令和9年度の税制改正で「なくなる」のはこの4つだけ|財務省が見直し事項一覧表を公表、結婚・子育て資金の一括贈与は廃止要望へ【2026年9月2日時点】
- 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 2. 見直し事項(廃止・縮減)の全4項目
- 3. 【本命】結婚・子育て資金の一括贈与は「令和9年3月31日」で廃止の要望
- 4. 【事業再編】認定実績ゼロで廃止――認定特別事業再編の登録免許税の軽減
- 5. 【被災地】東日本大震災の漁船に係る2つの特例
- 6. 実務でどう備えるか
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 財務省が令和9年度(2027年度)税制改正要望のページを公開しました。要望事項一覧表(全府省庁版)と並んで、「見直し事項一覧表(全府省庁版)」が掲載されています
- 見直し事項(廃止・縮減)を提出したのは、17府省庁のうち6機関だけです。金融庁・こども家庭庁・総務省・農林水産省・経済産業省・国土交通省。残る11機関は見直し事項を1件も出していません
- 重複(共同要望)を除くと、実質は4項目です。結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の廃止(贈与税)、東日本大震災の被災者の漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止、同・漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止、認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の登録免許税の軽減措置の廃止です
見直し事項一覧表は、各府省庁が「廃止・縮減してよい」と自ら申し出た項目を集めたものです。実際に廃止されるかどうかは、年末の与党税制改正大綱で方向が定まり、翌年の通常国会で法律が成立して初めて確定します。要望に入っただけの内容は、変更されることも、実現しないこともあります。本記事は2026年9月2日時点で財務省サイトに掲載されている資料の記載に基づくものです。
2. 見直し事項(廃止・縮減)の全4項目
見直し事項一覧表(全府省庁版)に掲載されている項目を、省略せずに全件掲げます。同じ項目を複数の府省庁が共同で要望している場合は、主管の府省庁を先に示しました。
① 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の廃止 税目=贈与税/主管=こども家庭庁/共同要望=金融庁
② 東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止 税目=登録免許税/農林水産省の単独要望
③ 東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止 税目=印紙税/農林水産省の単独要望
④ 認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の税率の軽減の見直し 税目=登録免許税/主管=経済産業省/共同要望=総務省・農林水産省・国土交通省
(出典:財務省「見直し事項一覧表(全府省庁版)」令和9年度。区分はいずれも「廃止・縮減」)
一覧表の金額欄は、4項目とも「平年度の増収見込額」「制度自体の減収額」「改正増減収額」のすべてが「―」または「0」と記載されています。つまり、廃止しても税収が目に見えて増えるわけではない項目が並んでいる、ということです。
見直し事項一覧表は、各府省庁が自ら申し出た項目のリストです。財務省や与党税制調査会が「これを廃止すべきだ」と判断する項目は、ここには載りません。年末の与党税制改正大綱に向けた議論のなかで、各府省庁が延長を求めている特例措置が縮減されることもあります。このリストは「廃止候補の全部」ではなく、「所管省庁自身が手放してよいと言った分」とお考えください。
3. 【本命】結婚・子育て資金の一括贈与は「令和9年3月31日」で廃止の要望
4項目のうち、個人の資産設計に直接関係するのはこの1本です。要望書を出しているのはこども家庭庁長官官房(総合政策担当)付少子化対策室、金融庁が共同要望に入っています。
要望の内容(原文)
(こども家庭庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の廃止」要望の内容欄)
読み方は2つに分かれます。
- 打ち切りではなく、期限延長をしないという趣旨です。この特例措置の適用期限はもともと令和9年3月31日です。「その期限が来たら、延長せずに終わりにする」という要望です
- すでに拠出した分は、そのまま続きます。「同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとする」と明記されています。契約済みの資金が遡って課税されるわけではありません
廃止を求める理由(原文)
本特別措置の創設以降、高齢者が保有する資産について、若年世代への移転を促すことで一定の役割を果たしてきたものの、近年は利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い状況であることから、令和8年度末までとされている結婚・子育て資金管理契約に基づく信託等可能期間の終了をもって、本特別措置を廃止することとし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとしたい。
(同要望書・廃止又は縮減の理由欄。太字は当方)
制度を所管する省庁自身が「利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い」と書いている——ここが、この要望のすべてです。
現行制度の内容(要望書に記載された概要)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 贈与者 | 祖父母や両親(直系尊属) |
| 受贈者 | 18歳以上50歳未満の子・孫等 |
| 方法 | 受贈者名義の金融機関の口座等に、結婚・子育て資金を一括して拠出 |
| 非課税限度額 | 子・孫ごとに1,000万円 |
| うち結婚関係で支払われるもの | 300万円が限度 |
| 所得制限 | 贈与等を受けた年の前年分の受贈者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用不可 |
| 関係条文(法律) | 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第70条の2の3 |
| 関係条文(政令) | 租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第40条の4の4 |
| 関係条文(省令) | 租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号)第23条の5の4 |
(出典:同要望書・見直しの内容欄「(1)現行制度の概要」および関係条文欄)
兄弟制度の「教育資金の一括贈与」は、すでに終わっています
一括贈与の非課税措置には、結婚・子育て資金(租税特別措置法第70条の2の3・1,000万円・18歳以上50歳未満)と、教育資金(同法第70条の2の2・1,500万円・30歳未満)の2つがあります。このうち教育資金の一括贈与は、令和8年3月31日をもって適用期間が終了しています(新規の契約はできません。すでに締結済みの契約は、契約の定めに従って続きます)。今回の要望が通れば、一括贈与の非課税措置は2つとも役目を終えることになります。
4. 【事業再編】認定実績ゼロで廃止――認定特別事業再編の登録免許税の軽減
4項目のなかで、もっとも直接的な理由が書かれているのがこれです。経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策課の単独要望で、総務省・農林水産省・国土交通省が共同要望に名を連ねています。
要望の内容(原文)
(経済産業省「認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の税率の軽減の見直し」見直しの内容欄)
税目欄には「登録免許税」「租税特別措置法第80条第2項」と明記されています。
廃止の理由(原文)
一方で特別事業再編計画はグループ内の資産移動を制度対象外としていることから、事業者による活用局面が限定されており、本制度では現状においても申請・認定実績がない状況にある。
以上のことから、特別事業再編計画の性質上今後の活用も見込めないため、制度の終了が相当と考えている。
(同要望書・廃止又は縮減の理由欄。太字は当方)
「申請・認定実績がない」——所管省庁が自ら、実績ゼロであることを書いています。使われる設計になっていなかった、という率直な総括です。
実務家の立場から申し上げると、この一文は制度設計の教訓としてよく効きます。合併・事業譲渡・会社分割という手法は、実際にはグループ内の再編で使われることが圧倒的に多い。ところが特別事業再編計画は、そのグループ内の資産移動を対象から外していた。制度が想定した使い方と、現場の使い方が噛み合っていなかったということです。
なお、同じ産業競争力強化法に基づくものでも、「事業再編」に係る登録免許税の軽減措置は、令和9年度の要望では「延長等」の側に入っています(経済産業省・総務省・農林水産省がそれぞれ提出)。廃止が要望されているのは「特別事業再編計画」に係るものです。名前が似ているため、混同にご注意ください。
5. 【被災地】東日本大震災の漁船に係る2つの特例
残る2項目は、農林水産省の単独要望です。
- ②東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止(税目=登録免許税)
- ③東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止(税目=印紙税)
(出典:財務省「見直し事項一覧表(全府省庁版)」令和9年度・農林水産省の欄)
いずれも東日本大震災の復興のために設けられた特例措置で、震災から15年が経過するなかでの整理です。漁業を営む事業者以外には直接の影響はありませんが、復興特例が一つずつ役目を終えていく局面に入っていることを示す項目です。
6. 実務でどう備えるか
① 結婚・子育て資金の一括贈与を検討中なら、期限は令和9年3月31日
現行の適用期限は令和9年3月31日で、今回の要望はこの期限をもって廃止するというものです。要望が通っても通らなくても、いま動くかどうかを判断する期限は変わりません。利用を検討されている場合は、この日付から逆算することになります。
ただし、実務では注意点があります。この制度は「贈与したら終わり」ではなく、資金の使い道が限定され、契約期間中に贈与者が亡くなった場合や、受贈者が50歳に達して契約が終了したときに残額があった場合には、課税が生じることがあります。使い切れる見込みが立たない金額を拠出すると、かえって不利になります。金額ありきではなく、実際に必要になる支出から逆算するのが基本です。
② 「使われていない特例」は、いずれ整理される
今回の4項目に共通するのは、利用実績が乏しいという理由です。「近年は利用件数が低迷」「申請・認定実績がない」。これは他の特例措置にも当てはまる話で、自社が使っている特例が今後も続くとは限らないことを示しています。特例措置を前提に長期の計画を立てるときは、期限と、その延長がどれくらい確からしいかを分けて考えておく必要があります。
③ 「廃止リストにない=安泰」ではない
繰り返しになりますが、見直し事項一覧表は所管省庁が自ら申し出た分だけです。年末の与党税制改正大綱の段階で、延長を要望していた特例が縮減されることは普通に起こります。このリストに載っていないことは、その制度が続くことの保証にはなりません。
過去のご相談の傾向として申し上げると、一括贈与の制度は「1,000万円まで非課税」という数字だけが独り歩きしがちです。ですが実際にご相談を受けて計算してみると、暦年贈与(年110万円の基礎控除)を数年重ねたほうが結果的に有利というケースは少なくありません。一括贈与は使い道が限定され、残額に課税されるリスクがある一方、暦年贈与は使い道が自由です。制度がなくなるという話が出たときこそ、「その制度を使う前提」を一度外して、ご家族全体の贈与の設計を見直す機会になります。
7. まとめ
- 財務省が令和9年度税制改正要望のページを公開し、「見直し事項一覧表(全府省庁版)」も掲載されました。各府省庁が自ら「廃止・縮減してよい」と申し出た項目のリストです
- 見直し事項を提出したのは17府省庁のうち6機関のみで、重複を除くと実質4項目です。残る11機関は1件も出していません
- 4項目は、①結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の廃止(贈与税・こども家庭庁主管、金融庁が共同要望)②東日本大震災の被災者の漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止(農林水産省)③同・漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止(農林水産省)④認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の登録免許税の軽減の廃止(経済産業省主管、総務省・農林水産省・国土交通省が共同要望)です
- 結婚・子育て資金の一括贈与は、令和9年3月31日の適用期限をもって廃止する要望です。理由は「近年は利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い」。同日までに拠出された金銭等は引き続き適用できると明記されています
- 認定特別事業再編の登録免許税の軽減(租税特別措置法第80条第2項)は、「申請・認定実績がない」ことを理由に廃止が要望されています
- 4項目とも、増収見込額は「―」または「0」と記載されています。廃止による税収増は見込まれていません
よくある質問(FAQ)
結婚・子育て資金の一括贈与は、いつまで使えますか?
すでに一括贈与の契約をしています。遡って課税されますか?
教育資金の一括贈与はどうなりましたか?
見直し事項が4項目しかないということは、他の特例は安泰ということですか?
「認定特別事業再編」と「事業再編」は違うのですか?
これらの廃止は、いつ決まりますか?
出典・参考資料
- 財務省「令和9年度税制改正要望」(各府省庁からの要望事項)
- 財務省「見直し事項一覧表(全府省庁版)」令和9年度(PDF)
- 財務省「要望事項一覧表(全府省庁版)」令和9年度(PDF)
- こども家庭庁「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の廃止」令和9年度税制改正見直し事項(PDF)
- 経済産業省「認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の税率の軽減の見直し」令和9年度税制改正見直し事項(PDF)
- 農林水産省「東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止」令和9年度税制改正見直し事項(PDF)
- 農林水産省「東日本大震災の被災者が建造又は取得した漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止」令和9年度税制改正見直し事項(PDF)
- 国税庁タックスアンサーNo.4511「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和32年法律第26号)
- 財務省「税制改正の概要」(各年度の税制改正要望・大綱の掲載ページ)
- 根拠法令:租税特別措置法第70条の2の2・第70条の2の3・第80条第2項、租税特別措置法施行令第40条の4の4、租税特別措置法施行規則第23条の5の4
本記事は、公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案における税務上の取扱いを保証するものではありません。本記事が扱う「見直し事項(廃止・縮減)」は、令和9年度(2027年度)税制改正に向けて各府省庁が提出した要望の内容であり、廃止・縮減が決まったものではありません。廃止の時期、経過措置の内容を含め、現時点で確定した内容はありません。税制改正要望は、政府税制調査会・与党税制調査会の議論、年末の与党税制改正大綱、翌年の法律の成立を経て初めて確定するものであり、内容が変更されること、実現しないことがあります。また、見直し事項一覧表は所管する府省庁が自ら申し出た項目のリストであり、廃止・縮減の対象となりうる特例措置のすべてを網羅するものではありません。一方、本記事に記載した現行制度の内容(一括贈与の非課税限度額・年齢要件・所得制限・適用期限)は、記事作成時点における条文および要望書の記載内容です。本記事は2026年9月2日時点の情報に基づくものであり、その後の制度改正・公表資料の更新により記載内容が現行と異なる場合があります。贈与の実行にあたっては、最新の法令および国税庁の公表資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年9月2日
制度がなくなる話が出たときは、贈与の設計を一度外から見直します
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、一括贈与・暦年贈与・相続時精算課税のどれをどう組み合わせるか、ご家族全体の財産と将来の支出から逆算して設計しています。特例の期限に合わせて動くのではなく、ご家族の予定から逆算するほうが、結果として負担は軽くなります。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年9月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
