出張手当(日当)で節税できる?出張旅費規程の作り方・非課税の条件を税理士が解説【2026年版】

「出張のたびに日当を払うと、会社も社長も得をする」——そう聞いたことはあっても、なぜ得なのか、どこまでなら認められるのかは意外と知られていません。出張手当(日当)は、出張旅費規程を整えて適正な金額で支給すれば、会社は経費(損金)になり、受け取る側は所得税・住民税が非課税になる、数少ない「合法的に手取りを増やせる」仕組みです。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、法人化された経営者の方から「役員報酬以外で、税負担を抑えて手元を増やす方法はないか」というご相談を受けたとき、まずご案内するのがこの出張旅費規程です。 本記事では、日当が非課税になる根拠(所得税法第9条第1項第4号・所得税基本通達9-3)、会社・個人・社会保険の三重のメリット、非課税が認められる3つの条件、出張旅費規程の作り方、税務調査で否認されないための注意点、消費税・インボイスでの扱いまで、2026年(令和8年)時点の取扱いで網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 出張手当(日当)とは何か(3行サマリー)
  2. 2. ★なぜ日当は「非課税」になるのか(三重のメリット)
  3. 3. 非課税が認められる3つの条件
  4. 4. ★出張旅費規程の作り方(盛り込むべき項目)
  5. 5. 税務調査で否認されないために(失敗と王道)
  6. 6. 個人事業主は要注意——「事業主本人」には日当を出せない
  7. 7. 消費税・インボイスでの扱い
  8. 9. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 出張手当(日当)とは何か(3行サマリー)

  • 出張手当(日当)は、出張に伴うこまごまとした実費(食事・通信・諸雑費など)を補うために支給するお金で、交通費・宿泊費の実費精算とは別に、1日あたり定額で支給するのが一般的です。
  • 一定のルール(出張旅費規程)に基づき、社会通念上相当な金額で支給すれば、所得税法上「非課税の旅費」として扱われ、給与のように課税されません。
  • 会社にとっては旅費交通費として損金になり、受け取る側は非課税で手取りが増える——両方に効くのが日当の特徴です。

交通費や宿泊費の「実費精算」と違い、日当は実費の領収書がなくても定額で支給できる点がポイントです。だからこそ、後述する「規程」と「相当性」が要になります。

2. ★なぜ日当は「非課税」になるのか(三重のメリット)

日当が節税になる理由は、会社・受け取る個人・社会保険の3つの場面でそれぞれ有利だからです。

場面日当の扱い効果
①会社(法人)旅費交通費として損金算入法人税等の課税所得が減る
②受け取る個人給与ではなく非課税の旅費(所得税・住民税がかからない)額面がそのまま手取りになる
③社会保険実費弁償的な性質のため標準報酬月額に含まれない社会保険料(労使双方の負担)の対象にならない

役員報酬を増やして手取りを増やそうとすると、増やした分に所得税・住民税・社会保険料がかかり、会社側も社会保険料の事業主負担が増えます。一方、日当は会社の経費になりながら、受け取る側は非課税で、社会保険料の対象にもならない。同じ「お金を会社から個人へ移す」でも、税・社会保険の通り道がまったく違うのです。

💡 日当が非課税とされる根拠は、所得税法第9条第1項第4号(給与所得者がその勤務する場所を離れて職務を遂行するため旅行をした場合に支給される金品で、その旅行に通常必要と認められるものは非課税)にあります。その範囲は所得税基本通達9-3で「その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」と定められています。

3. 非課税が認められる3つの条件

日当なら無条件で非課税になるわけではありません。所得税基本通達9-3は、非課税となる旅費の範囲について、次の観点で判定するとしています。実務では、この3条件を満たすことが非課税の前提です。

  1. その旅行に通常必要と認められる金額であること——出張の実態に見合った金額か。実態のない「カラ出張」への支給は当然認められません。
  2. 役員・使用人の全体を通じてバランスのとれた基準で計算されていること——社長や一部の役員だけが突出して高額、という支給はNG。役職に応じた合理的な段階づけが必要です。
  3. 同業・同規模の他社と比べても相当と認められる水準であること——世間相場からかけ離れた高額な日当は、給与(賞与)とみなされ課税されるリスクがあります。

ここで誤解されがちなのですが、日当には「ここまでなら非課税」という法律上の固定額(上限金額)はありません。通勤手当のように「月15万円まで非課税」といった明確な金額基準がないため、社会通念上相当かどうかで判断されます。だからこそ、金額の根拠となる「出張旅費規程」を整え、役職ごとにバランスよく定めておくことが決定的に重要になります。

4. ★出張旅費規程の作り方(盛り込むべき項目)

日当を非課税で支給するための土台が出張旅費規程です。規程がないまま支給すると、「給与の上乗せ(賞与)」と判断され、課税されるリスクが高まります。最低限、次の項目を盛り込みます。

項目定める内容の例
①適用範囲役員および全従業員(特定の人だけを対象にしない)
②出張の定義勤務地から一定距離(例:片道◯km)以上、または宿泊を伴う移動などを「出張」と定義
③日当の金額役職別に1日あたりの金額を定額で規定(例:役員・管理職・一般で段階づけ)
④宿泊費・交通費実費精算とするか定額(宿泊日当)とするかを区分して規定
⑤区分(国内・海外)国内出張・海外出張で金額を分けて規定
⑥精算の方法出張報告書・精算書の様式、申請・承認・支給のフロー

ポイントは、①全社員を対象にすることと、③役職別にバランスよく段階づけることです。「社長だけ」「役員だけ」を対象にした規程は、条件2(全体のバランス)を満たさず否認されやすくなります。また、規程を作ったら取締役会(または株主総会)で正式に決議し、文書として整備・保管しておきましょう。

5. 税務調査で否認されないために(失敗と王道)

日当は税務調査で論点になりやすいテーマです。否認されると、過去にさかのぼって給与として源泉所得税を追徴され、会社側も思わぬ負担を負います。やりがちな失敗と、守るべき王道を整理します。

❌ 税務調査で否認されやすいパターン
  • 出張旅費規程がないまま、社長の判断で日当を支給している
  • 役員(社長)だけが突出して高額で、従業員との金額バランスが説明できない
  • 出張の事実を裏づける記録(出張報告書・スケジュール・訪問先)がなく、実態が確認できない
  • 世間相場と比べて明らかに過大な金額を設定している
  • 交通費・宿泊費の実費を全額精算したうえ、さらに同額分の日当も二重に支給している
⭕ 否認されないための王道
  • 出張旅費規程を整備し、取締役会等で正式に決議して文書で保管する
  • 役員・管理職・一般と役職別に段階づけ、全社員を対象にする(金額の根拠を説明できる状態に)
  • 出張報告書で出張日・訪問先・目的を記録し、出張の実態を残す
  • 日当の金額は同業・同規模の世間相場を意識し、社会通念上相当な水準にとどめる
  • 実費精算する費目(交通費・宿泊費)と日当の役割を規程で明確に区分する

要は、「規程に基づき、実態のある出張に、相当な金額を、全社員バランスよく支給している」という状態を、書面と記録で説明できるようにしておくことです。

6. 個人事業主は要注意——「事業主本人」には日当を出せない

ここは多くの方が見落とすポイントです。日当の非課税は「給与所得者がその勤務地を離れて職務のために旅行した場合」の取扱いです。つまり、従業員に対して支給するものであり、給与を受け取らない個人事業主の事業主本人は、自分に日当を支給できません(自分自身に給与を払えないのと同じ理屈です)。個人事業の出張費は、交通費・宿泊費などの実費を必要経費として計上する形になります。

一方、法人の役員は会社から給与(役員報酬)を受け取る給与所得者なので、出張旅費規程に基づいて日当を支給できます。これは、個人事業を法人化(法人成り)したときに得られる節税メリットの一つです。「役員報酬をいくらにすべきか」と並んで、法人化の損得を考えるうえで押さえておきたい論点です。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「出張が多いので、日当で節税できないか」というご相談が、法人化されたばかりの経営者の方から実際に寄せられます。一般論として申し上げると、出張旅費規程を整えずに金額だけ先に決めてしまい、後から税務調査で指摘されて困る、というケースが少なくありません。私たちが関与する場面でも、まず規程の整備と、出張の実態を残す仕組みづくりからご一緒しています。制度として正しく使えば、日当は手堅い王道の一手です。

7. 消費税・インボイスでの扱い

日当は消費税の面でも有利です。国税庁タックスアンサー No.6459 によれば、国内出張の日当・旅費・宿泊費のうち、その旅行について通常必要と認められる部分の金額は「課税仕入れ」になり、会社は仕入税額控除(消費税の負担を減らす)ができます(海外出張分は原則として課税仕入れになりません)。

さらにインボイス制度では、従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち通常必要と認められる部分は、「出張旅費等特例」によりインボイス(適格請求書)の保存がなくても、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。社員に支給する日当について、相手からインボイスをもらう必要はありません。実務の手間が軽い点も、日当のメリットといえます。

よくある質問(FAQ)

日当はいくらまで非課税ですか?上限額はありますか?

法律上の固定額(上限金額)はありません。通勤手当のような「ここまで非課税」という金額基準がないため、社会通念上相当かどうかで判断されます。出張旅費規程で役職別にバランスよく定め、同業・同規模の他社と比べて過大でない水準にすることが、非課税の前提になります(所得税基本通達9-3)。

一人社長の会社でも日当を出せますか?

出せます。法人の役員は会社から役員報酬を受け取る給与所得者なので、出張旅費規程に基づき日当を支給できます。ただし「全社員を対象にする」「実態のある出張に支給する」「相当な金額にとどめる」という条件は同じです。規程の整備と出張記録は必ず残しましょう。

個人事業主は日当で節税できないのですか?

事業主本人には日当を支給できません(自分に給与を払えないのと同じ理屈)。本人の出張は交通費・宿泊費などの実費を必要経費にする形です。従業員には個人事業でも日当を支給できます。日当を本人にも使いたい場合は、法人化が選択肢になります。

出張旅費規程は作っただけで有効ですか?

規程は作成し、取締役会(または株主総会)で正式に決議して文書で保管しておくことが大切です。あわせて出張報告書などで出張の実態を残してください。規程・決議・記録の3点がそろって、はじめて「規程に基づく適正な支給」と説明できます。

交通費や宿泊費を実費精算した日に、日当も払えますか?

交通費・宿泊費の実費精算と、こまごました諸雑費を補う日当は役割が異なるため、規程で区分していれば併給できます。ただし、同じ費用を実費でも日当でも二重に支給するような設計は否認の原因になります。規程で費目の役割を明確に分けておきましょう。

9. まとめ

出張手当(日当)は、出張旅費規程を整え、適正な金額で支給すれば、会社の経費になり、受け取る側は非課税で、社会保険料の対象にもならない、という三重のメリットがある王道の仕組みです。要点は次のとおりです。

  • 非課税の根拠は所得税法第9条第1項第4号所得税基本通達9-3。「通常必要と認められる旅費」だから非課税になる。
  • 非課税の3条件は、①通常必要と認められる金額、②全社員を通じてバランスのとれた基準、③同業他社と比べて相当な水準。法律上の上限額はなく、社会通念上の相当性で判断される。
  • だからこそ出張旅費規程の整備が決定的。役職別に段階づけ、全社員を対象にし、取締役会等で決議して文書化する。
  • 個人事業主の本人には日当を出せない(給与所得者でないため)。法人の役員は支給でき、これは法人化の節税メリットの一つ。
  • 消費税では国内出張の日当は課税仕入れ、インボイスは出張旅費等特例で帳簿のみ保存でよい。

「自社の出張旅費規程をどう作ればよいか」「日当の金額は妥当か」「法人化して日当を活用すべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、規程の整備から税務調査に耐える運用、法人化の損得まで、経営者の実務に伴走しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 所得税法 第9条第1項第4号(非課税所得・旅費)、所得税基本通達 9-3(非課税とされる旅費の範囲)
  • 国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm
  • 国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」出張旅費等特例(消費税法施行令第49条)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
ご利用上の留意事項
本記事は、出張手当(日当)および出張旅費規程に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。日当が非課税となるかは、出張の実態・金額の相当性・規程の整備状況など個別事情により判断されます。金額の妥当性や規程の内容は、業種・規模・出張の実態によって異なります。実際の規程整備・支給にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月14日

#出張手当 #日当 #出張旅費規程 #節税 #税理士

出張旅費規程・法人化・税務顧問のご相談は KMP へ

出張旅費規程の整備から、税務調査に耐える運用、役員報酬とあわせた手取りの設計、法人化の損得まで、経営者の実務に伴走しています。日当で適正に節税したい方、規程が今のままで大丈夫か不安な方はお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp