相続税の税務調査とは?名義預金・秋の調査シーズン・加算税を税理士が解説【2026年版】

「相続税の申告は済んだが、後から税務署が来ると聞いて不安」——相続を経験された方から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、相続税の税務調査についてのご相談が数多く寄せられます。相続税は、申告して終わりではありません。申告から1〜2年ほど経った頃、税務署が調査に入ることがあり、実際に調査を受けると約8割で申告漏れなどが指摘されているのが実情です。 本記事では、相続税の税務調査がいつ・どのように行われるのか、調査で最も指摘されやすい「名義預金」、指摘された場合に上乗せされる加算税、そして調査に備えるための実務ポイントまでを、最新の国税庁データ(令和6事務年度)を交えて、相続と税務調査を強みとする税理士が網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 相続税の税務調査とは(3行サマリー)
  2. 2. データで見る相続税の税務調査(令和6事務年度)
  3. 3. 最も指摘されやすい「名義預金」
  4. 4. 指摘されると上乗せされる加算税・延滞税
  5. 5. 税務調査に備える実務ポイント
  6. 6. 相続税の税務調査の失敗と王道
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 相続税の税務調査とは(3行サマリー)

  • 申告後に行われるチェック——相続税の税務調査は、提出された申告書の内容が正しいかを税務署が確認する手続きです。多くは申告書の提出から1〜2年後に行われます。
  • 調査は秋に集中しやすい——税務署の事務年度(7月〜翌6月)の関係で、相続税の実地調査は8月〜11月頃に多く行われる傾向があります。この時期に「お尋ね」や調査の連絡が届くことがあります。
  • 入られると高確率で指摘される——実地調査を受けた相続税申告のうち、令和6事務年度は82.3%で申告漏れなどの誤りが見つかっています。準備と正確な申告が何より重要です。
💡 相続税の税務調査には、税務署の職員が自宅などを訪れる「実地調査」と、文書や電話で確認を求める「簡易な接触(お尋ね)」があります。近年は簡易な接触が大幅に増えており、対面調査だけでなく、書面での問い合わせにも正確に対応する必要があります。

2. データで見る相続税の税務調査(令和6事務年度)

国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、相続税の税務調査は次のような状況です。

項目令和6事務年度前事務年度比
実地調査の件数9,512件111.2%
実地調査での非違(申告漏れ等)割合82.3%
実地調査による追徴税額(合計)824億円112.2%
簡易な接触の件数21,969件117.0%
簡易な接触での非違件数5,796件114.1%
無申告事案の追徴税額142億円115.3%

(出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」令和7年12月)

実地調査は約9,500件で、そのうち8割超で申告漏れが見つかっています。無申告事案の追徴税額142億円は、公表を始めた平成21事務年度以降で最も高い水準です。「相続税がかからないと思って申告しなかった」ケースも、税務署は把握していると考えるべきです。

💡 税務署は、亡くなった方(被相続人)の預金の動き・不動産・有価証券・生命保険金の支払調書などを、金融機関や保険会社からの情報で把握しています。KSK(国税総合管理)システムなどを通じて資産情報が集約されており、「相続財産は税務署に見えている」という前提で申告することが大切です。

3. 最も指摘されやすい「名義預金」

相続税の調査で最も多く問題になるのが、名義預金です。名義預金とは、口座の名義は配偶者や子・孫であっても、実質的には被相続人(亡くなった方)の財産と認められる預金のことです。

名義が家族でも、次のような場合は被相続人の相続財産として課税されます。

判断のポイント名義預金と疑われやすい状況
資金の出どころその預金の元手を出したのが被相続人である
管理・支配通帳・印鑑・キャッシュカードを被相続人が管理していた
贈与の事実名義人が「もらった」と認識しておらず、贈与契約や贈与税申告の実態がない
利息・運用の帰属利息や運用益を被相続人が受け取っていた

国税庁が公表した令和6事務年度の事例でも、被相続人名義の預金口座から相続人やその家族名義の口座へ多額の預金が移動していたことが把握され、増差課税価格が約7億2,000万円、追徴税額が約4億3,000万円(重加算税あり)となったケースが紹介されています。

💡 「毎年110万円ずつ子や孫の口座に振り込んでいた」ケースも、名義人本人が使える状態になく被相続人が管理していれば、贈与ではなく名義預金と判断されることがあります。生前贈与を有効にするには、贈与契約・名義人自身による口座管理・必要に応じた贈与税申告など、贈与の実態を残しておくことが重要です。

4. 指摘されると上乗せされる加算税・延滞税

調査で申告漏れが指摘されると、本来の相続税に加えて、次のペナルティが上乗せされます(国税通則法65条〜68条ほか)。

種類内容(原則)
過少申告加算税申告額が過少だった場合。原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)。ただし調査の事前通知前に自主的に修正申告すれば課されない
無申告加算税申告が必要なのにしていなかった場合。原則15%(50万円超の部分20%、300万円超の部分30%)
重加算税事実の仮装・隠蔽があった場合。過少申告に代えて35%、無申告に代えて40%と最も重い
延滞税法定納期限の翌日から納付までの日数に応じて課される利息的な税

とりわけ重加算税は、名義預金を意図的に隠していた、財産を除外していたと認定された場合に課され、税負担が一気に重くなります。悪質と判断されれば、刑事責任(脱税)に問われる可能性もあります。

⚠️ 「うっかり漏れていた」場合と「意図的に隠していた」場合とでは、ペナルティが大きく変わります。指摘される前に気づいて自主的に修正申告すれば、加算税が軽減・不適用となる余地があります。財産に漏れの可能性があると気づいたら、早めに専門家へ相談することが有利に働きます。

5. 税務調査に備える実務ポイント

税務調査を過度に恐れる必要はありませんが、正しく備えることで結果は大きく変わります。

  • 財産をもれなく把握して申告する——被相続人の預貯金・不動産・有価証券・生命保険・貸付金・貴金属などを網羅的に洗い出します。特に家族名義の預金(名義預金)は最初に疑われるため、資金の出どころを整理しておきます。
  • 過去の預金の動きを説明できるようにする——被相続人の口座から大きな出金があった場合、その使途(贈与・生活費・不動産購入など)を説明できる資料を残します。税務署は過去5〜10年分の通帳の動きを確認します。
  • 生前贈与は「贈与の実態」を残す——贈与契約書、名義人本人による口座管理、必要に応じた贈与税申告など、名義預金と誤認されない証拠を整えます。
  • 調査の連絡が来たら早めに税理士へ——調査は通常、事前に日程の連絡があります。慌てず、申告を担当した税理士に立ち会いを依頼し、想定される質問と回答を準備します。
  • 書面添付制度の活用——税理士が申告書に「書面添付」を付すことで、調査の前に税理士への意見聴取が行われ、そのまま実地調査に至らないケースもあります。
💬 実務の現場から
相続税の調査で最初に確認されるのは、ほぼ例外なく家族名義の預金です。ご相談の傾向として申し上げると、ご本人に隠す意図がまったくなくても、「親から預かって管理していた口座」が名義預金と指摘されて驚かれるケースが少なくありません。一般論として、申告の段階で名義預金になり得る口座を洗い出し、資金の出どころを整理しておくことが、調査で慌てないための最良の備えです。

6. 相続税の税務調査の失敗と王道

❌ 税務調査でやってしまいがちな失敗
  • 家族名義だからと安心して、名義預金を相続財産に含めずに申告する
  • 「相続税はかからない」と自己判断し、申告が必要なのに無申告のままにする
  • 被相続人の口座からの大きな出金の使途を説明できず、贈与と認定されて課税される
  • 調査の連絡が来てから慌て、準備なく回答して不利な事実を認めてしまう
  • 意図的な隠蔽と受け取られる対応をして、重加算税や刑事責任のリスクを高める
⭕ 税務調査に備える王道
  • 預貯金・保険・名義預金まで財産を網羅的に洗い出して正確に申告する
  • 過去の預金の動きと大きな出金の使途を説明できる資料を残す
  • 生前贈与は贈与契約・口座管理・申告で贈与の実態を証拠化する
  • 漏れに気づいたら、指摘される前に自主的に修正申告する
  • 申告時から税理士に依頼し、書面添付や調査立ち会いで備える

よくある質問(FAQ)

相続税の税務調査は、必ず入るのですか?

全件に入るわけではありません。令和6事務年度の実地調査は9,512件で、相続税の申告全体からするとごく一部です。ただし、財産規模が大きい、名義預金が疑われる、被相続人の口座に不明な大きな出金がある、無申告といったケースは調査対象に選ばれやすくなります。正確な申告と証拠の整理が、調査を回避する最大の備えです。

税務調査はいつ頃、どのように行われますか?

多くは申告書の提出から1〜2年後で、税務署の事務年度の関係から8月〜11月頃に実地調査が集中する傾向があります。通常は事前に日程の連絡があり、自宅などで被相続人の生前の生活状況や財産の管理状況について質問を受けます。近年は文書・電話による「簡易な接触(お尋ね)」も増えています。

名義預金とは何ですか。子や孫の口座なら相続財産にならないのでは?

口座の名義が家族でも、資金の出どころが被相続人で、通帳・印鑑を被相続人が管理し、名義人が自由に使えない状態であれば、実質的な被相続人の財産=名義預金として相続税の課税対象になります。相続税の調査で最も多く指摘される項目であり、生前贈与のつもりでも贈与の実態がなければ名義預金と判断されることがあります。

申告漏れが見つかると、どのくらいペナルティがかかりますか?

本来の相続税に加え、過少申告加算税(原則10%、一定額超は15%)または無申告加算税(原則15%、50万円超20%・300万円超30%)と、延滞税がかかります。仮装・隠蔽があったと認定されれば、これらに代えて重加算税(過少申告35%・無申告40%)が課されます。指摘前に自主的に修正申告すれば加算税が軽減・不適用となる余地があります。

税務調査の連絡が来ました。何をすればよいですか?

まず、申告を担当した税理士に連絡し、立ち会いを依頼してください。慌てて単独で対応すると、不確かな記憶のまま不利な事実を認めてしまうことがあります。事前に、被相続人の預金の動きや財産の管理状況について想定される質問と回答を整理し、関連資料をそろえておくことが重要です。

8. まとめ

相続税は申告して終わりではなく、税務調査まで見据えて正確に申告することが大切です。要点は次のとおりです。

  • 相続税の実地調査は申告から1〜2年後・秋に集中しやすく、入られると令和6事務年度で82.3%が申告漏れを指摘されている。
  • 最も多く指摘されるのは名義預金。名義が家族でも、資金の出どころ・管理・贈与の実態で実質判断される。
  • 申告漏れには過少申告加算税・無申告加算税・延滞税、隠蔽があれば重加算税が上乗せされる。
  • 備えの王道は、財産の網羅的な洗い出し・預金の動きの説明資料・贈与の実態の証拠化・書面添付・税理士の立ち会い
  • 漏れに気づいたら、指摘される前に自主的に修正申告する。

「名義預金になりそうな口座がある」「申告した相続税に漏れがないか不安」「税務調査の連絡が来た」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、相続財産の網羅的な洗い出しから、名義預金の整理、書面添付による申告、税務調査の立ち会いまで伴走します。調査は事前の備えで結果が変わりますので、申告の段階からご相談ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、相続税の税務調査に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。調査の実施状況・加算税の適用は、事実関係により異なり、制度の要件は改正により変わることがあります。統計数値は国税庁公表資料に基づきます。実際の申告・調査対応にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月17日

相続税の申告・名義預金の整理・税務調査対応は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、相続財産の網羅的な洗い出しから、名義預金の整理、書面添付による申告、税務調査の立ち会いまで伴走します。調査は事前の備えで結果が変わりますので、申告の段階からご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。