修繕費と資本的支出の違いとは?20万円・3年周期・60万円・10%の判定基準を税理士が解説【2026年版】

「事務所の内装工事に800万円かかった。全額を修繕費で落とせるのか」「屋根の防水工事は修繕費か、それとも資産計上か」「税務調査で、修繕費として処理した工事を資本的支出だと指摘された」——経営者・個人事業主の方から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、修繕費と資本的支出の区分についてのご相談が実際に寄せられます。 同じ工事代金でも、修繕費なら支出した年度に全額が経費になり、資本的支出なら資産に計上して耐用年数にわたって減価償却することになります。当期の利益が数百万円単位で変わる論点であり、税務調査で最も指摘されやすい項目のひとつでもあります。 本記事では、修繕費と資本的支出を分ける原則から、実務で使う判定の順番(20万円・3年周期・60万円・10%・30%)、法人と個人事業主の違い、災害やソフトウェアの特例まで、国税庁の一次資料にもとづいて解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 修繕費と資本的支出とは(3行サマリー)
  2. 2. 原則——何が資本的支出で、何が修繕費か
  3. 3. 実務の判定手順——上から順に当てはめる
  4. 4. 資本的支出になったあとの減価償却
  5. 5. 個人事業主の場合——基準は同じ、判定日が違う
  6. 6. 特殊なケース——災害・ソフトウェア・耐用年数経過後・賃借資産
  7. 7. よくある失敗と王道
  8. 8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 修繕費と資本的支出とは(3行サマリー)

  • 資本的支出とは、固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の価値を高め、またはその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額をいいます(法人税基本通達7−8−1、所得税基本通達37−10)。
  • 修繕費とは、固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の通常の維持管理のため、またはき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額をいいます(法人税基本通達7−8−2、所得税基本通達37−11)。
  • 判定は、修繕費・改良費などの名目ではなく、その実質によって行います(国税庁タックスアンサーNo.5402)。「請求書に修繕費と書いてあるから修繕費」は通用しません。
💡 ひとことで言えば、元に戻すのが修繕費、良くするのが資本的支出です。ただし現実の工事は「元に戻すついでに良くなる」ものが大半で、どちらとも言い切れません。そのために、通達が形式的な判定基準を用意しています。順番に当てはめていけば、実務のほとんどは判断がつきます。

2. 原則——何が資本的支出で、何が修繕費か

資本的支出に該当するもの(法人税基本通達7−8−1)

法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、またはその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となります。通達は、次の金額を原則として資本的支出に該当するものとして例示しています。

例示
(1)建物の避難階段の取付等、物理的に付加した部分に係る費用の額
(2)用途変更のための模様替え等、改造または改装に直接要した費用の額
(3)機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち、通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

(注)建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たります。

(出典:国税庁 法人税基本通達 第8節「資本的支出と修繕費」

💡 (3)がとくに重要です。部品を高性能品に取り替えた場合、全額が資本的支出になるのではなく、「通常の取替えなら要したはずの金額」を超える部分だけが資本的支出です。同等品への取替相当額は修繕費になります。見積書の段階で「同等品なら」の金額を残しておくと、後から区分できます。

修繕費に該当するもの(法人税基本通達7−8−2)

通常の維持管理・原状回復に要した部分が修繕費となりますが、通達は次の金額も修繕費に該当するものとして掲げています(省略なく掲載します)。

内容
(1)建物の移えいまたは解体移築をした場合(移えい・解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く)における、その移えいまたは移築に要した費用の額。ただし解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模および構造の建物を再建築するものに限る
(2)機械装置の移設(集中生産を行う等のための機械装置の移設費の本文の適用のある移設を除く)に要した費用(解体費を含む)の額
(3)地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合、ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合、ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合、を除く
(4)建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げまたは移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合の、その改良部分に対応する金額を除く
(5)現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額、および砂利道または砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

(出典:国税庁 法人税基本通達7−8−2

3. 実務の判定手順——上から順に当てはめる

原則論だけでは判断がつかないため、通達は形式的な基準を段階的に用意しています。次の順番で当てはめるのが実務の型です。

ステップ1:明らかに資本的支出か(7−8−1)

避難階段の取付け、用途変更のための模様替え、建物の増築など、明らかに価値を高め耐久性を増すものは、金額にかかわらず資本的支出(増築等は資産の取得)です。ここに該当すれば、以下のステップには進みません。

ステップ2:20万円未満か、3年以内の周期か(7−8−3)

一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等(以下「一の修理、改良等」)が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、7−8−1にかかわらず、修繕費として損金経理をすることができます

基準
(1)その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合(その一の修理、改良等が2以上の事業年度にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額)
(2)その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが、既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

(注) 本文の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととします。

(出典:国税庁 法人税基本通達7−8−3

💡 (2)の「おおむね3年以内の周期」は、実績で示せることが条件です。定期的な塗装・点検整備・消耗部品の交換などは、過去の実施記録を残しておくことで修繕費として通しやすくなります。「今回が初めて」では実績になりません。

ステップ3:資本的支出か修繕費か明らかでない場合の形式基準(7−8−4)

一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができます。

基準
(1)その金額が60万円に満たない場合
(2)その金額が、その修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

(出典:国税庁 法人税基本通達7−8−4 ※令6年課法2−14「八」により改正)

💡 (2)の分母は「前期末における取得価額」であって、帳簿価額(未償却残高)ではありません。減価償却が進んで簿価が小さくなっていても、取得価額が大きければ10%の枠も大きく残ります。ここを簿価で判定してしまう誤りが実務では非常に多いところです。
なお、この基準が使えるのは「資本的支出か修繕費か明らかでない」場合に限られます。明らかに資産価値を高める工事は、60万円未満でも資本的支出です。

ステップ4:30%基準(7−8−5)

一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(7−8−3または7−8−4の適用を受けるものを除く)がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額と、その修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これが認められます。

(出典:国税庁 法人税基本通達7−8−5

💡 キーワードは「継続して」です。有利な年だけこの方法を使い、不利な年は別の方法に切り替える、という使い分けは認められません。採用するなら方針として継続適用してください。

判定手順のまとめ

上から順に当てはめ、該当した時点でそこで確定します。

  1. 明らかに価値を高め、耐久性を増すか(避難階段の取付け・用途変更のための模様替え・増築等)→ 資本的支出(増築等は資産の取得)/法基通7−8−1
  2. 通常の維持管理、またはき損した資産の原状回復か → 修繕費/法基通7−8−2
  3. 一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円未満か → 修繕費(損金経理可)/法基通7−8−3(1)
  4. おおむね3年以内の周期で行われることが既往の実績その他の事情から明らかか → 修繕費(損金経理可)/法基通7−8−3(2)
  5. 区分が明らかでない金額が60万円未満か → 修繕費(損金経理可)/法基通7−8−4(1)
  6. 区分が明らかでない金額が前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下か → 修繕費(損金経理可)/法基通7−8−4(2)
  7. 上記のいずれにも当たらない場合、継続適用を条件に「支出額の30%相当額」と「前期末における取得価額の10%相当額」のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とできる/法基通7−8−5
  8. それ以外 → 資本的支出/法基通7−8−1

4. 資本的支出になったあとの減価償却

資本的支出と判定された金額は、その場で経費にはできませんが、消えるわけではありません。減価償却を通じて費用化されます。

原則として、減価償却資産に対して資本的支出を行った場合、その資本的支出は、その支出金額を固有の取得価額として、対象資産である既存の減価償却資産(旧減価償却資産)と種類および耐用年数を同じくする新たな減価償却資産(追加償却資産)を取得したものとして、その種類と耐用年数に応じて償却を行います。一方、旧減価償却資産については、資本的支出を行った後も、現に採用されている償却方法による償却を継続します。

さらに、次の特例があります。

場面取扱い
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出を行った場合資本的支出を行った事業年度において、その資本的支出の金額を旧減価償却資産の取得価額に加算して償却する方法も認められる(この場合、旧減価償却資産の種類・耐用年数・償却方法に基づき、全体で償却する)
平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産(定率法適用)に資本的支出を行った場合適用される償却率が同じ旧減価償却資産と追加償却資産について、資本的支出事業年度の翌事業年度開始の時において、両者の帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとすることができる
平成19年4月1日〜平成24年3月31日に取得した旧減価償却資産への資本的支出旧減価償却資産は250%定率法、追加償却資産は200%定率法と償却率が異なるため、上記の特例の適用はない
同一事業年度内に複数回の資本的支出を行った場合各資本的支出について定率法を採用し、上記の特例を受けないときは、翌事業年度開始の時において、種類・耐用年数を同じくするものの帳簿価額の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとすることができる

(出典:国税庁タックスアンサーNo.5405「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」 ※令和7年4月1日現在法令等)

💡 資本的支出は「元の資産と同じ種類・同じ耐用年数の新しい資産を買った」と考えるのが基本形です。築30年の建物に大規模改修をしても、残りの使用可能期間ではなく、その建物の種類・構造に応じた法定耐用年数で償却します。改修費を短期間で費用化できると見込んでいると、資金計画がずれます。

5. 個人事業主の場合——基準は同じ、判定日が違う

所得税にも同じ構造の通達があります。金額基準は法人と同一で、20万円・3年周期・60万円・10%・30%です。ただし、判定の基準日が異なります。

項目法人個人事業主
資本的支出の例示法基通7−8−1所基通37−10
修繕費に含まれる費用法基通7−8−2所基通37−11
少額(20万円未満)・3年周期法基通7−8−3所基通37−12
形式基準(60万円未満・10%以下)法基通7−8−4所基通37−13
30%基準法基通7−8−5所基通37−14
10%基準の判定日前期末における取得価額前年12月31日における取得価額
適用の形式修繕費として損金経理をしていることその金額を修繕費の額として所得金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っていること

(出典:国税庁 所得税基本通達〔資本的支出と修繕費等〕(37−10〜37−14)国税庁タックスアンサーNo.1379「修繕費とならないものの判定」

なお、所得税では、修繕費に含まれる費用の額から、資産損失の必要経費算入(所得税法第51条第1項・第4項)や雑損控除(同法第72条)の適用を受けている場合のその損失の金額に算入された金額を除くこととされています。災害で損壊した資産について雑損控除等を使った場合は、同じ金額を修繕費として重ねて必要経費にできない、ということです。

6. 特殊なケース——災害・ソフトウェア・耐用年数経過後・賃借資産

災害により被害を受けた固定資産(法基通7−8−6)

災害により被害を受けた固定資産(被災資産。評価損を計上したものを除く)について支出した費用は、7−8−1から7−8−5までにかかわらず、次のとおりとされています。

支出の内容取扱い
(1)被災資産につきその原状を回復するために支出した費用修繕費に該当する
(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止等のために支出した費用法人が修繕費とする経理をしているときはこれを認める
(3)被災資産について支出した費用(上記(1)(2)を除く)のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないもの法人がその金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときはこれを認める

(注) 被災資産の復旧に代えて資産の取得をし、または特別の施設(被災前の効用を維持するためのものを除く)を設置する場合の当該資産・施設は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額はこれらの資産の取得価額に含めます。

(出典:国税庁 法人税基本通達7−8−6。個人については所得税基本通達37−12の2)

ソフトウェアのプログラム修正(法基通7−8−6の2)

ソフトウェアについてプログラムの修正等を行った場合、その修正等がプログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときは修繕費新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときは資本的支出に該当します(所得税では所基通37−10の2)。

💡 「バグを直す=修繕費、機能を足す=資本的支出」が基本線です。基幹システムの改修は両者が混在するのが普通なので、発注段階で作業項目ごとに区分した見積書をもらっておくことが、後の税務調査での説明力を決めます。工事完了後に区分しようとしても、根拠資料がなければ通りません。

耐用年数を経過した資産(法基通7−8−9)

耐用年数を経過した減価償却資産について修理、改良等をした場合であっても、その費用の資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行います。「もう償却が終わっているから全額修繕費」とはなりません。

損壊した賃借資産等に係る補修費(法基通7−8−10)

法人が賃借資産(賃借している土地、建物、機械装置等)につき修繕等の補修義務がない場合であっても、その賃借資産が災害により被害を受けたため、原状回復のための補修を行い、その費用を修繕費として経理したときは、これが認められます。修繕等の補修義務がない、販売または賃貸をしている資産につき補修費用を支出した場合も同様です。

なお、その修繕費として経理した金額に相当する金額につき賃貸人等から支払を受けた場合には、その支払を受けた日の属する事業年度の益金に算入します。

7. よくある失敗と王道

❌ 修繕費と資本的支出でよくある失敗
  • 請求書の摘要が「修繕工事」だから修繕費、と名目で判断している(判定は実質で行う。国税庁タックスアンサーNo.5402)
  • 10%基準の分母を、取得価額ではなく帳簿価額(未償却残高)で判定している
  • 明らかに価値を高める工事なのに、60万円未満だから修繕費としている(形式基準は「区分が明らかでない場合」のみ)
  • 一体の工事を複数の請求書に分割して1件あたり20万円未満に見せる(「一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等」で判定される)
  • 「おおむね3年以内の周期」を主張したいのに、過去の実施記録が残っていない
  • 30%基準を、有利な年だけ選択的に適用している(「継続して」が要件)
  • 高性能品への部品交換で、全額を資本的支出にしている(通常の取替相当額を超える部分だけが資本的支出)
  • システム改修で、バグ修正と機能追加を区分せず一括処理している
  • 耐用年数が経過した資産だからと、大規模改修を全額修繕費にしている
⭕ 修繕費と資本的支出の王道
  • 工事の発注段階で、作業項目ごとに区分された見積書をもらう(原状回復・機能向上・増設を分けてもらう)
  • 判定は必ず上から順に行う(①明らかに資本的支出か → ②維持管理・原状回復か → ③20万円未満か → ④3年周期か → ⑤60万円未満か → ⑥取得価額の10%以下か → ⑦30%基準)
  • 10%基準は前期末(個人は前年12月31日)の取得価額を分母にする。固定資産台帳から根拠を印刷して保管する
  • 定期的な修繕は、実施日・内容・金額の記録を継続的に残す(「おおむね3年以内の周期」の立証資料になる)
  • 高性能品に交換したときは、同等品なら要したはずの金額を見積書に残してもらい、超える部分だけを資本的支出とする
  • 災害復旧は、原状回復・効用維持の補強工事・その他に分けて集計する(それぞれ取扱いが違う)
  • システム改修は、バグ修正/現状維持/新機能追加の3区分で作業明細を確保する
  • 30%基準を採用するなら、会計方針として継続適用することを社内で決めておく
  • 金額の大きい工事は、着工前に税理士に相談する(完了後に資料を揃え直すことはできない)

8. まとめ

修繕費と資本的支出の区分は、当期の利益と税額を大きく左右し、かつ税務調査で最も指摘されやすい論点のひとつです。要点は次のとおりです。

  • 価値を高め、耐久性を増す部分=資本的支出(法基通7−8−1)、通常の維持管理・原状回復=修繕費(法基通7−8−2)。判定は名目ではなく実質による。
  • 実務は形式基準を上から順に当てはめる。20万円未満またはおおむね3年以内の周期なら修繕費(7−8−3)。
  • 区分が明らかでない金額については、60万円未満または前期末の取得価額のおおむね10%以下なら修繕費(7−8−4)。10%の分母は取得価額であり、帳簿価額ではない
  • それでも決まらない場合は、継続適用を条件に「支出額の30%」と「取得価額の10%」のいずれか少ない金額を修繕費とできる(7−8−5)。
  • 資本的支出になった金額は、原則として旧資産と種類・耐用年数を同じくする新たな減価償却資産を取得したものとして償却する(国税庁タックスアンサーNo.5405)。
  • 個人事業主も金額基準は同じだが、10%基準の判定日は前年12月31日の取得価額(所基通37−13)。
  • 災害復旧は原状回復=修繕費、効用維持の補強工事も修繕費経理を認める、区分不明分は30%を修繕費とできる(7−8−6)。ソフトウェアは障害除去・効用維持=修繕費、機能追加・向上=資本的支出(7−8−6の2)。
  • 勝負は工事の前につく。作業項目ごとに区分された見積書と、定期修繕の実施記録が、そのまま説明力になる。

「大規模改修を予定しているが、どこまで修繕費で落とせるか事前に知りたい」「税務調査で資本的支出だと指摘され、対応に困っている」「システム改修費の税務処理を整理したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、修繕費と資本的支出の判定から、設備投資の税務・資金計画、税務調査対応まで一体でご支援しています。金額の大きい工事を検討されている経営者の方は、着工の前にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

20万円未満なら、どんな工事でも修繕費にできますか?

一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合には、資本的支出の例示にかかわらず修繕費として損金経理をすることができます(法人税基本通達7−8−3(1))。ただし判定単位は「一の修理、改良等」であり、2以上の事業年度にわたるときは各事業年度ごとに要した金額で判定します。一体の工事を複数の請求書に分けても、一の計画に基づくものであれば合計で判定されます。また、建物の増築や構築物の拡張は資産の取得に当たるため、この基準の対象外です。

60万円未満なら必ず修繕費でよいのですか?

いいえ。この基準が使えるのは「その一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに、資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合」に限られます(法人税基本通達7−8−4)。避難階段の取付けや用途変更のための模様替えのように明らかに価値を高める工事は、60万円未満でも資本的支出です。順番としては、まず実質判定を行い、それでも区分が明らかでない場合に形式基準を使う、という関係になります。

「取得価額の10%以下」の取得価額とは、減価償却後の帳簿価額のことですか?

違います。法人は前期末における取得価額、個人事業主は前年12月31日における取得価額で判定します(法人税基本通達7−8−4(2)、所得税基本通達37−13(2))。減価償却が進んで帳簿価額が小さくなっていても、この基準の分母は取得価額のままです。実務ではここを帳簿価額で判定してしまう誤りが多く、本来は修繕費にできた支出を資産計上しているケースが少なくありません。固定資産台帳で取得価額を必ず確認してください。

資本的支出になった場合、何年で償却しますか?

原則として、その資本的支出の金額を固有の取得価額として、対象となった既存の減価償却資産と種類および耐用年数を同じくする新たな減価償却資産を取得したものとして償却します(国税庁タックスアンサーNo.5405)。既存資産の残存耐用年数ではなく、その種類・構造に応じた法定耐用年数によります。なお、平成24年4月1日以後に取得した資産に定率法を適用している場合など、一定の要件のもとで既存資産と合算して一の減価償却資産とみなす特例もあります。

システムの改修費用はどう処理しますか?

プログラムの修正等が、機能上の障害の除去や現状の効用の維持等に該当するときは修繕費、新たな機能の追加や機能の向上等に該当するときは資本的支出になります(法人税基本通達7−8−6の2、所得税基本通達37−10の2)。実際の改修は両者が混在することが多いため、発注の段階で作業項目ごとに区分された見積書・作業明細を確保しておくことが重要です。完了後に区分しようとしても、根拠となる資料がなければ税務調査で説明できません。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、修繕費と資本的支出の区分に関する一般的な情報提供であり、個別の工事・支出に係る税務処理の判断に代わるものではありません。実際の判定は、工事の内容・対象資産の状況・過去の修繕実績等の事実関係により異なります。金額の大きい支出については、着工の前に税理士等の専門家にご相談ください。記載の取扱いは、とくに断りのない限り令和7年4月1日現在の法令等にもとづきます。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月27日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。