令和7年度の脱税告発82件・脱税総額84億円|査察(マルサ)の最新動向を税理士が解説【2026年公表】
- 1. 何が公表されたのか(3行サマリー)
- 2. 前提:査察(マルサ)とは何か/税務調査との違い
- 3. 数字で見る令和7年度の査察
- 4. 専門家の視点:いま、どんな脱税が摘発されているのか
- 5. 実務で押さえるべきこと(経営者・オーナー・個人事業主の論点)
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が公表されたのか(3行サマリー)
- 令和7年度に査察(マルサ)が検察庁に告発したのは82件、脱税総額(告発分)は84億円、1件当たり約1億200万円(直近5年で最高)。告発率は64.6%
- 税目別では法人税44件・消費税23件・所得税13件が中心。重点事案は国際事案17件・消費税不正受還付12件・無申告12件で、海外取引・海外預金への秘匿が引き続き本丸
- 査察事件の一審判決は80件すべて有罪(有罪率100%)、うち6人に実刑判決。最も重いものは脱税指南グループの首謀者に懲役6年。脱税は「ほぼ確実に刑事責任を問われる」領域
2. 前提:査察(マルサ)とは何か/税務調査との違い
「税務調査」と「査察」は、しばしば混同されますが、まったく性質の異なる手続きです。
| 一般の税務調査(任意調査) | 査察調査(強制調査・マルサ) | |
|---|---|---|
| 担当 | 税務署・国税局の調査部門 | 国税局 査察部 |
| 根拠 | 質問検査権(任意の調査) | 国税通則法に基づく犯則調査(裁判官の許可状による強制調査) |
| 目的 | 適正な申告へ是正(行政上の手続き) | 悪質な脱税者の刑事責任の追及(一罰百戒) |
| 対象 | 広く一般の納税者 | 故意の隠ぺい・仮装を伴う高額・悪質な脱税 |
| 結末 | 修正申告・追徴課税(加算税・延滞税) | 検察庁への告発 → 刑事裁判 → 有罪なら罰金・懲役 |
国税庁は査察制度の目的を、「悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資すること」と説明しています。つまり、単なる「払い忘れ」や見解の相違ではなく、意図的に税を免れた悪質なケースが査察の対象です。
3. 数字で見る令和7年度の査察
着手・処理・告発の状況
令和7年度に査察部が着手した事案は131件、前年度からの繰越を含めて処理したのは127件、うち82件を検察庁に告発しました。告発率(処理件数に対する告発件数)は64.6%です。着手・告発ともここ数年で最も少なく、選び抜いた事案に集中する傾向が読み取れます。
| 項目 | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|---|
| 着手件数 | 154件 | 151件 | 131件 |
| 処理件数 | 151件 | 150件 | 127件 |
| 告発件数 | 101件 | 98件 | 82件 |
| 告発率 | 66.9% | 65.3% | 64.6% |
脱税総額は、処理分で111億3,700万円、告発分で83億9,000万円。告発分の1件当たり脱税額は約1億200万円で、直近5年で最も高い水準です(令和5年度8,800万円・令和6年度8,400万円)。件数を絞り、1件当たりの規模が大きい事案に踏み込んでいることが数字にあらわれています。
税目別の告発件数・脱税額
| 税目 | 告発件数 | 脱税額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 44件 | 46億900万円 |
| 消費税 | 23件(うち不正受還付12件) | 14億5,800万円 |
| 所得税 | 13件 | 13億5,400万円 |
| 相続税 | 2件 | 9億6,900万円 |
| 源泉所得税 | 0件 | ― |
| 合計 | 82件 | 83億9,000万円 |
法人税が件数・金額ともに最多です。注目したいのは相続税で、告発は2件ながら脱税額は9億6,900万円(前年6億2,400万円から増加)と、1件当たりの規模が突出しています。相続財産を申告せずに相続税を免れた事案も告発されており、相続税もマルサの視野に入っていることがわかります。
重点事案(令和7年度の告発件数)
| 重点区分 | 令和7年度 告発件数 | ポイント |
|---|---|---|
| 消費税事案 | 23件 | うち不正受還付12件(不正受還付額7,300万円)。いわば国庫金の詐取 |
| 無申告事案 | 12件 | うち単純無申告8件(不正行為を伴わず、故意に申告書を出さない類型) |
| 国際事案 | 17件 | 海外取引・海外預金秘匿など。告発全体の約2割を占め高止まり |
業種別の告発(令和7年度)
| 順位 | 業種 | 告発者数 |
|---|---|---|
| 1位 | 建設業 | 18者 |
| 2位 | 卸売業 | 6者 |
| 3位 | 不動産業 | 4者 |
| 3位 | 運送業 | 4者 |
一審判決の状況
令和7年度中の一審判決は80件、すべてに有罪判決(有罪率100%)が言い渡されました。うち6人に実刑判決が出され、最も重いものは、複数の納税者に脱税スキームを利用させていた「脱税指南グループの首謀者」に対する懲役6年(査察事件単独)、他の犯罪と併合されたもので懲役4年でした。「告発されればほぼ確実に有罪になる」——これが査察の現実です。
4. 専門家の視点:いま、どんな脱税が摘発されているのか
令和7年度の概要を読むと、摘発の主役は「SNS×海外」に移っています。国税庁が公表した事案の概要から、実務的に示唆の大きいものを整理します。
- SNSで活動する事業者:美容系インフルエンサーの活動を通じて広告代理を行う会社が、取引実態のない架空の業務委託費を計上して法人税・消費税を免れた事案。SNS等で主に海外顧客にイラストを販売していた事業者が、海外イベントでの販売収入の一部を申告から除外して所得税を免れた事案。ネット上の華やかな活動と、税務の世界は完全につながっています。
- 海外取引・海外預金への秘匿(国際事案17件):SNSで人気の日用品等の輸入販売会社が、海外の不正加担者と通謀して海外法人への架空の輸入仕入れを計上した事案。営業コンサルタントを営む複数のグループ会社が架空仕入れを計上し、得た資金の一部を海外預金として秘匿した事案。防災システムの会社が海外法人への架空仕入れで得た資金を海外預金に隠した事案。いずれも租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換を活用して摘発されています。
- 給付金・新しい収益源の申告漏れ:全国展開するスポーツ教室の運営会社が、国からの給付金等に係る雑収入を除外したうえ架空の施設利用料を計上した事案。農業用ため池に設置した太陽光発電設備を販売する会社が、売電権利の譲渡収入を除外したほか、代表者個人の事業収入を無申告にしていた事案。
- 消費税の不正受還付:廃プラスチック等の再生資源を輸出する会社が、過去に海外から輸入した機械装置を国内業者から取得したように装って課税仕入れを過大計上し、消費税の還付を不正に受けた事案など。
なお、脱税で得た資金は、有価証券への投資、競馬や海外カジノ等のギャンブル、ブランド品の購入、高級クラブでの飲食、動画配信者やゲームへの課金などに費消され、クローゼットの缶や室内のスーツケース・金庫に現金を隠していた事例まで報告されています。「隠せば見つからない」時代ではないことが、こうした摘発からも見て取れます。
5. 実務で押さえるべきこと(経営者・オーナー・個人事業主の論点)
査察は「ごく一部の悪質な人の話」と感じるかもしれません。しかし、その手前にある重加算税・追徴課税は、ごく普通の中小企業・個人事業でも起こりえます。とくに海外取引やネット収入が絡む場面は、悪意がなくても処理を誤りやすい領域です。境界を踏み越えないために、押さえるべき点を整理します。
- 「海外の口座や海外法人を経由すれば見えない」と考える。租税条約に基づく情報交換で、海外預金・海外取引はむしろ丸見えになりつつある
- SNS・ネット販売・海外イベント・越境ECの収入を「把握されないだろう」と申告から外す。決済記録・送金記録・プラットフォームの記録ですべて追える
- 国からの給付金・補助金・助成金に係る収入(雑収入)を計上し忘れる、または意図的に外す
- 業者にすすめられた「架空の業務委託費・架空仕入れ」を中身を確かめずに使う。指南した側だけでなく、使った本人も脱税の当事者になる
弊社にも、「海外に口座や法人があるが申告はこれで大丈夫か」「ネットや越境ECの収入をどう申告すればよいか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、本当に悪質な脱税を意図される方はむしろ稀で、多くは「海外取引やネット収入の正しい申告方法がわからなかった」「業者にすすめられた処理が適切か判断できなかった」といった、知識や確認の不足から生じる不安です。私たちが関与する場面では、まず事実関係と資料(送金・口座・契約)を丁寧に整理し、正しく申告・記帳できる状態を作ることを最優先にしています。正しく申告していれば、税務調査は恐れる手続きではありません。
6. まとめ
令和7年度の査察(マルサ)は、告発82件・脱税総額84億円・告発率64.6%、一審判決は80件すべて有罪・うち6人が実刑という結果でした。件数は近年で最も少ない一方、1件当たりの脱税額は約1億200万円と直近5年で最高。マルサは「悪質・大型・国際・SNS」に狙いを絞っています。摘発の舞台はインフルエンサーや越境ECに広がりましたが、その構造は「架空経費」と「売上除外」という古典的なもので、海外送金・海外預金・ネット決済の記録は後から必ず追える時代です。
大切なのは、売上をすべて計上し、実態の伴う経費だけを計上するという当たり前を徹底すること、そして海外がからむ論点は早めに専門家に相談することです。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、日々の記帳・申告から国際取引・海外資産の申告、税務調査対応まで、経営者・オーナーが「数字を堂々と説明できる状態」を作るご支援をしています。海外取引・ネット収入・過去の処理にご不安のある方は、お早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
令和7年度の査察の告発件数と脱税総額はいくらですか?
査察(マルサ)と税務調査は何が違いますか?
海外に口座や法人があると、査察の対象になりやすいですか?
SNSやネットの副業収入も摘発されますか?
査察で告発されると、必ず有罪になりますか?
出典・参考資料
- 国税庁「令和7年度 査察の概要」令和8年6月
- 国税庁「令和6年度 査察の概要」令和7年6月(前年度との比較)
- 国税庁 タックスアンサー No.9205「延滞税の計算方法」
- 国税庁「暮らしの税情報(加算税制度の概要)」
- 法人税法 第159条(偽りその他不正の行為による法人税のほ脱=罰則)|e-Gov法令検索
本記事は、国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。記載の数値は「令和7年度 査察の概要」(令和8年6月公表)の公表値です。事案の概要は同資料に基づく一般的な紹介であり、特定の個人・法人を指すものではありません。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月20日
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無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
