103万円の壁が160万円の壁へ|令和7年度税制改正を税理士がわかりやすく解説

「103万円の壁が、160万円に変わったって本当ですか?」——令和7年度(2025年度)の税制改正をめぐって、経営者からもパート・アルバイトのご家族からも、こうしたご質問を数多くいただいています。 結論から言えば、本当です。物価上昇への対応として、所得税の基礎控除給与所得控除が見直され、いわゆる「年収の壁」が動きました。ただし、ここには多くの人が誤解しているポイントがあります。税理士法人 小山・ミカタパートナーズの視点で、何がどう変わったのか、そして注意点を整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が変わったのか(3行サマリー)
  2. 2. なぜ「103万円」が「160万円」になるのか
  3. 3. 【最重要】「160万円」は所得税の壁。社会保険の壁とは別物です
  4. 4. 改正のその他のポイント
  5. 5. 経営者・実務への影響
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が変わったのか(3行サマリー)

  • 所得税の基礎控除が引き上げられました(一定の所得以下の方は48万円→95万円)。
  • 給与所得控除の最低保障額が、55万円→65万円に引き上げられました。
  • この二つが合わさって、所得税がかからない年収の目安(課税最低限)が、103万円→160万円に上がりました。

2. なぜ「103万円」が「160万円」になるのか

そもそも「103万円の壁」とは何だったのか。仕組みを押さえると、改正の意味がよく分かります。

会社員やパートの方の所得税は、年収から給与所得控除基礎控除を差し引いた残りに対してかかります。これまでは——

控除改正前改正後
給与所得控除(最低保障)55万円65万円
基礎控除(一定所得以下)48万円95万円
合計(課税最低限)103万円160万円

改正前は「55万+48万=103万円」までは所得税がかからなかったため、「103万円の壁」と呼ばれていました。これが「65万+95万=160万円」に広がった、というわけです。

💡 基礎控除の引き上げ幅は所得に応じて変わり、所得が高い層は段階的に縮小します(おおむね年収2,545万円以下の方が恩恵を受けます)。

3. 【最重要】「160万円」は所得税の壁。社会保険の壁とは別物です

ここが、最も多くの人が誤解するポイントです。「160万円までなら、何の負担も増えずに働ける」わけではありません。

「年収の壁」には、実は性質の違う複数の壁があります。

何の壁か内容
160万円所得税これを超えると本人に所得税がかかり始める(今回の改正点)
106万円 / 130万円社会保険これを超えると本人が社会保険(健康保険・年金)に加入し、保険料負担が発生する

つまり、所得税はかからなくても、社会保険の壁(106万円・130万円)を超えれば、保険料の負担は別途生じます。 今回の改正は所得税の壁を動かしただけで、社会保険の壁は別の制度です。「160万円まで完全に手取りが増える」と思い込むと、社会保険料で手取りが目減りして驚くことになります。ここは必ず分けて考えてください。

4. 改正のその他のポイント

今回の改正では、家族に関わる控除も見直されました。

  • 配偶者控除の対象となる年収上限の引き上げ:配偶者控除の対象となる配偶者の年収上限が、103万円から123万円に引き上げられました(配偶者特別控除と合わせ、一定の年収まで世帯の控除が確保される設計です)。
  • 特定親族特別控除の創設:大学生年代(19歳以上23歳未満)などの親族について、その年収が一定額を超えても、年収に応じて最高63万円の控除が受けられる新しい控除ができました。学生アルバイトの「働き控え」に配慮したものです。

5. 経営者・実務への影響

「個人の話でしょう」と思われるかもしれませんが、経営者・会社にも実務上の影響があります。

💬 実務の現場から
——弊社にも、改正のたびに「パート従業員にどう説明すればいいか」「扶養や年末調整はどうなるのか」というご相談が、経営者の方から実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、現場で混乱しやすいのは、所得税の壁(160万円)と社会保険の壁(106万・130万円)が混同されているケースです。私たちが関与する場面では、まず従業員向けに「どの壁が・誰に・どう効くか」を整理してお伝えするところからご支援します。

経営者として押さえておくべき点は次の通りです。

  • 年末調整の事務:控除額が変わるため、給与計算・年末調整の対応が必要
  • パート従業員への説明:「壁が変わった」ことで働き方の相談が増える。正確な情報提供を
  • 扶養の範囲の変化:配偶者控除・特定親族特別控除の改正で、扶養の考え方が変わる

6. まとめ

令和7年度税制改正で、所得税の「103万円の壁」は「160万円の壁」へと広がりました。物価高のなかで、働く人の手取りを増やす方向の改正です。ただし、それはあくまで“所得税”の壁。社会保険の壁(106万円・130万円)は別に存在し、こちらを超えれば保険料負担が生じます。この二つを混同しないことが、損をしないための最大のポイントです。

「自社の給与計算や年末調整は、改正にどう対応すればよいか」「従業員にどう説明すべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、改正対応から日々の実務まで経営者をご支援しています。お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

103万円の壁はどう変わりましたか?

令和7年度改正で基礎控除などが見直され、所得税がかかり始める年収の目安が引き上げられました。

「160万円の壁」とは何ですか?

改正後に所得税が発生し始める年収ラインの目安を指します。働き方の調整ラインが変わりました。

社会保険の壁も一緒に変わりましたか?

いいえ。所得税の壁と、社会保険の106万円・130万円の壁は別です。給与計算や扶養の判定は引き続き両方の確認が必要です。

出典・参考資料

  • 所得税法 第86条(基礎控除)・第28条(給与所得控除)・第83条の2(配偶者特別控除)/特定親族特別控除の新設規定
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
  • 財務省「令和7年度税制改正の大綱」
  • 厚生労働省「社会保険適用と年収の壁」関連資料(106万円・130万円の壁)
ご利用上の留意事項
本記事は、令和7年度税制改正に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。控除額・適用には所得制限等の要件があり、個別事情により異なります。社会保険の取扱いは別制度です。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp