役員社宅で節税とは?賃貸料相当額の計算と国税庁ルールを税理士が解説【2026年版】

「自分の住む家の家賃を、会社の経費で落とせないか」「役員報酬を上げるより、社宅にしたほうが手取りが増えると聞いた」——オーナー経営者から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、こうした役員社宅に関するご相談が数多く寄せられます。役員社宅は、正しく使えば、同じ役員報酬のままで手取りを増やせる、経営者にとって王道かつ再現性の高い節税策です。 一方で、「家賃を全額会社が払えば全額経費」という誤解のまま運用すると、その多くが役員給与(現物給与)として給与課税され、思わぬ追徴や社会保険料の増加を招きます。ポイントは、役員が会社へ支払うべき「賃貸料相当額」をいくらに設定するか。本記事では、国税庁No.2600に基づく賃貸料相当額の計算方法を、小規模な住宅・小規模でない住宅・豪華社宅の3区分に分けて、網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 役員社宅が節税になる仕組み(3行サマリー)
  2. 2. 賃貸料相当額は住宅の区分で計算が変わる
  3. 3. 小規模な住宅の賃貸料相当額(最も有利)
  4. 4. 小規模でない住宅の賃貸料相当額
  5. 5. 豪華社宅は算式が使えない
  6. 6. 役員社宅の失敗と王道
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 役員社宅が節税になる仕組み(3行サマリー)

  • 家賃の大部分を会社の損金にできる——会社が物件を借り(または所有し)、役員に社宅として貸し付けます。会社が支払う家賃は会社の損金になり、役員は「賃貸料相当額」だけを会社に支払えば、差額は給与課税されません。個人で家賃を払うより、会社を通したほうが税負担が軽くなります。
  • 役員報酬を上げずに手取りが増える——役員報酬を増やすと、所得税・住民税・社会保険料がすべて増えます。役員社宅は報酬を増やさずに住居コストを会社に移せるため、同じ額面のまま手取りを厚くできるのが最大の利点です。
  • 賃貸料相当額の設定がすべて——賃貸料相当額を受け取らずに(無償で)貸したり、相当額より低い家賃しか受け取らなかったりすると、その差額が役員給与(現物給与)として課税されます(国税庁No.2600)。節税の成否は、この賃貸料相当額を正しく計算し、毎月きちんと会社が受け取っているかにかかっています。
💡 役員社宅は「会社の家賃負担」と「役員の少ない自己負担」の差額を、給与課税されずに役員が受けられる仕組みです。だからこそ、賃貸料相当額をいくらに設定するかが決定的に重要です。感覚で「家賃の半分」などと決めるのではなく、国税庁が定めた算式で計算した金額を根拠にしてください。

2. 賃貸料相当額は住宅の区分で計算が変わる

役員に社宅を貸すとき、役員から受け取るべき「賃貸料相当額」は、その住宅の区分によって計算方法が異なります。区分は次の3つです(国税庁No.2600)。

区分判定の目安賃貸料相当額の計算
小規模な住宅床面積が一定以下(下記3で解説)固定資産税の課税標準額をもとにした算式(最も低くなる)
小規模でない住宅小規模の面積を超える一般的な住宅自社所有・借り上げで別の算式
豪華社宅床面積240㎡超、またはプール等の特殊設備がある等算式は使えず、通常の家賃相当額

まず自分の社宅がどの区分に当たるかを確認することが出発点です。多くの経営者の自宅は「小規模な住宅」に収まり、この場合の賃貸料相当額は実際の家賃よりかなり低くなります。

3. 小規模な住宅の賃貸料相当額(最も有利)

小規模な住宅」とは、次の床面積以下の住宅をいいます(国税庁No.2600)。

建物の法定耐用年数小規模な住宅とされる床面積
30年以下(木造など)床面積 132㎡以下
30年超(鉄筋コンクリート造など)床面積 99㎡以下

※区分所有のマンション等は、共用部分の床面積を専有部分の割合であん分して加えたうえで判定します。

小規模な住宅に当たる場合、賃貸料相当額は次の(1)〜(3)の合計額になります。

💡 小規模な住宅の賃貸料相当額(月額)
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
(2) 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡)
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
——この3つを足した金額が、役員が毎月会社に支払えば給与課税されない下限額です。

固定資産税の課税標準額は、市場の家賃相場よりずっと低いため、この算式で出る賃貸料相当額は実際の家賃の1〜2割程度にとどまることも珍しくありません。つまり、家賃20万円の物件でも、役員が会社に払う金額は数万円で済み、差額は給与課税されない、というのが役員社宅の節税効果の正体です。課税標準額は、市区町村が発行する固定資産税の課税明細書(借り上げの場合は貸主に依頼して取得)で確認します。

4. 小規模でない住宅の賃貸料相当額

床面積が3の基準を超える住宅(小規模でない住宅)は、会社が所有するか、他から借り上げているかで計算が分かれます(国税庁No.2600)。

(A) 会社が所有する社宅の場合

次のイ・ロの合計額の12分の1が、月額の賃貸料相当額です。

  • :(建物の固定資産税の課税標準額)× 12%(法定耐用年数が30年を超える建物は 10%
  • :(敷地の固定資産税の課税標準額)× 6%

(B) 会社が他から借り上げて役員に貸す場合

次の①と②のいずれか多い金額が、月額の賃貸料相当額になります。

  • :会社が家主に支払う家賃の 50%
  • :上記(A)のイ・ロで計算した月額

借り上げの場合、「会社が払う家賃の50%」と「固定資産税ベースの算式額」を比べて高いほうになる点に注意してください。小規模な住宅ほどは下がりませんが、それでも家賃の全額を役員が負担するより有利です。

5. 豪華社宅は算式が使えない

床面積が240㎡を超えるもので、取得価額・支払家賃・内装や設備の状況などを総合勘案して「豪華」と認められる社宅や、床面積が240㎡以下でもプール等の特殊な設備や役員個人の嗜好を著しく反映した設備を有する社宅は、「豪華社宅」として扱われます。この場合、3〜4の算式は使えず、通常支払うべき使用料に相当する額(=市場家賃相当額)が賃貸料相当額になります(国税庁No.2600)。

💡 豪華社宅に該当すると、算式による大幅な圧縮ができず、実勢家賃の全額を役員が負担しないと差額が給与課税されます。節税目的で高級物件を社宅にする際は、この240㎡ラインと特殊設備の有無を必ず確認してください。

6. 役員社宅の失敗と王道

❌ 役員社宅でやってしまいがちな失敗
  • 会社が家賃を全額負担し、役員から賃貸料相当額を一切受け取っていない(差額の全額が給与課税)
  • 賃貸料相当額を感覚で「家賃の半額」などと決め、算式で計算していない(下限を割ると差額が課税)
  • 賃貸借契約が役員個人名義のままで、会社が家賃を払っている(会社の社宅と認められにくい)
  • 役員が会社に払う社宅家賃を天引き等で毎月きちんと処理していない(実態がないと否認されやすい)
  • 固定資産税の課税明細を保管しておらず、賃貸料相当額の計算根拠を示せない
⭕ 役員社宅を給与課税されずに使う王道
  • 賃貸借契約を会社名義で結び、会社が家主に家賃を支払う(社宅であることを明確にする)
  • 役員から受け取る家賃は、国税庁No.2600の算式で計算した賃貸料相当額以上に設定する
  • 賃貸料相当額を毎月、給与天引き等で確実に会社が受け取る(帳簿にも残す)
  • 固定資産税の課税明細書を入手・保管し、賃貸料相当額の計算根拠を残す
  • 社宅規程を整備し、対象者・負担割合・退去時の扱いなどをルール化しておく

よくある質問(FAQ)

役員社宅の家賃は、いくら役員が払えば給与課税されませんか?

国税庁No.2600の算式で計算した「賃貸料相当額」以上を役員が会社に支払っていれば、給与課税されません。小規模な住宅なら「建物の固定資産税課税標準額×0.2%+12円×総床面積÷3.3㎡+敷地の固定資産税課税標準額×0.22%」の合計額が下限です。無償で貸すと全額、相当額より少ないと差額が給与課税されます。

賃貸料相当額は、実際の家賃の何割くらいになりますか?

物件によりますが、小規模な住宅では固定資産税の課税標準額をもとに計算するため、実際の家賃の1〜2割程度にとどまることもあります。市場の家賃相場ではなく、あくまで課税標準額ベースの算式で決まる点が役員社宅のポイントです。

従業員に社宅を貸す場合も同じですか?

基準が異なります。従業員(使用人)の社宅は国税庁No.2597で扱われ、賃貸料相当額の50%以上を従業員が負担していれば給与課税されません(役員は算式で計算した相当額の全額が基準)。制度が別なので、役員と従業員は分けて設計してください。

会社名義ではなく、役員個人が借りている部屋でもよいですか?

役員個人名義の契約で会社が家賃を負担すると、社宅ではなく「家賃の肩代わり=給与」とみなされるおそれがあります。役員社宅として節税するなら、賃貸借契約は会社名義で結び、会社が家主に支払う形にするのが安全です。

床面積240㎡を超える自宅を社宅にできますか?

できますが、「豪華社宅」に該当すると算式が使えず、通常の家賃相当額を役員が負担しないと差額が給与課税されます。240㎡超やプール等の特殊設備がある物件は、算式による圧縮ができない点に注意してください。

8. まとめ

役員社宅は、役員報酬を上げずに住居コストを会社に移せる、経営者にとって王道の節税策です。要点は次のとおりです。

  • 会社が借りて(または所有して)役員に貸し、役員は「賃貸料相当額」だけを負担する。差額は給与課税されない(国税庁No.2600)。
  • 小規模な住宅(耐用年数30年以下=132㎡以下、30年超=99㎡以下)は、固定資産税の課税標準額をもとにした算式で、賃貸料相当額が実際の家賃の1〜2割程度まで下がることもある。
  • 小規模でない住宅は、自社所有・借り上げで算式が異なり、借り上げは「会社の支払家賃の50%」と算式額のいずれか多い額
  • 床面積240㎡超やプール等の特殊設備がある社宅は「豪華社宅」で、算式が使えず市場家賃相当額が基準。
  • 成否は賃貸借契約を会社名義にすることと、算式で計算した賃貸料相当額以上を毎月きちんと受け取ること。課税明細の保管と社宅規程の整備が説明力の要。

「自宅を役員社宅にして手取りを増やしたい」「賃貸料相当額をいくらに設定すればよいか計算してほしい」「豪華社宅に当たらないか確認したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、役員社宅の設計から賃貸料相当額の算定、社宅規程の整備、役員報酬全体の最適化まで一体で伴走します。住まいと会社のお金を賢く設計したい経営者の方は、契約を結ぶ前のお早めの段階でご相談ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、役員社宅に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。賃貸料相当額の計算・区分の判定・給与課税の有無は、物件の床面積・固定資産税の課税標準額・契約形態等の事実関係により異なり、制度の要件・算式は改正により変わることがあります。実際の設計・処理にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月13日

役員社宅・役員報酬の設計は KMP へ

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。