貸借対照表(BS)の読み方を税理士が解説|資産・負債・純資産と自己資本比率の見方【2026年版】

「損益計算書(PL)は売上と利益だから何となく分かるが、貸借対照表(BS)は何を見ればいいのか分からない」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、経営者の方からこうしたご相談がよく寄せられます。決算書の中でも、会社の「体力」と「安全性」を映し出すのが貸借対照表です。銀行が融資の可否を判断するときも、PL(利益)以上にBS(財務の健全性)を重視します。 本記事では、貸借対照表の構造(資産・負債・純資産)、左右がなぜ必ず一致するのか、つぶれにくい会社かどうかを読む指標(自己資本比率・流動比率)、そして経営者がBSのどこを見ればよいかまで、図解的に網羅して解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 貸借対照表(BS)とは(3行サマリー)
  2. 2. 貸借対照表の構造:3つのブロック
  3. 3. 資産・負債は「流動」と「固定」に分かれる
  4. 4. つぶれにくい会社かを読む:2つの安全性指標
  5. 5. 経営者がBSで必ず見るべき4つのポイント
  6. 6. BS・PL・キャッシュフローの関係
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 貸借対照表(BS)とは(3行サマリー)

  • 貸借対照表は、決算日というある一時点で、会社が「何を持っているか(資産)」「いくら借りているか(負債)」「元手と利益の蓄積はいくらか(純資産)」を一覧にした表です。
  • 英語の Balance Sheet から「BS(ビーエス)」と呼ばれ、会社法上の計算書類の一つとして作成が義務づけられています(会社法第435条)。
  • 一定期間の「もうけ」を表す損益計算書(PL)に対し、BSはその時点の財産と借金のストック(残高)を表します。

ひとことで言えば、PLが「1年間でいくら稼いだか(フロー)」を表すのに対し、BSは「今いくら財産があり、いくら借金があるか(ストック)」を表します。会社の安全性・健全性はBSに表れます。

2. 貸借対照表の構造:3つのブロック

貸借対照表は、左右2つに分かれ、合計が必ず一致する(バランスする)のが最大の特徴です。

左側(借方)右側(貸方)
資産の部
(集めたお金を「何に使っているか」)
負債の部
(返す必要のあるお金=他人資本)
純資産の部
(返さなくてよいお金=自己資本)
資産合計負債・純資産合計

右側(負債+純資産)は「お金をどこから集めてきたか」、左側(資産)は「集めたお金を今どんな形で持っているか」を表します。同じお金を「調達」と「運用」の両面から見ているので、左右の合計は必ず一致します。これがBSが「バランスシート」と呼ばれる理由です。

ブロック意味主な中身
資産会社が持っている財産・権利現金預金、売掛金、商品(棚卸資産)、建物、車両、土地、敷金 など
負債いずれ返す・支払う義務買掛金、未払金、短期・長期借入金、未払法人税等 など
純資産返さなくてよい自前の元手資本金、利益剰余金(過去の利益の蓄積)など

3. 資産・負債は「流動」と「固定」に分かれる

資産と負債は、それぞれ短期(流動)長期(固定)に分けて並べます。分ける基準が「ワンイヤールール(1年基準)」です。

  • 流動資産/流動負債:1年以内に現金化・支払いされるもの(現金預金・売掛金・買掛金・短期借入金など)
  • 固定資産/固定負債:1年を超えて使う・返すもの(建物・土地・車両・長期借入金など)
資産の部負債の部
流動資産(現金預金・売掛金・棚卸資産 ほか)流動負債(買掛金・未払金・短期借入金 ほか)
固定資産(建物・機械・車両・土地・敷金 ほか)固定負債(長期借入金・退職給付引当金 ほか)
純資産(資本金・利益剰余金 ほか)

この並びには意味があります。資産は上にいくほど現金に近い(換金しやすい)順、負債は上にいくほど早く返す必要がある順に並びます。つまりBSの上のほうを見れば「短期の支払い能力」が、下のほうを見れば「長期の財産と借入の構造」が分かります。

4. つぶれにくい会社かを読む:2つの安全性指標

BSを「読む」とは、数字を眺めることではなく、会社の安全性を指標で確かめることです。経営者がまず押さえたいのが次の2つです。

① 自己資本比率(会社の体力)

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産(負債+純資産)× 100

総資産のうち、返さなくてよい自前のお金(純資産)がどれだけあるかを示します。高いほど借入依存が小さく、不況に強い「つぶれにくい会社」です。

自己資本比率の目安評価
40%以上優良。財務の安全性が高い
20〜40%標準的。多くの中小企業がこの帯
10〜20%やや低め。借入依存が大きい
10%未満/マイナス(債務超過)要注意。マイナスは純資産がゼロを下回る「債務超過」
💡 純資産がマイナスになった状態を「債務超過」といいます。資産をすべて売っても負債を返しきれない状態で、銀行融資で最も嫌われるサインです。自己資本比率は、経営者が毎期まず確認すべき「会社の体力測定」です。

② 流動比率(短期の支払い能力)

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

1年以内に支払うお金(流動負債)に対し、1年以内に現金化できる資産(流動資産)がどれだけあるかを示します。120〜150%以上あると短期の資金繰りに余裕がある状態、100%を下回ると短期の支払い能力に不安があるサインです。

💬 実務の現場から
——弊社にも、「黒字なのに、なぜか手元のお金がいつも足りない」というご相談が実際によく寄せられます。一般論として申し上げると、その答えはPLではなくBSに表れていることがほとんどです。利益は出ていても、売掛金の回収が遅い・在庫が膨らんでいる・借入の返済が利益を上回っている、といった「お金の詰まり」はBSを見ないと分かりません。私たちが関与する場面でも、PLの利益とあわせてBSの流動比率・自己資本比率・借入残高の推移をセットで見て、資金繰りの早期の手当てにつなげています。

5. 経営者がBSで必ず見るべき4つのポイント

決算書を受け取ったとき、経営者が最初に確認したいのは次の4点です。難しい分析よりも、この4つを毎期追うだけで会社の状態がつかめます。

❌ 決算書をPLしか見ない失敗
  • 「黒字だから大丈夫」と利益だけ見て、借入過多・債務超過に気づかない
  • 売掛金や在庫が年々膨らんでいるのに、利益が出ているからと放置する
  • 銀行が見ているBS指標を知らず、融資面談で財務の質問に答えられない
⭕ BSで会社の健康状態を毎期チェックする王道
  • 現金預金の残高:いざというときの備え。月商の1〜3か月分が一つの目安
  • 利益剰余金:過去の利益の蓄積。年々増えていれば内部留保が厚くなっている証拠
  • 借入金の残高:純資産や利益(返済原資)と比べて多すぎないか
  • 自己資本比率・流動比率:会社の体力と短期の支払い能力
💡 BSは「前期との比較」で読むと一気に分かりやすくなります。現金預金・売掛金・在庫・借入金・純資産が、前期からどう増減したか。増減の理由を一つずつ言葉で説明できれば、お金の流れを経営者自身が握れている状態です。

6. BS・PL・キャッシュフローの関係

決算書は、貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)・キャッシュフロー計算書(CF)の3つが基本で、「財務三表」と呼ばれます。

決算書表すものたとえると
損益計算書(PL)1年間のもうけ(収益−費用)1年間の成績表
貸借対照表(BS)決算日時点の財産と借金の残高今の体力・健康診断書
キャッシュフロー計算書(CF)1年間の現金の出入りお金の血流

3つはつながっています。PLで稼いだ利益(当期純利益)は、BSの利益剰余金に積み上がり、純資産を厚くします。一方で、利益が出ていても現金が増えるとは限らず(売掛金や在庫に化ける)、その「利益とお金のズレ」を説明するのがCFです。PLだけ・BSだけでは会社の全体像はつかめないため、3つをセットで見るのが王道です。

なお、利益と現金が一致しない理由や、現金の流れの管理方法は、別記事「資金繰り表の作り方を税理士が解説」で詳しく扱っています。

よくある質問(FAQ)

貸借対照表の左右は、なぜ必ず一致するのですか?

右側(負債+純資産)は「お金をどこから集めたか」、左側(資産)は「そのお金を今どんな形で持っているか」を表し、同じお金を別の角度から見ているためです。集めた額と使っている額は必ず同じになるので、左右の合計(バランス)は一致します。

自己資本比率は何%あればよいですか?

業種によりますが、一般に40%以上で優良、20〜40%が標準的とされます。重要なのは絶対値以上に、毎期じわじわ高まっているかという推移です。利益を出して純資産を厚くしていくことが、安全性を高める王道です。

「債務超過」とは何ですか?危険なのですか?

負債が資産を上回り、純資産がマイナスになった状態です。資産をすべて売っても借金を返しきれない状態を意味し、融資審査で最も嫌われます。すぐ倒産するわけではありませんが、早期の改善(増資・利益の蓄積)が必要なサインです。

黒字なのにお金が残らないのは、BSのどこを見れば分かりますか?

売掛金・棚卸資産(在庫)の残高が前期より大きく増えていないか、借入金の返済が利益を上回っていないかを見ます。利益が売掛金や在庫に「化けて」現金になっていないことが多く、これはPLでは見えず、BSとキャッシュフローで初めて分かります。

決算書を読めるようになると、何が変わりますか?

銀行融資の面談で財務の質問に的確に答えられ、金利・融資枠の交渉力が上がります。また、資金繰りの悪化を早期に察知でき、打ち手を前倒しできます。数字は「社長が使う道具」です。

8. まとめ

貸借対照表(BS)は、会社の安全性と体力を映す決算書です。要点は次のとおりです。

  • BSは決算日時点の資産・負債・純資産を一覧にした表。左右(資産=負債+純資産)は必ず一致する。
  • 資産・負債は1年基準(ワンイヤールール)で流動・固定に分かれ、上ほど現金に近い/早く返す順に並ぶ。
  • 安全性は自己資本比率(純資産÷総資産。40%以上で優良)流動比率(流動資産÷流動負債。120%以上が目安)で読む。
  • 経営者は現金預金・利益剰余金・借入金残高・自己資本比率の4点を毎期、前期と比較して追う。
  • 純資産のマイナス=債務超過は最も注意すべきサイン。BS・PL・CFの財務三表はセットで見る。

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出典・参考資料

  • 会社法 第435条(計算書類等の作成及び保存)
  • 会社計算規則(貸借対照表等の区分・表示)
  • 中小企業庁・日本税理士会連合会ほか「中小企業の会計に関する基本要領」
  • 中小企業庁「中小企業の財務指標」(自己資本比率・流動比率等の業種別の考え方)
ご利用上の留意事項
本記事は、貸借対照表の読み方に関する一般的な情報提供であり、個別の財務判断に代わるものではありません。指標の目安は業種・規模により異なります。実際の財務分析・融資対応にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月19日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp