない
  • 専業主婦が夫の収入から貯めた預金を、贈与の事実がないまま「自分のもの」と考えている
  • 「毎年110万円なら非課税」とだけ理解し、贈与契約書も作らず、もらう側の同意も確認していない
  • 名義人本人が一度も使ったことのない口座に、長年お金だけを入れ続けている
⭕ 名義預金にしないための王道
  • 贈与は「あげる・もらう」の双方の合意で成立させる(もらう側が必ず認識している状態にする)
  • 通帳・印鑑・キャッシュカードはもらった本人が管理し、本人が自由に使える状態にする
  • 振込で記録を残し、必要に応じて贈与契約書を作成する
  • 年110万円を超える贈与は贈与税の申告をして、贈与の事実を客観的に残す

6. 名義預金を申告から漏らすとどうなるか

名義預金を相続財産に含めずに申告すると、税務調査で指摘され、本来の相続税(本税)に加えて次のペナルティが上乗せされます。

ペナルティ内容
延滞税法定納期限の翌日から納付までの日数に応じてかかる利息的な税。期限から日が経つほど膨らむ
過少申告加算税申告額が少なかった場合の加算税。原則として追加で納める税額の10%(一定額超の部分は15%)
無申告加算税そもそも申告していなかった場合の加算税。納める税額に応じて15〜30%
重加算税意図的に隠した・偽った(仮装隠蔽)と認定された場合の最も重い加算税。過少申告型で35%、無申告型で40%

特に怖いのが重加算税です。家族名義の口座をことさらに使って財産を隠したと判断されれば、本税に加えて最大40%もの上乗せになります。前述のとおり、令和6事務年度には1,065件で重加算税が課されています(出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」)。「名義が家族だから分からないだろう」という発想は、最も重いペナルティを招きかねない危険な考え方です。

💬 実務の現場から
——「亡くなった父が、よかれと思って子や孫の名義で貯めてくれていた預金がある。これは自分たちのもの、ということでよいか」というご相談を、弊社でも実際によく頂きます。一般論として申し上げると、名義が家族でも、原資と管理が被相続人であれば名義預金として相続財産に含めるのが原則です。私たちが関与する場面では、過去の入出金や資金の出どころまで遡って実態を確認し、相続財産に含めるべきものは正しく申告したうえで、生前の段階であれば、これからの贈与をきちんと「成立」させて名義預金を作らない設計をご提案しています。隠すのではなく、正しく整えることが、結果として一番ご家族を守ります。

7. 名義預金を作らないための生前対策(王道)

名義預金の問題は、生きているうちに、贈与を正しく成立させておくことで防げます。ポイントは「あげた・もらった」を客観的に証明できる状態にしておくことです。

  • 双方の合意を残す … 「あげます・もらいます」の意思を、できれば贈与契約書の形で残す。もらう側(未成年なら親権者)が必ず認識・受諾している状態にする。
  • もらった人が管理する … 通帳・印鑑・キャッシュカードはもらった本人が保管し、本人が自由に使える口座にする。親が握ったままにしない。
  • 振込で記録を残す … 手渡しではなく、贈与者の口座から受贈者の口座へ振込で移し、お金の流れを通帳に残す。
  • 必要なら贈与税の申告をする … 年110万円を超える贈与は贈与税を申告・納税し、贈与の事実を税務署にも残す(あえて110万円を少し超える贈与をして申告実績を作る考え方もあります)。
  • 毎年の贈与は「定期贈与」と見られない工夫を … 同額を機械的に贈り続けると、最初にまとまった額を贈る約束だったと見られることがあります。金額・時期に幅を持たせる、その都度合意するなどの配慮をします。
💡 名義預金と表裏一体なのが、令和6年(2024年)1月の改正で延長された生前贈与加算(持ち戻し)です。暦年課税では、相続開始前の一定期間(改正で3年から7年へ段階的に延長)の贈与は相続財産に加算されます(国税庁No.4408ほか)。「正しく成立した贈与」であっても加算の対象になり得るため、いつから・どの方法で・誰に贈与するかは、相続全体を見ながら設計することが大切です。詳しくは生前贈与の解説記事もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

専業主婦の私名義の預金は、夫の相続のときに必ず名義預金になりますか?

必ずではありません。判断は、その預金の原資が誰の収入か、誰が管理し、利益を享受していたかなどの総合判断です。ご自身のパート収入や、ご実家からの相続・贈与で得たお金が原資で、ご自身が管理してきたものであれば、あなた自身の財産です。逆に、原資が夫の収入で贈与の事実がなければ、夫の名義預金と見られやすくなります。「いつ・どこからのお金か」を説明できるようにしておくことが大切です。

毎年110万円ずつ子の名義口座に入れていれば、贈与だから相続財産になりませんか?

入金しているだけでは贈与は成立しません。贈与は「あげる・もらう」双方の合意で成立する契約です(民法第549条)。子がその口座の存在を知らず、通帳も印鑑も親が持っているなら、贈与は成立しておらず、その預金は親(被相続人)の名義預金です。年110万円の非課税は、あくまで贈与が成立していることが前提です。

名義預金に時効はありますか?

「贈与が成立していれば贈与税の時効が…」と考える方がいますが、名義預金はそもそも贈与が成立していないため、贈与税の時効の話にはなりません。被相続人の財産のまま相続を迎えるので、相続財産として相続税の対象になります。時効で逃れられるという理解は危険です。

孫の名義で学資保険や預金を準備しています。これも名義預金ですか?

原資が祖父母で、管理も祖父母がしているなら、名義預金として祖父母の相続財産になり得ます。孫に確実に渡したい場合は、贈与契約を結んで孫(親権者)に管理を移す、教育資金の一括贈与の非課税制度を使うなど、目的に合った方法を選ぶと安心です。

すでに親が亡くなり、家族名義の預金が見つかりました。どうすればよいですか?

原資・管理の実態を確認し、被相続人の名義預金にあたるなら、相続財産に含めて申告するのが原則です。判断に迷う場合は、自己判断で除外せず、早めに税理士へご相談ください。正しく申告すれば重いペナルティは避けられます。隠して後から指摘される方が、はるかに高くつきます。

9. まとめ

名義預金は、悪気のない「家族のための貯金」が、相続のときに思わぬ追徴を招く、相続税の最重要論点です。要点は次のとおりです。

  • 名義預金とは、名義は家族でも、原資と管理の実態が被相続人にある預金。税務上は被相続人の相続財産になる(国税庁No.4105)。
  • 税務調査で申告漏れが見つかる財産の62.9%が現金・預貯金等で最多(令和6事務年度)。家族名義の口座も金融機関照会で調べられる。
  • 帰属の判断は①出捐者②管理・運用③利益の帰属④関係⑤経緯の5要素の総合判断。最重要は①お金の出どころ
  • 名義を作っただけでは贈与は成立しない。贈与は「あげる・もらう」双方の合意が必要(民法第549条)。
  • 漏らすと延滞税・加算税、悪質なら重加算税(最大40%)。隠すより正しく申告する方が安い。
  • 防ぐ王道は、生前に贈与を正しく成立させること(合意・本人管理・記録・必要なら贈与税申告)。

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出典・参考資料

  • 民法第549条(贈与の成立)/相続税法(相続税がかかる財産・非課税財産)
  • 国税庁タックスアンサー No.4105(相続税がかかる財産)/No.4108(相続税がかからない財産)/No.4152(相続税の計算)
  • 国税庁タックスアンサー No.4402(贈与税がかかる場合)/No.4408(贈与税の計算と税率)
  • 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表・実地調査件数・非違割合・追徴税額・財産別非違件数の構成比)
ご利用上の留意事項
本記事は、名義預金と相続税に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。財産の帰属の判断は個々の事実関係により異なり、関係する制度や非課税枠の要件等は改正により変わることがあります。実際の相続・申告・生前対策の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月29日

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小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp