新築マンションの「短期売買」に課税強化?国交省が令和9年度税制改正要望を公表|眠っている重課条文まで税理士が解説【2026年8月28日時点】

2026年8月28日、国土交通省が「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」を同省ウェブサイトに掲載しました。全35項目の主要項目のうち、不動産をお持ちの方にとって最も重いのが、「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」です。 要望の文章は短く、こう書かれています。「実需に基づかない投機的取引を抑制するための方策について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる」。制度の中身は書かれていません。ですが、同じ資料に添えられた調査結果を見ると、国が何を問題視しているのかははっきり分かります。都心6区の新築マンションで、保存登記から1年以内に転売された物件の割合が12.2%にまで上がっているのです。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「都心のマンションを短期で売ったら税金はどうなるか」「いま売るべきか、5年待つべきか」というご相談は、不動産をお持ちの経営者・富裕層の方から実際に寄せられます。一般論として申し上げると、この論点で見落とされがちなのは、日本の税法にはすでに「短期転売を重く課す条文」が用意されていて、それがいま眠っている(適用停止中)という事実です。新しい税を作らなくても、停止を解除すれば明日にでも重課は復活し得ます。 本記事では、①国交省が公表した要望の中身 ②国が示した短期売買のデータ ③いま短期で売るとどう課税されるのか ④すでに条文としては存在する「眠れる重課」の正体 ⑤2026年時点で不動産をお持ちの方が押さえるべきこと、を順に整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
  2. 2. 国交省が公表した要望の中身
  3. 3. 数字で見る「短期売買」――都心6区は12.2%
  4. 4. いま短期で売ると、どう課税されるのか
  5. 5. 専門家の視点:すでに「眠れる重課条文」が3本ある
  6. 6. 実務でどう備えるか
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(3行サマリー)

  • 2026年8月28日、国土交通省が令和9年度(2027年度)税制改正要望を公表しました。主要項目の一つが「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」で、実需に基づかない投機的取引の抑制を目的として検討を進めるとしています
  • 同省の調査によれば、都心6区の短期売買割合は2024年1〜6月で12.2%。2018〜2022年での最大値(4.6%・2021年)の約2.7倍にあたります
  • この方向性は突然出てきたものではありません。令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)にすでに「不動産価格高騰への対応(新築マンションの短期売買)」の項目が置かれ、「税制上の措置を含め必要な措置を講ずる」と明記されていました
📌 【2026年8月28日時点】これは「要望」であって、決まった制度ではありません
税制改正は、各省庁が8月末に財務省・総務省へ要望を提出し、政府税制調査会や与党税制調査会の議論を経て、年末の与党税制改正大綱で方向が定まり、翌年の通常国会で法律が成立して初めて確定します。要望に入っただけの内容は、削られることも、要件が大きく変わることも、実現しないこともあります。国土交通省の要望文にも具体的な税率・要件は書かれておらず、「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」という検討要望の形です。本記事の記述は2026年8月28日時点の公表資料に基づくものであり、確定情報ではありません。

2. 国交省が公表した要望の中身

要望文の全文

国土交通省の要望資料には、次のとおり記載されています。

💡 国土交通省「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」(令和8年8月)より
「都心の大規模マンションを中心とした近年の新築マンション価格の高騰に対応するため、実需に基づかない投機的取引を抑制するための方策について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる。」

注目していただきたいのは、税目が書かれていないことです。他の要望項目は「(贈与税)」「(登録免許税)」のように対象税目が明示されていますが、この項目には税目の記載がありません。制度設計がまだ固まっていない段階だということです。

すでに大綱に書かれていた

この論点は、今年になって突然出てきたものではありません。令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日 自由民主党・日本維新の会)の「第一 令和8年度税制改正の基本的考え方」に、次の一節がすでに置かれていました。

💡 令和8年度税制改正大綱「ロ 不動産価格高騰への対応(新築マンションの短期売買)」(原文)
「近年のマンション価格の高騰については、その一因として、都心の大規模マンションを中心に、短期売買が増加傾向にあることが挙げられる。実需に基づかない投機的取引は好ましくないとの考えの下、民間部門でも対策が講じられ始めている。その結果も踏まえつつ、引き続き、所管省庁においてマンション取引の実態把握を継続し、本来あるべき不動産取引への影響や、資産価値への影響など、様々な観点を考慮しながら、税制上の措置を含め必要な措置を講ずる。」

つまり、令和8年度の大綱では「所管省庁が実態把握を続けよ」という段階でした。その所管省庁である国土交通省が、実態把握の結果を持って令和9年度要望に上げてきた、というのが今回の位置づけです。段階が一つ進んでいるという読み方になります。

同じ大綱の直前の項目(イ)には、貸付用不動産の評価方法の見直しが置かれていました。こちらはすでに令和8年度改正で動いています。不動産に対する課税の適正化は、評価の側と譲渡の側の両方から進んでいるとみるのが素直です。

3. 数字で見る「短期売買」――都心6区は12.2%

国土交通省が要望資料に載せた調査結果(令和7年11月)は、次のとおりです。ここでいう短期売買とは、保存登記から1年以内に移転登記がなされたものを指します。

区域2024年1〜6月2023年
東京圏6.3%3.7%
東京都8.5%5.2%
23区9.3%5.7%
都心6区12.2%7.1%

比較対象となる2018〜2022年での最大値は、次のとおりです(いずれも2021年が最大の年)。

  • 東京圏:5.0%
  • 東京都:7.3%
  • 23区:8.0%
  • 都心6区:4.6%

(出典:国土交通省「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」〔令和8年8月〕。同資料は出典を国土交通省としています)

読み取れることは3つです。

  • 都心に行くほど短期売買の割合が高い。東京圏6.3%に対し、都心6区は12.2%と約2倍です
  • どの区域でも直近が過去最高。2024年1〜6月の数値は、いずれも2023年の実績と2018〜2022年の最大値の両方を上回っています
  • 伸び方が最も急なのは都心6区。過去最大値4.6%に対して12.2%ですから、約2.7倍です

新築マンションを買って1年以内に売る取引が、都心では8戸に1戸の水準まで来ている、という数字です。国がこれを「実需に基づかない投機的取引」と表現している以上、税制で抑えにいく動機は十分にあると読めます。

なお、同じ資料には民間側の動きも記載されています。不動産協会が令和7年11月に公表した対策として、①登録・購入戸数の制限 ②登録名義での契約・引渡し・登記の徹底 ③売買契約締結から引渡しまでの期間における売却活動の禁止、の3点が挙げられています。大綱が言う「民間部門でも対策が講じられ始めている」とはこれを指します。

4. いま短期で売ると、どう課税されるのか

要望の話に入る前に、現行制度の確認をしておきます。個人が不動産を売ったときの譲渡所得は、所有期間で税率が2段階に分かれます。

判定の基準日は「売った日」ではなく、譲渡した年の1月1日です。ここが実務で最もつまずくところです。

区分所有期間の判定税率(合計)
短期譲渡所得譲渡年の1月1日で5年以下39.63%
長期譲渡所得譲渡年の1月1日で5年超20.315%

(内訳:短期=所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%/長期=所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%。根拠:租税特別措置法第32条第1項〔百分の三十〕、同法第31条第1項〔百分の十五〕。出典:国税庁タックスアンサー No.3211 短期譲渡所得の税額の計算No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

条文は次のように定めています。

💡 租税特別措置法第32条第1項(短期譲渡所得の課税の特例・抜粋)
「個人が、その有する土地等又は建物等で、その年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が五年以下であるものの譲渡をした場合には……課税短期譲渡所得金額……の百分の三十に相当する金額に相当する所得税を課する。」

すでに短期は長期のほぼ倍の税率です。それでも短期売買が増えているという事実が、今回の要望の出発点になっています。逆に言えば、現行の39.63%では抑止として足りていないと国が判断した、というシグナルでもあります。

5. 専門家の視点:すでに「眠れる重課条文」が3本ある

ここからが、報道ではまず触れられない部分です。

日本の税法には、短期の土地転売を重く課すための条文がすでに用意されています。しかも1本ではなく3本です。ただし、そのすべてが現在、適用を停止されています

3本の条文と、その中身

① 租税特別措置法第28条の4(個人・事業所得等) 個人が、取得から5年以下の土地等を売り、それが事業所得または雑所得になる場合(不動産業者による転売などが典型です)、その所得に対して40%、または通常の税額の110%のいずれか多い金額を課すという条文です。

② 租税特別措置法第62条の3(法人・土地の譲渡等) 法人が土地等を売った場合、通常の法人税額に、譲渡利益金額の5%を加算するという条文です。

③ 租税特別措置法第63条(法人・短期所有=5年以下) 法人が、取得から5年以下(判定は譲渡した年の1月1日)の土地等を売った場合、通常の法人税額に、譲渡利益金額の10%を加算するという条文です。

3本とも、令和11年3月31日まで停止中

いずれの条文にも、末尾に適用停止の規定が置かれています。文言はほぼ共通で、次のとおりです。

💡 租税特別措置法第28条の4第6項(原文)
「第一項の規定は、個人が平成十年一月一日から令和十一年三月三十一日までの間にした土地の譲渡等については、適用しない。」

同法第62条の3第15項、第63条第8項も、法人について同じ期限(令和11年3月31日まで)で適用を停止しています。もともとはバブル期の土地転がしを抑えるために作られた条文で、地価下落局面に入った平成10年から停止され、その後は延長が繰り返されてきました。令和8年度改正でも、この適用停止措置は3年延長されています。

なぜこれが重要か

制度を新しく作るには、対象の定義、要件、税率、施行時期を一から設計しなければなりません。時間がかかります。一方で、すでに条文がある制度の「停止を解除する」あるいは「停止の対象から新築マンションを外す」のであれば、必要な立法は格段に小さくなります。

もちろん、これらの条文はいずれも土地等を対象としており、建物の譲渡そのものは直接の対象ではありません。マンションの短期売買にそのまま当てはめられるわけではなく、対象範囲の手当ては必要になります。ですから「停止解除で終わり」という単純な話ではありません。

それでも、「日本には短期転売への重課という発想の条文がすでにあり、いまは眠っているだけだ」という前提を知っているかどうかで、今後の大綱の読み方は変わります。年末の大綱が出たとき、新設なのか、それとも既存条文の手直しなのかを見るのが最初のポイントになります。

💬 実務の現場から
——「都心のマンションを買ったが、いつ売るのが有利か」というご相談は、弊社でも不動産をお持ちの経営者・富裕層の方から実際によく頂きます。一般論として申し上げると、つまずきやすいのは二点です。ひとつは所有期間の1月1日判定で、取得から5年が経っていても、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えていなければ短期扱いになります。数か月の差で税率が20.315%と39.63%に分かれるため、決済日の設定は価格交渉と同じくらい重い判断です。もうひとつは、税制の動きを待って売却判断を止めてしまうことです。要望が制度になるかは年末まで分かりませんが、その間に相場も買い手の事情も動きます。私たちが関与する場面では、所有期間の判定、取得費を裏づける資料の確認、法人で保有すべきか個人で保有すべきかの検討まで、一体でご支援しています。

6. 実務でどう備えるか

要望の段階である以上、慌てて動く必要はありません。ただし、次の3点は今のうちに確認しておく価値があります。

① 所有期間を1月1日基準で棚卸しする お持ちの不動産について、「譲渡した年の1月1日で5年を超えるのはいつからか」を物件ごとに書き出しておきます。取得日の翌日から起算するため、感覚とずれることがよくあります。この一覧があるだけで、売却の意思決定は速くなります。

② 短期での売却予定があるなら、年末の大綱を待たずに前提を固める 仮に重課が入るとしても、通常は施行日以後の譲渡に適用されます。とはいえ、施行日がいつになるかは大綱が出るまで分かりません。売却の予定があるなら、税制の結論を待つのではなく、いまの制度(短期39.63%)で成り立つかどうかで判断しておくのが安全です。

③ 法人保有・個人保有の別を確認する 上で見たとおり、眠っている重課条文は個人(措置法第28条の4)と法人(同第62条の3・第63条)の両方にあります。どちらで保有していても議論の射程には入るということです。法人で不動産を保有している場合、譲渡利益金額に対する加算という形になるため、通常の法人税とは計算の仕方が異なる点に注意が必要です。

やってはいけないこと

  • ❌ 「制度が変わるまで待つ」と決めて、売却の検討そのものを止めてしまう
  • ❌ 所有期間を「取得日から5年」で数え、1月1日判定を失念して短期税率になる
  • ❌ 報道の「課税強化」という見出しだけで、自分の物件が対象かを確認しないまま判断する

王道

  • ✅ 物件ごとに1月1日基準の所有期間一覧を作る
  • 年末の与党税制改正大綱(例年12月中旬)で、新設か既存条文の手直しかを確認する
  • ✅ 売却の判断は、いまの制度で成り立つかを基準に置く

7. まとめ

  • 2026年8月28日、国土交通省が令和9年度税制改正要望を公表。「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」として、実需に基づかない投機的取引の抑制を検討するとしています。ただし税目も税率も書かれていない検討要望の段階です
  • 背景データは明確です。都心6区の短期売買割合は2024年1〜6月で12.2%、2018〜2022年の最大値(4.6%)の約2.7倍にあたります
  • この方向は令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日)ですでに項目化されており、「税制上の措置を含め必要な措置を講ずる」と書かれていました。今回の要望はその次の段階です
  • 現行制度では、譲渡年の1月1日で所有期間5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%です(措置法第32条第1項・第31条第1項)
  • 短期転売を重く課す条文はすでに3本あり(措置法第28条の4・第62条の3・第63条)、いずれも令和11年3月31日まで適用停止中です。新設ではなくこの停止に手を入れる可能性も視野に入れて、年末の大綱を読むのが実務的です
  • いま打てる手は、1月1日基準の所有期間の棚卸しと、いまの制度で成り立つ売却判断の2つです

よくある質問(FAQ)

今回の要望で、税率はいくらになると決まったのですか?

決まっていません。国土交通省の要望文には「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」とあるだけで、税目も税率も要件も記載がありません。制度設計は年末に向けた与党税制調査会などの議論に委ねられている段階です。

中古マンションや戸建てにも影響しますか?

現時点では分かりません。要望の表題は「新築マンションの価格高騰への対応」であり、大綱の項目名も「新築マンションの短期売買」です。文言上は新築マンションを念頭に置いていますが、対象範囲がどこまでになるかは制度設計次第です。

すでに保有している物件を今後売る場合、遡って重く課税されますか?

税制改正は、通常、施行日以後の譲渡に適用されます。過去の取得や過去の譲渡に遡って課税が強化されるのは一般的ではありません。ただし施行日の設定は制度ごとに異なるため、確定した段階で必ず確認が必要です。

5年を超えて持てば、この議論の影響は受けませんか?

現行の短期・長期の区分は譲渡した年の1月1日で5年以下かどうかで決まります。今回の議論も「短期売買」を対象としていますから、長期保有であれば射程から外れる可能性は高いと考えられます。ただし、要望の対象が「1年以内の転売」なのか「5年以下」なのかも未定です。

法人でマンションを保有している場合はどうなりますか?

法人には、譲渡利益金額に5%または10%を加算する条文(措置法第62条の3・第63条)がすでにあり、いずれも令和11年3月31日まで適用停止中です。個人・法人のどちらで保有していても議論の射程には入り得るとみておくのが安全です。

いま都心のマンションを買うのは避けたほうがいいですか?

税制を理由に購入をやめる判断はお勧めしません。要望が制度になるかは年末まで分かりませんし、対象は「実需に基づかない投機的取引」とされています。ご自身が住む、あるいは長期保有で賃貸に回すという実需の取得であれば、議論の趣旨からは外れます。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、法令および公表資料・報道に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案における税務上の取扱いを保証するものではありません。本記事のうち「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」に関する記述は、国土交通省の令和9年度(2027年度)税制改正要望の内容であり、決まった制度ではありません。税制改正要望は、年末の与党税制改正大綱および翌年の法律の成立によって初めて確定するものであり、内容が変更されること、実現しないことがあります。要望文には税目・税率・要件のいずれも記載されておらず、本記事における制度の見通しに関する記述は、公表資料と現行条文から整理した見方であって確定情報ではありません。本記事は2026年8月28日時点の情報に基づくものであり、その後の制度改正・公表資料の更新により記載内容が現行と異なる場合があります。不動産の譲渡にあたっては、最新の法令および国税庁の公表資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月28日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から、M&A・組織再編・事業承継、国際税務・資産防衛まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月28日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。