二次相続とは?一次相続で配偶者に寄せると税金が増える理由を税理士が解説【2026年版】

「とりあえず一次相続は、配偶者の税額軽減を使って母にすべて相続させれば相続税はかからない」——この考え方は、実は次の相続(二次相続)で家族の税負担を大きく増やすことがあります。税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「一次相続では税金がほとんどかからなかったのに、母が亡くなった二次相続で想定外の相続税が出た」というご相談は少なくありません。 相続税は、一次相続(父などが亡くなったとき)だけでなく、二次相続(残された配偶者が亡くなったとき)まで見据えて設計することで、家族全体の税負担を大きく変えられます。本記事では、二次相続が重くなる3つの理由、一次で配偶者に寄せた場合と法定相続分どおりに分けた場合の税額シミュレーション、そして小規模宅地等の特例や生命保険を使った対策までを、相続を強みとする税理士が網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 二次相続とは何か(3行サマリー)
  2. 2. 二次相続が重くなる3つの理由
  3. 3. 前提となる制度:配偶者の税額軽減
  4. 4. 一次で寄せる vs 法定相続分どおり:税額シミュレーション
  5. 5. 二次相続を軽くする5つの対策
  6. 6. 二次相続対策の失敗と王道
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 二次相続とは何か(3行サマリー)

  • 一次相続と二次相続——父母のうち先に亡くなった方の相続が「一次相続」、残された配偶者が亡くなったときの相続が「二次相続」です。夫婦の財産は最終的に子へ移るため、一次と二次はワンセットで考えます。
  • 二次相続は税負担が重くなりやすい——二次相続では配偶者がいないため、後述する「配偶者の税額軽減」が使えません。加えて相続人が1人減るため基礎控除も小さくなり、同じ財産額でも税額が跳ね上がります。
  • 一次の分け方が二次の税額を決める——一次相続で配偶者に財産を寄せすぎると、その財産がそのまま二次相続の課税対象になります。一次相続の遺産分割の段階で、二次まで見据えたシミュレーションをすることが、家族全体の相続税を最小化する鍵です。
💡 「一次相続は配偶者の税額軽減で税金ゼロにできる」は事実です。しかしそれは“先送り”であって“消滅”ではありません。配偶者に寄せた財産は、二次相続でより高い税率と小さい基礎控除のもとで課税されます。目先の一次相続の税額だけを見て判断すると、家族全体では損をすることがあります。

2. 二次相続が重くなる3つの理由

二次相続の負担が一次相続より重くなりやすいのには、明確な理由があります。

#理由内容
配偶者の税額軽減が使えない一次相続では配偶者が取得した財産のうち「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」の多い方まで相続税がかからない(相続税法19条の2)。二次相続では配偶者がいないため、この大きな軽減が一切使えない
基礎控除・生命保険の非課税枠が小さくなる基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(相続税法15条)。二次相続では相続人が1人(配偶者分)減るため、基礎控除が600万円縮む。生命保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」(相続税法12条1項5号)も同様に縮む
税率が上がりやすい相続税は超過累進税率。一次で配偶者に寄せた財産が二次で子に集中すると、一人あたりの取得額が増えて高い税率帯に入りやすい。配偶者自身がもともと持っていた固有財産も二次相続で合算される
💡 見落とされやすいのが③の「配偶者の固有財産」です。母名義の預金や母が実家から相続した財産などは、二次相続で父から引き継いだ財産に上乗せされて課税されます。一次相続で母に多く寄せるほど、二次相続の“母の財産”が膨らむ構造です。

3. 前提となる制度:配偶者の税額軽減

二次相続を理解する土台が、一次相続で使える「配偶者の税額軽減」です。

配偶者が相続した財産のうち、次のいずれか多い方の金額までは相続税がかかりません(相続税法19条の2)。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額(子がいる場合は課税価格の合計額の2分の1)

つまり、配偶者は最低でも1億6,000万円、法定相続分が1億6,000万円を超えるほどの資産家であれば法定相続分まで、相続税ゼロで取得できます。非常に強力な制度ですが、この軽減をフルに使って配偶者に寄せることが、必ずしも家族全体で有利にならない——これが二次相続対策の出発点です。

⚠️ 配偶者の税額軽減を受けるには、原則として相続税の申告期限までに遺産分割を確定させ、相続税の申告書を提出する必要があります。「税額がゼロだから申告しない」は誤りで、軽減を使う場合は税額ゼロでも申告が必要です。

4. 一次で寄せる vs 法定相続分どおり:税額シミュレーション

同じ財産でも、一次相続の分け方で二次相続まで含めた税額がどう変わるかを、単純化したモデルで比較します。

前提:父の財産2億円、相続人は母・子2人(一次相続)。母は固有財産を持たず、一次で取得した財産をそのまま二次相続で子2人が相続する(小規模宅地等の特例・二次までの財産の増減・生活費による取り崩しは考慮しない単純モデル)。

なお、一次相続の相続税の総額は、実際の分け方に関係なく法定相続分で計算するため、どちらのパターンも2,700万円で共通です(基礎控除4,800万円=3,000万円+600万円×3人)。

パターンA:一次で母が全額(2億円)取得パターンB:法定相続分どおり(母1億・子各5,000万円)
一次の納税額母は税額軽減で2,160万円軽減され540万円(2億円のうち1.6億円まで非課税・超過0.4億円分のみ課税)/子0円=540万円母は1億円≦1.6億円で全額軽減0円/子2人1,350万円1,350万円
二次の課税財産2億円1億円
二次の納税額(子2人・基礎控除4,200万円)課税遺産1億5,800万円→3,340万円課税遺産5,800万円→770万円
一次+二次の合計3,880万円2,120万円

このモデルでは、一次で配偶者に全額寄せたパターンAより、法定相続分どおりに分けたパターンBの方が、家族全体で約1,760万円も相続税が少なくなります。一次相続の税額だけを見るとAが有利に見えますが、二次まで含めると逆転するのが二次相続の怖さです。

💡 これはあくまで単純化したモデルです。実際には配偶者の年齢・固有財産・小規模宅地等の特例の使い方・二次相続までの期間や財産の変動で最適解は変わり、「常に法定相続分が正解」ではありません。重要なのは、一次相続の遺産分割を決める前に、二次相続まで含めた試算を行うことです。

5. 二次相続を軽くする5つの対策

一次相続の分け方に加えて、次の対策を組み合わせます。

  • 一次で配偶者に寄せすぎない——配偶者の税額軽減はフルに使うのではなく、二次相続の試算とセットで「どこまで配偶者に、どこから子に」の最適点を探ります。
  • 値上がりする財産・収益を生む財産は子へ——将来値上がりが見込まれる株式や、賃料収入を生む不動産を一次で子へ渡せば、値上がり益や蓄積する収益が二次相続の課税財産に乗るのを防げます。
  • 小規模宅地等の特例を二次で使えるように設計——自宅の宅地は特定居住用宅地等として330㎡まで評価額を80%減額できます(租税特別措置法69条の4)。二次相続で子が自宅を相続する場合、同居・生計一などの要件があるため、誰が自宅を引き継ぐかを一次の段階から見据えます。
  • 生命保険の非課税枠を活かす——死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税(相続税法12条1項5号)。二次相続では相続人が減り枠も縮むため、母を契約者・被保険者とする保険で子が受取人となる設計など、二次で使える枠を意識します。
  • 配偶者の存命中に生前贈与を進める——暦年課税や相続時精算課税を使い、母の財産を計画的に子・孫へ移すことで、二次相続の課税財産そのものを圧縮します。
💬 実務の現場から
一次相続のご相談で最初にお伝えするのは、「今回の相続税をゼロにすること」がゴールではない、という点です。目先の税額だけを見て配偶者にすべて寄せてしまうと、数年後の二次相続で後悔される方が少なくありません。一般論として、一次と二次を通した“家族全体の手取り”で考えることが、結果的にいちばん税負担を軽くします。

6. 二次相続対策の失敗と王道

❌ 二次相続でやってしまいがちな失敗
  • 一次相続の税額をゼロにすることだけを目的に、配偶者へ全財産を寄せる
  • 配偶者自身の固有財産が二次相続で合算されることを見落とす
  • 二次相続では基礎控除・生命保険の非課税枠・配偶者の税額軽減がまとめて縮む(消える)ことを知らない
  • 自宅を誰が引き継ぐか決めず、二次相続で小規模宅地等の特例が使えなくなる
  • 配偶者が高齢で、生前贈与などの二次対策に着手する時間が残されていない
⭕ 二次相続を軽くする王道
  • 一次相続の遺産分割を決める前に、二次相続まで含めた税額シミュレーションを行う
  • 値上がり・収益を生む財産は一次で子へ、生活資金は配偶者へと性質で振り分ける
  • 小規模宅地等の特例が二次でも使えるよう、自宅の承継者を早めに固める
  • 生命保険・生前贈与で、配偶者存命のうちに二次の課税財産を圧縮する
  • 配偶者の税額軽減は「使い切る」のではなく「最適点まで使う」と考える

よくある質問(FAQ)

一次相続で配偶者の税額軽減を使えば相続税はゼロにできると聞きました。それで問題ないのでは?

一次相続の税額はゼロにできますが、それは課税の“先送り”です。配偶者に寄せた財産は、配偶者が亡くなる二次相続で課税されます。二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除も相続人が1人減るぶん小さくなるため、同じ財産でも税負担が重くなります。一次と二次を通して考えることが大切です。

配偶者の税額軽減はいくらまで非課税になりますか?

配偶者が取得した財産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い方までです(相続税法19条の2)。多くのご家庭では1億6,000万円まで非課税になりますが、これをフルに使うと二次相続の課税財産が膨らむため、二次まで含めた試算のうえで使う金額を決めるのが賢明です。

二次相続では、どのくらい相続税が増えるのですか?

ケースによりますが、本記事のモデル(財産2億円・子2人)では、一次で配偶者に全額寄せた場合と法定相続分どおりに分けた場合とで、一次+二次の合計が約1,760万円変わりました。財産構成・相続人の数・配偶者の固有財産によって差は大きく変動するため、個別のシミュレーションが不可欠です。

小規模宅地等の特例は二次相続でも使えますか?

使えますが、要件に注意が必要です。特定居住用宅地等として自宅の宅地を330㎡まで80%減額できるのは、配偶者が取得する場合は無条件ですが、二次相続で子が取得する場合は同居していた・生計を一にしていた等の要件を満たす必要があります(租税特別措置法69条の4)。誰が自宅を引き継ぐかを一次の段階から設計しておくことが重要です。

二次相続対策はいつから始めればよいですか?

一次相続が起きる前、できれば配偶者がお元気なうちからです。生前贈与や生命保険の活用、自宅の承継者の検討は時間をかけるほど選択肢が広がります。一次相続が起きてしまった後でも、遺産分割の段階で二次を見据えた分け方を選ぶことで負担を軽減できます。いずれの局面でも、早いほど打てる手が多くなります。

8. まとめ

二次相続は、一次相続とワンセットで設計することで家族全体の相続税を大きく変えられます。要点は次のとおりです。

  • 二次相続は配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除・生命保険の非課税枠も縮むため税負担が重くなりやすい。
  • 一次相続で配偶者に財産を寄せすぎると、その財産と配偶者の固有財産が二次相続で高い税率のもとに課税される。
  • 一次相続の遺産分割を決める前に、二次まで含めた税額シミュレーションを行うことが最重要。
  • 値上がり・収益財産は子へ、小規模宅地等の特例・生命保険・生前贈与を組み合わせて二次の課税財産を圧縮する。
  • 配偶者の税額軽減は「使い切る」ではなく「最適点まで使う」。

「一次と二次を通して相続税を最小化したい」「自宅や自社株を誰に引き継がせるか決めたい」「配偶者が元気なうちに対策を始めたい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、一次・二次を通した遺産分割シミュレーションから、小規模宅地等の特例・生命保険・生前贈与・遺言までを一体で設計し、伴走します。遺産分割は一度確定すると後戻りが難しいため、分け方を決める前のご相談をおすすめします。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、二次相続に関する一般的な情報提供であり、個別の相続・税務判断に代わるものではありません。相続税額は財産の構成・評価・相続人の数・配偶者の固有財産・特例の適用可否等の事実関係により大きく異なり、本文中のシミュレーションは制度の理解を助けるための単純化したモデルです。制度の要件は改正により変わることがあります。実際の遺産分割・申告にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月17日

一次・二次を通した相続税シミュレーションは KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、一次・二次を通した遺産分割シミュレーションから、小規模宅地等の特例・生命保険・生前贈与・遺言までを一体で設計し伴走します。遺産分割は一度確定すると後戻りが難しいため、分け方を決める前のお早めの段階でご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。