持株会社化(ホールディングス化)とは?税務メリットと事業承継の株価対策を税理士が解説【2026年版】

「事業が大きくなってきたので、持株会社(ホールディングス)を作ったほうがいいと言われた」「自社株の相続税が心配で、ホールディングス化で株価を下げられると聞いた」——オーナー経営者から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、こうした持株会社化に関するご相談が数多く寄せられます。持株会社化は、正しく設計すれば、事業承継の株価対策・グループ経営の効率化・M&Aの受け皿づくりを一度に実現できる、オーナー経営者にとって王道の再編手法です。 一方で、「ホールディングスにすれば株価が下がる」という一面的な理解のまま実行すると、かえって株式等保有特定会社に該当して株価が高止まりしたり、想定した節税効果が出なかったりします。本記事では、持株会社の作り方から、受取配当等の益金不算入・グループ法人税制という2大税務メリット、そして事業承継での効果と最大の落とし穴までを、網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 持株会社化は何のためにやるのか(3行サマリー)
  2. 2. 持株会社の作り方(主な4手法)
  3. 3. 税務メリット①:受取配当等の益金不算入
  4. 4. 税務メリット②:グループ法人税制
  5. 5. 事業承継での効果と最大の落とし穴(株式等保有特定会社)
  6. 6. 持株会社化の失敗と王道
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 持株会社化は何のためにやるのか(3行サマリー)

  • 事業承継・株価対策——オーナーが持つ事業会社の株式を、新設した持株会社に移し、オーナーは持株会社の株式だけを持つ形にします。事業会社の利益がそのままオーナーの株価に反映される状態から、持株会社を一段かませることで、将来の株価上昇を抑えたり、後継者への承継をシンプルにしたりできます。
  • 所有と経営の分離・グループ経営——持株会社が各事業会社の株式を保有し、グループ全体の資本・人材・資金を一元管理します。事業ごとに子会社を分けて責任と採算を明確にでき、新規事業やM&Aの受け皿にもなります。
  • 税務メリットを使える——持株会社が子会社から受け取る配当は、受取配当等の益金不算入(法人税法23条)でその全部または一部が課税されません。さらに100%子会社との間ではグループ法人税制が適用され、グループ内取引の課税が繰り延べられます。この2つが、持株会社化の税務上の中核メリットです。
💡 持株会社化は「節税の裏ワザ」ではなく、資本構成の再設計です。株価対策・承継・グループ経営という目的が先にあり、税務メリットはそれを後押しする仕組みです。目的が曖昧なまま「株価が下がるらしい」で動くと、株式等保有特定会社(後述)に当たって逆効果になることもあります。

2. 持株会社の作り方(主な4手法)

オーナーが持株会社を作る方法はいくつかあり、資金・課税・手続きの負担が異なります。代表的なものは次の4つです。

手法概要特徴
株式移転事業会社の株主(オーナー)が、新設する持株会社に株式を移し、対価として持株会社の株式を受け取る現金不要。適格株式移転なら株主・法人段階で課税が繰り延べられ、最も使われる基本手法
株式交換既存の会社を持株会社にして、事業会社を完全子会社化する既存法人を親会社に使う場合。適格なら課税繰延
現物出資(株式の移転)オーナーが事業会社株式を現物出資して持株会社を設立譲渡益課税の論点があり、適格要件の検討が必要
株式譲渡(買取)オーナーが持株会社を設立し、持株会社が銀行借入等で事業会社株式を買い取るオーナーに譲渡所得税20.315%が課税されるが、オーナー個人に現金が入る。承継資金・借入返済の設計が要

このうち、事業承継目的で最も一般的なのは株式移転です。現金を用意せずに持株会社を作れ、税制適格の要件(対価が持株会社株式のみ・完全支配関係の継続など)を満たせば、その時点では課税が生じません(課税の繰り延べ)。どの手法が最適かは、目的(承継か・資金化か)、借入の可否、株価の水準によって変わります。

3. 税務メリット①:受取配当等の益金不算入

持株会社の収益の柱は、子会社(事業会社)から受け取る配当です。法人が受け取る配当は、支払う会社の段階ですでに法人税が課された利益から出ているため、二重課税を避ける趣旨で、その一定割合を益金に算入しない(課税しない)扱いになっています。これが受取配当等の益金不算入(法人税法23条)です。株式の保有割合に応じて、次の4区分で益金不算入の割合が決まります。

株式の区分保有割合益金不算入の割合
完全子法人株式等100%(配当計算期間を通じて完全支配関係)配当等の額の 100%
関連法人株式等3分の1超100%未満(配当基準日以前6か月以上保有)100%(ただし負債利子を控除)
その他の株式等5%超3分の1以下配当等の額の 50%
非支配目的株式等5%以下配当等の額の 20%

持株会社が子会社を100%保有していれば、その子会社からの配当は「完全子法人株式等」となり、全額が益金不算入(=法人税がかからない)となります。しかも完全子法人株式等・関連法人株式等の負債利子控除のうち、完全子法人株式等には負債利子の控除がありません。つまり、各事業会社の利益を配当として持株会社に吸い上げても、持株会社の段階でほとんど課税されずにグループの資金を集約できる、というのが持株会社化の資金効率上の最大の利点です。

💡 関連法人株式等の負債利子控除
100%未満(3分の1超)の子会社からの配当(関連法人株式等)は、原則として「配当等の額の4%」を控除した残額が益金不算入になります。ただし控除額は「その事業年度の支払利子等の合計額の10%」が上限です(令和2年度改正)。借入で株式を取得した場合は、この負債利子控除に留意してください。

4. 税務メリット②:グループ法人税制

持株会社が子会社を100%保有(完全支配関係)すると、グループ内の法人にグループ法人税制が強制適用されます。これは、100%グループを実質的に一体とみて課税する仕組みで、主なものは次のとおりです。

  • 資産の譲渡損益の繰り延べ——100%グループ内で一定の資産(帳簿価額1,000万円以上の固定資産・土地・有価証券等)を譲渡しても、その譲渡損益はいったん繰り延べられ、グループ外に出るときまで課税されません。グループ内での事業・資産の再配置がしやすくなります。
  • 寄附金・受贈益の損益不算入——100%グループ内(法人による完全支配関係)での寄附は、支出側で全額損金不算入、受領側で全額益金不算入となり、グループ内での資金移動が課税なしで行えます。
  • 受取配当等の全額益金不算入——3で述べたとおり、完全子法人株式等の配当は負債利子控除もなく全額益金不算入です。

これらにより、持株会社をトップに置いた100%グループは、内部での資金・資産の移動にかかる課税を抑えながら、グループ全体を機動的に経営できます。ただしグループ法人税制は「選べる制度」ではなく、完全支配関係があれば自動的に適用される点に注意してください。

5. 事業承継での効果と最大の落とし穴(株式等保有特定会社)

持株会社化が事業承継で注目される最大の理由は、将来の株価上昇を持株会社で受け止め、オーナー個人の相続財産の膨張を抑えられることにあります。事業会社が成長して価値が上がっても、その上昇分はまず持株会社の株価に反映され、オーナーは持株会社株式を通じて間接的に保有する形になります。持株会社の株式を計画的に後継者へ移していけば、承継の道筋を整えやすくなります。

ところが、ここに最大の落とし穴があります。取引相場のない株式(自社株)の相続税評価では、会社の総資産に占める株式等の割合が50%以上になると、その会社は「株式等保有特定会社」に該当します(財産評価基本通達189-3)。持株会社は、資産の大半が「子会社株式」であるため、放っておくと株式等保有特定会社に当たりやすいのです。

株式等保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式(会社の資産を相続税評価で洗い替えて評価する方法。S1+S2方式の選択も可)で評価され、利益や配当の水準が低いほど株価を抑えられる類似業種比準方式が使えなくなります。優良企業ほど純資産価額が大きくなりやすく、「株価対策のつもりが、かえって株価が高止まりした」という事態になりかねません。

💡 持株会社化で株価対策を狙うなら、株式等保有特定会社に該当しないよう、株式以外の資産(不動産や事業)を持株会社に持たせる事業持株会社(自らも事業を営む形)にするなどの設計(いわゆる「株特外し」)を、実行の前に検討する必要があります。ここを外すと効果が反転するため、持株会社化の成否を分ける最重要ポイントです。

6. 持株会社化の失敗と王道

❌ 持株会社化でやってしまいがちな失敗
  • 「株価が下がるらしい」という理由だけで作り、株式等保有特定会社に該当して逆に株価が高止まり
  • 目的(承継か・資金化か・グループ経営か)が曖昧なまま組織再編を実行し、狙った効果が出ない
  • 株式移転・株式交換の税制適格の要件を満たさず、想定外の譲渡益課税が生じる
  • 借入で株式を買い取ったが、返済原資(子会社からの配当)と負債利子控除の設計が甘い
  • 作った後の議決権・後継者への株式移転計画が描けておらず、承継が進まない
⭕ 持株会社化を活かす王道
  • 目的を先に決める——事業承継の株価対策なのか、グループ経営の効率化なのか、M&Aの受け皿なのかを明確にする
  • 実行前に現状の株価を評価し、再編後に株式等保有特定会社に当たらないかを試算する
  • 株式移転・株式交換は税制適格の要件(対価要件・完全支配関係の継続等)を満たすよう設計する
  • 受取配当等の益金不算入・グループ法人税制を前提に、子会社からの配当で資金を集約する設計にする
  • 役員退職金・生前贈与・事業承継税制など他の対策と一体で、承継の全体像を描く

よくある質問(FAQ)

持株会社化すれば必ず自社株の相続税評価が下がりますか?

必ずではありません。持株会社は資産の大半が子会社株式になりやすく、総資産に占める株式等の割合が50%以上になると「株式等保有特定会社」に該当し、原則として純資産価額方式で評価されます(財産評価基本通達189-3)。この場合、利益水準の低い会社ほど有利な類似業種比準方式が使えず、かえって株価が高止まりすることもあります。実行前に評価を試算し、株特会社に当たらない設計にすることが重要です。

子会社からの配当に税金はかからないのですか?

持株会社が子会社を100%保有していれば、その配当は「完全子法人株式等」として全額が益金不算入となり、法人税は原則かかりません(法人税法23条)。保有割合が3分の1超100%未満(関連法人株式等)なら負債利子を控除した残額、5%超3分の1以下なら50%、5%以下なら20%が益金不算入です。100%保有かどうかで扱いが大きく変わります。

持株会社は現金がなくても作れますか?

作れます。株式移転という手法では、オーナーが持つ事業会社株式を新設の持株会社に移し、対価として持株会社の株式を受け取るため、現金は不要です。税制適格の要件を満たせばその時点で課税は生じません(課税の繰り延べ)。一方、持株会社が銀行借入で株式を買い取る方法では、オーナーに譲渡所得税がかかる代わりに個人へ現金が入ります。

グループ法人税制は選んで適用するものですか?

いいえ。100%の完全支配関係があれば自動的に適用されます(選択制ではありません)。100%グループ内の一定資産の譲渡損益の繰り延べ、寄附金・受贈益の損益不算入、受取配当等の全額益金不算入などが強制的に適用されるため、100%子会社を作る際は、これらの効果を前提に設計してください。

持株会社化と事業承継税制は併用できますか?

設計次第で組み合わせられます。持株会社の株式について事業承継税制(納税猶予)の適用を検討する場合、資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないための事業実態の要件などがあり、株式等保有特定会社の論点と合わせて慎重な設計が必要です。持株会社化・自社株評価・事業承継税制・役員退職金は、一体で検討するのが実務の王道です。

8. まとめ

持株会社化(ホールディングス化)は、事業承継の株価対策・グループ経営・M&Aの受け皿を一度に実現できる、オーナー経営者の王道の再編手法です。要点は次のとおりです。

  • 目的は事業承継・株価対策/所有と経営の分離/グループ経営。税務メリットはそれを後押しする仕組みで、目的が先。
  • 作り方は株式移転・株式交換・現物出資・株式譲渡の4手法。承継目的では現金不要の株式移転が基本(税制適格なら課税繰延)。
  • 税務メリットは2つ。①受取配当等の益金不算入(100%子会社なら配当全額が非課税・法人税法23条)②グループ法人税制(100%グループの資産譲渡損益の繰延・寄附の損益不算入)。
  • 最大の落とし穴は株式等保有特定会社(総資産の株式等50%以上・財産評価基本通達189-3)。該当すると類似業種比準が使えず株価が高止まりするため、実行前の評価試算と「株特外し」の設計が成否を分ける。

「持株会社化で自社株の評価がどう変わるか試算したい」「株式移転で承継の道筋を作りたい」「株式等保有特定会社に当たらない設計にしたい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、持株会社化の設計から自社株評価、受取配当等の益金不算入・グループ法人税制の活用、役員退職金・生前贈与・事業承継税制との一体設計まで伴走します。組織再編は登記後の後戻りが難しいため、実行を決める前のお早めの段階でご相談ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、持株会社化(ホールディングス化)に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。組織再編税制の適格判定・自社株評価・株式等保有特定会社の該当性は、資産構成・保有割合・事業実態等の事実関係により異なり、制度の要件は改正により変わることがあります。実際の設計・実行にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月14日

持株会社化・自社株の株価対策は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、持株会社化の設計から自社株評価、受取配当等の益金不算入・グループ法人税制の活用、役員退職金・生前贈与・事業承継税制との一体設計まで伴走します。組織再編は登記後の後戻りが難しいため、実行を決める前のお早めの段階でご相談ください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。