短期プライムレートが2026年8月3日に2.375%へ|政策金利1%時代の借入をどう見直すか税理士が解説
- 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 2. 前提:政策金利・短プラ・借入金利のつながり
- 3. 0.75ポイントの上昇は、いくらの負担増になるか
- 4. 専門家の視点——「利息は経費だから」で終わらせてはいけない理由
- 5. 実務でどう備えるか
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 2026年6月16日、日本銀行は金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針を決定しました(賛成7・反対1)。あわせて基準貸付利率は1.25%とされ、いずれも翌営業日の6月17日から適用されています
- 2026年7月31日の決定会合では、この1.0%程度という方針が維持されました(賛成8・反対1)。反対した委員は1.25%程度への引上げを提案し、反対多数で否決されています
- これを受けて、2026年8月3日に短期プライムレートの最頻値が年2.375%(最高2.625%・最低2.375%)になりました。長期プライムレートも8月12日に年3.25%となっています
短期プライムレートに連動する借入は、契約で定められた見直し時期に改定後の利率が反映されます。改定のタイミングは契約によって異なりますので、「いつから、いくらになるのか」は自社の金銭消費貸借契約書で確認する必要があります。まず確認すべきは、①変動か固定か ②変動なら連動する指標と見直し時期 ③残存期間 の3点です。
2. 前提:政策金利・短プラ・借入金利のつながり
3つの金利の関係
金利の話が分かりにくいのは、性質の違う数字が同じ「金利」という言葉で語られるからです。中小企業の借入に効いてくるのは、次の順序です。
- 政策金利:日本銀行が誘導する、銀行どうしが超短期で資金をやりとりするときの金利
- 短期プライムレート:銀行が、最も信用力の高い企業に1年以内の期間で貸すときの最優遇金利
- 自社の借入金利:短期プライムレートに、自社の信用力に応じた上乗せを加えた利率
短期プライムレート(短プラ)は、銀行が自ら決めて公表する金利です。日本銀行が直接決めているわけではありませんが、政策金利が動けば銀行の資金調達コストが動くため、時間差をおいて短プラに反映されます。そして中小企業向けの借入は「短プラ+◯%」という形で契約されていることが多いため、短プラが動けば自社の金利も動きます。
短期プライムレートはこう動いてきた
日本銀行が公表している「長・短期プライムレート(主要行)の推移」から、直近の改定を並べます(最頻値)。
| 実施日 | 短プラ最頻値 |
|---|---|
| 令和6(2024)年9月2日 | 1.625% |
| 令和7(2025)年3月17日 | 1.875% |
| 令和8(2026)年2月9日 | 2.125% |
| 令和8(2026)年8月3日 | 2.375% |
(出典:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」)
2年で0.75ポイント、率にして1.625%から2.375%へ約1.46倍です。1回あたり0.25ポイントずつという小刻みな動きなので、そのつど大きなニュースにはなりません。しかし積み上がると、借入の多い会社ほど効いてきます。
長期プライムレート(1年超の貸出の最優遇金利)も同じ方向に動いており、令和8年3月10日の2.80%から、4月10日3.00%、5月8日3.05%、6月10日3.15%と上がり、8月12日に3.25%になっています。
日本政策金融公庫の利率も改定された
日本政策金融公庫の金利は金融情勢に応じて見直されます。【国民生活事業】の利率は、令和8年8月3日現在で次のとおりです。
無担保で借りる場合(税務申告を2期終えている方)
| 利率の種類 | 年利率 |
|---|---|
| 基準利率 | 3.60〜5.30% |
| 特別利率A | 3.20〜4.90% |
| 特別利率B | 2.95〜4.65% |
| 特別利率C | 2.70〜4.40% |
| 特別利率E | 2.20〜3.90% |
| 特別利率J | 2.55〜4.25% |
| 特別利率P | 3.40〜4.70% |
| 特別利率Q | 3.20〜4.50% |
有担保で借りる場合
| 利率の種類 | 年利率 |
|---|---|
| 基準利率 | 2.60〜4.90% |
| 特別利率A | 2.20〜4.50% |
| 特別利率B | 2.05〜4.25% |
| 特別利率C | 2.00〜4.00% |
| 特別利率E | 2.00〜3.50% |
| 特別利率J | 1.85〜3.85% |
| 特別利率P | 2.40〜4.30% |
| 特別利率Q | 2.20〜4.10% |
(出典:日本政策金融公庫「金利情報 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」令和8年8月3日現在。利率は融資制度・使いみち・返済期間・担保の有無により異なります)
3. 0.75ポイントの上昇は、いくらの負担増になるか
借入残高別の年間利息
短プラ連動の借入について、金利が0.75ポイント上がった場合の年間の支払利息の増加額です(残高に対する単純計算)。
| 借入残高 | 年間の利息増 |
|---|---|
| 3,000万円 | 22万5,000円 |
| 5,000万円 | 37万5,000円 |
| 1億円 | 75万円 |
| 3億円 | 225万円 |
(注)残高に0.75%を乗じた単純計算です。実際には返済により残高が減るため、増加額はこれより小さくなります。
3,000万円の借入で年22万5,000円と聞くと、大きくないと感じるかもしれません。しかしこれは毎年、返済が終わるまで続く費用です。5年残っていれば累計で100万円を超えます。
借入金利を利益で取り返すには、いくらの売上が必要か
経営者の感覚に直すと、こうなります。売上高営業利益率が5%の会社が、年75万円の利息増を営業利益で埋めようとすると、追加で1,500万円の売上が必要です(75万円 ÷ 5%)。金利の0.25ポイントは、営業の現場で見れば決して小さな数字ではありません。
4. 専門家の視点——「利息は経費だから」で終わらせてはいけない理由
税効果を織り込んでも、手残りは減る
「支払利息は経費になるから、実質的な負担はもっと小さい」というご説明を聞くことがあります。前半は正しく、後半は誤解を招きます。
支払利息は、法人税の計算上、損金の額に算入されます(法人税法第22条第3項第2号)。したがって、利息が増えればその分だけ課税所得が減り、税負担も減ります。
ただし、減るのは税金であって、出ていくお金の総額は増えます。法人の実効税率(法人税・地方法人税・住民税・事業税を合わせた負担率)を仮に30%と置くと、次のようになります。
- 支払利息の増加:75万円(現金が出ていく)
- 税負担の減少:75万円 × 30% = 22万5,000円
- 手元に残るお金の減少:75万円 − 22万5,000円 = 52万5,000円
(注)実効税率は資本金の額・所得金額・所在地により異なります。中小法人の場合、所得のうち年800万円以下の部分の法人税率は15%です(租税特別措置法第42条の3の2第1項。所得の金額が年10億円を超える事業年度は17%。令和9年3月31日までに開始する事業年度に適用)。年800万円を超える部分は23.2%です(法人税法第66条第1項)。
つまり、「経費になる」は負担が3割ほど和らぐという意味であって、負担がなくなるという意味ではありません。ここを混同すると、金利上昇への対応が後回しになります。
本当に効いてくるのは、元本返済のほうです
実務家の立場から申し上げると、金利上昇で資金繰りが苦しくなる会社の多くは、利息そのものではなく元本返済で詰まります。
利息は損金になりますが、元本の返済は損金になりません。返済の原資になるのは、税引後の利益と減価償却費です。式にすると、返済に回せる年間のお金は、おおむね次のようになります。
税引後利益 + 減価償却費 − 元本返済額
金利が上がると、税引後利益が減ります。返済額は変わりません。したがって、この差し引きが薄くなり、手元の現金が細っていきます。利息の増加額よりも、返済のために必要な利益が増えるという事実のほうが、経営へのインパクトは大きいのです。
金融機関の見方も変わります
金利が上がると、金融機関が重視する指標も動きます。とくに債務償還年数(借入金を、税引後利益と減価償却費の合計で何年かけて返せるか)は、税引後利益が減れば長くなります。決算書の見え方が変わるということです。
金利上昇局面では、「借りられるかどうか」よりも「どの条件で借り換えられるか」が経営課題になります。格付け(債務者区分)の考え方を押さえておくことが、そのまま交渉の準備になります。
守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としてお伝えすると、金利のご相談で最初に出てくるのは「金利を下げられませんか」というお話です。過去のご相談の傾向として申し上げると、金利だけを切り離して交渉しても、まず動きません。金融機関が見ているのは、業績の推移・返済実績・資金使途の説明・そして事業計画の説得力です。私たちが関与する場面では、借入の一覧表と資金繰り表を先に整えて、「いくら必要で、何に使い、どう返すのか」を数字で示せる状態を作ってから、条件の話に入ります。順番を逆にすると、たいてい時間だけが過ぎます。
5. 実務でどう備えるか
金利上昇局面で、決算を待たずに着手できることを整理します。
借入の全体像を1枚にする
まず、すべての借入契約を一覧にします。項目は次の8つです。
- 借入先(金融機関名・支店)
- 当初借入金額と現在の残高
- 利率と、変動か固定かの別
- 変動の場合、連動する指標と見直し時期
- 毎月の元本返済額
- 最終返済日
- 担保の有無と内容
- 経営者保証の有無
これがないまま金利の話をしても、優先順位を付けられません。
見直し時期の近い契約から手を打つ
変動金利の借入は、契約で定めた見直し時期に改定後の利率が反映されます。8月3日の短プラ改定が、いつ自社の返済額に効いてくるのかを契約ごとに確認し、直近で見直しが来る契約から検討します。
固定と変動のバランスを決める
すべてを固定にする必要も、すべてを変動のままにする必要もありません。設備資金など返済期間の長い借入は固定、運転資金など期間の短い借入は変動という切り分けが、実務上は考えやすい整理です。ただし固定金利は、その時点で将来の上昇分を織り込んだ水準になっていますので、「固定にすれば得」という話ではありません。読みを当てにいくのではなく、金利が上がっても資金繰りが壊れない状態を作るという発想で決めるのが健全です。
政策金融・信用保証を検討する
日本政策金融公庫の融資には、要件を満たすと基準利率より低い特別利率が適用される制度があります。上の表のとおり、特別利率Eなら無担保でも年2.20%からの区分があり、基準利率とは1ポイント以上の差が出ます。自分が特別利率の対象であることに気づかないまま基準利率で申し込むというのは、実際によくあることです。使える制度を先に洗い出してください。
資金繰り表を12か月先まで引く
金利上昇の影響は、月次の資金繰り表に落とし込んで初めて自分ごとになります。利率を改定後の水準に置き換えて、12か月先までの現金残高を引き直す。これだけで、どの月が薄いのか、いつまでに手を打つべきかが見えます。
6. まとめ
2026年6月16日、日本銀行は無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針を決定し、7月31日の会合でもこれを維持しました。これを受けて、2026年8月3日に短期プライムレートの最頻値が年2.375%になり、長期プライムレートも8月12日に年3.25%となっています。日本政策金融公庫【国民生活事業】の利率も令和8年8月3日現在の水準に改定され、無担保の基準利率は年3.60〜5.30%、有担保は年2.60〜4.90%です。
短プラは2024年9月の1.625%から0.75ポイント上がりました。借入残高1億円なら年間の支払利息が単純計算で75万円増えます。支払利息は損金になりますが(法人税法第22条第3項第2号)、実効税率を30%と置いても手元に残るお金は52万5,000円減ります。そして元本の返済は損金になりません。返済原資は税引後利益と減価償却費ですから、金利上昇は「必要な利益の水準を引き上げる」という形で効いてきます。
いま着手すべきことは、金利の予測ではありません。借入の一覧を1枚にまとめ、変動金利の見直し時期を確認し、改定後の利率で資金繰り表を引き直すことです。
税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、借入構成の見直し、事業計画・資金繰り表の作成、金融機関への説明資料の整備まで一体でご支援しています。金利上昇局面での資金調達にご不安のある方は、決算を待たずにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
短期プライムレートは誰が決めているのですか?
8月3日に短プラが上がったら、うちの金利もすぐ上がりますか?
支払利息は経費になるので、金利が上がっても影響は小さいのでは?
いま固定金利に切り替えたほうがよいですか?
日本政策金融公庫の金利は、いま何%ですか?
金利が上がると、銀行の評価は変わりますか?
個人事業主でも同じ考え方ですか?
出典・参考資料
- 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)
- 日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年7月31日)
- 日本銀行「金融政策に関する決定事項等 2026年」
- 日本政策金融公庫「金利情報 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(令和8年8月3日現在)
- 根拠法令:法人税法第22条第3項第2号、法人税法第66条第1項・第2項、租税特別措置法第42条の3の2第1項
本記事は、日本銀行および日本政策金融公庫の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、特定の金融商品や借入条件を推奨するものではありません。金利は今後変動します。記載の利息額は残高に利率を乗じた単純計算であり、実際の返済方式・返済期間により異なります。実際の借入・借換えの判断にあたっては、契約書の内容と金融機関の説明をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月22日
金利上昇局面の借入の見直しは KMP へ
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、借入構成の棚卸し、事業計画・資金繰り表の作成、金融機関への説明資料の整備までを一体でご支援しています。変動金利の借入が多い、返済が重いと感じている方は、決算を待たずにご相談ください。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
