損益分岐点とは?計算式・固定費と変動費の分け方を税理士が解説【2026年版】

「売上はそこそこあるのに、手元にお金が残らない」「あといくら売れば赤字にならないのか分からない」——経営のご相談で必ず出てくるのが、この“数字の見えなさ”です。その答えを一発で示してくれるのが、管理会計の出発点である損益分岐点です。「いくら売れば利益がゼロになるか(=赤字と黒字の境目)」を金額で示してくれる、経営判断の土台になる数字です。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、財務顧問では必ず損益分岐点を“社長が言える数字”にすることから始めます。 本記事では、損益分岐点の計算式、固定費と変動費の分け方、損益分岐点比率・安全余裕率の見方、目標利益から逆算する売上高、そして損益分岐点を下げる4つの打ち手まで、中小企業・個人事業の経営に使える形で網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 損益分岐点とは(3行サマリー)
  2. 2. 固定費と変動費を分ける(最初の関門)
  3. 3. 損益分岐点の計算式と具体例
  4. 4. 損益分岐点比率と安全余裕率(会社の“余裕”を測る)
  5. 5. 目標利益から必要な売上高を逆算する
  6. 6. 損益分岐点を下げる4つの打ち手
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 損益分岐点とは(3行サマリー)

  • 損益分岐点(損益分岐点売上高)とは、利益がちょうどゼロになる売上高のこと。これを超えれば黒字、下回れば赤字です。
  • 計算には、費用を「固定費(売上に関係なくかかる費用)」と「変動費(売上に比例してかかる費用)」に分けることが必要です。
  • 公式は 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)。分母の「1 − 変動費率」を限界利益率といいます。

損益分岐点が分かると、「最低いくら売ればよいか」「値下げ・値上げの影響」「固定費を増やす投資の是非」を、感覚ではなく数字で判断できるようになります。

2. 固定費と変動費を分ける(最初の関門)

損益分岐点の計算は、費用を固定費と変動費に分ける「固変分解」から始まります。ここを正しくできるかどうかで、出てくる数字の信頼性が決まります。

区分性質主な例
固定費売上が増減しても一定にかかる費用正社員の給与・役員報酬、店舗や事務所の家賃、リース料、減価償却費、保険料、固定の水道光熱費など
変動費売上に比例して増減する費用商品の仕入原価、原材料費、外注費、販売手数料、運送費、売上に連動する消耗品など

中小企業では、勘定科目ごとに「これは固定費/これは変動費」と振り分ける勘定科目法が実務的でおすすめです。人件費のように固定・変動が混ざる費用もありますが、まずは大きく分けて全体像をつかむことが先決です。

💡 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高。たとえば売上1,000万円・変動費600万円なら、変動費率は60%。このとき限界利益率=1 − 60%=40%となります。限界利益率は「売上の何割が固定費の回収と利益に回るか」を表す、経営の体力を示す指標です。

3. 損益分岐点の計算式と具体例

固定費と変動費が分かれば、損益分岐点は次の式で計算できます。

💡 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)= 固定費 ÷ 限界利益率

具体例で見てみましょう。次の会社で損益分岐点を求めます。

項目金額
売上高1,000万円
変動費600万円(変動費率60%)
限界利益(売上−変動費)400万円(限界利益率40%)
固定費300万円
利益(限界利益−固定費)100万円

この会社の損益分岐点売上高は、

300万円 ÷(1 − 0.6)= 300万円 ÷ 0.4 = 750万円

つまり、売上が750万円を超えれば黒字、下回れば赤字ということです。実際の売上は1,000万円なので、損益分岐点(750万円)を250万円上回っており、その分が利益の源泉になっています。限界利益率40%なので、売上が1万円増えるごとに利益は4,000円増える、という関係も読み取れます。

4. 損益分岐点比率と安全余裕率(会社の“余裕”を測る)

損益分岐点そのものに加え、今の売上にどれだけ余裕があるかを測る2つの指標を押さえると、経営の安全性がひと目で分かります。

指標計算式意味
損益分岐点比率損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100低いほど安全。実際の売上のうち、どこまで下がると赤字になるか
安全余裕率(売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100高いほど安全。売上が何%下がるまで赤字にならないか

先ほどの例(売上1,000万円・損益分岐点750万円)なら、損益分岐点比率は75%、安全余裕率は25%です。これは「売上が25%下がっても赤字にならない」ことを意味します。一般に損益分岐点比率は80%以下なら良好、90%超は要注意の目安とされます。自社の比率を知っておくと、不況や売上減少にどれだけ耐えられるか(=経営の安全マージン)を数字で把握できます。

5. 目標利益から必要な売上高を逆算する

損益分岐点の考え方を一歩進めると、「この利益を出すには、いくら売ればいいか」を逆算できます。経営計画や予算づくりに直結する使い方です。

💡 目標利益を達成する売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率

先ほどの会社(固定費300万円・限界利益率40%)が、利益200万円を目標にするなら、

(300万円 + 200万円)÷ 0.4 = 1,250万円

の売上が必要、と分かります。「なんとなく頑張る」ではなく、「利益200万円のために売上1,250万円・月平均約104万円」という具体的な目標に落とし込めるため、現場にも伝わる計画になります。この逆算は、融資審査で見られる事業計画・数値計画の根拠としても説得力を持ちます。

6. 損益分岐点を下げる4つの打ち手

損益分岐点が高い(=たくさん売らないと黒字にならない)会社は、不況に弱い体質です。損益分岐点を下げるには、公式の構成要素から考えて4つの方向があります。

❌ やりがちな失敗
  • 赤字対策として、いきなり安易な「値下げ」で売上数量だけを追う(限界利益率が下がり、かえって損益分岐点が上がる)
  • 売上を増やすことばかり考え、固定費の重さに目を向けない
  • 固定費・変動費を分けずに「なんとなくコスト削減」と号令をかけ、効果が出ない
⭕ 王道の対応
  • ①販売数量を増やす:限界利益率を保ったまま売上を伸ばす(広告・販路)
  • ②販売価格を上げる:1単位あたりの限界利益を増やす(値づけの見直し)
  • ③変動費率を下げる:仕入・外注・原価の見直しで限界利益率を上げる
  • ④固定費を下げる:家賃・人件費・リースなど固定費そのものを圧縮する

このうち、固定費の削減は損益分岐点を直接押し下げる効果が大きいとされます。固定費が下がれば、公式の分子が小さくなり、損益分岐点売上高がそのまま下がるからです。ただし、固定費の中には将来の成長に必要な投資(人材・設備)も含まれます。「削ってよい固定費」と「攻めの固定費」を見極めることが、財務の腕の見せどころです。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「利益が出ているはずなのに資金繰りが苦しい」「あといくら売れば楽になるのか分からない」というご相談は実際に数多く寄せられます。一般論として申し上げると、損益分岐点を一度きちんと出すと、社長の判断のスピードが大きく変わります。私たちが財務顧問で関与する場面でも、まず固定費・変動費を分けて損益分岐点と安全余裕率を“社長が即答できる数字”にし、そのうえで値づけ・投資・採用の意思決定に使っていただくようにしています。数字は、出してはじめて経営の道具になります。

よくある質問(FAQ)

損益分岐点と資金繰り(キャッシュ)は同じものですか?

別物です。損益分岐点は「利益」がゼロになる売上高で、会計上の損益の話です。一方、手元の現金の流れは資金繰りの話で、利益が出ていても現金が足りない「黒字倒産」は起こります。損益分岐点と資金繰り表は、両方そろえて初めて経営判断に使えます。

人件費は固定費ですか、変動費ですか?

正社員の給与や役員報酬は固定費、売上に連動する歩合給やアルバイトの一部は変動費に近い性質を持ちます。混在する場合は、実務上は主たる性質で大きく振り分け、まず全体像をつかむのが現実的です。

損益分岐点比率はどのくらいが理想ですか?

一般的な目安は、80%以下なら良好、90%を超えると要注意とされます。業種によって適正水準は異なるため、同業他社や自社の過去推移と比べて判断するのがおすすめです。

値下げをすると損益分岐点はどうなりますか?

値下げは1単位あたりの限界利益を減らし、限界利益率を下げます。すると公式の分母が小さくなり、損益分岐点売上高は上がってしまいます。安易な値下げが危険なのは、この仕組みのためです。

自社の数字で損益分岐点を出してほしいのですが?

決算書(損益計算書)から固定費・変動費を分解すれば算出できます。固変分解や限界利益率の改善余地まで含めた分析は、財務顧問の中でご支援しています。お気軽にご相談ください。

8. まとめ

損益分岐点は、「いくら売れば赤字にならないか」を金額で示す、経営判断の土台になる数字です。要点は次のとおりです。

  • 計算式は 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)。分母が限界利益率
  • まず費用を固定費と変動費に分ける(固変分解)。ここが数字の信頼性を決める。
  • 損益分岐点比率(80%以下が良好)・安全余裕率で、売上がどこまで下がっても耐えられるかが分かる。
  • 目標利益から (固定費+目標利益)÷限界利益率 で必要売上を逆算でき、計画づくりに使える。
  • 損益分岐点を下げるには、数量・価格・変動費率・固定費の4方向。固定費削減の効果が大きい。

「自社の損益分岐点はいくらか」「あといくら売れば目標利益に届くか」「固定費のどこに手を入れるべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、財務顧問で損益分岐点や資金繰りを“社長が使える数字”に変えるご支援をしています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 中小機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」 https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q0240.html
  • 中小機構 J-Net21「損益分岐点を使った目標売上高」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-2-9.html
ご利用上の留意事項
本記事は、損益分岐点・管理会計に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。固定費・変動費の分け方や適正な指標水準は、業種・事業実態により異なります。実際の経営判断にあたっては、自社の決算内容に即して税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月10日

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認定経営革新等支援機関として、損益分岐点・限界利益率の分析から、固定費の見直し・予算編成・資金繰りまで、数字を『社長が使える道具』に変える財務顧問でご支援しています。利益が残らない、目標の立て方が分からないという経営者の方はお気軽にご相談ください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp