資金繰り表の作り方を税理士が解説|黒字倒産を防ぐ現金管理と銀行融資で効く書き方【2026年版】

「利益は出ているのに、なぜか資金が足りない」——これは多くの経営者が一度はぶつかる悩みです。原因の多くは、損益計算書(利益)だけを見て、現金(キャッシュ)の動きを管理できていないことにあります。利益が出ていても現金が尽きれば会社は倒れます。これが「黒字倒産」です。それを防ぐ唯一の道具が資金繰り表です。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、融資支援や経営改善のご相談では、まず資金繰り表づくりから着手します。 本記事では、資金繰り表の基本構成・作り方の手順から、黒字倒産を防ぐ使い方、銀行融資で評価される書き方まで、認定経営革新等支援機関の税理士が網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 資金繰り表とは(3行サマリー)
  2. 2. なぜ資金繰り表が必要なのか(黒字倒産を防ぐ)
  3. 3. 資金繰り表の基本構成(3つの収支)
  4. 4. 資金繰り表の作り方(7ステップ)
  5. 5. 銀行融資で評価される資金繰り表の書き方
  6. 6. 資金繰りを改善する4つの方向
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 資金繰り表とは(3行サマリー)

  • 資金繰り表とは、一定期間の現金(預金を含む)の入金と出金を予測・記録し、「いつ・いくら現金が手元にあるか」を管理する表です。
  • 損益計算書(PL)が「利益」を表すのに対し、資金繰り表は「現金の残高」を表します。利益と現金は一致しません
  • 将来の資金不足を前もって察知し、借入・回収・支払のタイミングを調整して資金ショート(資金切れ)を防ぐための、経営の生命線となる表です。

損益計算書は「売上が立った時点」「費用が発生した時点」で利益を計算しますが、実際のお金は売掛金として後から入金され、仕入は買掛金として後から支払います。さらに、借入金の返済や設備投資、税金の納付は費用ではないのに現金が出ていきます。だから「黒字なのに資金が足りない」が起こります。資金繰り表は、この利益と現金のズレを見える化する道具です。

2. なぜ資金繰り表が必要なのか(黒字倒産を防ぐ)

利益が出ていても倒産する「黒字倒産」は、現金の動きを管理していないために起こります。代表的な原因は次のとおりです。

黒字でも現金が減る主な原因なぜ現金が出る・入らないのか
売掛金の回収サイトが長い売上は計上されても、入金は1〜2か月先。その間も支払いは続く
在庫(棚卸資産)が増える仕入の現金は出ているが、売れるまで現金にならない
借入金の元本返済返済は費用(経費)にならないが、現金は確実に出ていく
設備投資大きな現金が出るが、費用になるのは減価償却で数年がかり
税金・賞与の支払い一時的に大きな現金が出る(納税・夏冬の賞与)

これらはどれも、損益計算書(利益)には現れにくい現金の流出です。資金繰り表で先々の現金残高を予測しておけば、「3か月後に資金が不足する」と早めに気づき、融資の相談・回収の前倒し・支払の調整といった手を打てます。資金繰りは、苦しくなってからでは打ち手が限られます。早く気づくことそのものに価値があります。

3. 資金繰り表の基本構成(3つの収支)

資金繰り表は、現金の動きを性質ごとに3つに区分すると、原因と対策が見えやすくなります。

区分内容主な項目
経常収支本業の営業活動による現金の出入り現金売上・売掛金回収・手形入金/現金仕入・買掛金支払・人件費・諸経費・支払利息
経常外収支本業以外・臨時の現金の出入り設備投資(固定資産の購入)・固定資産の売却・税金の納付
財務収支資金調達と返済による現金の出入り借入金の入金・借入金の元本返済・増資

そして全体は、次の式でつながります。

前月繰越(月初の現金残高)+ 当月の収入 − 当月の支出 = 翌月繰越(月末の現金残高)

このうち最も重要なのが経常収支です。経常収支がプラスなら本業で現金を生めている健全な状態、マイナスが続くなら本業で現金が流出している危険な状態で、借入(財務収支)で穴埋めしている構図が見えます。

4. 資金繰り表の作り方(7ステップ)

資金繰り表は、エクセルや会計ソフト、日本政策金融公庫などが配布する無料テンプレートで作れます。月単位で、次の手順で組み立てます。

  1. 前月繰越(月初残高)を記入する:前月末の現金・預金の残高をそのまま月初に置く。
  2. 経常収入を記入する:現金売上・売掛金の回収・受取手形の入金など、本業で入ってくる現金を入金予定月に入れる。
  3. 経常支出を記入する:現金仕入・買掛金の支払・人件費・家賃・諸経費・支払利息など、本業で出ていく現金を支払予定月に入れる。
  4. 経常収支を計算する:経常収入 − 経常支出。本業で現金を生めているかが分かる。
  5. 経常外収支・財務収支を記入する:設備投資・税金の納付、借入金の入金・元本返済などを入れる。
  6. 当月収支を計算する:当月のすべての収入 − すべての支出。
  7. 翌月繰越を計算する:前月繰越 + 当月収支 = 翌月繰越。これが翌月の月初残高になり、次の月へつながる。

最初は実績(過去の数字)で作って自社の現金の動きの型をつかみ、次に予定(これからの見込み)を3〜6か月先まで埋めていきます。予定の現金残高がマイナスになる月があれば、そこが「資金ショートの危険日」です。

💡 資金繰り表は売上や利益を「予測」する表ではなく、現金の「入りと出のタイミング」を管理する表です。売上が立つ月ではなく、実際に入金される月・支払う月に金額を置くことが、精度を上げる最大のコツです。

5. 銀行融資で評価される資金繰り表の書き方

資金繰り表は、銀行融資の場面でも強力な武器になります。「資金繰り表を出すと、苦しいと思われて不利では」と心配される方がいますが、実際は逆です。資金繰りを把握し、返済できる根拠を示せる経営者は、銀行から信頼されます。

❌ 評価されない出し方
  • どんぶり勘定で、現金の動きをそもそも把握していない
  • 損益計算書(利益)だけを示し、返済の原資(現金)を説明できない
  • 都合のよい予測だけを並べ、根拠(受注・入金予定)が示せない
⭕ 評価される出し方
  • 実績と予定の両方を示し、現金の動きを自分の言葉で説明できる
  • 借入の返済を織り込んでも、現金残高がプラスで回る計画を示す
  • 売上が下振れした場合(保守的なシナリオ)でも資金が回ることを示す

銀行が融資で見ているのは「貸したお金がきちんと返ってくるか」です。資金繰り表で、借入金の元本返済を織り込んでも現金が回ることを示せれば、それが何よりの返済能力の証明になります。これは、銀行が「貸したくなる決算書」と並ぶ、資金調達の土台です。創業期であれば、創業融資の事業計画と一体で資金繰り計画を示すと説得力が増します。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「利益は出ているのに、月末になると預金残高が不安」というご相談は、業績が伸びている会社からこそ実際に多く寄せられます。一般論として申し上げると、売上が伸びる局面ほど、仕入や人件費の現金が先に出て、回収が後から追いつく「増加運転資金」で資金が詰まりやすいのです。私たちが関与する場面でも、資金繰り表で先々を見える化し、必要な資金を前もって手当てするところから一緒に整えています。

6. 資金繰りを改善する4つの方向

資金繰り表で先々の不足が見えたら、打てる手は大きく次の4つです。

改善の方向具体策
入金を早める売掛金の回収サイトを短縮、前受金・着手金をもらう、滞留債権を回収する
出金を遅らせる・減らす買掛金の支払サイトを見直す、過剰な在庫を圧縮する、不要な経費を削る
資金を調達する銀行融資・公的融資で運転資金を確保する、補助金・助成金を活用する
返済を組み替える返済が重いときは金融機関とリスケジュール(条件変更)を相談する

資金繰りの改善は、利益を増やすこと(本業の収益力)と、現金の回り方を整えること(回収・支払・在庫)の両輪です。資金調達が必要な場面では、グループのユウシサポと連携し、資金繰り計画の作成から金融機関との折衝まで一体でご支援しています。

よくある質問(FAQ)

損益計算書があれば、資金繰り表はいらないのでは?

いいえ。損益計算書は「利益」を、資金繰り表は「現金残高」を表す別物です。利益が出ていても、売掛金の未回収・在庫・借入返済・設備投資・納税で現金は減ります。黒字倒産を防ぐには資金繰り表が不可欠です。

黒字なのに資金が足りないのはなぜですか?

売上は計上されても入金は先、仕入や人件費の現金は先に出る、在庫は現金が寝た状態、借入の元本返済は費用にならないのに現金が出る——これらが重なるためです。利益と現金のタイミングのズレが原因です。

資金繰り表は何か月先まで作ればよいですか?

最低でも3か月先、できれば6〜12か月先まで予定を入れるのが理想です。先を見るほど、資金不足に早く気づき、打ち手の選択肢が増えます。

エクセルで自作できますか?

できます。日本政策金融公庫などが無料の資金繰り表テンプレート(記入例つき)を公開しています。まずはそれを使い、自社の科目に合わせて調整するのが近道です。

銀行に資金繰り表を出すと、経営が苦しいと思われて不利になりませんか?

むしろ有利です。現金の動きを把握し、返済できる根拠を示せる経営者は信頼されます。資金繰り表は、銀行が「貸したくなる決算書」と並ぶ、資金調達の土台になります。

8. まとめ

資金繰り表は、利益ではなく現金を管理し、黒字倒産を防ぐ経営の生命線です。ポイントは次のとおりです。

  • 資金繰り表は現金残高を管理する表。損益計算書(利益)とは別物で、利益と現金は一致しない
  • 構成は経常収支・経常外収支・財務収支の3区分。最重要は本業の経常収支
  • 作り方は前月繰越+収入−支出=翌月繰越を、実績→予定の順に3〜6か月先まで埋める。
  • 銀行融資では、返済を織り込んでも現金が回る資金繰り表が、何よりの返済能力の証明になる。
  • 改善は入金を早める・出金を抑える・調達する・返済を組み替えるの4方向で考える。

「資金繰り表を作りたいが何から手をつければよいか分からない」「融資のために説得力のある資金繰り計画を作りたい」「先々の資金が不安」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、認定経営革新等支援機関の立場から、資金繰り表の作成・経営改善から、グループのユウシサポと一体での資金調達まで伴走しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 日本政策金融公庫「資金繰り表(記入例)」 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/sikinguri_rei.pdf
  • 中小機構 J-Net21「資金繰り表を活用する」 https://j-net21.smrj.go.jp/handbook/finance/table.html
  • 中小企業庁「中小企業白書」(資金繰り・運転資金の解説)
ご利用上の留意事項
本記事は、資金繰り表に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。最適な資金繰り管理や資金調達の方法は、事業の規模・業種・財務状況により異なります。実際の作成・資金調達にあたっては、金融機関の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月9日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp