消費税の課税事業者・免税事業者とは?納税義務の判定(1,000万円の壁)を税理士が解説【2026年版】

「売上が増えてきたが、いつから消費税を納めるのか」「インボイスのために課税事業者になったが、そもそも仕組みが分からない」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、消費税の納税義務についてのご相談が日々寄せられます。消費税は、すべての事業者が必ず納めるわけではなく、課税事業者になった人だけが納める税金です。その分かれ目になるのが、有名な「1,000万円の壁」です。 本記事では、課税事業者と免税事業者の違い、納税義務を判定する2つの期間(基準期間・特定期間)、新しく開業・設立したときの扱い、インボイス登録との関係、そして消費税をいくら納めるのかの基本まで、2026年(令和8年)時点の最新の取扱いで網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 消費税の納税義務とは(3行サマリー)
  2. 2. 課税事業者と免税事業者の違い
  3. 3. 納税義務の判定:2つの期間(基準期間と特定期間)
  4. 4. 新しく開業・設立したときの扱い
  5. 5. インボイス登録との関係(免税事業者でも課税事業者になる)
  6. 6. 消費税はいくら納める?(本則課税と簡易課税)
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 消費税の納税義務とは(3行サマリー)

  • 消費税を国に納める義務がある事業者を「課税事業者」、納める義務が免除されている事業者を「免税事業者」といいます(消費税法第9条/国税庁 No.6121)。
  • 課税事業者になるかどうかは、原則として2年前の課税売上高(基準期間)が1,000万円を超えるかで決まります(国税庁 No.6501)。
  • ただし例外があり、特定期間の判定新設法人の特例インボイス登録のいずれかに当てはまると、1,000万円以下でも課税事業者になります。

ひとことで言えば、「2年前の売上が1,000万円を超えたら、消費税を納める人になる」のが原則です。消費者から預かった消費税は、最終的に事業者が国に納める仕組みになっています。

2. 課税事業者と免税事業者の違い

消費税は、商品やサービスの価格に上乗せして消費者が負担し、それを受け取った事業者が国に納める「間接税」です。ただし、小規模な事業者の事務負担に配慮して、一定の規模までは納税義務が免除されています。

課税事業者免税事業者
消費税の納税必要(申告・納付する)免除(申告・納付しない)
判定の原則基準期間の課税売上高が1,000万円超基準期間の課税売上高が1,000万円以下
仕入税額控除受けられる(払った消費税を差し引ける)受けられない
インボイスの発行登録すれば適格請求書を発行できる発行できない(登録には課税事業者になることが必要)
主な事務帳簿づけ・消費税の申告・納付通常は不要

ここでいう「課税売上高」とは、消費税の対象となる売上(課税取引)の合計で、土地の譲渡や住宅家賃などの非課税売上は含みません。輸出などの免税売上は含めて判定します。

💡 「売上1,000万円」と「課税売上高1,000万円」は厳密には別物です。判定に使うのは、消費税の課税対象となる売上=課税売上高です。非課税売上が多い事業(不動産賃貸など)は、総売上ではなく課税売上高で見る必要があります。

3. 納税義務の判定:2つの期間(基準期間と特定期間)

課税事業者になるかどうかは、基準期間特定期間という2つの期間でチェックします。どちらか一方でも1,000万円を超えると、その年(その事業年度)は課税事業者になります。

判定期間判定の基準
①基準期間の判定個人:前々年/法人:前々事業年度基準期間の課税売上高が1,000万円超なら課税事業者
②特定期間の判定個人:前年1月1日〜6月30日/法人:前事業年度開始から6か月特定期間の課税売上高が1,000万円超、かつ給与等支払額も1,000万円超なら課税事業者

ポイントは、基準期間が「2年前」であることです。今年の売上がいくら多くても、原則として2年後まで納税義務には影響しません。そのため、開業から最初の2年間は基準期間がなく、免税になるケースが多いのです(ただし下記の例外に注意)。

特定期間の判定には救済があります。特定期間の課税売上高給与等支払額どちらも1,000万円を超えた場合に限り課税事業者になるため、売上が1,000万円を超えても給与等の支払いが1,000万円以下なら、特定期間では課税事業者になりません。判定をどちらの金額で行うかは事業者が選べます(国税庁 No.6501)。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「去年から急に売上が伸びたが、今年から消費税を納めるのか」というご相談が実際によく寄せられます。一般論として申し上げると、ここで多いのが「今年の売上で判定する」という誤解です。消費税の原則は2年前(基準期間)の課税売上高で判定するため、急成長期は「免税のうちに利益が出て、課税事業者になる頃に納税資金が要る」というズレが起きやすいのが実情です。私たちが関与する場面でも、いつから課税事業者になるかを早めに見通し、納税資金を別に積んでおくようご案内しています。

4. 新しく開業・設立したときの扱い

開業1年目・2年目は基準期間(前々年・前々事業年度)がないため、原則は免税事業者です。ただし、次の場合は基準期間がなくても課税事業者になります。

❌ 免税だと思い込んで納税資金を用意していなかった失敗
  • 資本金1,000万円以上で会社を設立し、1期目から課税事業者だったのに気づかなかった
  • インボイス登録をしたのに「開業したばかりだから免税」と勘違いし、消費税を価格に含めず資金繰りが苦しくなった
  • 特定期間(前事業年度の前半6か月)の売上・給与がともに1,000万円を超え、2期目から課税だったのを見落とした
⭕ 開業時に納税義務を見通す王道の対応
  • 資本金(出資金)1,000万円以上で設立した法人は、基準期間がなくても設立1期目・2期目から課税事業者になる(国税庁 No.6503)
  • インボイス発行事業者として登録すると、売上規模にかかわらず課税事業者になる(次章で解説)
  • 開業・設立の時点で「いつから課税事業者か」をシミュレーションし、消費税分を価格と資金繰りに織り込む

新規開業・新設法人の納税義務の考え方は、国税庁 No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」にまとめられています。設立時の資本金の決め方ひとつで初年度の納税義務が変わるため、会社設立の前に確認しておきたいポイントです。

5. インボイス登録との関係(免税事業者でも課税事業者になる)

2023年(令和5年)10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書(インボイス)を発行できるのは適格請求書発行事業者として登録した課税事業者だけです。つまり、免税事業者がインボイスを発行したい場合は、登録と引き換えに課税事業者になる必要があります。

このため、本来なら基準期間の課税売上高が1,000万円以下で免税のままでいられる事業者でも、取引先からインボイスを求められて登録し、自ら課税事業者になるケースが増えています。登録した事業者の負担を和らげるのが、納付税額を売上税額の2割に抑えられる「2割特例」ですが、これは令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間で終了します(個人事業者は令和8年分が最後)。

💡 インボイス登録は「するか・しないか」を選べます。主な取引先が一般消費者や免税事業者中心なら、登録せず免税を続けるという選択もあり得ます。一方、取引先が課税事業者中心なら、登録しないことで取引が減るリスクがあります。自社の取引先の構成を踏まえて判断するのが王道です。

インボイス制度そのものの仕組み(登録・記載事項・経過措置)は、別記事「インボイス制度とは?仕組み・登録・適格請求書の書き方を税理士が解説」で詳しく解説しています。

6. 消費税はいくら納める?(本則課税と簡易課税)

課税事業者になったら、預かった消費税をそのまま納めるわけではありません。原則は「売上で預かった消費税 − 仕入れ・経費で支払った消費税」を納めます。この支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいます(国税庁 No.6451)。

計算方法には2つあります。

本則課税(原則)簡易課税
仕入税額の計算仕入れ・経費の消費税を実額で集計売上税額 ×業種別のみなし仕入率
使える事業者制限なし基準期間の課税売上高5,000万円以下+事前届出
向くケース設備投資・仕入れが多い仕入れが少なく利益率が高い

基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら、業種ごとの「みなし仕入率」で簡単に計算できる簡易課税を選べます。どちらが有利かは仕入れの実態によって変わるため、有利判定が欠かせません。簡易課税の詳細(みなし仕入率・事業区分・届出)は、別記事「消費税の簡易課税制度とは?みなし仕入率・事業区分・届出を税理士が解説」で解説しています。

💡 課税事業者になると、消費税は「預かっているだけのお金」を国に納める税金です。利益とは別に納税資金が必要になるため、毎月の入金から消費税分を別口座に取り分けておくのが、資金繰りを守る王道です。

よくある質問(FAQ)

売上が1,000万円を超えたら、すぐに消費税を納めるのですか?

いいえ。原則は2年前(基準期間)の課税売上高で判定します。今年1,000万円を超えても、課税事業者になるのは原則として2年後(その課税売上高が基準期間となる年)です。ただし特定期間の判定で前倒しになる場合があります。

一度課税事業者になったら、ずっと課税事業者ですか?

いいえ。基準期間・特定期間の課税売上高が1,000万円以下に下がれば、原則として再び免税事業者に戻ります(インボイス登録をしている場合は、登録している限り課税事業者です)。

免税事業者は、消費税を請求してはいけないのですか?

免税事業者でも、商品・サービスの価格に消費税相当額を含めて請求すること自体は禁止されていません。ただし、適格請求書(インボイス)は発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けにくくなる点に注意が必要です。

資本金いくらで会社を作ると、1期目から消費税がかかりますか?

資本金(出資金)が1,000万円以上の新設法人は、基準期間がなくても設立1期目・2期目から課税事業者になります(国税庁 No.6503)。1,000万円未満なら、原則として設立当初は免税です(特定期間・インボイス登録の例外を除く)。

課税事業者になると、何をすればよいですか?

日々の取引を税率ごとに区分して帳簿づけし、課税期間ごとに消費税の申告・納付を行います。申告期限は、個人は翌年3月31日、法人は事業年度終了から原則2か月以内です。

8. まとめ

消費税の納税義務は、「2年前の課税売上高が1,000万円を超えたかどうか」が原則の分かれ目です。要点は次のとおりです。

  • 消費税を納めるのは課税事業者だけ。免税事業者は申告・納付が免除される。
  • 判定は基準期間(2年前)特定期間(前年・前事業年度の前半6か月)の2つ。どちらかで1,000万円を超えると課税事業者。
  • 特定期間は課税売上高と給与等支払額のどちらも1,000万円超で初めて課税になり、どちらで判定するかは選べる。
  • 資本金1,000万円以上の新設法人は基準期間がなくても1期目から課税。
  • インボイス登録をすると、売上規模にかかわらず課税事業者になる。2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終了
  • 納める額は原則「預かった消費税 − 支払った消費税」。仕入れが少なければ簡易課税が有利なこともある。

「自分はいつから課税事業者になるのか」「インボイス登録をすべきか」「本則と簡易のどちらが得か」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、納税義務の判定からインボイスの要否、消費税の有利判定、納税を見据えた資金繰りまで、経営者・個人事業主の方に伴走しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 消費税法 第9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)・第9条の2(特定期間の課税売上高による納税義務の免除の特例)
  • 国税庁 タックスアンサー No.6121「納税義務者」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6121.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.6451「仕入税額控除の対象となるもの」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm
ご利用上の留意事項
本記事は、消費税の納税義務に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。納税義務の判定・インボイス登録の要否・有利判定は個別事情により異なります。制度内容・経過措置は変更される場合があります。実際の判断・申告にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月19日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp