資産管理会社(プライベートカンパニー)の作り方とは?設立の手順・費用・落とし穴を税理士が解説【2026年版】
- 1. 資産管理会社とは(3行サマリー)
- 2. なぜ税金が変わるのか——3つの仕組み
- 3. 着手前に決めておく2つのこと
- 4. 作り方——6つのステップと設立コスト
- 5. 見落とされやすい5つの落とし穴
- 6. 資産管理会社でよくある失敗と王道
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 資産管理会社とは(3行サマリー)
- 資産管理会社とは、個人が持つ不動産・有価証券などの資産を会社名義に移し、その保有・運用・管理を行わせるために設立する会社です。主な収入は賃料収入と配当収入になります。
- 目的は3つ。①所得税と法人税の税率差を使う ②役員報酬で家族に所得を分散する ③相続財産を「不動産・現金」から「株式」に変え、承継しやすくする。
- 一方で、社会保険の強制加入、赤字でもかかる均等割、小規模宅地等の特例が使えなくなるなどのコストがあり、規模が小さいと逆効果になります。
2. なぜ税金が変わるのか——3つの仕組み
仕組み① 所得税と法人税の税率差
個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率です。国税庁が公表している速算表は次のとおりです(省略せず全7段階を掲載します)。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 〜 1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 〜 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 〜 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 〜 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 〜 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 〜 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
(出典:国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」)
これに住民税10%が加わるため、最高税率は所得税45%+住民税10%=55%(別途、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%)になります。
一方、法人税の税率は次のとおりです。
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 中小法人(資本金1億円以下の法人など)の年800万円以下の部分 | 15%(令和7年4月1日以後に開始する事業年度で、所得金額が年10億円を超える事業年度は17%) |
| 年800万円超の部分 | 23.2% |
(出典:国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」。上記は法人税の税率であり、これとは別に地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。)
つまり、個人で受け取れば最大55%課税される所得を、法人で受け取れば法人税率で課税されます。所得が高い方ほど、この差が大きくなる——これが資産管理会社の基本的な発想です。
仕組み② 役員報酬による所得の分散と給与所得控除
法人にプールした利益は、役員報酬として本人や家族(実際に業務に従事している場合)に支払えます。ここで効くのが給与所得控除です。給与収入から自動的に差し引かれるため、同じ金額でも課税所得が圧縮されます。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 1,900,000円まで | 650,000円 |
| 1,900,001円 〜 3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
| 3,600,001円 〜 6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
| 6,600,001円 〜 8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
(出典:国税庁タックスアンサー No.1410「給与所得控除」。令和7年分以降)
ひとりで多額の所得を受けるより、複数人に分けたほうが、それぞれ低い税率帯に収まり、給与所得控除も人数分使えます。ただし、役員報酬を損金にするには定期同額給与などのルールを満たす必要があり(国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」)、期中に自由に増減はできません。また、勤務実態のない家族への報酬は否認されます。
仕組み③ 相続財産の形を変える
個人で不動産や現金を持ったまま相続が起きると、その財産がそのまま評価されます。資産管理会社に移しておけば、相続財産はその会社の株式になります。取引相場のない株式の評価には類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式があり(国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」)、また、株式であれば毎年少しずつ生前贈与するといった分割して渡す設計がしやすくなります。
3. 着手前に決めておく2つのこと
作り方の手順に入る前に、先に決めておかないと後から変更が効かない論点が2つあります。
① 何を入れるか(保有させる資産) 不動産保有・管理型、株式や有価証券の保有・運用型、自社株を集約する持株型——どの型で作るかによって、必要な資本金、会社形態、株主構成が変わります。とくに、すでに個人で持っている資産を後から移すのか、これから取得する資産を法人側で買うのかは、後述の移転コストに直結します。
② 誰を株主にするか 設立時にオーナー本人が100%を持つのか、最初から子や配偶者にも持たせるのかで、将来の相続・承継の負担が変わります。あとから株式を移すと贈与税・譲渡所得税の問題が生じるため、設立時点が最も自由度の高いタイミングです。
なお、「そもそも作るべきか」の判断は、資産額ではなくその資産から毎年いくら所得が生まれ続けるかで考えるのが実務の基本です。この論点は別記事に譲りますが、判断の際は少なくとも次の6項目を織り込んだ手取りベースの試算が必要になります。
| 検討項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 所得の水準と種類 | 不動産賃料か配当か。個人の限界税率が何%の帯にいるか |
| 家族構成 | 役員報酬を分散できる家族が、実際に業務に従事できるか |
| 社会保険料 | 法人は原則強制加入。役員報酬に応じた保険料が労使双方に発生する |
| 維持コスト | 均等割・税理士報酬・登記費用など、赤字でも出ていく固定費 |
| 相続・承継の設計 | 誰に、いつ、どの割合で渡すか。株式にすることで有利になるか |
| 出口 | 将来たたむのか、承継するのか、売るのか |
とくに見落とされやすいのが社会保険料です。法人化によって法人税は下がっても、社会保険料の増加でトータルの手取りが減るケースは珍しくありません。「税金だけで比べない」——これが実務の鉄則です。
資産管理会社のご相談で、一般論として最初にお伝えしているのは、「作るかどうか」より「何を入れるか」を先に決めましょう、ということです。過去のご相談の傾向として申し上げると、うまく機能しているのは、これから買う物件や、これから増える収入を法人側に置いた設計です。逆に、すでに個人で長く持っている不動産を後から法人に移そうとすると、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税という移転コストが一度にのしかかり、回収に何年もかかることがあります。守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としては「これから」を法人へ、「すでにあるもの」は慎重に、という判断が多くなります。
4. 作り方——6つのステップと設立コスト
手順
- 目的と入れる資産を決める(賃料収入か、配当か、これから取得する物件か)
- 会社形態を選ぶ(株式会社か合同会社か。資産管理目的では設立費用の安い合同会社も選択肢)
- 定款を作成し、認証を受ける(合同会社は公証人の認証が不要)
- 資本金を払い込み、設立登記を申請する(登記した日が設立日)
- 税務署・都道府県・市町村へ届出(法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など)/年金事務所へ社会保険の新規適用届
- 資産を移し、役員報酬を決定する(役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に決議)
設立時にかかる主なコスト
| 費目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 資本金の額等に応じて 1万5,000円/3万円/4万円/5万円 | 不要(認証自体が不要) |
| 定款の収入印紙代 | 4万円(電子定款なら不要) | 4万円(電子定款なら不要) |
| 設立登記の登録免許税 | 資本金の額×0.7%(15万円に満たないときは15万円) | 資本金の額×0.7%(6万円に満たないときは6万円) |
定款認証手数料は公証人手数料令第35条に定めがあり、資本金の額等が100万円未満の株式会社については、①発起人の全員が自然人でその数が3人以下、②定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載がある、③定款に取締役会を置く旨の記載がない、のいずれにも該当する場合に1万5,000円とされています(令和6年政令第353号、令和6年12月1日施行)。それ以外は、資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円です。設立登記の登録免許税は登録免許税法別表第一第24号によります。
設立後にかかるランニングコスト
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 赤字でもかかります。資本金等の額1,000万円以下・従業者数50人以下の場合、標準税率で年7万円(道府県民税均等割2万円+市町村民税均等割5万円。地方税法第52条・第312条。自治体により異なります) |
| 社会保険料 | 法人は原則として強制加入。役員報酬に応じて労使双方に発生 |
| 税理士報酬・決算費用 | 法人決算・申告は個人の確定申告より手間がかかります |
5. 見落とされやすい5つの落とし穴
① 小規模宅地等の特例が使えなくなる 個人が持つ宅地には、相続時に評価を大きく下げる小規模宅地等の特例があります。国税庁が公表する区分は次のとおりです。
| 宅地等の区分 | 限度面積 | 減額される割合 |
|---|---|---|
| 特定事業用宅地等(貸付事業以外の事業用) | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等(一定の法人の事業〈貸付事業を除く〉用) | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等(一定の法人の貸付事業用を含む) | 200㎡ | 50% |
| 被相続人等の貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
(出典:国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」。令和7年4月1日現在法令等)
この特例の対象は「宅地等」です。不動産そのものを法人名義に移してしまうと、相続人が承継するのは宅地ではなく株式になるため、この特例は使えません。土地は個人で持ったまま法人に貸す、といった設計にするかどうかで、相続税額は大きく変わります。
② 不動産を移すときの移転コスト すでに個人で持っている不動産を法人へ移すには、個人側で譲渡所得税、法人側で不動産取得税と所有権移転登記の登録免許税がかかります。時価より安く移せば、差額が寄附金やみなし譲渡の問題になります。移転コストは一度に発生し、節税効果は毎年少しずつしか出ません。回収年数を必ず試算してください。
③ 会社のお金は自分のお金ではない 法人に貯まった利益を個人が使うには、役員報酬・配当・退職金のいずれかで引き出す必要があり、その都度課税されます。生活費を会社から出せば役員貸付金として残り、認定利息の問題にもなります。
④ 出口で税金がかかる 将来たたむ場合、清算所得課税は平成22年度改正で廃止され、清算中も通常どおり各事業年度の所得に課税されます。含み益のある資産を売却すれば法人段階で課税され、さらに残余財産の分配はみなし配当として総合課税の対象になり得ます。入口を作るときに、出口まで見ておく必要があります。
⑤ 相続直前に作っても効かない 資産管理会社の株式は、株式等保有特定会社・土地保有特定会社・開業後3年未満の会社などに該当すると、原則として純資産価額方式で評価されます。「相続が見えてから急いで作る」形は、評価上のメリットが出ないばかりか、税負担の軽減だけを目的とした不自然な行為と見られるリスクもあります。
6. 資産管理会社でよくある失敗と王道
- 「課税所得○○万円を超えたから」という一本の目安だけで設立を決める
- 税金だけで比較し、社会保険料と均等割を試算に入れていない
- すでに個人で持つ不動産を、移転コストの回収年数を計算せずに法人へ移す
- 小規模宅地等の特例が使えなくなることを知らないまま、土地ごと法人名義にする
- 勤務実態のない家族に役員報酬を出す
- 相続が見えてから駆け込みで設立する
- 出口(清算・承継・売却)を考えずに器だけ作る
- これから増える所得・これから買う資産を法人側に置く設計から検討する
- 法人税・所得税・社会保険料・維持コストを通算した手取りベースでシミュレーションする
- 土地は個人、建物は法人など、小規模宅地等の特例を残す組み合わせを検討する
- 役員報酬は定期同額給与のルールに沿って、事業年度開始から3か月以内に決議する
- 株式の評価区分(株式等保有特定会社等)を事前に確認し、承継の道筋まで描いておく
- 出口(清算・承継・M&A)の税負担を設立時に試算しておく
- 相続が視野に入る前の、時間に余裕がある段階で着手する
7. まとめ
資産管理会社(プライベートカンパニー)は、所得と資産の置き場所を設計し直すための器です。要点は次のとおりです。
- 税金が変わる仕組みは3つ。所得税と法人税の税率差、役員報酬による所得分散と給与所得控除、相続財産を株式に変えること。
- 判断は「課税所得○○万円」の一本線ではなく、社会保険料・均等割・維持コストまで含めた手取りベースの試算で行う。
- 落とし穴は5つ。小規模宅地等の特例が使えなくなる/不動産の移転コスト/会社のお金は自由に使えない/出口の課税/相続直前では効かない。
- 王道は、これから増える所得・これから買う資産を法人側に置き、出口まで設計してから作ること。
「自分の場合、作ったほうがよいのか」「どこまで法人に入れるべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、法人税・所得税・社会保険料・相続税を通算した手取りシミュレーションと、出口までを見据えた設計に伴走しています。時間に余裕のある段階でのご相談をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
資産管理会社とプライベートカンパニーは違うものですか?
年収や資産がいくらから作るべきですか?
株式会社と合同会社のどちらがよいですか?
個人で持っている賃貸不動産を法人に移すべきですか?
家族を役員にして報酬を払えば節税になりますか?
相続対策として今から作れば間に合いますか?
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
- 国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
- 国税庁タックスアンサー No.1410「給与所得控除」
- 国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
- 日本公証人連合会「公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について」(令和6年政令第353号・令和6年12月1日施行)
- 公証人手数料令第35条(定款認証の手数料)/登録免許税法別表第一第24号(会社の設立登記)
- 地方税法第52条(道府県民税の均等割)・第312条(市町村民税の均等割)
- 法人税法第23条(受取配当等の益金不算入)/法人税法第34条(役員給与の損金不算入)
- 財産評価基本通達189(特定の評価会社/株式等保有特定会社・土地保有特定会社等の判定)
本記事は、資産管理会社(プライベートカンパニー)に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。設立の有利不利は、所得の水準・資産の内容・家族構成・社会保険・自治体の税率・将来の承継方針などにより大きく異なり、制度や解釈は今後の税制改正・裁判例により変わることがあります。実際のご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月26日
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