役員報酬の決定版|定期同額給与・事前確定届出給与・不相当に高額の判定を税理士が解説【2026年版】

役員報酬は、中小企業のオーナー経営者にとって最大の税務論点です。金額の決め方ひとつで、法人税・所得税・住民税・社会保険料の合計が大きく変わります。それでいて、いったん決めたら期の途中では原則として動かせません。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「今期は利益が出そうなので役員報酬を上げたい」「賞与を出したい」というご相談が実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、つまずくのは金額の水準ではなく、手続と時期です。決議の時期を1か月間違える、届出を1日遅れる、届出額と1円違う金額を払う——それだけで全額が損金にならないことがあります。 本記事では、法人税法上の「役員」の範囲から、損金になる3つの型、改定できる場面、届出期限、不相当に高額の判定基準、そして現物給与(経済的利益)まで、役員報酬の税務を条文レベルで整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 3行サマリー
  2. 2. 誰が「役員」か——登記されていなくても役員になる
  3. 3. 損金になる3つの型——条文の構造を先に押さえる
  4. 4. 定期同額給与——改定できるのは3つの場面だけ
  5. 5. 事前確定届出給与——役員賞与を損金にする唯一の道
  6. 6. 業績連動給与——同族会社は原則として使えない
  7. 7. 「不相当に高額」——実質基準と形式基準
  8. 8. 隠蔽仮装は全額否認——第3項の重さ
  9. 9. 現物給与も役員報酬になる——経済的利益の12類型
  10. 10. 使用人兼務役員——なれない人を先に確認する
  11. 11. 役員報酬をいくらにするか——判断の軸
  12. 12. 失敗vs王道
  13. 13. まとめ
  14. よくある質問(FAQ)

1. 3行サマリー

  • 法人が役員に支給する給与は、①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額が損金の額に算入されません(法人税法第34条第1項)。原則は「損金にならない」で、3つの型に当てはまったものだけが損金になる、という構造です。
  • 3つの型に当てはまっても、不相当に高額な部分は損金になりません(同条第2項)。さらに事実を隠蔽し、または仮装して経理することにより支給する給与は、その全額が損金になりません(同条第3項)。
  • 業績連動給与は、同族会社では原則として使えません(同条第1項第3号。同族会社以外の法人との間に完全支配関係があるものに限られます)。中小企業のオーナー経営者が実際に使えるのは、定期同額給与と事前確定届出給与の2つです。

2. 誰が「役員」か——登記されていなくても役員になる

役員報酬の話は、「誰が役員か」から始まります。法人税法上の役員は、会社法上の役員より広い概念です。

法人税法上の役員の範囲

役員とは、次の者をいいます(国税庁タックスアンサーNo.5200、法人税法第2条第15号、法人税法施行令第7条)。

1. 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人

2. 1以外の者で次のいずれかに当たるもの

(1)法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者で、その法人の経営に従事しているもの

ここでいう「使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているもの」には、次の者が含まれます。

  • 取締役または理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長
  • 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
  • 人格のない社団等の代表者または管理人
  • 法定役員ではないが法人が定款等において役員として定めている者
  • 🔴 上記だけをいうのではなく、相談役、顧問などで、その法人内における地位、職務等からみて実質的に法人の経営に従事していると認められるものも含まれます

(2)同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)のうち、次に掲げるすべての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの(いわゆる「みなし役員」)

  • その会社の株主グループをその所有割合の大きいものから順に並べた場合に、その使用人が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、または第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、あるいは第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること
  • その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
  • その使用人(その配偶者およびこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること
💡 実務でよくお見かけするのは、社長の配偶者や子が「専務」「工場長」等の肩書で働いており、株式も持っているという形です。イ・ロ・ハの3要件をすべて満たし、かつ経営に従事していれば、登記されていなくても法人税法上は役員です。役員であれば、その方に支給する給与も第34条の規律を受けます。期の途中で上げれば、上げた部分が損金にならないことがあります。まず「誰が役員か」を確定してから金額を決めてください。

3. 損金になる3つの型——条文の構造を先に押さえる

法人税法第34条第1項は、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入しないと定めています。

  1. 定期同額給与(第1号)
  2. 事前確定届出給与(第2号)
  3. 一定の業績連動給与(第3号)

そして次の給与は、そもそもこの第1項の対象から除かれています。

  • 退職給与で業績連動給与に該当しないもの
  • 使用人としての職務を有する役員(使用人兼務役員)に対して支給する、使用人としての職務に対するもの
  • 事実を隠蔽し、または仮装して経理することによりその役員に対して支給するもの(第3項の対象)

ただし、除かれているものについても次のとおりです(No.5211)。

  • 退職給与および使用人兼務役員の使用人分給与……不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません
  • 隠蔽仮装経理により支給するもの……その全ての金額が損金の額に算入されません
💡 順番に注意してください。「3つの型に当てはまるか」(第1項)→「不相当に高額でないか」(第2項)→「隠蔽仮装でないか」(第3項)という3段階の関門があります。定期同額給与にしておけば安心、ではありません。

4. 定期同額給与——改定できるのは3つの場面だけ

定期同額給与とは、次に掲げる給与です(No.5211、法人税法施行令第69条第1項)。

  1. その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(定期給与)で、その事業年度の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの
  2. 定期給与の額につき、後述の給与改定がされた場合における、その事業年度開始の日または給与改定前の最後の支給時期の翌日から、給与改定後の最初の支給時期の前日またはその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額(または源泉税等控除後の金額)が同額であるもの
  3. 継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの

「源泉税等の額」とは、源泉徴収をされる所得税の額、特別徴収をされる地方税の額、定期給与の額から控除される社会保険料の額その他これらに類するものの額の合計額をいいます(法人税法施行令第69条第2項)。

💡 ここは見落とされがちです。手取り額が同額であれば、額面が動いても定期同額給与に該当します。社会保険料率の改定などで額面が動くケースを救うための規定です(施行令第69条第2項)。逆にいえば、額面を固定していれば当然に安全ということでもあります。

改定できる3つの場面

定期給与の額を改定できるのは、次の3つの場合に限られます。

① 3月経過日等までの改定(増額・減額とも可)

その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合は、その指定に係る月数に2を加えた月数)を経過する日までにされる定期給与の額の改定です。継続して毎年所定の時期にされる改定で、それが3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合には、その改定の時期までとされます。

② 臨時改定事由による改定(増額・減額とも可)

その事業年度において、その法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされた、これらの役員に係る定期給与の額の改定です(①に掲げる改定を除く)。

③ 業績悪化改定事由による改定(減額のみ)

その事業年度において、その法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定です。その定期給与の額を減額した改定に限られます(①②に掲げる改定を除く)。

🔴 業績悪化改定事由について、国税庁は明確に注記しています。「法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれません」(No.5211)。「今期は思ったより儲からなかったので下げる」は、業績悪化改定事由に当たりません。

💬 実務の現場から
「3か月以内なら自由に決められる」と理解されている経営者は多いのですが、正確には会計期間開始の日から3か月を経過する日までです。3月決算の会社なら6月30日が期限になります。ご相談の傾向として申し上げると、定時株主総会を7月に開いていて、そこで報酬を改定してしまっていた、というケースが実際にあります。総会の開催日そのものを見直す必要が出てくる論点です。

期の途中で上げたらどうなるか

年度の途中(3月経過日等より後)に、臨時改定事由も業績悪化改定事由もなく増額した場合、増額後の各支給額のうち、増額前の金額を超える部分が定期同額給与に該当せず、損金不算入となります。会社では損金にならず、受け取った役員個人には給与所得として課税されます。法人・個人の両方で課税されるという、最も避けたい形です。

5. 事前確定届出給与——役員賞与を損金にする唯一の道

事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭または確定した数の株式もしくは新株予約権もしくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式もしくは特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給される給与で、定期同額給与および業績連動給与のいずれにも該当しないものをいいます(No.5211、法人税法第34条第1項第2号)。

中小企業のオーナー経営者にとっては、役員に賞与を出して損金にする唯一の方法です。

届出が不要なケース

次のいずれかに該当する給与については、事前確定届出給与に関する届出は必要ありません(No.5211)。

  • 定期給与を支給しない役員に対して、同族会社に該当しない法人が支給する金銭による給与
  • 株式または新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係る一定のもの

⚠️ 1つ目は「同族会社に該当しない法人」が要件です。中小企業の大半は同族会社に該当するため、非常勤役員に年1回だけ報酬を払う場合でも、届出が必要になります。ここは誤解が非常に多い箇所です。

届出期限(省略せず全パターンを掲載)

1. 原則

次の(1)または(2)のうちいずれか早い日(新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務についてその定めをした場合にはその設立の日以後2か月を経過する日)までに、所定の届出書を提出する必要があります。

  • (1)株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日
  • (2)その会計期間開始の日から4か月(確定申告書の提出期限の延長の特例に係る税務署長の指定を受けている法人のうち、一定の通算法人については5か月、それ以外の法人についてはその指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日

2. 臨時改定事由が生じたことにより定めをした場合

次に掲げる日のうちいずれか遅い日が届出期限です。

  • (1)上記1の(1)または(2)のうちいずれか早い日(新設法人にあっては、その設立の日以後2か月を経過する日)
  • (2)臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日

3. 定めを変更する場合

既に届出をしている法人が定めの内容を変更する場合、その変更が次に掲げる事由に基因するものであるときの届出期限は、次のとおりです。

  • (1)臨時改定事由……臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日
  • (2)業績悪化改定事由(給与の支給額を減額し、または交付する株式もしくは新株予約権の数を減少させる場合に限る)……業績悪化改定事由によりその定めの内容の変更に関する株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日(変更前の直前の届出に係る定めに基づく給与の支給の日がその1か月を経過する日前にある場合には、その支給の日の前日

4. やむを得ない事情がある場合

上記1から3までの届出期限までに届出がなかった場合においても、その届出がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、それらの届出期限までに届出があったものとして事前確定届出給与の損金算入をすることができます(No.5211)。

💡 3月決算の会社が6月の定時株主総会で12月支給の役員賞与を決議した場合、届出期限は「決議日から1か月を経過する日(7月中)」と「会計期間開始の日から4か月を経過する日(7月31日)」のいずれか早い日です。総会が6月下旬なら、7月下旬が期限になります。「4か月あるから7月末まで大丈夫」と考えて決議日から1か月を過ぎると、期限を落とします。

届出額と1円でも違えばどうなるか

事前確定届出給与は「所定の時期に、確定した額」を支給する定めに基づく給与です。したがって、届け出た金額と異なる金額を支給した場合や、届け出た時期と異なる時期に支給した場合には、定めに基づく支給とはいえません。実務上は、その支給した給与の全額が損金不算入となる取扱いがされています。

⚠️ 「業績が思ったより悪かったので、届け出た300万円のうち100万円だけ払う」という対応は、100万円が損金にならないだけでなく、そもそも定めに基づく支給ではないという評価になります。減額したいのであれば、業績悪化改定事由に該当することを前提に、変更の届出を期限内に行う必要があります。

6. 業績連動給与——同族会社は原則として使えない

業績連動給与とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の法人(またはその法人との間に支配関係がある法人)の業績を示す指標を基礎として算定される額または数の金銭・株式・新株予約権による給与等をいいます(法人税法第34条第5項)。

損金算入となる業績連動給与は、法人(同族会社にあっては、同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係があるものに限る)が、業務執行役員に対して支給するもので、次の要件を満たすものに限られます(同条第1項第3号)。

  • 算定方法が、職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標、または売上高の状況を示す指標(利益指標または株価指標と同時に用いられるものに限る)を基礎とした客観的なものであること。金銭による給与は確定した額を、株式・新株予約権による給与は確定した数を限度としており、他の業務執行役員に対する算定方法と同様のものであること
  • 政令で定める日までに、報酬委員会(委員の過半数が社外取締役のうち職務の独立性が確保された者であるものに限る)が決定していることその他の政令で定める適正な手続を経ていること
  • その内容が、適正な手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること

🔴 要件のなかに有価証券報告書への記載が含まれていることからも分かるとおり、実質的に上場企業向けの制度です。中小企業のオーナー経営者が使える選択肢ではありません。

7. 「不相当に高額」——実質基準と形式基準

3つの型に該当しても、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法第34条第2項)。その金額は法人税法施行令第70条に定められており、次の2つのうちいずれか多い金額とされています。

① 実質基準(施行令第70条第1号イ)

内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(退職給与以外)の額が、次の事情に照らし、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合における、その超える部分の金額。

  • 当該役員の職務の内容
  • その内国法人の収益
  • その使用人に対する給与の支給の状況
  • その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況

役員が2人以上いる場合は、これらの役員に係る超える部分の金額の合計額になります。

② 形式基準(施行令第70条第1号ロ)

定款の規定または株主総会、社員総会もしくはこれらに準ずるものの決議により、役員に対する給与として支給することができる限度額等(金銭の額の限度額もしくは算定方法、株式もしくは新株予約権の数の上限、または金銭以外の資産の内容)を定めている法人が、各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額の合計額が、その限度額等により算定された金額を超える場合における、その超える部分の金額。

③ 退職給与の実質基準(同条第2号)

退職した役員に対して支給した退職給与の額が、次の事情に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合における、その超える部分の金額。

  • その役員の内国法人の業務に従事した期間
  • その退職の事情
  • その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況

④ 使用人兼務役員の使用人分賞与の支給時期のずれ(同条第3号)

使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額。

💡 実務で真っ先に効いてくるのは②の形式基準です。株主総会で「取締役の報酬総額は年額○○万円以内」と決議している会社は多いのですが、その枠を超えて支給していれば、超えた部分は自動的に損金不算入になります。金額が相当かどうかを議論するまでもありません。役員報酬を大きく引き上げるときは、まず総会決議の枠を確認・改定してください。

8. 隠蔽仮装は全額否認——第3項の重さ

法人税法第34条第3項は、「内国法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない」と定めています。

第1項(3つの型に該当しないもの)や第2項(不相当に高額な部分)が一部否認であるのに対し、第3項は全額否認です。しかも、隠蔽・仮装があれば重加算税の論点にも直結します。

9. 現物給与も役員報酬になる——経済的利益の12類型

法人税法第34条第4項は、「前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む」と定めています。つまり、金銭を払っていなくても、実質的に給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらすものは役員給与として扱われます。

法人税基本通達9−2−9は、その内容を次のとおり例示しています(明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの、および病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものを除く)。12項目すべてを掲載します。

  1. 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合における、その資産の価額に相当する金額
  2. 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合における、その資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
  3. 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合における、その資産の価額と買入価額との差額に相当する金額
  4. 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く)における、その放棄し又は免除した債権の額に相当する金額
  5. 役員等から債務を無償で引き受けた場合における、その引き受けた債務の額に相当する金額
  6. 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における、通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
  7. 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
  8. 役員等に対して無償又は低い対価で上記6・7以外の用役の提供をした場合における、通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
  9. 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
  10. 役員等のために個人的費用を負担した場合における、その費用の額に相当する金額
  11. 役員等が社交団体等の会員となるため又は会員となっているために要する入会金、経常会費その他運営のために要する費用で、当該役員等の負担すべきものを法人が負担した場合における、その負担した費用の額に相当する金額
  12. 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合における、その負担した保険料の額に相当する金額

毎月おおむね一定なら定期同額給与になる

これらの経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは、定期同額給与に該当します(法人税法施行令第69条第1項第2号)。法人税基本通達9−2−11は、次のものが該当すると例示しています。

  • 9−2−9の(1)(2)(8)に掲げる金額で、その額が毎月おおむね一定しているもの
  • 9−2−9の(6)(7)に掲げる金額(その額が毎月著しく変動するものを除く)
  • 9−2−9の(9)に掲げる金額で、毎月定額により支給される渡切交際費に係るもの
  • 9−2−9の(10)に掲げる金額で、毎月負担する住宅の光熱費、家事使用人給料等(その額が毎月著しく変動するものを除く)
  • 9−2−9の(11)(12)に掲げる金額で経常的に負担するもの

なお、法人が役員等に対しこれらの経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとされています(法人税基本通達9−2−10)。役員社宅で賃貸料相当額を適正に徴収している場合などが、これに当たります。

10. 使用人兼務役員——なれない人を先に確認する

使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます(法人税法第34条第6項)。使用人分の給与は第34条第1項の対象外なので、使用人としての賞与を他の使用人と同じ時期に支給すれば損金になります

ただし、次の役員は使用人兼務役員となりません(No.5205、法人税法施行令第71条)。

  • (1)その会社の株主グループをその所有割合の大きいものから順に並べた場合に、その役員が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、第一順位と第二順位を合計して初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、または第一順位から第三順位までを合計して初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること
  • (2)その役員の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
  • (3)その役員(その配偶者およびこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること
  1. 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
  2. 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  3. 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
  4. 取締役(指名委員会等設置会社の取締役および監査等委員である取締役に限る)、会計参与および監査役ならびに監事
  5. 上記1から4までのほか、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、次のすべての要件を満たす役員

また、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も、使用人兼務役員となりません(No.5205)。

💡 オーナー社長本人は1(代表取締役)で除かれ、配偶者や子が「専務」なら2で除かれ、株式を持っていれば5で除かれます。中小企業では、使用人兼務役員として認められる余地はかなり狭いというのが実務の感覚です。「取締役営業部長」という肩書だけで判断せず、5の3要件を必ず当ててください。

11. 役員報酬をいくらにするか——判断の軸

金額そのものに正解はありませんが、比較すべき軸は決まっています。

① 法人税と所得税・住民税の合計で見る 役員報酬を上げれば法人の所得は減りますが、個人の所得は増えます。個人には累進税率が適用されるうえ、給与所得控除は一定額で頭打ちになります。法人・個人を合算した税負担が最小になる水準を探すことになります。

② 社会保険料を必ず含める 役員報酬は社会保険料の算定基礎になります。会社負担分と本人負担分の合計は無視できない規模です。標準報酬月額の上限にも改定の動きがあり、上限が上がると高額報酬帯の負担が増えます。税金だけで最適化すると、社会保険料で逆転することがあります。

③ 配当との比較 オーナー経営者は、配当で受け取るという選択肢もあります。配当は法人側で損金になりませんが、社会保険料の算定基礎にはなりません。一方で、非上場株式の配当は総合課税であり、申告分離課税は選べません。役員報酬と配当は、税・社会保険・株主構成の3点で比較してください。

④ 融資への影響 役員報酬を極端に高くして法人を赤字にすると、金融機関の評価が下がります。もっとも、金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕は、中小・零細企業の債務者区分の判断において代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容等を総合的に勘案するとしています。役員報酬を引いた結果の赤字であれば、その分を戻して見てもらえる余地があります。決算前に、銀行にどう説明するかまで決めておくことが重要です。

退職金まで含めた設計 役員退職金の適正額の判断には功績倍率法が用いられ、最終報酬月額が計算の基礎になることが一般的です。在任中の報酬水準は、退職時の受取額にも影響します。

12. 失敗vs王道

❌ よくある失敗
  • 定時株主総会を期首から3か月を過ぎてから開き、そこで役員報酬を改定する。3月決算なら6月30日が期限。
  • 「今期は利益が出そうだから」と期の途中で増額する。増額部分が損金不算入となり、個人では給与課税される。
  • 「思ったより儲からなかったから」と期の途中で減額する。一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは業績悪化改定事由に含まれない
  • 非常勤役員に年1回だけ報酬を払うので届出は不要と考える。届出不要なのは同族会社に該当しない法人の場合のみ。
  • 事前確定届出給与を、届出額と違う金額・違う時期に支給する。全額が損金不算入になる。
  • 株主総会で決めた報酬総額の枠を超えて支給する。形式基準で自動的に否認される。
  • 社長の配偶者を「登記していないから役員ではない」と扱い、期中に給与を上げる。みなし役員に当たれば第34条の規律を受ける。
  • 渡切交際費や個人的費用の負担を役員報酬と別枠で考える。経済的利益も役員給与に含まれる。
⭕ 王道の進め方
  • 決算月から逆算してカレンダーを作る。①期首、②定時株主総会(3月経過日等まで)、③改定後の初回支給日、④事前確定届出給与の届出期限(決議日から1か月と会計期間開始から4か月のいずれか早い日)、⑤賞与の支給日。この5点を年度の初めに固定する。
  • 「誰が役員か」を先に確定する。登記簿だけでなく、株主名簿と職制を突き合わせ、みなし役員・使用人兼務役員の判定を毎年やり直す。
  • 株主総会の報酬枠を先に確認する。枠が足りなければ、金額を決める前に枠を改定する。
  • 事前確定届出給与は、出せる確信がある金額で届け出る。減額したくなる可能性があるなら、そもそも定期同額給与の水準を上げる設計にする。
  • 金額は法人税・所得税・住民税・社会保険料の4つを合算し、さらに融資評価と退職金設計まで並べて決める。税金だけで決めない。
  • 経済的利益はすべて洗い出して金額化する。社宅・車両・保険・交際費・個人的費用を一覧にし、毎月おおむね一定であれば定期同額給与として整理する。

13. まとめ

  • 役員給与は「原則として損金にならない」が出発点です。定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与の3つの型に当てはまったものだけが損金になります(法人税法第34条第1項)。
  • 中小企業のオーナー経営者が使えるのは定期同額給与と事前確定届出給与の2つです。業績連動給与は同族会社では原則として使えません。
  • 定期同額給与を改定できるのは、①会計期間開始の日から3か月を経過する日まで ②臨時改定事由 ③業績悪化改定事由(減額のみ)の3つの場面だけです。一時的な資金繰りや業績目標未達は③に含まれません。
  • 事前確定届出給与の届出期限は、決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日です(新設法人は設立の日以後2か月)。届出額・届出時期と異なる支給は、全額が損金不算入となります。
  • 3つの型に当てはまっても、不相当に高額な部分(実質基準・形式基準)は損金になりません。株主総会の報酬枠を超えた部分は、金額の相当性を議論するまでもなく否認されます。
  • 登記されていなくても、経営に従事していれば役員(みなし役員)になり得ます。金銭でなくても、経済的利益は役員給与に含まれます。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、役員報酬の水準設計を、法人税・所得税・住民税・社会保険料の合算に加え、金融機関の評価、退職金設計、自社株評価への影響まで含めて一体でご支援しています。役員報酬は期首から3か月以内にしか原則として動かせません。決算が終わってから考えるのでは間に合わない論点です。決算の2か月前を目安にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

役員報酬は期の途中で変更できますか?

原則としてできません。定期同額給与として損金算入するためには、会計期間開始の日から3か月を経過する日までに改定する必要があります(3月決算なら6月30日まで)。例外は2つで、役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情による「臨時改定事由」と、経営の状況が著しく悪化したことによる「業績悪化改定事由」です。ただし業績悪化改定事由は減額の場合に限られ、国税庁は一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことは含まれないと明示しています。

役員に賞与を出したいのですが、損金にできますか?

事前確定届出給与の届出を期限内に行えば損金にできます。届出期限は、株主総会等の決議をした日(その日が職務の執行を開始する日後である場合はその開始する日)から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日です。新設法人がその役員の設立時に開始する職務について定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日です。届け出た金額・時期と異なる支給をすると、定めに基づく支給とは認められず、全額が損金不算入となる取扱いです。

非常勤役員に年1回だけ報酬を払う場合も届出は必要ですか?

同族会社の場合は必要です。届出が不要とされているのは「定期給与を支給しない役員に対して、同族会社に該当しない法人が支給する金銭による給与」であり、同族会社は対象外です。中小企業の多くは同族会社に該当しますので、非常勤役員への年1回の報酬であっても事前確定届出給与の届出が必要になります。ここは誤解が非常に多い箇所です。

登記していない社長の妻に給与を払っています。役員報酬になりますか?

なる可能性があります。法人税法上の役員には、同族会社の使用人のうち、①株主グループの順位に関する要件、②その使用人の属する株主グループの所有割合が10%超であること、③その使用人(配偶者等を含む)の所有割合が5%超であること、のすべてを満たし、かつその会社の経営に従事している者(みなし役員)が含まれます。この場合、期中の増額は損金不算入となり得ますし、賞与を出すなら事前確定届出給与の届出が必要になります。株主名簿と職務の実態を毎年確認してください。

「不相当に高額」かどうかは、どんな基準で判断されますか?

法人税法施行令第70条により、実質基準と形式基準のいずれか多い金額が損金不算入になります。実質基準は、その役員の職務の内容、その法人の収益、使用人に対する給与の支給の状況、同種の事業を営み事業規模が類似する法人の役員給与の支給の状況等に照らして相当と認められる金額を超える部分です。形式基準は、定款の規定または株主総会等の決議で定めた限度額等を超える部分です。実務上まず問題になるのは形式基準で、株主総会で決めた報酬総額の枠を超えていれば、それだけで超過部分は損金不算入になります。

社長に会社の車を使わせています。これも役員報酬になりますか?

私的に使用している部分は経済的な利益として役員給与に含まれます(法人税法第34条第4項、法人税基本通達9−2−9(8)(10))。役員給与に含まれると、定期同額給与等に該当しない部分は損金不算入となり、個人側では給与課税されます。もっとも、その経済的利益の額が毎月おおむね一定であれば定期同額給与に該当します(法人税法施行令第69条第1項第2号、法人税基本通達9−2−11)。実務では、業務使用の実態を記録で説明できるようにするか、私的使用分の対価を会社に支払う形で整理します。

役員報酬を下げて配当で受け取ったほうが得ですか?

一律には決まりません。役員報酬は要件を満たせば法人の損金になり、社会保険料の算定基礎になります。配当は法人の損金になりませんが、社会保険料の算定基礎にはなりません。ただし非上場株式の配当は総合課税であり、申告分離課税は選べず、少額配当に当たらなければ申告不要にもできません。加えて配当は持株数に応じて全株主に出るため、他に株主がいる場合は資金が社外に流出します。税・社会保険・株主構成の3点で比較する必要があります。

役員報酬を上げすぎて赤字になると、銀行の評価は下がりますか?

形式的には自己資本を減らす方向に働きます。ただし金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕は、中小・零細企業の債務者区分の判断において、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容等を総合的に勘案するとしていました。同マニュアルは令和元年12月18日に廃止されていますが、金融庁は現在の債務者区分を出発点とする方針を示しており、実務は引き継がれています。したがって「役員報酬を引いた結果の赤字」であることを決算書と説明資料で示せるかどうかが分かれ目になります。決算前に、銀行への説明の仕方まで決めておくことをおすすめします。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、法人税法上の役員給与についての一般的な情報提供であり、個別の取引に関する税務判断に代わるものではありません。役員に該当するかどうか(みなし役員の判定)、使用人兼務役員に該当するかどうか、臨時改定事由・業績悪化改定事由に該当するかどうか、給与の額が不相当に高額であるかどうかは、いずれも個別の事実関係により結論が異なります。事前確定届出給与の届出期限は法人の会計期間・決議日・申告期限の延長の有無により変わりますので、必ず自社の事実関係に当てはめてご確認ください。社会保険料および金融機関の評価に関する記載は一般的な傾向を述べたものであり、特定の結果を保証するものではありません。個別の判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月3日

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公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、役員報酬の水準を法人税・所得税・住民税・社会保険料の合算で試算し、金融機関の評価、退職金設計、自社株評価への影響まで含めて一体でご支援しています。役員報酬は原則として期首から3か月以内にしか動かせません。決算の2か月前を目安にご相談ください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。