年末調整のやり方を税理士が解説|対象者・必要書類・スケジュールと令和8年分の改正点【2026年版】

毎年10月を過ぎると、従業員に配る申告書の準備や控除証明書の回収で、経理・総務の現場は一気に慌ただしくなります。年末調整は「会社が、従業員一人ひとりの1年間の所得税を精算する」手続きであり、ミスがあれば従業員の手取りにも、会社の源泉徴収義務にも直結します。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、毎年この時期は給与計算・年末調整のご相談が最も増える時期です。 本記事では、年末調整の対象者・必要書類・スケジュールから、令和8年分(2026年)の年末調整で押さえるべき改正点(基礎控除の引上げ・特定親族特別控除の新設)まで、税理士が網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 年末調整とは(3行サマリー)
  2. 2. だれが年末調整の対象になるのか
  3. 3. 従業員が会社に提出する書類(必要書類)
  4. 4. 年末調整でできる控除・できない控除
  5. 5. 年末調整のスケジュール(会社側の段取り)
  6. 6. 令和8年分(2026年)の年末調整で押さえる改正点
  7. 7. ありがちな失敗と王道の進め方
  8. 9. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 年末調整とは(3行サマリー)

  • 年末調整は、給与の支払者(会社)が、毎月の給与・賞与から源泉徴収してきた所得税の合計額と、その人が1年間に本当に納めるべき所得税額との過不足を精算する手続きです。
  • 多くの人は払いすぎになっているため、年末調整で還付(戻ってくる)となるのが一般的ですが、不足していれば追加で徴収されます。
  • 会社が行うため、対象となる給与所得者は原則として自分で確定申告をする必要がありません(医療費控除など一部を除く)。

毎月の源泉徴収は、あくまで「概算」の天引きです。扶養親族の増減、生命保険料の支払い、配偶者の所得などは年末にならないと確定しないため、1年分が固まる年末にまとめて正しい税額を計算し直す——これが年末調整の本質です。給与の支払者に源泉徴収と年末調整の義務があることは、所得税法第190条(年末調整)に定められています。

2. だれが年末調整の対象になるのか

年末調整の対象は、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人で、年末まで勤務している人が原則です。年の途中で入社した人も、年末に在籍していれば対象になります。

一方で、次のような人は年末調整の対象外となり、原則として自分で確定申告が必要です。

年末調整の対象外となる主なケース理由・取扱い
その年の給与の収入金額が2,000万円を超える人確定申告が必要(年末調整できない)
2か所以上から給与を受け、他社に扶養控除等申告書を提出している人主たる給与の会社で年末調整、合算は確定申告
年の途中で退職し、再就職していない人自分で確定申告して精算
災害減免法により源泉所得税の徴収猶予・還付を受けた人確定申告が必要
日本国内に住所等がない非居住者年末調整の対象外

パート・アルバイトであっても、扶養控除等申告書を提出していれば年末調整の対象です。逆に、扶養控除等申告書を提出していない人(乙欄適用者)は年末調整の対象になりません。

3. 従業員が会社に提出する書類(必要書類)

年末調整は、従業員から提出される申告書をもとに会社が計算します。令和7年分以降、申告書は次の構成に整理されています。

提出する申告書主に申告する控除
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除 など
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除(申告分)・小規模企業共済等掛金控除
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除・配偶者(特別)控除・特定親族特別控除・所得金額調整控除
(住宅ローン2年目以降)給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

これらの申告書に加えて、生命保険料・地震保険料・小規模企業共済等掛金(iDeCo含む)・住宅ローンの年末残高などは、保険会社や金融機関から届く控除証明書(原本または電子データ)の添付が必要です。証明書の紛失・回収漏れは、年末調整でつまずく最大の原因です。

💡 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、その年の最初の給与を受け取る前日までに提出するのが原則です。年末調整時にも、扶養親族の異動(結婚・出産・就職・死亡など)を反映して提出し直します。

4. 年末調整でできる控除・できない控除

年末調整ですべての控除ができるわけではありません。会社では精算できず、自分で確定申告しなければ受けられない控除があります。ここを取り違えると、受けられるはずの控除を取り逃します。

区分控除の種類
年末調整でできる控除基礎控除/配偶者控除・配偶者特別控除/扶養控除/特定親族特別控除/障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除/生命保険料控除/地震保険料控除/社会保険料控除/小規模企業共済等掛金控除(iDeCo含む)/所得金額調整控除/住宅ローン控除(2年目以降)
年末調整ではできない(確定申告が必要)控除医療費控除/寄附金控除(ふるさと納税。ワンストップ特例を除く)/雑損控除/住宅ローン控除(初年度)

つまり、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)、住宅ローン控除の初年度などは、年末調整とは別に自分で確定申告をしないと税金は戻ってきません。会社の年末調整だけで完結すると思い込んでいる人が非常に多いところです。

5. 年末調整のスケジュール(会社側の段取り)

会社側の段取りは、おおむね次の流れで進みます。期限を1日でも過ぎると、源泉所得税の納付や法定調書の提出が遅れ、不納付加算税・延滞税のリスクになります。

時期会社がやること
11月頃従業員へ各種申告書・控除証明書の回収依頼、記入してもらう
12月申告書をもとに年税額を計算し、12月分(または翌年1月分)の給与で過不足を還付・徴収
翌年1月10日12月分の源泉所得税を納付(給与等の支払日の翌月10日)
(納期特例の場合)翌年1月20日7〜12月分の源泉所得税をまとめて納付
翌年1月31日給与所得の源泉徴収票(税務署)・給与支払報告書(市区町村)・法定調書合計表を提出

源泉所得税の納付は「給与を支払った月の翌月10日まで」が原則ですが、給与の支給人員が常時10人未満の事業者は、届出により年2回にまとめて納付できる納期の特例を使えます。この場合、7〜12月分の納付期限は翌年1月20日です。

6. 令和8年分(2026年)の年末調整で押さえる改正点

令和7年度税制改正で、所得税の基礎控除や給与所得控除が見直され、新しい控除が創設されました。これらは令和7年分・令和8年分の年末調整に反映されます。今年末(令和8年分)の年末調整でも引き続き対応が必要です。

  • 基礎控除の引上げ:合計所得金額に応じて基礎控除が引き上げられ、合計所得金額132万円以下(給与収入では約200万円以下)の人は基礎控除額が最大95万円になりました(改正前は48万円)。
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ:給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。
  • 特定親族特別控除の新設:年齢19歳以上23歳未満で、合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入では123万円超188万円以下)の親族を扶養する人は、その所得に応じて最高63万円の控除を受けられます。いわゆる「大学生世代の子のアルバイト収入の壁」を緩和する控除です。
  • 扶養親族等の所得要件の見直し:扶養控除・配偶者控除などの対象となる親族の合計所得金額の要件が、48万円以下から58万円以下(給与収入では103万円→123万円)に引き上げられました。
💡 特定親族特別控除の適用を受けるには、従業員が「給与所得者の特定親族特別控除申告書」(基礎控除申告書等との兼用様式)を会社に提出する必要があります。様式や控除額は最新の国税庁「年末調整のしかた(令和8年分)」で必ず確認してください。

なお、令和8年度税制改正でも基礎控除の引上げ等の整備が行われ、令和8年12月1日から施行されています。年末調整の様式・計算は毎年更新されるため、その年分の最新の様式・手引きで処理することが大前提です。

7. ありがちな失敗と王道の進め方

年末調整は毎年のことだけに、慣れによるミスも起こりがちです。

❌ やりがちな失敗
  • 従業員からの申告書・控除証明書の回収が遅れ、12月の給与計算に間に合わない
  • 配偶者やアルバイトの子の「所得の見積額」を誤り、後で配偶者控除・扶養控除がやり直しになる
  • 医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン控除の初年度を、年末調整でできると思い込み放置する
  • 控除証明書の原本を紛失し、控除を受けられないまま申告してしまう
⭕ 王道の対応
  • 10月中に申告書と「控除証明書を集めてください」の案内を従業員へ早めに配る
  • 配偶者・扶養親族の「合計所得金額の見積り」を本人に正しく確認してもらう
  • 医療費控除・初年度の住宅ローン控除・ふるさと納税(ワンストップ未利用)は「確定申告で」と従業員に明確に案内する
  • 控除証明書は電子データ(マイナポータル連携・年調ソフト)で集め、紛失リスクと事務負担を減らす

特に近年は、控除証明書の電子データ取得と年末調整手続の電子化が進んでいます。紙の証明書の回収・保管をやめ、年調ソフトや給与システムに電子データで取り込めば、計算ミスと差し戻しを大きく減らせます。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「年末調整が毎年バタバタで、計算が合っているか不安」というご相談は、経理担当者の方から実際によく寄せられます。一般論として最初にお伝えするのは、ミスの大半は計算そのものより「申告書と証明書の回収の遅れ」から起きる、ということです。私たちが関与する場面でも、スケジュールの前倒しと電子化で、年末の事務負担そのものを軽くするところから一緒に整えています。

よくある質問(FAQ)

パート・アルバイトでも年末調整の対象になりますか?

なります。勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば、収入が少なくても年末調整の対象です。掛け持ちで他社にこの申告書を出している場合は、そちらの会社が主たる給与として年末調整します。

年の途中で転職した場合、年末調整はどうなりますか?

年末時点で在籍する会社が、前職分の源泉徴収票を合算して年末調整します。前職の源泉徴収票を必ず新しい勤務先に提出してください。年末までに再就職していない場合は、自分で確定申告して精算します。

医療費控除やふるさと納税は年末調整でできますか?

できません。医療費控除と、ワンストップ特例を使わないふるさと納税(寄附金控除)は、年末調整とは別に自分で確定申告が必要です。住宅ローン控除も初年度は確定申告、2年目以降は年末調整でできます。

年末調整を忘れた・間違えた場合はどうすればよいですか?

翌年1月末までに会社が気づけば、会社で年末調整をやり直せます。それ以降や、会社で対応できない場合は、従業員本人が確定申告(または還付申告)で精算します。

副業の収入も年末調整されますか?

されません。本業の給与は年末調整されますが、副業の所得は対象外です。給与以外の所得が年20万円を超える場合などは、別途確定申告が必要です。

9. まとめ

年末調整は、会社が従業員一人ひとりの1年間の所得税を精算する重要な手続きです。ポイントは次のとおりです。

  • 対象は扶養控除等申告書を提出し年末まで在籍する人。給与収入2,000万円超や2か所給与の一部は対象外で確定申告。
  • 必要書類は扶養控除等申告書・保険料控除申告書・基礎控除等申告書(4種兼用)と各種控除証明書。回収の遅れが最大のつまずき。
  • 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ除く)・住宅ローン初年度は年末調整できない=自分で確定申告。
  • 源泉所得税の納付は翌月10日(納期特例は1月20日)、源泉徴収票・給与支払報告書は翌年1月31日が提出期限。
  • 令和8年分は基礎控除の引上げ(最大95万円)・給与所得控除の最低65万円・特定親族特別控除(最高63万円)を最新様式で反映する。

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出典・参考資料

  • 所得税法 第190条(年末調整)、第194条〜第196条(扶養控除等申告書等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2662「年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm
  • 国税庁「年末調整がよくわかるページ」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
  • 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
ご利用上の留意事項
本記事は、年末調整に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。控除の適用可否・申告書の様式・控除額は個別事情や年分により異なります。制度内容は変更される場合があります。実際の年末調整・申告にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月9日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp