2026年度の最低賃金は7月答申へ|引き上げに備える業務改善助成金・賃上げ促進税制を税理士が解説

毎年この時期、経営者の関心が集まるのが最低賃金です。2026年度(令和8年度)の改定に向けた議論は、2026年2月に中央最低賃金審議会で始動し、6月の諮問・7月の答申を経て、例年どおりなら10月に発効する見込みです。 近年の引き上げは急ピッチです。2025年度の全国加重平均は1,121円(前年から+66円・6.3%の引き上げ)となり、すべての都道府県で1,000円を超えました。政府は全国平均1,500円の達成時期を「2020年代中」へ前倒ししており、今後も年7%前後の高い引き上げが続く可能性があります。 最低賃金の引き上げは、経営者にとっては人件費の増加に直結します。ただ「上がって大変」で終わらせず、使える「お金の制度」で受け止めることができれば、賃上げを前向きな投資に変えられます。本記事では、最低賃金引き上げに備える業務改善助成金賃上げ促進税制という2つの“お金の切り口”を、税理士が解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きているのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:最低賃金はどう決まり、いつ上がるのか
  3. 3. お金の切り口①:業務改善助成金(賃上げ+設備投資に最大600万円)
  4. 4. お金の切り口②:賃上げ促進税制(給与増加分を税額から控除)
  5. 5. まとめ
  6. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きているのか(3行サマリー)

  • 2026年度の最低賃金は、6月諮問・7月答申を経て10月発効の見込み(中央最低賃金審議会で目安を提示→各都道府県で個別に決定)
  • 2025年度の全国加重平均は1,121円(+66円・6.3%)。政府は全国平均1,500円を「2020年代中」に達成する目標で、高い引き上げが続く見通し
  • 賃上げは人件費増だが、業務改善助成金(設備投資に最大600万円)賃上げ促進税制(給与増加分の税額控除)で、資金・税務の両面から受け止められる

2. 前提:最低賃金はどう決まり、いつ上がるのか

最低賃金(地域別最低賃金)は、毎年おおむね次の流れで改定されます。

時期動き
春〜初夏中央最低賃金審議会で改定に向けた議論を開始
6月ごろ厚生労働大臣が審議会へ諮問
7月ごろ中央最低賃金審議会が引き上げ額の「目安」を答申
8月ごろ各都道府県の地方最低賃金審議会が、目安をふまえ地域ごとの金額を決定
10月ごろ改定後の最低賃金が発効(適用開始)

ポイントは、中央の「目安」はあくまで参考値で、最終的な金額は各都道府県で決まることです。自社の事業場がある地域の最低賃金が、いつ・いくらになるのかは、8月以降の各都道府県の公表で確定します。

💡 「事業場内最低賃金」と「地域別最低賃金」 … 地域別最低賃金は、その地域で働くすべての労働者に適用される下限です。一方、後述の業務改善助成金で使う「事業場内最低賃金」は、自社(その事業場)で最も低い時間給のこと。助成金は、この事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることが条件になります。

3. お金の切り口①:業務改善助成金(賃上げ+設備投資に最大600万円)

最低賃金の引き上げに「設備投資」で生産性を高めて対応する中小企業・小規模事業者を支援するのが、厚生労働省の業務改善助成金です。

  • 仕組み:事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等(機械設備、POSレジ、リフト、業務システム など)を行うと、その費用の一部が助成される
  • 助成額:引き上げ額と対象人数に応じて区分があり、最大600万円まで
  • 助成率:設備投資等の費用のおおむね4分の3〜5分の4(75〜80%)
  • ねらい:賃上げの原資を、設備投資による生産性向上で生み出す——「上げた人件費を、効率化で取り戻す」発想

賃上げをコスト増で終わらせず、省力化・効率化の設備投資とセットにすることで、助成金を活用しながら体質を強くできます。公募の時期・区分・要件は年度ごとに変わるため(令和8年度は9月ごろの申請受付が見込まれます)、設備投資を予定しているなら、発注の前に要件と申請時期を確認することが重要です。

⚠️ 設備の「発注前」に申請が原則 … 業務改善助成金は、原則として交付決定の前に発注・契約した設備は対象になりません。「先に機械を買ってしまってから助成金を知った」では間に合わないことが多いため、設備投資を考え始めた段階で助成金の検討を始めるのが鉄則です。

4. お金の切り口②:賃上げ促進税制(給与増加分を税額から控除)

もう一つの柱が、給与を増やした企業の法人税(個人事業主は所得税)を軽くする「賃上げ促進税制」です。前年より給与等の支給額を増やした場合、その増加額の一定割合を税額から直接控除できます。

  • 中小企業向けには、給与増加額に応じた基本の税額控除に加え、教育訓練費の増加や「くるみん・えるぼし」認定などの上乗せ要件があり、要件を満たすほど控除率が高くなる設計です
  • 控除しきれなかった分を翌期以降に繰り越せる仕組みも設けられています

ただし、この賃上げ促進税制は令和8年度税制改正で見直しが入り、原則の控除率(10%)を適用できる要件が、継続雇用者の給与等支給額の増加割合「3%以上」から「4%以上」へ引き上げられるなど、ハードルが上がる方向です。詳しくは関連記事「賃上げ促進税制が縮小へ|中小企業の最大控除率45%→35%(令和8年度改正)」で解説しています。

賃上げをするなら、業務改善助成金(資金面の支援)と賃上げ促進税制(税額の軽減)を組み合わせて、最低賃金引き上げのインパクトをやわらげるのが王道です。

❌ つまずきがちな失敗
  • 最低賃金の引き上げ分だけを「人件費増」として受け止め、助成金・税制をまったく使っていない
  • 設備を先に発注してしまい、業務改善助成金の対象から外れる
  • 賃上げ促進税制の要件(継続雇用者の給与増加割合など)を満たしているか確認せず、使えるはずの控除を取り逃す
⭕ これから取るべき王道
  • 7月の答申・8月の地域別決定を待たず、自社の事業場内最低賃金がいくら上がるかを早めに試算する
  • 省力化・効率化の設備投資を予定しているなら、発注前に業務改善助成金を検討する
  • 賃上げを行う年度は、賃上げ促進税制の適用要件(令和8年度改正後の4%基準など)を事前に確認し、決算で確実に控除を取る
  • 助成金(資金)と税制(税額)の両面で、賃上げのコストを設計に織り込む
💬 実務の現場から
弊社にも、「最低賃金が上がって人件費がきつい」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、もったいないのは、賃上げを“ただのコスト増”として処理し、使えるはずの助成金や税制を取りこぼしているケースです。私たちが関与する場面では、賃上げの局面を、業務改善助成金による設備投資と賃上げ促進税制による税額控除をセットで設計する“きっかけ”として捉えるようにしています。とくに業務改善助成金は発注のタイミングが命運を分けるため、設備投資を考え始めた早い段階でご相談いただくのが効果的です。

5. まとめ

2026年度の最低賃金は、6月の諮問・7月の答申を経て、例年どおりなら10月に発効する見込みです。2025年度の全国加重平均は1,121円(+66円・6.3%)まで上がり、政府は全国平均1,500円を「2020年代中」に達成する目標を掲げています。賃上げの流れは当面続くとみておくのが現実的です。

人件費の増加は避けられませんが、業務改善助成金(設備投資に最大600万円)賃上げ促進税制(給与増加分の税額控除)を組み合わせれば、資金・税務の両面から賃上げを受け止め、前向きな投資に変えられます。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、賃上げの試算から助成金の活用、賃上げ促進税制を含む決算・申告までご支援しています。最低賃金引き上げへの備えを「お金の制度」で設計したい経営者の方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

2026年度の最低賃金はいつ・いくらになりますか?

例年どおりなら、6月の諮問・7月の中央最低賃金審議会の答申(引き上げ額の目安)を経て、8月ごろに各都道府県で具体的な金額が決まり、10月に発効する見込みです。具体的な金額は各都道府県の公表をご確認ください。2025年度の全国加重平均は1,121円でした。

賃上げに使える助成金はありますか?

業務改善助成金があります。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行うと、その費用の一部(おおむね4分の3〜5分の4)が最大600万円まで助成されます。公募時期・区分は年度ごとに変わります。

業務改善助成金で気をつけることは何ですか?

原則として交付決定の前に発注・契約した設備は助成対象になりません。設備投資を考え始めた段階で、要件と申請時期を確認してから発注することが重要です。

賃上げ促進税制は使えますか?

前年より給与等の支給額を増やした場合、その増加額の一定割合を法人税・所得税から控除できます。ただし令和8年度税制改正で要件が見直され、原則の控除率を適用できる給与増加割合が3%以上から4%以上へ引き上げられるなど、ハードルが上がる方向です。適用要件を事前に確認しましょう。

助成金と税制は両方使えますか?

制度の趣旨が異なるため、要件を満たせば業務改善助成金(資金面の支援)と賃上げ促進税制(税額の軽減)を組み合わせて活用できます。ただし助成金で取得した資産の取り扱いなど、個別の調整が必要な場合があるため、事前にご確認ください。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」| https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
  • 厚生労働省「業務改善助成金」| https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
  • 中小企業庁「賃上げ促進税制」(中小企業向け賃上げ促進税制)
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」| https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
ご利用上の留意事項
本記事は、厚生労働省・財務省・中小企業庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。最低賃金の改定額・発効日は各都道府県の公表により確定し、助成金・税制の要件や金額・公募時期は年度により変わります。実際の判断にあたっては、最新の公表資料をご確認のうえ、税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月16日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp