災害で申告・納付の期限はどうなる?令和8年熊本地震の地域指定と、被災したときに使える国税の手続きを税理士が解説
- 1. 何が起きたのか
- 2. 期限の延長には3つの入口がある
- 3. 期限が延びても払えないとき——2つの納税の猶予
- 4. 個人:雑損控除と災害減免法は、どちらか有利な方を選ぶ
- 5. 給与・年金・報酬から引かれる源泉所得税を止める
- 6. 消費税:課税期間の途中から簡易課税に変えられる
- 7. 実務で押さえるべきこと
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が起きたのか
国税庁は令和8年8月4日、「令和8年熊本地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」を公表しました。内容は次のとおりです。
- 対象となる納税者:熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町に納税地のある方(法人を含む)
- 延長される期限:令和8年7月28日以降に到来する国税の申告・納付等の期限が、全ての税目について、自動的に延長される
- 国税庁は例として、毎月10日が納付期限の源泉所得税等についても期限が延長されることを明示しています
- いつまで延長するかは、今後、被災者の状況に十分配慮しつつ検討するとされています
- この地域指定による延長措置は、近日中に官報で告示される予定とされています
そのうえで国税庁は、上記4市町以外に納税地がある方についても、今回の地震により被災して申告・納付等をすることができない場合には、所轄の税務署に申請することにより期限の延長を受けることができるとしています。しかもこの申請は、当初の期限を経過し、状況が落ち着いた後、申告・納付等と同時に行うことも可能です。
特定非常災害に指定されました(令和8年8月7日・政令第260号)
令和8年8月7日、「令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(政令第260号)が閣議決定され、同日公布・施行されました。同政令第1条は、令和八年熊本地震による災害を特定非常災害として指定し、令和8年7月28日を特定非常災害発生日と定めています。
適用される措置は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条から第7条までの5つで、期日は政令で次のとおり定められました。
- 行政上の権利利益の満了日の延長(法第3条、政令第3条)… 令和9年1月27日まで
- 期限内に履行されなかった行政上の義務の履行の免責(法第4条、政令第4条)… 免責に係る期限は令和8年11月27日
- 法人の破産手続開始の決定の特例(法第5条、政令第5条)… 令和10年7月27日
- 相続の承認または放棄をすべき期間の特例(法第6条、政令第6条)… 対象地区は令和8年熊本地震に際し災害救助法が適用された災害発生市町村の区域、期日は令和9年3月31日
- 民事調停法による調停の申立ての手数料の特例(法第7条、政令第7条)
税務の現場でいちばん効くのは4つ目です。相続の承認・放棄をすべき期間は民法上3か月ですが、対象地区では令和9年3月31日まで延長されました。相続放棄を検討している方は、この日付を起点に判断できます。
そして、これにより雑損失の繰越しが3年ではなく5年になること(所得税法第71条の2)が確定しました。詳しくは第4章で扱います。
同じ8月7日、激甚災害の指定政令も閣議決定され、同日公布・施行されています(本激として、公共土木施設災害復旧事業等の特別の財政援助、農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置、農林水産業共同利用施設災害復旧事業費の補助の特例、小災害債に係る元利償還金の基準財政需要額への算入等の4措置)。あわせて内閣府は同日、中小企業信用保険法による災害関係保証の特例(激甚災害法第12条)を局激として熊本県御船町に追加指定する見込みであることを公表しています。こちらは追加指定の見込みの段階で、政令の改正に向けた手続が進められています。
2. 期限の延長には3つの入口がある
災害等による期限の延長の根拠は、国税通則法第11条です。
延長の上限は「理由のやんだ日から2か月以内」です。そして「政令で定めるところにより」の政令が、国税通則法施行令第3条で、ここに3つの入口が書かれています。
入口1:地域指定(施行令第3条第1項)
国税庁長官が、都道府県の全部または一部にわたって災害等があったと認める場合に、地域および期日を指定して期限を延長します。今回の熊本地震の措置がこれです。納税者側の手続きは要りません。
入口2:対象者指定(施行令第3条第2項)
災害等により、特定の税目に係る申告などをすることができないと認められる者が多数に上ると認める場合に、国税庁長官が対象者の範囲および期日を指定します。e-Taxの大規模障害などで使われる類型で、これも納税者側の手続きは要りません。
入口3:個別指定(施行令第3条第3項)
上の2つに当たらない場合に、その行為をすべき者の申請により、期日を指定して延長されます。申請先は所轄の税務署長等です。今回の地震でいえば、対象4市町以外に納税地がある被災者が使うのはこの入口です。
申請の方法は施行令第3条第4項が定めており、理由がやんだ後、相当の期間内に、その理由を記載した書面で行います。「災害による申告、納付等の期限延長申請」という手続きが国税庁に用意されており、期限が経過した後でも行うことができます。
3. 期限が延びても払えないとき——2つの納税の猶予
期限の延長は「いつまでに出すか」を動かす制度です。手元にお金がないという問題は、これとは別に納税の猶予で対応します。国税庁のパンフレット「災害を受けた場合の納税の緩和制度について」は、2つの制度を分けて説明しています。
猶予1:災害により財産に相当な損失を受けた場合(国税通則法第46条第1項)
まだ納期限が来ていない国税が対象です。
- 対象となる国税:災害のやんだ日以前に納税義務が成立しており、災害により財産に損失を受けた日以降1年以内に納期限が到来する国税
- 要件:災害により財産に相当な損失を受けたこと(保険金等により補てんされる金額は損害額から控除)と、災害のやんだ日から2か月以内に申請があること
- 国税庁は「相当な損失」を、被害額が全資産のおおむね20%以上である場合と説明しています
- 猶予期間:その納期限から1年以内。国税通則法第11条により納期限が延長されている場合は、延長後の納期限から1年以内。被害額が全資産の50%を超える場合は原則1年、20〜50%である場合は原則8か月
- 担保:不要
- 延滞税:猶予期間に対応する延滞税の全額が免除されます(国税通則法第63条第1項)
なお、予定納税に係る所得税ならびに中間申告の法人税および消費税は、最長で確定申告期限まで猶予されます。
猶予2:災害等により納付困難となった場合(国税通則法第46条第2項)
すでに納期限が到来している国税が対象です。猶予1を受けてもなお納付が困難な場合も、こちらに進めます。
- 要件:災害その他やむを得ない理由に基づき、国税を一時に納付することが困難であること。そして申請があること
- 猶予期間:1年以内。やむを得ない理由があると認められるときは延長できますが、すでにこの規定による猶予を受けた期間と合わせて2年以内(国税通則法第46条第7項)
- 担保:原則として必要。ただし、猶予金額が100万円以下の場合、猶予期間が3か月以内の場合、または担保として提供できる種類の財産がないといった事情がある場合は不要(同条第5項)
- 延滞税:猶予期間に対応する延滞税の全部または一部が免除されます(国税通則法第63条第1項・第3項)
国税庁のパンフレットは、これらを組み合わせれば最大3年間の猶予を受けられると説明しています。
災害以外の理由で納税が苦しいときの制度(換価の猶予・申請による猶予)については、当ブログの「税金が払えないときは差押えの前に申請する」で詳しく整理しています。
4. 個人:雑損控除と災害減免法は、どちらか有利な方を選ぶ
住宅や家財に損害を受けた個人には、所得税を軽くする方法が2つあります。併用はできず、有利な方を選びます。
方法A:雑損控除(所得税法第72条)
所得控除として引く方法です。控除額は、次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額です。
- (1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-総所得金額等×10%
- (2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
「損害金額」は、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基に計算します。国税庁は住宅・家財・車両について「合理的な計算方法」を用意しており、被害の実額を積み上げられない場合でも計算できます。
対象になる資産は、納税者本人または納税者と生計を一にする配偶者その他の親族でその年の総所得金額等が58万円以下の方が所有するもので、棚卸資産・事業用固定資産等・生活に通常必要でない資産(別荘、1個または1組の価額が30万円超の貴金属や書画骨とうなど)を除きます。
控除しきれない金額は繰り越せます。通常は翌年以後3年間ですが、特定非常災害により生じた損失については翌年以後5年間です(所得税法第71条の2。令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害が対象)。令和8年熊本地震は令和8年8月7日の政令第260号により特定非常災害に指定されましたので、この5年の繰越しが使えます。
方法B:災害減免法による所得税の軽減免除(災害減免法第2条)
税額そのものを減らす方法です。次の3つをすべて満たす場合に使えます。
- 災害によって受けた住宅または家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く)がその時価の2分の1以上であること
- 災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下であること
- その災害による損失額について雑損控除の適用を受けないこと
軽減または免除される所得税の額は次のとおりです。
| 所得金額の合計額 | 軽減または免除される所得税の額 |
|---|---|
| 500万円以下 | 所得税の額の全額 |
| 500万円を超え750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
| 750万円を超え1,000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
(出典:国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」。ここでいう「所得税の額」から延滞税・利子税・過少申告加算税・無申告加算税・重加算税の額は除かれます)
選び方の目安
大づかみに言えば、所得が1,000万円以下で、住宅・家財の損害が時価の半分以上なら災害減免法が効きやすく、損害が大きく所得税額を上回るなら、繰越しができる雑損控除が効きやすい、という関係になります。所得金額が1,000万円を超える方は、そもそも災害減免法を使えませんので雑損控除一択です。
選択は確定申告のときに固定されるものではありません。国税庁は、確定申告で雑損控除を選んでいても、修正申告書または更正の請求書を提出する際に災害減免法へ切り替えることができると案内しています。逆に、確定申告で軽減免除の適用を受けていなかった場合も、修正申告書・更正の請求書で適用を受ける選択ができます。
5. 給与・年金・報酬から引かれる源泉所得税を止める
年末や確定申告まで待たずに、いま引かれている源泉所得税を止める仕組みもあります。根拠は災害減免法第3条です。
- 給与所得者(同条第2項):災害により住宅または家財について甚大な被害を受け、かつ災害のあった日においてその年分の合計所得金額の見積額が1,000万円以下である場合、災害のあった日以後に支払を受ける給与について源泉徴収の猶予を受けられます。また、その年1月1日から災害があった日の前日までに徴収された税額の還付を受けることもできます
- 公的年金等の受給者(同条第3項):給与と同様に、徴収の猶予または還付を受けられます
- 報酬・料金の支払を受ける方(同条第4項):所得税法第204条第1項第1号から第6号までに規定する報酬または料金について、徴収の猶予を受けられます(こちらは還付の規定はありません)
- 予定納税(同条第1項):その年7月1日以後の日に災害により被害を受けた場合で、災害減免法の適用を受けられることになり、見積額を基礎に計算した所得税額が予定納税基準額等に比べて減少するときは、災害のあった日から2か月以内に、第1期分または第2期分の予定納税額の減額の承認を申請できます
令和8年熊本地震の発生は令和8年7月28日ですので、予定納税の減額申請の要件である「その年7月1日以後」に該当します。第2期分(11月)の予定納税を抱えている個人事業主の方は、この申請が使えるかどうかを早めに確認しておく価値があります。
なお、給与について徴収猶予または還付を受けた方は、その年分の確定申告書を提出しなければなりません(災害減免法第3条第6項)。年末調整で完結させることはできない点に注意してください。
6. 消費税:課税期間の途中から簡易課税に変えられる
見落とされやすいのが消費税です。消費税法第37条の2は、災害その他やむを得ない理由により被害を受けた事業者について、簡易課税制度の届出に関する特例を定めています。
通常、簡易課税制度を選ぶにはその課税期間の初日の前日までに届出書を出す必要があります。この特例は、災害等の生じた日の属する課税期間から簡易課税を選択すること、あるいは逆にやめることを、税務署長の承認を受けて認めるものです。承認を受けると、届出書をその課税期間の初日の前日に提出したものとみなされます。
国税庁は、想定される場面として次の2つを挙げています。
- 災害によって事務処理能力が低下したため、一般課税から簡易課税への変更が必要になった場合
- 棚卸資産その他業務用の資産に相当な損害を受け、緊急な設備投資を行うため、簡易課税から一般課税への変更が必要になった場合
被災後に店舗や設備を建て直すと、その課税期間の課税仕入れは大きく膨らみます。簡易課税のままだとその仕入れは税額計算に反映されませんから、一般課税に戻せるかどうかで還付の有無が変わります。逆に、経理担当者が被災して帳簿の作成が難しいなら、簡易課税に切り替えるという判断もあり得ます。
- 申請期限:災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2か月以内(やんだ日が課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、その課税期間の消費税の申告期限まで)
- 対象外:その課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間、および分割等に係る課税期間
- 申請書の提出があった場合に、選択被災課税期間の末日の翌日から2か月を経過する日までに承認または却下の処分がなかったときは、その日に承認があったものとみなされます(同条第5項)
特定非常災害なら、承認を待たずに「届出だけ」で足りる
ここまでは消費税法第37条の2の承認の話ですが、特定非常災害に指定された災害には、さらに使いやすい別の特例があります。
租税特別措置法第86条の5(納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例)です。特定非常災害の被災事業者は、次の届出書を指定日までに納税地の所轄税務署長に提出すれば、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなされます。税務署長の承認は要りません。
- 課税事業者選択届出書(消費税法第9条第4項)を指定日までに提出(同条第1項)。やめる場合の選択不適用届出書(同法第9条第5項)も同様(同条第3項)
- 簡易課税制度選択届出書(消費税法第37条第1項)を指定日までに提出(同条第10項)
さらに、通常であれば動きを縛る次のルールが外されます。
- 課税事業者を選択したときの2年間の継続適用の縛り(消費税法第9条第6項・第7項)が適用されません(措置法第86条の5第2項)
- 新設法人・特定新規設立法人の基準期間がない事業年度に係る縛り(消費税法第12条の2第2項等)が適用されません(同条第4項)
- 高額特定資産を取得した場合の縛り(消費税法第12条の4等)についても、被災日前に該当していた場合などについて適用が外されます(同条第5項・第6項・第8項・第9項)
令和8年熊本地震は令和8年8月7日に特定非常災害に指定され、令和8年8月12日、国税庁告示第22号によりこの「指定日」が定められました。
💡 ただし、具体的な日付はまだ決まっていません 告示第22号は、指定日を次のとおり定めています。国税通則法施行令第3条第1項の地域指定の適用を受けた事業者については、同日付の国税庁告示第21号に規定する「別途国税庁告示で定める期日」(指定期日)。同条第3項の個別指定の適用を受けた事業者については、税務署長が指定した日。これらの事業者でないものについては、指定期日を勘案して別途国税庁告示で定める日。 そして告示第21号は、八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町に納税地を有する方の令和8年7月28日以降に到来する期限を「別途国税庁告示で定める期日まで」延長するとしており、その期日自体はまだ告示されていません(2026年8月14日時点)。つまり枠組みは整いましたが、締切日はこれから示されます。 国税庁の告示を継続してご確認ください。
7. 実務で押さえるべきこと
- 対象地域に納税地があるのに気づかず、資金を無理に工面して期限内に納付してしまう
- 対象地域外だからと諦めて、個別指定の申請(施行令第3条第3項)をしない
- 「期限が延びた」=「税金が減った」と誤解し、延長後の期限に向けた資金計画を立てない
- 雑損控除と災害減免法を比較せずに、どちらか片方だけで申告してしまう
- 被災後に設備を建て直したのに、簡易課税のままで還付を取り逃がす
- 罹災証明書や被害状況の写真を残さないまま片づけを終えてしまう
- まず納税地がどこかを確認する。本店・事業所の所在地ではなく、納税地が地域指定の判定基準です
- 対象地域外なら、個別指定の申請は落ち着いてからで構わないと割り切り、まず事業の復旧に集中する
- 被害の記録を先に残す。罹災証明書、被害状況の写真、修繕の見積書と領収書は、雑損控除・災害減免法・災害損失の計算すべての土台になります
- 資金が足りないなら、期限延長とは別に納税の猶予を申請する。災害による財産の相当な損失(おおむね20%以上)なら、担保不要・延滞税全額免除です
- 個人は雑損控除と災害減免法の両方を試算する。所得1,000万円以下なら両方の土俵に乗ります
- 消費税は、その課税期間中に設備投資をするかどうかで簡易課税の判断が変わる。やんだ日から2か月以内が申請期限です
- 延長された期限がいつになるかの続報を追う。今回の措置は「いつまで延長するかは今後検討」とされており、告示で確定します
災害の直後にご相談をいただくと、多くの経営者が「税務署に連絡しなければ」と焦っておられます。ただ、制度の設計を読むかぎり、国は片づけが済んでからの手続きで間に合うようにつくっています。期限延長の申請は期限後でもでき、猶予の申請書には被災状況の記載が必要ですが、判明までに日時を要するときは後日の補正で構わないとされています。先にやるべきは、税務署への連絡ではなく、被害の記録を残すことです。写真と領収書が、あとから制度を選べる幅をつくります。
8. まとめ
- 国税庁は令和8年8月4日、熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町に納税地のある方(法人を含む)について、令和8年7月28日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を、全ての税目について自動的に延長すると公表しました。
- 対象地域外でも、被災して申告・納付等ができない場合は、申請により延長を受けられます(国税通則法施行令第3条第3項)。この申請は期限を経過した後、申告・納付等と同時に行うことも可能です。
- 期限の延長は「いつまでに出すか」の話です。払えないという問題は納税の猶予(国税通則法第46条)で対応します。災害により財産に相当な損失(おおむね20%以上)を受けた場合は、担保不要・延滞税全額免除です。
- 個人は、雑損控除(所得税法第72条)と災害減免法による軽減免除(災害減免法第2条)のどちらか有利な方を選べます。雑損控除の繰越しは通常3年、特定非常災害なら5年です(所得税法第71条の2)。
- 給与・公的年金等・報酬から引かれる源泉所得税は、災害減免法第3条により徴収猶予や還付を受けられます。その年7月1日以後の災害なら、予定納税の減額申請も災害のあった日から2か月以内にできます。
- 消費税は、消費税法第37条の2により、災害等の生じた日の属する課税期間から簡易課税の選択・不適用を切り替えられます。申請は災害等のやんだ日から2か月以内です。
- 令和8年8月7日の政令第260号により、令和八年熊本地震による災害は特定非常災害に指定されました(特定非常災害発生日は令和8年7月28日)。同政令により、相続の承認または放棄をすべき期間は令和9年3月31日まで(対象は災害救助法が適用された市町村の区域)、行政上の権利利益の満了日は令和9年1月27日まで延長されています。同日、激甚災害の指定政令も公布・施行されました。
税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、被災後の期限管理、納税の猶予の適用可否、雑損控除と災害減免法の有利判定、消費税の課税方式の再設計までを一体でご支援しています。まずは被害の記録を残すことから始めてください。手続きは、そのあとで間に合います。
よくある質問(FAQ)
対象地域に納税地があります。何か手続きは必要ですか?
いつまで延長されるのですか?
対象地域外ですが、取引先が被災して資料が届きません。期限は延びますか?
期限が過ぎてしまいました。もう申請できませんか?
期限が延びれば、納税額も減りますか?
雑損控除と災害減免法はどちらが有利ですか?
確定申告のあとで、雑損控除から災害減免法に変えられますか?
災害による納税の猶予は、担保が要りますか?
「相当な損失」とはどの程度ですか?
被災後に設備を建て直します。消費税で気をつけることはありますか?
特定非常災害に指定されると何が変わりますか?
出典・参考資料
- 国税庁「令和8年熊本地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」(令和8年8月4日)
- 国税庁「令和8年熊本地震により被害を受けられた皆様へ(災害関連情報)」(令和8年7月29日現在)
- 国税庁「災害関連情報」
- 国税庁「災害を受けた場合の納税の緩和制度について」(令和6年1月)
- 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
- 国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」
- 国税庁「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続」
- 国税庁「災害による申告、納付等の期限延長申請」
- 国税庁告示第21号「熊本県の一部の地域における国税に関する申告期限等を延長する件」(令和8年8月12日)
- 国税庁告示第22号「令和8年熊本地震による災害に関し、租税特別措置法第86条の5第1項の規定に基づき国税庁長官が定める日を定める件」(令和8年8月12日)
- 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第86条の5(納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例)|e-Gov法令検索
- 内閣府政策統括官(防災担当)「令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定見込みについて」(令和8年8月3日)
- 「令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(政令第260号・令和8年8月7日公布施行)
- 内閣府ほか「「令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について」(令和8年8月7日)
- 内閣府政策統括官(防災担当)「「令和八年熊本地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について(公布)」(令和8年8月7日)
- 内閣府政策統括官(防災担当)「「令和八年熊本地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」への新たな適用措置(中小企業に関する特別の助成)の追加指定見込みについて」(令和8年8月7日)
- 内閣府「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(指定状況)
- 内閣府「最近の激甚災害の指定状況について」
- 国税通則法(昭和37年法律第66号)第11条(災害等による期限の延長)|e-Gov法令検索
- 国税通則法 第46条(納税の猶予の要件等)|e-Gov法令検索
- 国税通則法 第63条(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)|e-Gov法令検索
- 国税通則法施行令(昭和37年政令第135号)第3条(災害等による期限の延長)|e-Gov法令検索
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第72条(雑損控除)|e-Gov法令検索
- 所得税法 第71条の2(特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例)|e-Gov法令検索
- 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和22年法律第175号)第2条|e-Gov法令検索
- 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律 第3条|e-Gov法令検索
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第37条の2(災害等があつた場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例)|e-Gov法令検索
本記事は、国税庁および内閣府の公表資料ならびに条文原文に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。令和8年熊本地震に係る特定非常災害の指定および激甚災害の指定は、令和8年8月7日に政令が公布・施行され確定していますが、激甚災害の局激(中小企業信用保険法による災害関係保証の特例)は同日時点で追加指定の見込みとして公表された段階です。地域指定による期限延長の終期(指定期日)は、令和8年8月12日の国税庁告示第21号においても「別途国税庁告示で定める期日」とされており、2026年8月14日時点でまだ告示されていません。納税の猶予は申請すれば必ず認められるものではなく、財産および収支の状況に応じて税務署長が審査します。実際の手続きにあたっては、最新の法令・告示および所轄税務署の案内をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月6日
被災後の期限管理と納税の設計は KMP へ
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、期限延長の適用範囲の確認、納税の猶予の申請、雑損控除と災害減免法の有利判定、消費税の課税方式の再設計までを一体でご支援しています。手続きは片づけのあとで間に合います。まずは被害の記録を残すことから始めてください。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
