信託型・有償ストックオプションは給与課税?税制適格との違いと落とし穴を税理士が解説【2026年版】
- 1. ストックオプションの課税は「タイプ」で決まる(3行サマリー)
- 2. 前提知識:ストックオプションの4タイプと課税
- 3. 何が論点だったのか——信託型SOの「給与課税」
- 4. 専門家の視点——「有償SO」と「信託型SO」は別物
- 5. 実務でどう備えるか
- 6. ストックオプション設計の失敗と王道
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. ストックオプションの課税は「タイプ」で決まる(3行サマリー)
- ストックオプション(自社株を決めた価格で買える権利)は、タイプによって課税のタイミングと税率がまったく異なります。
- 税制適格なら権利行使時は課税されず、売却時に譲渡所得20.315%。一方、税制非適格・信託型は権利行使時に給与所得(総合課税・最高約55%)が生じます。
- 国税庁は令和5年、信託型を「給与所得課税」と整理しました。設計を誤ると、想定の倍以上の税負担になり得ます。
2. 前提知識:ストックオプションの4タイプと課税
主なタイプと課税関係を整理します。
| タイプ | 権利行使時 | 株式売却時 | 根拠・特徴 |
|---|---|---|---|
| 税制適格 SO | 課税なし | 譲渡所得 20.315% | 租税特別措置法29条の2の要件を満たす無償SO |
| 税制非適格 SO | 給与所得等(総合課税・最高約55%) | 譲渡所得 20.315% | 要件を満たさない無償SO(No.1543) |
| 有償 SO | 課税なし(適正な時価で購入した場合) | 譲渡所得 20.315% | 役職員が公正価値で新株予約権を購入 |
| 信託型 SO | 給与所得(総合課税・最高約55%) | 譲渡所得 20.315% | 国税庁が令和5年に給与課税と整理 |
税制適格SOは、権利行使時には課税されず、株式を売ったときにまとめて譲渡所得(一律20.315%)で課税されます。行使時の負担がなく税率も低いため、最も有利なタイプです。これに対し、非適格SO・信託型SOは、権利行使して株式を得た時点で、その経済的利益が給与所得として総合課税(最高約55%)の対象になります(国税庁タックスアンサー No.1543「税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について」)。
3. 何が論点だったのか——信託型SOの「給与課税」
信託型ストックオプションは、あらかじめ新株予約権を信託にプールしておき、後から貢献度に応じて役職員へ配分できる仕組みとして、多くのスタートアップで採用されていました。実務では「役職員は付与時に金銭を負担しないが、売却時に譲渡所得(約20%)で課税される」という理解が一般的でした。
しかし国税庁は令和5年5月30日のQ&Aで、次の理由から信託型SOは権利行使時に給与所得として課税されるとの見解を示しました。
- 実質的には、会社が役職員にストックオプションを付与しているとみられること
- 役職員自身に金銭等の負担がないこと
このため、権利行使で得た経済的利益は「労務の対価」にあたり、給与所得(総合課税・最高約55%)になる、という整理です。従来想定の譲渡所得(20.315%)とは、税率も課税のタイミングも大きく異なります。
4. 専門家の視点——「有償SO」と「信託型SO」は別物
混同されやすいのが、「有償ストックオプション」と「信託型ストックオプション」です。
- 有償SO——役職員が、新株予約権を適正な時価(公正価値)で自ら購入するタイプ。国税庁のQ&Aでも、適正な時価で購入していれば付与・行使の段階で経済的利益(給与課税)は生じず、売却時に譲渡所得で課税されるのが基本と整理されています。
- 信託型SO——役職員が金銭を負担せず、信託を通じて後から配分を受けるタイプ。役職員に負担がないことから、給与課税と整理されました。
つまり、「役職員が自分の負担で公正価値を払っているか」が、給与課税を避けられるかどうかの分かれ目になります。国税庁のQ&A公表後、多くの企業が信託型から「有償SO+税制適格SO」の組み合わせへと制度を見直しました。
ストックオプションのご相談では、「うちのSOは適格なのか、それとも給与課税になるのか」というご質問を実際に多くいただきます。一般論として申し上げると、税制適格の要件は権利行使価額・行使期間・行使限度額など細かく、1つでも外すと非適格になります。設計段階で要件を1つずつ確認しておくことが、後の想定外の課税を防ぎます。
5. 実務でどう備えるか
ストックオプションを導入する会社・受け取る役職員が備えるべき点を整理します。
- 導入前にタイプと課税を確認する——税制適格の要件(租税特別措置法29条の2)を満たす設計か、有償なら公正価値の算定が適正か、を専門家と確認する。
- 行使時の納税資金を見込む——非適格・信託型は行使時に給与課税されるため、株を売る前に納税資金が必要になり得ます。
- 税制適格の要件を1つずつ点検する——権利行使価額が付与時の時価以上か、行使期間・年間行使限度額(令和6年改正で最大3,600万円へ拡大)などを満たしているか。
- 既存の信託型SOは見直しを検討——給与課税を前提に、有償SO・税制適格SOへの切り替えや、源泉徴収・年末調整の対応を確認する。
6. ストックオプション設計の失敗と王道
- 信託型SOを「売却時に約20%課税」と考え、給与課税(最高約55%)の想定をしていなかった
- 税制適格のつもりが、権利行使価額や行使限度額の要件を外して非適格になり、行使時に給与課税された
- 行使時課税を見込まず、株を売る前の納税資金を用意していなかった
- 「有償SO」と「信託型SO」を混同し、負担の有無で課税が変わることを見落とした
- 導入前に、税制適格・非適格・有償・信託型の課税の違いを理解して制度を選ぶ
- 税制適格を狙うなら、要件を1つずつ点検し、非適格化を防ぐ
- 非適格・信託型を使う場合は、行使時の給与課税と納税資金をあらかじめ計画する
- 既存の信託型SOは、給与課税を前提に制度の見直しを早めに検討する
7. まとめ
ストックオプションは、タイプによって課税が大きく変わり、設計を誤ると想定の倍以上の税負担になり得ます。要点は次のとおりです。
- 税制適格SOは行使時課税なし・売却時に譲渡所得20.315%。最も有利なタイプ。
- 税制非適格SO・信託型SOは権利行使時に給与所得(総合課税・最高約55%)。
- 国税庁は令和5年5月30日のQ&Aで、信託型SOを給与課税と整理した(役職員に金銭負担がないため)。
- 有償SOは、適正な時価で購入していれば行使時課税は生じないのが基本。信託型とは負担の有無で扱いが分かれる。
- 王道は、導入前にタイプと課税を理解し、税制適格の要件を1つずつ点検して設計すること。
「自社のストックオプションが給与課税になるのか確認したい」「税制適格の要件を満たすSOを設計したい」「信託型SOの見直しを検討している」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、ストックオプションの設計から課税関係の確認、資本政策との一体設計まで伴走します。導入や見直しの前のお早めの段階でご相談ください。
よくある質問(FAQ)
信託型ストックオプションは、結局いくら課税されるのですか?
税制適格ストックオプションとの違いは何ですか?
有償ストックオプションも給与課税されますか?
すでに信託型SOを導入しています。どうすればよいですか?
税制適格の要件を1つでも外すとどうなりますか?
出典・参考資料
- 国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」令和5年5月30日公表(令和5年7月最終改訂)
- 租税特別措置法第29条の2(特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)
- 所得税法第36条(収入金額)
- 国税庁タックスアンサー No.1540(ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合)
- 国税庁タックスアンサー No.1543(税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について)
本記事は、ストックオプションの課税に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。課税関係は、ストックオプションのタイプ・設計・要件の充足状況・個人の他の所得により異なり、制度は改正により変わることがあります。実際の導入・行使・申告にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月16日
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公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、ストックオプションの設計から課税関係の確認、株価評価、上場・資本政策との整合まで一体でご支援します。導入や既存SOの見直しの前のお早めの段階でご相談ください。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
