重加算税が在留資格に響く時代へ|出入国在留管理庁と国税庁の情報連携(2026年7月1日適用開始)と「経営・管理」3,000万円要件を税理士が解説
- 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 2. 情報連携の中身を条文レベルで読む
- 3. 前提知識:重加算税とは何か(国税通則法第68条)
- 4. あわせて押さえる:「経営・管理」の許可基準が令和7年10月に改正済み
- 5. 更新時に見られる「公租公課の履行状況」
- 6. では、会社と経営者は何をすべきか
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 令和8年6月30日付で、出入国在留管理庁次長と国税庁次長の連名により「在留外国人に関する出入国在留管理庁と国税庁との間の情報連携に関する確認書」(入管庁管第2537号・課総3-1)が発出され、適用開始日は令和8年7月1日とされました。従前の確認書(令和2年6月18日付 入管庁管第2249号・課総5-1)は廃止されています
- 同日付の補足書簡1(入管庁管第2538号・課総3-2)で、国税庁が入管庁に提供する情報は、当分の間、①消費税の不正還付に関して重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のもの ②所得税・法人税等の重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のものとされました
- 逆に入管庁から国税庁へは、「経営・管理」又は「高度専門職1号ハ」の在留資格をもって在留する外国人などの情報が提供されます(補足書簡2)。税と在留管理は、双方向でつながりました
2. 情報連携の中身を条文レベルで読む
2-1. 確認書が定めた基本方針
確認書は、本情報連携の目的を「外国人の在留の公正な管理並びに内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現を図ること」と定めています。そのうえで、国税庁と入管庁がそれぞれ行う措置を次のように書き分けています。
国税庁が行う措置 入管法第61条の7に基づく入管庁の求めに応じ、入管法別表第一又は別表第二に掲げる在留資格をもって在留する外国人のうち、納税の義務に関する悪質な違反があったものについて、入管庁に対して当該外国人に関する情報を提供する。また、入管庁から提供を受けた在留外国人の情報を、内国税の賦課及び徴収に係る事務に活用する。
出入国在留管理庁が行う措置 国税庁から提供を受けた情報を活用し、在留外国人が在留資格に係る諸申請に及んだ際に慎重な審査を行う。また、国税通則法第74条の12・国税徴収法第146条の2に基づく国税庁の求めに応じ、処分結果に関する通知のほか、一定の在留資格や在留期間に該当する在留外国人に関する情報を提供する。
2-2. 具体的に何が渡るのか(補足書簡1・2)
補足書簡1は、入管庁が国税庁に求める情報を「当分の間」次の2つに限定しています。
- 消費税の不正還付に関して重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のもの
- 所得税・法人税等の重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のもの
そして補足書簡1の第2項が、本記事の主題です。
逆方向、つまり入管庁から国税庁に渡る情報は、補足書簡2で次のように整理されています。
- 「経営・管理」又は「高度専門職1号ハ」の在留資格をもって在留する外国人であって、一定のもの
- 入管法別表第一に掲げる在留資格(「外交」「公用」「高度専門職」「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」及び「家族滞在」を除く)をもって在留する外国人のうち、一定のもの
なお、補足書簡1の第5項では、入管庁が国税庁の求めに応じるにあたり、申請人等へ処分結果を通知する前に国税庁に通知することとされています。在留資格の許否が申請人本人に届く前に、国税当局がそれを知る建て付けです。
3. 前提知識:重加算税とは何か(国税通則法第68条)
情報連携の入口に置かれたのは「重加算税」です。ここは正確に押さえておく必要があります。
重加算税は、単なる計算間違いや解釈の相違では課されません。国税通則法第68条は、納税者が課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽・仮装したところに基づき申告等をしていた場合に課すと定めています。つまり故意の作為があった場合の制裁です。
- 35%……過少申告加算税に代えて課される場合(同条第1項)
- 40%……無申告加算税に代えて課される場合(同条第2項)
- 35%……不納付加算税に代えて課される場合(同条第3項)
(出典:国税通則法第68条第1項・第2項・第3項)
さらに同条第4項により、一定の場合には上記に10%が加算されます。加算の対象となるのは、①期限後申告書等の提出等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、同じ税目について無申告加算税等を課され又は徴収されたことがある場合、②その国税の課税期間の初日の属する年の前年及び前々年に課税期間が開始した同じ税目について特定無申告加算税等を課されたことがあり、又は賦課決定をすべきと認める場合です。
つまり、繰り返した場合は最大45%になります。ここに、延滞税と本税が乗ります。
そして今回、この処分が在留資格の審査材料になりました。金銭的な負担に、事業を日本で続けられるかどうかというリスクが上乗せされたことになります。
重加算税は「悪質な脱税をした人にだけ課されるもの」と思われがちですが、実務でご相談を受ける場面はもう少し手前にあります。売上の計上時期を意図的にずらした、実体のない外注費を計上した、在庫を意図的に落とした——本人には「よくある調整」の感覚でも、隠蔽・仮装と評価されれば重加算税の領域に入ります。外国人経営者の場合、日本の税務慣行に馴染みがないまま前任の担当者のやり方を引き継いでいて、後から気づくというケースもあります。在留資格まで連動する以上、グレーな処理を放置するコストは、これまでとは意味が変わりました。
4. あわせて押さえる:「経営・管理」の許可基準が令和7年10月に改正済み
今回の情報連携は、単独で出てきたものではありません。その前段として、在留資格「経営・管理」の許可基準そのものが令和7年10月16日に大きく引き上げられています。
出入国在留管理庁は、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(平成2年法務省令第16号)および「出入国管理及び難民認定法施行規則」(昭和56年法務省令第54号)の一部を改正し、同日から施行しました。
| 項目 | 従前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 資本金・出資総額 | 500万円 | 3,000万円 |
| 経歴・学歴 | なし | 経営管理経験3年以上又は修士相当以上の学位 |
| 雇用義務 | なし(資本金の代替要件として2人以上の雇用) | 1人以上の常勤職員の雇用 |
| 日本語能力 | なし | 申請者又は常勤職員が相当程度の日本語能力 |
| 専門家の確認 | なし | 事業計画書に専門的知識を有する者の確認 |
(出典:出入国在留管理庁「「経営・管理」許可基準に係る見直しについて」)
各項目の中身を補足します。
常勤職員(第2号イ) 1人以上の常勤職員の雇用が必要です。ここでいう常勤職員の対象は、日本人、特別永住者、及び入管法別表第二の在留資格をもって在留する外国人(「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」)に限られ、別表第一の在留資格をもって在留する外国人は対象になりません。
資本金の額等(第2号ロ) 3,000万円以上が必要です。事業主体が法人である場合は株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社・合資会社・合同会社の出資の総額を指します。事業主体が個人である場合は資本金を用意するのではなく、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指します。
日本語能力(第3号) 申請者又は常勤職員のいずれかが「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力を有することが必要です。日本人又は特別永住者以外については、次のいずれかに該当することを確認するとされています。なお、この第3号でいう常勤職員には、別表第一の在留資格をもって在留する外国人も含まれます。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること
- BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得していること
- 中長期在留者として20年以上我が国に在留していること
- 我が国の大学等高等教育機関を卒業していること
- 我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること
経歴(第4号) 経営管理又は申請に係る事業の業務に必要な技術・知識に係る分野に関する博士・修士若しくは専門職の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む)を取得していること、又は事業の経営・管理について3年以上の職歴を有することが必要です。在留資格「特定活動」に基づく起業準備活動の期間も算入されます。
事業計画書の確認(施行規則別表第三) 在留資格決定時に提出する事業計画書について、その計画に具体性・合理性が認められ、かつ実現可能なものであることを評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者の確認が義務付けられました。施行日時点で該当するのは、中小企業診断士・公認会計士・税理士の3者です。
経過措置と、資本金だけでは決まらないこと
すでに「経営・管理」で在留している方については、施行日から3年を経過する日(令和10年10月16日)までの間の在留期間更新許可申請では、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や適合する見込み等を踏まえて許否判断が行われます。
3年経過後については改正後の基準に適合する必要がありますが、出入国在留管理庁は公表しているQ&A(令和8年6月26日更新)で、「3,000万円を準備できなければ帰国しなければならない」というのは事実ではないと明確に答えています。適合しない場合であっても、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新時までに改正後の基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮して許否判断を行うとしています。
つまり、「納税をきちんとしているか」が、資本金の不足を埋める材料として明示的に位置づけられているということです。ここが今回の情報連携と直結します。
5. 更新時に見られる「公租公課の履行状況」
出入国在留管理庁は、在留期間更新時に確認する公租公課の支払義務の履行状況を、具体的に列挙しています。税理士の目から見ると、これはそのまま会社の税務・労務の健康診断リストです。
労働保険の適用状況 雇用保険の被保険者資格取得の履行/雇用保険の保険料納付の履行/労災保険の適用手続等の状況
社会保険の適用状況 健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格取得の履行/上記社会保険料納付の履行
事業所として納付すべき国税・地方税の納付状況
法人の場合 国税=源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税 地方税=法人住民税(都道府県民税・市区町村民税)、法人事業税
個人事業主の場合 国税=源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税 地方税=個人住民税(都道府県民税・市区町村民税)、個人事業税
(出典:出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について」)
さらに、次の点も明記されています。
- 業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱う
- 改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは原則として認められない
- 在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められない
- 事業に必要な許認可の取得状況等を証する資料の提出を求める
- 施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」「高度専門職1号ハ」又は「高度専門職2号」(「経営・管理」活動を前提とするもの)からの永住許可及び「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への在留資格変更許可は認められない
Q&Aでは、経営状況や納税状況に問題がなくても、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令の遵守状況、社会保険・雇用保険・労災保険等の加入状況や納付状況、事業に必要な許認可の取得状況などに問題がある場合には、審査において消極的な要素と判断され、更新が認められない事例もあるとされています。
6. では、会社と経営者は何をすべきか
- 決算と申告だけは出しているが、源泉所得税の納期の特例を使ったまま納付を忘れている月がある
- 役員1人の会社なので、社会保険の適用手続をしていない(法人は原則として強制適用です)
- 前任の税理士のやり方をそのまま引き継ぎ、中身を確認しないまま外注費や交際費を計上している
- 税務調査で指摘を受けた際、争わず早く終わらせたいという理由だけで重加算税を受け入れてしまう
- 自宅を本店にしたまま、実体のある事業所を確保していない
- 更新申請の3か月前になってから、滞納がないかを初めて確認する
- 納税証明書(その3・その4)を毎年1回、更新申請とは関係なく取得する。滞納・未納がその場でわかります
- 源泉所得税・消費税・法人住民税・法人事業税・社会保険料を同じ一覧で管理する。在留審査は税目を横断して見ます
- 税務調査で隠蔽・仮装を指摘されたときは、その事実認定が正しいのかを必ず確認する。重加算税は「早く終わらせるために受け入れる」性質の処分ではなくなりました
- 資本金3,000万円の要件に届いていない場合は、「良好な経営状況」と「納付義務の適切な履行」を書面で示せる状態を作る。決算書・納税証明書・社会保険の加入状況がその材料です
- 事業計画書の確認が必要な場面では、税理士・公認会計士・中小企業診断士に事業計画の内容を確認してもらい、入管への申請手続そのものは弁護士又は行政書士に依頼するという役割分担をとる
- 令和10年10月16日の経過措置の終了から逆算して、いつまでに何を満たすかの工程表を作る
7. まとめ
- 令和8年7月1日、出入国在留管理庁と国税庁のあいだで、在留外国人に関する新しい情報連携が始まりました(確認書=令和8年6月30日付 入管庁管第2537号・課総3-1)
- 国税庁から入管庁へ渡るのは、当分の間、①消費税の不正還付に係る重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のもの ②所得税・法人税等の重加算税の賦課決定処分を行った事案のうち一定のものです
- 重加算税の賦課決定処分を受けた機関を運営する者は、「経営・管理」の在留資格基準において特に消極的な要素として評価される旨が明示される——これが補足書簡1に書かれた最も重い一文です
- 逆に入管庁から国税庁へは、「経営・管理」「高度専門職1号ハ」の在留資格者などの情報が渡ります。連携は双方向です
- 背景として、「経営・管理」の許可基準は令和7年10月16日に改正済みです(資本金3,000万円、常勤職員1人以上、日本語B2相当以上、経営管理経験3年以上又は修士相当以上の学位、事業計画書への専門家の確認)
- ただし資本金3,000万円に届かないだけで一律に不許可となるものではありません。出入国在留管理庁は、経営状況が良好で法人税等の納付義務を適切に履行していることを考慮要素として明記しています
- 更新時には、源泉所得税・法人税・消費税・法人住民税・法人事業税・社会保険・労働保険の履行状況が確認されます
外国人経営者にとって、日々の納税と社会保険が、事業の継続そのものと同じ意味を持つようになったということです。決算期だけの付き合いでは間に合いません。
よくある質問(FAQ)
重加算税を受けたら、必ず在留資格が取り消されるのですか?
情報連携の対象になるのは外国人経営者だけですか?
すでに「経営・管理」で在留していますが、資本金が500万円です。どうなりますか?
事業計画書の確認は、税理士に頼めばよいのですか?
自宅を事務所にしていますが、問題がありますか?
個人事業主でも3,000万円の資本金が必要ですか?
重加算税は何%ですか?
更新申請の前に、自分で確認できることはありますか?
出典・参考資料
- 国税庁「在留外国人に関する出入国在留管理庁と国税庁との間の情報連携に関する確認書」(令和8年6月30日付 入管庁管第2537号・課総3-1)
- 国税庁「在留外国人に関する出入国在留管理庁と国税庁との間の情報連携に関する確認書に係る補足書簡1」(令和8年6月30日付 入管庁管第2538号・課総3-2)
- 国税庁「在留外国人に関する出入国在留管理庁と国税庁との間の情報連携に関する確認書に係る補足書簡2」(令和8年6月30日付 入管庁管第2539号・課総3-3)
- 出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」(Q&Aは令和8年6月26日更新)
- 出入国在留管理庁「「経営・管理」許可基準に係る見直しについて」(改正概要)
- 出入国在留管理庁「「経営・管理」の許可基準の改正等について」(令和7年10月10日公表・同月30日更新)
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第61条の7(関係行政機関の協力)/第7条第1項第2号/別表第一・別表第二
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)/出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)別表第三
- 国税通則法(昭和37年法律第66号)第68条(重加算税)第1項・第2項・第3項・第4項/第74条の12(当該職員の事業者等への協力要請)
- 国税徴収法(昭和34年法律第147号)第146条の2(事業者等への協力要請)
- 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)第5条第6号
本記事は、国税庁及び出入国在留管理庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断・在留資格の審査結果に代わるものではありません。情報連携の対象となる事案の具体的な範囲は情報公開法第5条第6号に該当するとして公表されておらず、本記事もその範囲を推測していません。在留資格に関する許否判断は出入国在留管理庁の権限に属し、本記事の記載をもって許可・不許可を予測するものではありません。また、入管当局への申請書類の作成・提出代行は弁護士又は行政書士の業務であり、当法人が行うものではありません。実際の判断にあたっては最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月1日
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公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、日本法人の税務顧問、納税・社会保険の履行状況の棚卸し、税務調査で重加算税を指摘された場合の対応、事業計画の内容確認まで一体でご支援しています。なお入管当局への申請書類の作成・提出代行は弁護士又は行政書士の業務ですので、必要に応じて連携して対応します。更新時期の直前ではなく、期の途中でご相談ください。
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