相続税はいくらから?基礎控除と計算方法・税率を税理士が解説【2026年版】

「親に万一のことがあったら、うちは相続税がかかるのだろうか」「遺産がいくらから相続税の対象になるのか分からない」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、ご自宅や預貯金、自社株をお持ちのお客様から、こうしたご相談が数多く寄せられます。相続税は「お金持ちだけの税金」と思われがちですが、基礎控除という非課税の枠を超えれば誰にでもかかります。まずは自分の家が対象かどうか、いくらかかるのかを正しく知ることが、相続対策の出発点です。 本記事では、相続税が「いくらから」かかるのかを決める基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の計算、法定相続人の数え方(相続放棄・養子の扱い)、相続税の総額を出す3つのステップ相続税の速算表(全8段階)、具体的な計算例、そして配偶者の税額軽減・2割加算などの税額控除までを、国税庁の取扱い(タックスアンサーNo.4152・No.4155ほか)に基づいて網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 相続税は「いくらから」かかるのか(3行サマリー)
  2. 2. 基礎控除額の計算と「法定相続人の数」の数え方
  3. 3. 相続税の計算は「3つのステップ」で進む
  4. 4. 法定相続分(民法900条)
  5. 5. 相続税の速算表(全8段階・完全版)
  6. 6. 具体的な計算例(遺産1億円・配偶者と子2人)
  7. 7. 主な税額控除と2割加算
  8. 8. 申告と納税(10か月以内・現金一括が原則)
  9. 10. まとめ
  10. よくある質問(FAQ)

1. 相続税は「いくらから」かかるのか(3行サマリー)

  • 相続税は、亡くなった人(被相続人)の遺産の総額が基礎控除額を超えたときに、超えた部分に対してかかります。遺産が基礎控除以下なら相続税はかからず、原則として申告も不要です。
  • 基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します(国税庁No.4152)。たとえば相続人が配偶者と子2人(計3人)なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3=4,800万円。遺産がこの金額以下なら相続税はかかりません。
  • ひとことで言えば、相続税が「いくらから」かかるかは、家族構成(法定相続人の数)で決まるということです。同じ遺産額でも、相続人が多い家ほど非課税の枠が大きくなります。
💡 平成27年(2015年)の改正で基礎控除が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から現在の水準へと4割引き下げられました。これにより課税対象は大きく広がり、相続税は富裕層だけでなく、都市部に持ち家のある一般のご家庭にも関係する税金になっています。

2. 基礎控除額の計算と「法定相続人の数」の数え方

相続税がかかるかどうかの分かれ目になるのが基礎控除です。式は次のとおりです(国税庁No.4152)。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数に応じた基礎控除額は次のとおりです。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

ここで重要なのが「法定相続人の数」の数え方です。実際に遺産を受け取った人の数ではなく、民法で定める相続人の数を、次のルールで数えます(国税庁No.4152・No.4170)。

  • 相続放棄があっても、その放棄がなかったものとして数える … 相続を放棄した人がいても、基礎控除の計算では放棄がなかったものとして人数に入れます。放棄によって基礎控除が減ることはありません。
  • 養子は数に制限がある … 被相続人に実子がいる場合は養子1人まで実子がいない場合は養子2人までを法定相続人の数に含めます。相続税逃れのための際限のない養子縁組を防ぐためのルールです。
❌ 法定相続人の数え方でよくある誤解
  • 相続放棄をした子がいるから、基礎控除の人数から外して計算してしまう
  • 孫を3人養子にすれば基礎控除が600万円×3増える、と考えてしまう(実子がいれば養子は1人までしか数えられない)
  • 「実際に遺産を受け取った人」だけで人数を数えてしまう
⭕ 正しい数え方
  • 相続放棄があっても、放棄がなかったものとして法定相続人の数に入れる
  • 養子は実子の有無に応じて1人または2人までを数に含める
  • 「誰が受け取ったか」ではなく「民法上の法定相続人は誰か」で数える

3. 相続税の計算は「3つのステップ」で進む

相続税は、いきなり各人の税額を出すのではなく、いったん全体の税額を計算してから各人に割り振るという独特の手順をとります。大きく3ステップです(国税庁No.4152)。

ステップ1:課税遺産総額を出す 遺産の総額(プラスの財産から借入金などの債務・葬式費用を引き、一定の生前贈与を加えた「正味の遺産額=課税価格の合計額」)から、基礎控除額を差し引きます。

課税遺産総額 = 正味の遺産額(課税価格の合計額)− 基礎控除額

ここがマイナスかゼロなら相続税はかかりません。

ステップ2:相続税の総額を計算する 課税遺産総額を、いったん法定相続分どおりに取得したと仮定して各相続人に按分し、その金額に速算表(第5章)を当てはめて各人の仮の税額を出し、全員分を合計します。この合計が「相続税の総額」です。実際に誰がどれだけ取得したかにかかわらず、まず総額を確定させるのがポイントです。

ステップ3:実際の取得割合で按分し、各人の税額を出す 相続税の総額を、各人が実際に取得した遺産の割合で按分します。そのうえで、配偶者の税額軽減・2割加算・各種税額控除(第7章)を各人に適用し、最終的な納付税額を確定します。

💡 ステップ2で「法定相続分どおりに分けたと仮定」して総額を出すのは、遺産分割の仕方によって相続税の総額が変わらないようにするためです。総額はまず家族全体で1つに決まり、それを実際の取り分で分け合う——この二段構えが相続税の最大の特徴です。

4. 法定相続分(民法900条)

ステップ2で使う法定相続分は、誰が相続人になるかで決まります。相続人には順位があり、配偶者は常に相続人になります(国税庁No.4132)。

相続人の組み合わせ配偶者の相続分もう一方の相続分
配偶者と(第1順位)2分の1子全体で2分の1
配偶者と直系尊属(父母など・第2順位)3分の2直系尊属全体で3分の1
配偶者と兄弟姉妹(第3順位)4分の3兄弟姉妹全体で4分の1
  • 子・直系尊属・兄弟姉妹が複数いる場合は、その人数で均等に分けます(たとえば子が2人なら、子全体の2分の1をさらに半分ずつ=各4分の1)。
  • 第1順位(子)がいれば第2・第3順位は相続人になりません。子がいなければ直系尊属、どちらもいなければ兄弟姉妹、という順で相続人が決まります。
  • 配偶者がいない場合は、その順位の相続人だけで均等に分けます。

5. 相続税の速算表(全8段階・完全版)

ステップ2で、法定相続分に応じた各人の取得金額に当てはめるのが、次の速算表です。国税庁No.4155に基づき、全8段階を掲載します。「法定相続分に応ずる取得金額×税率−控除額」で各人の仮の税額を計算します。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超 〜 3,000万円以下15%50万円
3,000万円超 〜 5,000万円以下20%200万円
5,000万円超 〜 1億円以下30%700万円
1億円超 〜 2億円以下40%1,700万円
2億円超 〜 3億円以下45%2,700万円
3億円超 〜 6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税は所得税と同じ超過累進税率で、取得金額が大きいほど高い税率がかかります。この速算表を当てはめるのは、あくまで法定相続分で分けたと仮定した金額であって、実際の取得額ではない点に注意してください。

6. 具体的な計算例(遺産1億円・配偶者と子2人)

言葉だけでは分かりにくいので、具体例で3ステップをたどります。

前提:正味の遺産額(課税価格の合計額)=1億円。相続人は配偶者と子2人(計3人)。

ステップ1:課税遺産総額

  • 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
  • 課税遺産総額 = 1億円 − 4,800万円 = 5,200万円

ステップ2:相続税の総額 法定相続分(配偶者1/2、子は各1/4)で按分し、速算表を当てはめます。

  • 配偶者:5,200万円 × 1/2 = 2,600万円 → 2,600万円 × 15% − 50万円 = 340万円
  • 子A:5,200万円 × 1/4 = 1,300万円 → 1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円
  • 子B:同上 = 145万円
  • 相続税の総額 = 340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円

ステップ3:実際の取得割合で按分し、税額控除を適用 仮に法定相続分どおり(配偶者1/2、子各1/4)に取得したとすると、

  • 配偶者:630万円 × 1/2 = 315万円 → 配偶者の税額軽減(第7章)で0円
  • 子A:630万円 × 1/4 = 157万5,000円
  • 子B:同上 = 157万5,000円
  • 実際に納める相続税の合計 = 315万円(子2人分)

このように、配偶者が取得した分は税額軽減で大きく減るため、一次相続(最初の相続)の税負担は軽くなりやすいのが特徴です。ただし、その配偶者が亡くなる二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、家族全体では税額が増えることもあるため、一次・二次を通算した設計が欠かせません。

💬 実務の現場から
——「とりあえず全部、配偶者に相続させれば相続税はほとんどかからないのでは」というお声を、弊社でも実際によく頂きます。一般論として申し上げると、配偶者の税額軽減(次章)は非常に強力ですが、それに頼りすぎると二次相続で子に重い相続税がのしかかることがあります。私たちが関与する場面では、一次相続だけでなく、配偶者がお持ちの財産と合わせた二次相続までシミュレーションし、家族全体で税負担が最小になる分け方をご提案しています。

7. 主な税額控除と2割加算

相続税の総額を実際の取得割合で割り振った後、各人の事情に応じて次の調整を行います。

区分内容根拠
配偶者の税額軽減配偶者が取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない国税庁No.4158
相続税額の2割加算一親等の血族(子・父母)と配偶者以外の人(兄弟姉妹・甥姪・代襲でない孫など)は、相続税額が2割増しになる。孫養子も原則対象国税庁No.4157
未成年者控除18歳になるまでの年数 × 10万円を控除国税庁No.4164
障害者控除85歳になるまでの年数 × 10万円(特別障害者は20万円)を控除国税庁No.4167
贈与税額控除生前贈与加算で相続財産に加えられた贈与について、すでに払った贈与税を控除(二重課税の調整)国税庁No.4161
相次相続控除10年以内に続けて相続が起きた場合、前回の相続税の一部を控除国税庁No.4168
外国税額控除海外財産に外国の相続税が課された場合、二重課税分を調整国税庁No.4138

最も影響が大きいのが配偶者の税額軽減2割加算です。

❌ 税額控除・2割加算でよくある失敗
  • 配偶者の税額軽減を使えば必ず得だと考え、一次相続で配偶者に寄せすぎて二次相続で子の税額が膨らむ
  • 孫に直接相続(遺贈)させれば一代飛ばせて得だと考えるが、孫は原則2割加算の対象で割高になる
  • 配偶者の税額軽減は「申告すれば自動」と思い込み、遺産分割が間に合わず期限内に適用を受けられない
⭕ 王道の考え方
  • 配偶者の税額軽減は二次相続まで見据えて「どこまで使うか」を決める(使い切らない選択もある)
  • 孫への承継は2割加算のコストと、相続を一代飛ばせるメリットを天秤にかけて判断する
  • 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は、申告期限までの遺産分割と相続税の申告が前提。もめそうなら分割見込書で期限内申告を確保する

8. 申告と納税(10か月以内・現金一括が原則)

  • 申告・納税の期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」です(国税庁No.4205)。たとえば1月10日に亡くなった場合、11月10日が期限です。
  • 相続税は金銭で一括納付するのが原則。期限を過ぎると延滞税、申告漏れには加算税がかかります。
  • 一括で払えない場合は、年賦で分割する延納、それも難しい場合は不動産などで納める物納という制度がありますが、いずれも要件と手続き・利子税の負担があります。
  • 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で相続税が0円になる場合でも、これらの特例を使うには相続税の申告が必要です。「0円だから申告不要」は誤りなので注意してください(基礎控除以下で特例を使わず0円になる場合は申告不要です)。
💡 相続税は「いくらかかるか」だけでなく「いつまでに現金で払うか」が実務上の大問題です。遺産の大半が自宅や自社株などの換金しにくい財産だと、10か月以内に納税資金を用意できないことがあります。生前のうちに納税資金の手当て(生命保険の活用・分割しやすい資産構成・自社株の評価対策)まで設計しておくことが、円滑な相続の鍵になります。

よくある質問(FAQ)

相続税は遺産がいくらから かかりますか?

正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、超えた部分にかかります。相続人が配偶者と子2人なら基礎控除は4,800万円で、遺産がこれ以下なら相続税はかからず、特例を使わなければ申告も不要です。

相続放棄をした人がいると、基礎控除は減りますか?

減りません。基礎控除の計算では、相続放棄があっても「放棄がなかったもの」として法定相続人の数を数えます。放棄によって残った相続人の基礎控除が小さくなることはありません。

生命保険金や死亡退職金にも相続税はかかりますか?

かかりますが、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。たとえば相続人が3人なら、生命保険金は1,500万円まで非課税で、超えた部分が相続税の課税対象(みなし相続財産)になります。納税資金対策として生命保険が使われるのはこの非課税枠があるためです。

配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからないと聞きましたが、本当ですか?

本当です。配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した正味の遺産額のうち1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし適用には相続税の申告と、原則として申告期限までの遺産分割が必要です。また使いすぎると二次相続で不利になることがあります。

孫に直接相続させると相続税は安くなりますか?

一概には言えません。孫に遺贈すると相続を一代飛ばせる一方、孫(代襲相続人を除く)は相続税額が2割加算される割高な扱いになります。2割加算のコストと一代飛ばしのメリットを比較して判断する必要があります。

10. まとめ

相続税は、家族構成と遺産額が分かれば「かかるかどうか」「おおよそいくらか」を見通せる税金です。要点は次のとおりです。

  • 相続税は正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときにかかる。
  • 法定相続人の数は、相続放棄があっても放棄がなかったものとして数え、養子は実子の有無で1人または2人まで。
  • 計算は3ステップ。①基礎控除を引いて課税遺産総額を出す②法定相続分で仮に分けて速算表で総額を出す③実際の取得割合で按分し税額控除を適用する。
  • 税率は10〜55%の超過累進(速算表・全8段階)。
  • 配偶者の税額軽減(1億6,000万円)は強力だが二次相続まで見据えて使う。孫などは2割加算に注意。
  • 申告・納税は10か月以内・現金一括が原則。特例で0円になる場合も申告は必要。

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出典・参考資料

  • 相続税法(基礎控除・税率・配偶者の税額軽減・各種税額控除)/民法第900条(法定相続分)
  • 国税庁タックスアンサー No.4152(相続税の計算)/No.4155(相続税の税率)/No.4132(相続人の範囲と法定相続分)/No.4170(相続人の中に養子がいるとき)
  • 国税庁タックスアンサー No.4158(配偶者の税額軽減)/No.4157(相続税額の2割加算)/No.4164(未成年者の税額控除)/No.4167(障害者の税額控除)/No.4161(贈与財産の加算と贈与税額控除)/No.4168(相次相続控除)/No.4138(外国税額控除)
  • 国税庁タックスアンサー No.4205(相続税の申告と納税)
ご利用上の留意事項
本記事は、相続税の計算・基礎控除に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。基礎控除額・税率・各種特例の要件等は改正により変わることがあります。実際の相続・申告の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月26日

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小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp