相続税額の取得費加算の特例の決定版|3年10か月の期限・計算式・空き家特例との選び方を税理士が解説【2026年版】
- 1. 結論(3行サマリー)
- 2. 前提:この特例は「相続税を所得税の取得費に振り替える」制度
- 3. 期限は「3年10か月」――1日でも過ぎたら使えない
- 4. いくら増えるのか――計算式と「分母」の落とし穴
- 5. 「譲渡した資産ごと」に計算する――枠は他へ回せない
- 6. 相続空き家の3,000万円特別控除とどちらを選ぶか
- 7. つまずきやすい7つの場面
- 8. 自社株を相続した経営者は「もう一つの特例」とセットで考える
- 9. 令和8年(2026年)時点の改正状況
- 10. まとめ
- 出典・参考資料
- よくある質問(FAQ)
1. 結論(3行サマリー)
- 相続または遺贈で財産を取得し、その人に相続税が課税されている場合、その財産を相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すれば、相続税額のうち一定額を取得費に加算できます(租税特別措置法39条1項)
- 加算額は「確定した相続税額 × その譲渡資産の相続税評価額 ÷ その人の課税価格」。ただし分母は債務控除前で計算します(租税特別措置法施行令25条の16第1項)。ここを間違えると加算額が過大になります
- 加算額の上限はその資産の譲渡益まで。しかも譲渡した資産ごとに計算するので、損が出た資産の枠を他の資産に回すことはできません(同法39条8項、租税特別措置法関係通達39-5)
2. 前提:この特例は「相続税を所得税の取得費に振り替える」制度
まず、譲渡所得の基本の式を押さえます。
譲渡所得 = 収入金額 − (取得費 + 譲渡費用)
取得費とは、その資産を買ったときの代金や建築代金などです(所得税法38条)。相続で取得した資産は、被相続人が買ったときの取得費をそのまま引き継ぎます。つまり、祖父の代から持っている土地を売ると、取得費がほとんどなく、売却代金のほぼ全額が利益として課税されるという状態が起こります。
そこに相続税が加わると、同じ財産に対して相続税と所得税が続けてかかることになります。この特例は、その重なりを取得費を増やすという方法で調整するものです。
条文はこう定めています。相続または遺贈による財産の取得をした個人で、その相続または遺贈につき相続税額があるものが、一定期間内にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡をした場合、譲渡所得に係る所得税法33条3項の取得費は、その取得費に相当する金額に、相続税額のうちその譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする(租税特別措置法39条1項)。
適用を受けるための3つの要件
国税庁は、要件を次の3つに整理しています(タックスアンサーNo.3267)。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
2つ目が見落とされます。基礎控除以下で相続税がゼロだった、あるいは配偶者の税額軽減でその人の納付税額がゼロだった場合、加算する相続税額がないため、この特例による効果はありません。
使えない所得がある
この特例は譲渡所得だけの制度です。株式等の譲渡による事業所得および雑所得には適用できません(同No.3267の注書き)。営利を目的として継続的に株式を売買している場合などは、同じ相続株式の売却でも対象外になります。
3. 期限は「3年10か月」――1日でも過ぎたら使えない
この制度で最も多い失敗は、期限切れです。
条文の期限は「当該相続の開始があつた日の翌日から……相続税申告書の提出期限の翌日以後三年を経過する日まで」(租税特別措置法39条1項)。相続税の申告期限は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。
つまり期限は、相続開始から10か月+3年=およそ3年10か月になります。
具体的に数えてみる
- 2026年3月10日:相続開始(死亡)
- 2027年1月10日:相続税の申告期限(10か月後)
- 2030年1月10日:譲渡の期限(申告期限の翌日から3年を経過する日)
このケースでは、2030年1月10日までに譲渡していれば適用があり、1月11日の譲渡では適用がありません。
ここでいう「譲渡した日」は、原則として引渡しの日です(契約の効力発生日を選ぶこともできます)。契約日が期限内でも引渡しが翌年になるという取引は珍しくないため、期限が迫っている場合は、どちらの日で申告するかまで含めて事前に決めておく必要があります。
4. いくら増えるのか――計算式と「分母」の落とし穴
加算額は次の式で計算します(租税特別措置法施行令25条の16第1項)。
加算額 = 確定した相続税額 × (譲渡した資産の相続税評価額 ÷ その人の課税価格)
言葉の中身が重要なので、1つずつ確認します。
「確定した相続税額」とは
その譲渡をした人の相続税額で、譲渡の日の属する年分の所得税の納税義務が成立する時に確定しているものをいいます(同項1号)。所得税の納税義務の成立時は、その暦年の終了の時、つまり12月31日です(租税特別措置法関係通達39-2。年の中途で死亡・出国した場合はその時)。
延滞税・加算税などの附帯税は含みません(同項1号かっこ書き)。
なお、譲渡した年の12月31日時点でまだ相続税額が確定していなくても、相続税の申告期限までに確定すれば適用があります(同通達39-1)。
🔴 「課税価格」は債務控除前で計算する
ここが最大の落とし穴です。分母の課税価格について、政令はこう書いています。
相続税法第11条の2に規定する課税価格(……同法第13条の規定の適用がある場合には同条の規定の適用がないものとした場合の課税価格……)(租税特別措置法施行令25条の16第1項2号)
相続税法13条は債務控除の規定です。政令は「13条の適用がないものとした場合」と言っているので、分母は借入金・未払金・葬式費用を差し引く前の金額になります。相続税の申告書に出てくる「課税価格」をそのまま持ってくると、分母が小さくなり、加算額が過大になります。
また、非課税財産(相続税法12条1項)や、国等に相続財産を贈与した場合の非課税(租税特別措置法70条1項)により課税価格に算入されない財産の価額も、分母に含みません(租税特別措置法関係通達39-3)。
計算例
前提を次のようにします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 取得した土地の相続税評価額 | 6,000万円 |
| 取得した預貯金 | 4,000万円 |
| 承継した借入金・葬式費用 | 2,000万円 |
| 確定した相続税額 | 800万円 |
分母は債務控除前なので、6,000万円+4,000万円=1億円です。
加算額 = 800万円 × 6,000万円 ÷ 1億円 = 480万円
もし分母を債務控除後の8,000万円としてしまうと、800万円×6,000万円÷8,000万円=600万円となり、120万円を過大に加算することになります。この誤りは、譲渡益がそのぶん過少になるため、税務調査で指摘されれば本税に加えて加算税・延滞税がかかります。
加算額には上限がある
計算した金額が、この特例を適用しないものとした場合のその資産の譲渡益(収入金額 − 取得費 − 譲渡費用)を超えるときは、その譲渡益が限度です。また、収入金額が取得費と譲渡費用の合計に満たないとき(=譲渡損のとき)は、加算額はないものとされます(租税特別措置法施行令25条の16第1項ただし書き)。
つまり、この特例で譲渡損失を作り出すことはできません。あくまで譲渡益をゼロにするところまでです。
5. 「譲渡した資産ごと」に計算する――枠は他へ回せない
条文は、加算する金額を譲渡をした資産ごとに計算すると定めています(租税特別措置法39条8項)。
この一文が実務でどう効くかを、通達が具体的に説明しています。同一年中に相続財産を2つ以上譲渡した場合で、そのうちの1つに譲渡損失が生じて加算できなかったとしても、その資産に対応する相続税額を、他の譲渡資産の取得費に加算することはできません(租税特別措置法関係通達39-5)。
平成26年度の税制改正で、それまで土地等について認められていた「相続したすべての土地に対応する相続税額を加算できる」という取扱いが廃止され、売った資産の分だけに改められました。古い解説記事にはこの改正前の説明が残っていることがあるため、土地を複数相続して一部だけ売る場合は、加算できるのは売った土地の分だけと理解してください。
- 相続した土地A・土地Bのうち土地Aだけを売り、土地Bの分の相続税まで取得費に加算する
- 同じ年に売った収益物件で損が出たので、その枠を自宅の売却益に振り替える
- 相続税の申告書の「課税価格」欄の数字を、そのまま分母に転記する
- 期限を「相続開始から3年」と誤解し、10か月ぶんを取り違える
- 売る資産ごとに、分子(その資産の相続税評価額)と分母(債務控除前の課税価格)を拾い直す
- 相続税の申告書とは別に、譲渡する資産の評価明細を手元に置く(分子の根拠になります)
- 相続税の申告が終わった時点で、期限日(申告期限の翌日から3年を経過する日)を確定して共有する
- 空き家特例と併用できないため、両方の税額を試算してから売買契約の形を決める
6. 相続空き家の3,000万円特別控除とどちらを選ぶか
相続した実家を売る場面では、この特例と被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)が競合します。
条文上「併用できない」
35条3項は、適用対象となる「対象譲渡」から、「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を明文で除いています。したがって、同じ譲渡について両方を使うことはできず、どちらかを選ぶことになります。
なお、自分が住んでいた家を売る場合の居住用財産の3,000万円特別控除(同法35条1項)とは併用が可能です。除外されているのは3項(空き家特例)の側だけです。
空き家特例の要件(比較のために)
空き家特例は、要件が細かく、外れると一切使えません。条文が定める主な要件は次のとおりです(租税特別措置法35条3項〜5項)。
- 譲渡の期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日まで
- 譲渡は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
- 譲渡対価の額が1億円を超えないこと
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
- 区分所有建物(マンション)でないこと
- 相続開始の直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
- 家屋を耐震基準に適合させるか、取り壊して譲渡すること(買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象)
- 相続または遺贈により家屋および敷地等を取得した相続人の数が3人以上であるときは、控除額は1人あたり2,000万円(同条4項)
選び方の考え方
取得費加算が有利になりやすい場面
- 相続税の納付額が大きい
- 譲渡益が相続税額に対して小さい
- 家屋が昭和57年以降の建築で、空き家特例の要件を満たさない
- 相続税の申告期限の翌日から3年(実質3年10か月)まで使える
空き家特例が有利になりやすい場面
- 相続税の納付額が小さいかゼロ
- 譲渡益が3,000万円以内に収まる
- 家屋が旧耐震の戸建てで、被相続人が一人で住んでいた
- 期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
期限の数え方が両者で違う点に注意してください。空き家特例は「3年を経過する日の属する年の12月31日」なので、相続開始が年の前半なら空き家特例のほうが長く、後半なら取得費加算のほうが長く残ることがあります。
過去のご相談の傾向として申し上げると、「相続税をかなり納めた方」ほど取得費加算の効果が大きく、「相続税はほとんど出なかったが、古い実家に大きな含み益がある方」ほど空き家特例が効きます。どちらも試算せずに片方だけで進めると、数百万円単位で結果が変わります。売買契約の条件(取壊しを売主側で行うか、買主側で行うか)によって空き家特例の可否そのものが動くため、契約書を作る前に税額を並べて比較することをおすすめしています。
7. つまずきやすい7つの場面
(1) 代償金を支払って財産を取得した
遺産分割で他の相続人に代償金を支払い、その財産を単独で取得した場合、加算額の計算は通達が定める別の算式によります(租税特別措置法関係通達39-7)。支払代償金の額は、相続税法基本通達11の2-10(代償財産の価額)に定める金額によります。代償金を払ったぶん、加算できる金額は圧縮されます。
(2) 同じ銘柄の株式を前から持っていた
相続で取得した株式と同一銘柄の株式を以前から保有している場合に、期間内にその一部を譲渡したときは、その譲渡は相続で取得した株式の譲渡からなるものとしてこの特例を適用して差し支えないとされています(租税特別措置法関係通達39-12、タックスアンサーNo.3267)。上場株式の実務ではよく使う取扱いです。
(3) 遺産が未分割のまま譲渡した
未分割のまま法定相続分で相続税を申告し、その後に分割が確定して相続税額が動くことがあります。この場合、確定申告後に相続税額が増減したときは、加算額を再計算します(租税特別措置法施行令25条の16第2項、同通達39-10)。また、譲渡した年分の確定申告期限より後に相続税の期限内申告をしたようなケースでは、その提出の日の翌日から2か月を経過する日まで更正の請求ができます(租税特別措置法39条4項1号)。
(4) 相続税が判決・裁決で動いた
再調査の請求に係る決定、審査請求に係る裁決または判決により相続税額に異動が生じた場合も、更正があった場合に準じて加算額を再計算します(同通達39-9)。
(5) 二次相続が起きた
この特例を使える人(第一次相続人)が、期限内に亡くなってしまうことがあります。この場合、その相続人(第二次相続人)が期限内に対象資産を譲渡したときは、第一次相続人が死亡する直前に取得費に加算できた金額を承継したものとみなして適用して差し支えないとされています(同通達39-11)。第一次相続の枠で計算するか第二次相続の枠で計算するかは、譲渡した資産ごとに選択できます。
(6) 取得費が分からず概算取得費(5%)を使う
取得費が不明な場合、収入金額の5%相当額を取得費とすることができます(租税特別措置法31条の4の取扱い)。条文上、加算の対象は所得税法33条3項の取得費であり、概算取得費によることを妨げる規定は置かれていません。したがって、概算取得費を用いたうえで相続税額を加算することができます。先祖代々の土地では、この組み合わせが実際の税額を大きく動かします。
(7) 申告書に書き忘れた
この特例は申告要件があります。適用を受けようとする年分の確定申告書または修正申告書に、適用を受けようとする旨の記載があり、かつ譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用されます(租税特別措置法39条2項)。やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、書類の提出があった場合に限り適用できるという救済規定はありますが(同条3項)、当てにする性質のものではありません。
添付書類は、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と、譲渡所得の内訳書(土地・建物用)または株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書です(タックスアンサーNo.3267)。
8. 自社株を相続した経営者は「もう一つの特例」とセットで考える
オーナー経営者の相続では、財産の大半が非上場株式(自社株)になります。相続税の納税資金をつくるために、相続した自社株を発行会社に買い取ってもらう(金庫株にする)のは実務の定番ですが、ここには通常、大きな落とし穴があります。
通常は「みなし配当」で総合課税になる
法人が自己株式を取得すると、交付した金銭のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額は配当とみなされます(所得税法25条1項)。配当所得は総合課税ですから、他の所得と合算されて最高で所得税45%+住民税10%の税率帯に入ります。売った側の手取りが想定より大幅に少なくなるのは、これが理由です。
相続から3年10か月以内なら、全額が譲渡所得になる
ここで効くのが、相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例(租税特別措置法9条の7)です。
条文は、相続または遺贈による財産の取得をした個人で納付すべき相続税額があるものが、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の株式をその発行会社に譲渡した場合には、資本金等の額を超える部分について所得税法25条1項(みなし配当)を適用しないと定めています。
みなし配当にならないということは、交付を受けた金銭の全額が株式等の譲渡所得等の収入金額になります。上場株式等以外の株式等に係る譲渡所得等は申告分離課税で、税率は所得税15%・住民税5%(復興特別所得税を含めて20.315%)です。総合課税の配当所得と比べたときの差は、金額が大きいほど開きます。
期限が取得費加算とまったく同じ
注目すべきは、この特例の期限が、相続税額の取得費加算の特例と完全に一致していることです。どちらも「相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日まで」=実質3年10か月。
つまり、相続した自社株を発行会社に売る場面では、
- 租税特別措置法9条の7で、みなし配当を回避して申告分離課税にする
- 租税特別措置法39条で、相続税額を取得費に加算して譲渡益を圧縮する
この2つを同じ期限内に同時に使うのが王道です。片方だけを知っていて期限を逃すケース、あるいは「相続税の納税が終わってから落ち着いて考えよう」として3年10か月を過ぎるケースが、実務では最も痛い失敗になります。
弊社にも、事業承継の局面で「相続した自社株を会社に買い取らせたい」というご相談は実際に寄せられます。一般論として重要なのは、買取価額の決め方(法人税法上の時価と所得税法上の時価)と、会社側の財源規制(会社法の分配可能額)を、税務の特例と同時に検討することです。税務上は有利でも、会社に買取資金がなければ実行できません。相続税の申告期限が来る前から、納税資金の出どころと自社株の動かし方を一枚の絵にしておくことをおすすめしています。
9. 令和8年(2026年)時点の改正状況
財務省が公表した「令和8年度 税制改正の解説」のうち租税特別措置法等(所得税関係)の改正の全文を検索したところ、「取得費加算」の語は0件でした。租税特別措置法39条について、令和8年度税制改正による見直しは行われていません。
一方で、相続時精算課税・暦年課税の加算対象財産の扱いは令和6年1月1日以後の贈与から変わっています(タックスアンサーNo.3267の注記)。
- 令和6年1月1日以後に被相続人である特定贈与者から贈与により取得した相続時精算課税適用財産の価額は、贈与により取得した財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額となります
- 令和6年1月1日以後に被相続人から暦年課税による贈与により財産を取得したことがある場合、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額となります
これは、令和5年度税制改正で生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されたことに伴う調整です。贈与を受けていた相続人が対象資産を売る場合は、分子・分母の拾い方がこの分だけ変わります。
10. まとめ
- 相続税額の取得費加算の特例は、相続税を払った財産を売るときに、相続税の一部を取得費に振り替える制度です(租税特別措置法39条1項)
- 期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日=実質3年10か月。1日でも過ぎれば使えません
- 加算額は「確定相続税額 × 譲渡資産の相続税評価額 ÷ 債務控除前の課税価格」。分母を債務控除後にすると過大計算になります(租税特別措置法施行令25条の16第1項2号)
- 加算額の上限はその資産の譲渡益まで。譲渡資産ごとに計算し、損の出た資産の枠は他へ回せません(同法39条8項、通達39-5)
- 相続空き家の3,000万円特別控除(同法35条3項)とは選択。自宅の3,000万円特別控除(同法35条1項)とは併用可です
- 申告要件があり、書類の添付がなければ適用されません(同法39条2項)
- 相続した自社株を発行会社に売る場合は、みなし配当課税の特例(同法9条の7)と期限が同じです。2つをセットで使います
相続した不動産や自社株をいつ・どう売るかは、相続税と所得税をまたいで考えないと最適解が出ません。「相続税の申告は終わったが、財産をどう整理するか決めていない」「実家を売るべきか貸すべきか判断がつかない」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、相続税の申告から譲渡時の特例選択、資産の組み替えまでを一体でご支援しています。期限が効く制度ですので、売却を検討し始めた段階でご相談ください。
よくある質問(FAQ)
相続税がゼロだった場合でも使えますか?
期限は「相続開始から3年」ですか、「3年10か月」ですか?
相続した土地を2筆持っていて1筆だけ売りました。もう1筆分の相続税も加算できますか?
同じ年に売った2つの相続財産のうち、片方が譲渡損でした。その枠を使えますか?
分母の「課税価格」は、相続税の申告書のどの数字ですか?
相続空き家の3,000万円特別控除と両方使えますか?
取得費が分からないので概算取得費(5%)を使う予定です。加算できますか?
遺産分割が確定していない間に売ってしまいました。後から使えますか?
申告書に書き忘れました。後から直せますか?
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)|e-Gov法令検索
- 租税特別措置法関係通達 措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》関係|国税庁
- 同通達 39-6・39-7(交換の特例等の適用を受ける場合/代償金を支払って取得した相続財産の計算)|国税庁
- 同通達 39-8〜39-15(相続税額の異動・二次相続・同一銘柄株式ほか)|国税庁
- 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第9条の7(相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例)|e-Gov法令検索
- 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条|e-Gov法令検索
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」
相続財産の売却と特例選択は KMP へ
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、相続税の申告から相続財産を譲渡する際の特例の選択、相続空き家の3000万円特別控除との有利判定、相続した自社株を発行会社に譲渡する場合のみなし配当課税の特例との組み合わせ、納税資金の確保までを一体でご支援しています。取得費加算は期限が効く制度です。売却を検討し始めた段階でご相談ください。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
