令和8年度税制改正、中小企業・個人事業主が押さえるべき5つの改正を税理士が解説

2025年12月、令和8年度(2026年度)税制改正の大綱が公表されました。報道では「賃上げ」「物価高対策」が大きく取り上げられましたが、中小企業や個人事業主の手元に実際に効いてくる改正は、もっと地味で、もっと実務的なところにあります。 「結局、うちの会社(うちの事業)には何が関係するのか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、改正大綱が出るたびにこうしたご相談が寄せられます。本記事では、数ある改正のなかから、中小企業・個人事業主が押さえるべき5項目だけを、実務目線で整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. まず全体像:今回の改正で「自分に効く」のはどこか
  2. 2. 青色申告特別控除が「最高75万円」へ(個人事業主・フリーランス)
  3. 3. 少額減価償却資産の特例が「40万円未満」へ拡大(中小企業・個人事業主)
  4. 4. 中小企業向け賃上げ促進税制は「現行維持」(賃上げをする中小企業)
  5. 5. 事業承継税制(特例措置)の計画提出期限が延長(自社株を渡すオーナー)
  6. 6. 大規模設備投資の促進税制(新設方向)と、その他
  7. 7. まとめ:自分の事業に効く改正だけ、先に手を打つ
  8. よくある質問(FAQ)

1. まず全体像:今回の改正で「自分に効く」のはどこか

改正大綱は毎年100ページを超えますが、中小企業・個人事業主が最初に確認すべきは次の5つです。順に解説します。

#改正項目誰に効くか方向
1青色申告特別控除の見直し(最高75万円)個人事業主・フリーランス控除拡大/電子化が条件
2少額減価償却資産の特例(40万円未満へ)中小企業・個人事業主拡大(有利)
3中小企業向け賃上げ促進税制賃上げをする中小企業現行維持(継続)
4事業承継税制(特例措置)の計画提出期限後継者へ自社株を渡すオーナー期限延長(猶予)
5大規模設備投資の促進税制(新設方向)大型投資をする企業新設(要件あり)

2. 青色申告特別控除が「最高75万円」へ(個人事業主・フリーランス)

個人事業主にとって最も身近な改正がこれです。青色申告特別控除は、これまで複式簿記+e-Tax(電子申告)等の要件を満たすと65万円でした。令和8年度改正では、これに加えて「優良な電子帳簿」の要件を満たす場合に、控除額が最高75万円に引き上げられる見込みです。

ポイントは「ただ電子申告すれば75万円になるわけではない」ことです。ここを誤解される方がとても多いのですが、75万円控除には一段高い帳簿の電子保存(優良な電子帳簿)が条件になります。

⭕ 75万円控除を狙うために必要なこと(イメージ)
  • 複式簿記で記帳していること
  • 期限内に e-Tax(電子申告)で申告していること
  • 仕訳帳・総勘定元帳を「優良な電子帳簿」の要件で電子保存していること
❌ よくある誤解
  • 「会計ソフトを使っていれば自動で75万円になる」と思い込む
  • 紙の帳簿・郵送申告のまま控除額だけ増えると期待する
  • 適用時期を勘違いして前倒しで適用しようとする

適用時期は、2027年(令和9年)分以後の所得税、および2028年(令和10年)分以後の個人住民税からとされています。つまり「来年すぐ」ではなく、準備期間がある改正です。今のうちに会計ソフトと電子帳簿の体制を整えておけば、確実に取りにいける控除です。

3. 少額減価償却資産の特例が「40万円未満」へ拡大(中小企業・個人事業主)

中小企業者等が取得した少額の減価償却資産を取得時に全額経費にできる特例について、対象となる取得価額の基準が、現行の30万円未満から40万円未満に引き上げられます。あわせて、適用期限が3年延長されます。

これは素直に有利な改正です。たとえば1台35万円のパソコンや機器は、現行ルールでは30万円以上のため通常の減価償却(数年かけて経費化)でしたが、改正後は取得した年に全額を経費にできます。

区分現行令和8年度改正(見込み)
全額経費にできる取得価額30万円未満40万円未満
年間の合計限度額300万円300万円(変更なし)
適用期限3年延長
💡 注意点 … 年間の合計限度額(300万円)は据え置きの見込みです。1台あたりの基準が上がっても、年間で使える総枠は変わらないため、設備をまとめて入れる年は順序と金額の管理が重要になります。

4. 中小企業向け賃上げ促進税制は「現行維持」(賃上げをする中小企業)

賃上げ促進税制については、大企業向けの措置が令和8年3月31日をもって廃止される一方、中小企業向けの措置は現行制度が維持されます(適用期限の到来時に必要な見直しが検討される方向)。

実務家の立場から申し上げると、ここは「中小企業はこれまで通り使える」と理解しておけば十分です。賃上げを実施する中小企業は、給与等の増加額に応じて法人税(個人事業主は所得税)の税額控除が受けられる仕組みが継続します。賃上げ計画があるなら、控除の取りこぼしがないよう、要件と上乗せ要件(教育訓練費・両立支援等)を事前に確認しておくことをおすすめします。

5. 事業承継税制(特例措置)の計画提出期限が延長(自社株を渡すオーナー)

オーナー経営者にとって見逃せないのが、法人版事業承継税制(特例措置)の特例承継計画の提出期限延長です。自社株式を後継者に承継する際、贈与税・相続税の納税を猶予・免除できる強力な制度ですが、その前提として「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。

令和8年度改正では、この特例承継計画の提出期限が、令和9年(2027年)9月末まで、1年6か月延長される見込みです。

💡 重要な注意 … 延長されるのは「計画の提出期限」です。実際に贈与・相続で株式を取得して制度の適用を受ける適用期限(令和9年12月31日)は変わらない点に注意してください。「計画を出す時間は延びたが、実行の期限は延びていない」——ここを混同すると、間に合わないリスクがあります。
💬 実務の現場から
——弊社にも、「特例承継計画を出していなかった」「期限を勘違いしていた」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、事業承継税制は“使える状態にしておく”準備(計画提出)と、“実際に承継する”実行のタイミングを切り分けて設計することが何より大切です。

6. 大規模設備投資の促進税制(新設方向)と、その他

生産性向上に向けた大規模な設備投資を後押しする新たな税制が創設される方向です。一定規模以上の投資計画について、特別償却または税額控除を選択適用できる仕組みが想定されています。大型の設備投資を予定している企業は、対象要件・投資額の下限を早めに確認しておくと、計画段階から税メリットを織り込めます。

このほか、電子帳簿保存・インボイスといったデジタル化対応も引き続き実務の論点です。改正は「知っていれば使える」「知らないと取りこぼす」ものが大半です。

7. まとめ:自分の事業に効く改正だけ、先に手を打つ

令和8年度税制改正のうち、中小企業・個人事業主が押さえるべきは次の5つです。

  • 青色申告特別控除:最高75万円へ。ただし「優良な電子帳簿」が条件(2027年分〜)
  • 少額減価償却資産:40万円未満まで全額経費に(年間300万円の枠は据え置き)
  • 賃上げ促進税制(中小):現行維持。賃上げ予定なら要件を再確認
  • 事業承継税制:計画提出期限は令和9年9月末へ延長。ただし適用期限は変わらず
  • 大規模設備投資:新設方向。大型投資を予定なら要件を先取り確認

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、改正対応から日々の経理・申告まで経営者に伴走しています。「自社にどの改正が効くのか」を早めに整理したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

令和8年度改正で中小企業・個人事業主に効くのは?

青色申告特別控除、少額減価償却資産の特例、中小の賃上げ促進税制の維持、事業承継税制の計画提出期限の延長、設備投資促進などが柱です。

いつから適用されますか?

改正法の成立後、原則として令和8年度から適用されます(項目により時期が異なります)。

何を準備すべきですか?

自社・自分に効く項目を早めに特定し、設備投資や申告の計画に織り込むことです。電子帳簿の要件など落とし穴の確認も重要です。

出典・参考資料

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」令和7年12月 | https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/index.html
  • 日本商工会議所「令和8年度税制改正のポイント(中小企業向け)」令和7年12月 | https://www.jcci.or.jp/news/news/2025/1225170000.html
  • 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
ご利用上の留意事項
本記事は、令和8年度税制改正の大綱および公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。大綱は改正法の成立前の段階であり、最終的な要件・適用時期は成立する法令によって異なる場合があります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月4日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継から中小企業の税務顧問まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp